彼と彼女の話   作:斎草

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メアリー・ワトソンの手記 - 01

 

少しだけ身の回りが落ち着いたので、日記という程大層なものじゃないけど記録をつける事にした。私自身の思考の整理と備忘録を兼ねて、記録を残しておくのは良いと思う。さすがに隊長もこんなノートまでは読まないだろうし。思い付いた事を羅列するから支離滅裂かもしれない。

 

1週間前、私はアルバート・ウェスカーに拉致された。場所はラクーンシティ跡地。あの街は1998年に未曾有の生物災害に見舞われた。私はその災害における数少ない生存者の1人だ。この、後にラクーンシティ壊滅事件と呼ばれる事件については関連書籍を読んだ方が早いと思う。図書館にも置いてある。

アルバート・ウェスカー(私は"隊長"って呼んでる)は私を知らないところへ連れて行って検査をした。その結果が自宅のパソコンに保存してあった。

私にはT-ウィルスの抗体がある。これは3年前に私は知ってたから特に驚かなかった。一緒に保存してあった"洋館事件における戦闘データ資料"には驚いたけど。でも隊長が私を騙していた事には驚きよりもショックの方が大きかった。最初はね。今はもう平気。

隊長は1度確かに死んだらしい。アークレイ山にあったと謂われる、洋館事件の洋館で"タイラント"というネメシスのベースになった生物兵器によって。暗くて冷たい水底に叩きつけられるかのようだったって言ってた。でも隊長は事前に打ち込んだらしい未知のウィルスで蘇った。そして私の前に現れた、——これは偶然だし隊長にとっても想定外だったみたいだけど。今はそのウィルスのおかげで傷の治りも早くて力も強くなったって言ってた。そりゃ、生き返るくらいだから強くなってて当然だよね。もう人間じゃないみたい。

隊長が私を捕まえたのは私を利用するためだと思う。私が勉強を頑張ってたのは、S.T.A.R.S.みたいな特殊部隊に入りたかったからなんだけど……まんまとハメられた。全部こうなるように仕向けてたのね。

 

この生活になって1番申し訳なく思っているのはカルロスだ。カルロスはお仕事でコツコツ貯めたお金を私の学費にあててくれていた。大学の入学金を払ってくれたのもカルロスで、今私が大学にいない事を思うと本当に申し訳なく思う。3年間私に兄のように接してくれて、いつも笑顔で。私にとってカルロスは本当の兄のような存在だ。絶対言わないけど。いつかちゃんと謝らなきゃならない。きっとたくさん怒られる。

 

隊長が何を考えているのか、すぐそばにいれば知れると思う。私が抵抗せずに彼と生活しているのは信頼を得るためだ。それがきっと1番真実に近付ける。

でも隊長は生活力が無さすぎて心配になる。今までどうやって生きてきたんだろう、この人。家政婦でも雇ってたのかな。

 

———

 

隊長と戦闘の訓練をしてクタクタになる日が続いてる。

ハンドガンの扱い方だけは褒められた。ミハイルの教えが良かった証拠ね。あの人が生きていてくれてたら良かったのに。私にすごく優しくしてくれて、守ってくれた。たった数十時間しか一緒にいなかったと思うんだけど、とても仲間思いで良い人だった。すごく慕われてたと思う。隊長もそうだったのかな。あの頃の話はあんまり聞かない。

 

最近は昼間の空いた時間に筋トレもしてる。おかげでやる事がいっぱい。どれかひとつをローテーションで休まないとやっていけないな。

パソコンの方はハッキングの仕方を教わってる。ハッキングなんて犯罪じゃないの?でも、おかげでたくさんの事を知れるようになった。

隊長が今働いているのはH.C.F.っていうアンブレラとはライバル関係にあった製薬会社。死を偽装したから隊長も入り込むのにさほど苦労はしなかったみたい。ここで何をするつもりなんだろう。製薬会社を選んだのは、やっぱり研究設備が揃ってるからなのかな。じゃあ、私が検査を受けたのもこの会社の施設だったのかな。

それともうひとつ、ジルとクリスがロシアの対バイオハザードテロ組織部隊に所属している事も分かった。やっぱりこの2人はちゃんと合流して、世の中のために頑張ってるんだ。私も頑張らないと。

 

でもなんでだろう。私やっぱりまだ隊長の事が好きなのかな。

私は隊長の事を調べなきゃならない。だけど、彼と生活していくうちに人間らしいところがたくさん分かるようになった。隊長は家事があんまり得意じゃないし、お仕事から帰ってきた時の顔は疲れも見える。私に対してパパみたいに振る舞う事だってある。私のパパはアランだけなのに。でもお小言を言う隊長の姿はパパそのものって感じ。

隊長といるとなんだかあったかくなる。匂いも好き。どうしてだろう。このままじゃ利用されるだけって分かってるのに。なんだか切ないな。苦しいな。

 

———

 

今日、隊長がお夕飯を作ろうとした。すぐに止めたけど。あと、何故かお土産にケーキを買ってきた。どうしちゃったんだろう。それが1番びっくりした。ケーキは美味しかった。

今日はもうひとつびっくりする事があった。エイダに会ったんだ。とっても素敵で美人なお姉さんなの。でもそのエイダがまさか隊長の部下だったんなんて。今日はびっくりする事ばっかりよ。

 

エイダから隊長の評判が悪い事を聞いた。半年間一緒に過ごしてきてお仕事の話は確かにあんまり聞かなかったけど、確かにこれは話したくなかったし知られたくなかっただろうな。隊長って結構プライド高いから。

隊長には何の強みもなくて、お土産もなかったから評判が悪かったみたい。私にはよく分からないけど、隊長って意外と向こう見ずなところもあるのかな。

 

私は隊長の評判が悪くても、大好きなんだけどな。私には何故か優しくしてくれる。もっとぞんざいでもおかしくないのに。それが狙いなのかもしれないけど、たまに本当に心から大切にしてもらってる気分になる。どうしてだろう。私もそんな隊長に何かしたくなる。

 

エイダは私に隊長のところからエイダのところに来るように誘ってきた。でもごめんなさい、私には隊長のところにいなきゃならない理由がある。別に隊長の事が好きだからって訳じゃ、……否定出来ないのが悔しいな。どんどん本来の目的を忘れてる気がする。隊長と一緒にいられるのがなんだか楽しい。どうして?

 

隊長の目的はアンブレラを潰す事。でも彼が何を思ってアンブレラを潰そうとしているのかは分からない。

という事は、ジルとクリスと目的自体は同じって事になる。隊長曰く、U.M.F.-013の所在が分かり次第そこに2人を向かわせて陽動の役割をさせ、裏側から侵入を試みる作戦らしい。なんか隊長らしいなって思う。

でも本当に何を考えているのか分からない。ああ見えて隙がなかなかないの。何か有効な手段はないのかな。

でもアンブレラを潰す事が目的なら、私も力を貸して悪い気はしない……って思う辺り、私もまだ甘いかもしれない。

 

———

 

U.M.F.-013の所在が分かった。場所はロシアにあるコーカサス研究所。

隊長と一緒に乗り込む準備をしてる。私も一緒に行ってアンブレラの機密情報を抜き出す。その前にジルとクリスの所属する組織にコーカサス研究所の情報を流さないと。

今日はやる事がたくさんある。頑張らないと。

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