「____そろそろ休憩取るか?」
疲れで自分の歩きが遅くなると、彼女はそう聞きだした
「大丈夫だよ、日暮れまでには到着したいしね」
「直径ならば9マイルだが険しい山を越えることになる、どうだろうな」
歩きで行くには少し遠いが、ここは整備されていない土地が多く車では少々きついところではある
ファイヤーウォッチは歩調を落とし自分のペースに合わせてくれる
今回の目的は僻地にある農村の事前調査
なんとも
樹々の隙間から淡い秋の日光が肩で感じられた
周りは驚かんばかりの雑草が生い茂っていて、足元で乾いた枯葉と枝の音がまとわりつく
鳥の囀りがわずかにうるさい
湖につながる川を下流から上流に遡っていくと、目標への直線ルートに入った
「こういう所は慣れてるの?」
獣道に沿いながら話しかけた
「狭い部屋よりかは、こっちのほうが管轄内ではある」
おおよそ二人は正反対
「ドクターはあまり慣れていないようだな」
「申し訳ない」
「問題ない、私についてくるといい」
そう言って微笑み彼女はドクターの手を引っ張る
わずかに足取りが早くなると、流れるように山頂へついた
山頂といえど、標高の低い山である以上樹々に囲まれあまり実感がわかないが
開けた場所を見つけると目の奥から視野が広がったようにその感覚がふっと湧き出た
青い山が少しずつ秋色に侵食してきていて、遠くから見ると二色の様子がはっきりと見ることができた
今まで歩いてきた道はよく見えないが、かすかに地形から通ってきた場所がわかる
ドクターに文芸の才があったなら一句の歌でも書いていたろうが、そんな不筆の彼でも
本来の目的ごと忘れ去るような景色だった
「なんとなくここで叫んでみてもいいかな?」
「なにか抱え込んでるのか?」
人のいない山奥だと、無性に叫びだしたくなる、理性が足りないわけではない
「いいや、無性にやまびこが聞きたくなって」
「そうか。だがその声を聴いて猛獣でもやってきたらどうするんだ?」
「それも....そうか、ごめん」
後ろ道から前へつま先を逸らしまた歩き出すと、今度は彼女が足を止めた
「......しかし、このような任務はそうそうない、この場に長居しなければ大丈夫だろう」
そう言ってドクターが遅れた分彼女は引き返してきた
彼女が大きく息を吸うと腰を折り曲げ大きく呼び声を叫び、
それをなぞりドクターも同じように叫んだ
二人の声が反響すると、バラバラな音になって帰ってきた
「んー、なんか思ってたのと違うな」
「バラバラに言葉をしゃべったからな」
「じゃあ今度は一緒に同じことを叫ぼうよ」
「今度だな」
どこかすまし顔の彼女は、少し恥ずかしそうに
彼女の意外な一面を今日は初めてみたかもしれない
夕日が左肩にあたり、先を急ぐ二人の影法師が地面に映る
谷を跨ぐ倒木を超えると、生暖かい風を背中で感じた
何か嫌な予感がするといつも決まってよく当たる
それを予感ではなく経験で察知するとファイヤーウォッチは慣れた足つきで雨が降る前に雨宿りする場所を見つけた
山の天気はいつも気まぐれで、見当がつかない。
この浅い洞窟は熊が住むには狭すぎるようで、安全な場所は確保できた
中から外の様子を見ると亡霊でも紛れていそうなくらいに濃い霧がかかって
雨が白い糸になって遠くの山を消した。
ドクターは麻紐をほぐし、火打石が起こした火花を当てると洞窟の前にある小さ目な枯れ木をそのまま利用し薪として使った。ある程度の知恵は持っている
そしてこまったもので、雨がやまない限りやることもない。唐突に寒くなった山から身を守るために二人は少しずつ体を寄せ合った
ファイヤーウォッチは火を見ている。本来の意味とはまるで逆の行為だがどこかしっくりくる
ドクターは少し眠いようで、少し瞼が重力に負けているように感じる
「眠いのか?...なら私が火番をしよう」
「いいの?」
「問題ない」
「ならお言葉に甘えて...」
すると横たわるわけでもなく、膝に荷物を置き、それを支えに彼女の横で座ったまま目を閉じた
いつもはあまり好いていない雨と篝火の音が今は妙に心地がいい
意識はやがて深いところに入り込んだ。次々暗くなるプールに深く深くダイブしているようだ
ふと眠りにつく直前、右肩に重しがかかった。一瞬体が条件反射的にびっくりしたが、すぐに落ち着いた
体を動かさず首と目だけを動かさすとファイヤーウォッチは自分の右肩に頭を預けて目を閉じていた
正確には角が邪魔なのか寄りかかるというより添いのそれに近い
手を動かし、深く身を寄せるように頭をなでると、彼女は口開いた
「...すまない。私も、少し眠い」
言うと彼女は体重の半分をこちらに預けた
「落ち着くな...思い出してしまうよ」
その思い出が彼女にとっていい物なのか、はたまた毒になっているのかはわからない。ただ彼女の頭、右角の付け根を優しく撫でる
「あの...角は、困る...」
「ごめん、嫌だったか?」
「嫌ではないんだ、ただ...少しくすぐったい」
そのことがわかると、まるで図に乗ったように、今度は壊れ物に触れるように優しく撫で出した
二人寄せ合う焚火は、あたたかい
気が付くと、あっという間に夜を越え次の朝がやってきた。
未だに霧は濃いが少し晴れてきたほうだ
けれどもまだ、二人は身を寄せ合って座っている
一晩色々な話をして、眠りについた
結局の所、夕暮れまでに到着する予定のはずが、こうして日を跨いた
再び北へ向かって前進を続けると、一つ山の奥に目的の村が見えた
「___また、このような機会があるといいな」
「そうだね」
「そしたら何を話そう?」
「君がしてくれる話なら、なんだって聞くよ」
「そうだな。なら今度は、もっと違う話で、違う場所で、また一緒に...」
二人の足取りは軽かった
なんかThe Hunter:Call of the wild思い出した。
リクエスト待ってます。だれでもどうぞ
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