もてもてドクター   作:雅裕

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ストーリーがかっこよかった。なのでくっつかせますよろしくおねがいします


フロストリーフ

「あれ。ドクターか」

 

冬暮れ空の下を用もなくふらつくと、壁に寄りかかったフロストリーフは声をかけてくれた

 

「ん?おはよう」

「久々にここで合ったな」

「やっと外の空気が吸えたよ」

「散々だな」

 

彼女はヘッドホンを外して首にかけると、両手をポケットに戻した

 

「フロストリーフは何してたの?」

 

聞いて無言で繋がったままのウォークマンをポケットから取り出すと、ひらひらこちらに見せた

 

「どんなの?」

「聞いてみるといい」

 

そう言うとヘッドホンを外しこちらに渡してきた

メタリックな物で、ユニットを両手で掴み、彼女の真似をするようにヘッドホンを付けてみる

 

「見慣れないな」

「あまり付けないからね」

 

事実ほとんどつける機会がない

 

「こういうジャンルが好きなの?」

「まぁな。あとは...こんな感じの」

 

小さな手で器用にボタンを押すと、音楽が切り替わった

 

「これもいいね」

「ありがとう。いつも聞いてるんだ」

 

自分の好きな物を褒められると、まるで自分も褒められたように嬉しくなる、彼女もそうだろうか

 

「この後暇なら、一杯どうだ?」

「特に用事はないから、行こうか」

「いいとこを知ってる」

 

彼女は微笑んで歩き出すと、それについていった

ヘッドホンを歩きながら彼女の頭にかけた、丁寧にやったつもりでも多少ずれるようで、彼女は一瞬だけ迷惑そうな顔をすると、しっかり耳にかかるように直した

 

「行きつけでもあるの?」

「行きつけというほどではないがな」

 

慣れた足つきそこへ着くと彼女はまっすぐ席に座り、隣を指さした

初めてきたバーだ。時折誘われ通うことはあったが、たまに場所が違うことがあり、最近はここで安定しているらしい

少し時間のせいもあってか少し寂れていて、薄暗がり。何人かいる客はこの空気を壊さないように小声で話している

 

注文して素早い手つきで渡されると、店員は少し離れたところでグラスを拭き始めた

 

「つぶれないといいな」

「そんなに弱いのか?」

「雰囲気だけで酔うくらいには」

「まぁ...安心しろ」

 

他人につられるように自分たちもまるでひそひそ話でもしているようになった

彼女は右手を頬につき、こちらを何か見据えているようなふりをして、なにもみていない

脅迫概念ほどでもないが、とりあえずは話を振りたい

そうしてさっきの音楽の話を持ち出し、話は逸れ、オリジムシの味はエビかカニか、斧がどうだか、軌道に乘ったように色々な話をした

フロストリーフは左頬杖して、軽い相槌と珍しく微笑んでこちらをみている

 

「...飲まないのか?」

「え?」

「それだよ」

「あー....忘れてた」

 

彼女は顎でコップを指し、言われて思い出すと全く手をつけていないそれを飲み干した

 

「意外に豪快だな」

「酒ってこういうものじゃないの?」

「本気で言ってるなら大ウケだな」

「え...まぁ....これくらいなら大丈夫...でしょ」

 

露骨にわかりやすく、自分のやらかしに気づく

 

「まぁ、せっかく飲んだのだから、他にもなにか頼もうじゃないか。これは私の奢りだ」

 

頷くと、彼女はウェイターを呼んだ。三種類ほどか、それぞれ色の違う酒を一つの器に入れると、混じって汚れることもなく溶け込んでく

最後、蓋をして器をして振っている。はじめは手によって振られていたが、しまいには振られているよう見えた

この動作はかっこよくて、憧れる

グラスに注がれると、よくわからない酒の名前と動詞を言われこちらに差し出された

 

「これがおすすめ?」

「まぁな」

 

手に取ってみると、フルーティな香りに交じってアルコールの匂いが鼻腔を走る

奢られた以上は飲むしかない。腹をくくって、今度はちびちび飲むと、また会話に戻った

しかし腹をくくっただけではどうしょうもならず、酔いがすぐに回り始めると、呂律の代わりに頭が回らなくなった

彼女は同じものを飲んで平然としている

 

「それで、本当にあの時ブラウン隊長がいなかったら...」

「そんな話してたか?」

「僕も酒強くなったかな」

「グラスに指入ってるが」

「大丈夫だよ、この酒は熱くないから」

 

彼女は困惑したように笑う

 

「そろそろ帰るか」

「...うん」

 

最後に水を飲むと、席を立った。その頃にはすでに夜で、店も来客が増えた

ドア窓から、冬の初雪が見える。雨の音がしないと思ったときに、外の雪はほのかに青く煙った

 

最後に振り向くと店内を見渡した。彼女がよくここを通うならせめて内装は覚えようとしたのだ

外へ後ろ脚に踏み出すと、次の瞬間景色が変わった。キャンドルは激しく視界を上下すると、段差につまずいたことに気づく

しかし不思議と痛みはなく、先に出たフロストリーフに体を支えられていた。派手に転びそうになったのを助けてもらったようで、まるで地面すれすれのお姫様だっこだった

 

「あ...ありがとう」

「...気をつけろ」

 

彼女が一段かっこよく見えた。騎士様でも見出した気分だ。しかし絵面が絵面だ、あまり音は立ててないが目立つものは目立つ。街行く人やバーの中からの視線に気づくと刹那、背中が宙を浮き、あっという間に地面へ衝突した。

体勢を立て直して彼女の方をみると、少し距離を離して、他人事のように呆れた顔をしている

視線から逃げるように彼女のそばへ駆け寄ると二人早歩きに店をあとにした

 

「まったくしっかりしてくれ」

「ごめん...」

 

顔を真っ赤にして目をそらしている。ドクターがである

万事休すだ、私は女子に姫様抱っこされたというレッテルを張られ生きていくのか、次の言葉を噤んでいくうちに彼女から話かけられた

 

「まぁ、仕方ない。代わりに次も付き合え」

「それで...いいなら」

「誰もみていないさ。これでも聞いて落ち着け」

 

泣きそうな自分にヘッドホンをかけると、それに繋がったウォークマンに、まるで手綱のように軽く引っ張られる

そうして歩いたことが最後の記憶だった

 

フロストリーフはよく酒に誘ってくるようになった

毎回記憶があいまいでも隣で男が寝てることはない、少しは耐性がついた。そう願う

 

 

 

「あの二人、なんでそういうことに至らないの?」「え、ドクターってあの子にお姫様だっこされてなかった?」「それ言ったら襲われるらしいぞ」「あ、待ってフロストリーフがこっちをみ」




てごわかった....

チェルノボーグに出てきた一般前衛オペレーターくんみたいな服めっちゃ好みだけどどういうジャンルのファッションなんだろう

そろそろep.2手付けないと

えらべ

  • ホシグマ
  • テキサス
  • ラップランド
  • その他

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