同窓会が終わって一ヶ月以上が経ち、いつもの日々を送っていた。
仕事を事務職から言われ基本的には全て受け、出演しそしてアルバムを発売の準備期間に入りスタジオで収録が終わった帰り道にファミレスで食事をしている時だった。
「あっ!」
「えっ!」
和風ハンバーク定食を食べていると小野寺が偶然にも入ってきた
「よう。小野寺。」
「へ?あっ!うん。ひ、久しぶり。」
「お前なんでそんなに慌てているんだよ。」
と少し首を傾げてしまう。
「えっ?あっな、なんでもないよ。」
「何でもないって。……そうには見えないんだけど。」
少し慌てすぎな気がするんだけど。
「えっと一人?」
「今日アルバムの収録だったからな。スタッフは編集で忙しいから一人で飯食べてた。朝一取り直しゼロだったし。元々収録は今日は10曲とっただけだったしな。」
「へぇ〜アルバムでるんだ。」
「半年後にな。てか立ったままじゃなんだし座れば?つーかここ家近いのか?」
「うん。お店から近いから。自炊もするからいつもは。」
やっぱり女子はそういうの得意なのかな。
そんなことを考えていると
「……そういえば、一緒に相席いいかな?今日私一人だから。」
「ん?まぁいいけど。小野寺高校生の頃からやっぱり変わってきているよな。なんかいい方向に。」
「…えっ?」
「何というか、個人的だけど、自分の夢に向かっているって感じがする。小野寺って昔から消極的だったけど桐崎と一条の件から結構動いていただろ?元々一条と桐崎が偽物の恋人だったって知っていた一人だろうし。」
「……へ?」
「違うのか?小野寺の高校一年のころだったら恐らく恋人ができたら一条のこと諦めると思っていたし気づいている人は気づいていたぞ。はたから見たら林間学校あたりで桐崎は一条のことを。文化祭明けあたりで一条は桐崎のことを気にし始めたっぽいけど。修学旅行までは小野寺とくっつくってずっと思っていたし。」
ボクがそういうと小野寺は席でキョトンとしていた。
「……それって。」
「あ〜。あんまり聞きたくなかったか?」
「ううん。ちょっと聞いてみたいかな。弥柳くんから見て私たちってどうだったの?」
「……そうだな。まぁ色々と面倒臭い集団かな。恋愛関係あそこめちゃくちゃだったし。一条のこと人気って言っていただろ?でも一条が人気がないって言っていたけどかなり人気だったし。上、下級生で高校は6〜7。同学年ならお前ら除いても3〜4は一条のこと狙っていた人知っているし。」
すると小野寺はえっって呟く
でもあれ分かりやすかったからな
「まぁでも相手が悪いだろ。さすがに小野寺姉妹、桐崎、鶫、そして橘に羽先生だぞ。隠す気あるのかっていうくらいに分かりやすいのに。」
「……へ?鶫ちゃんと春も?」
「……へ?」
気づいてなかったのか?小野寺。
てかそれよりも羽先生が一条のこと好きだったのは知っているのか
「……てか注文したら。あくまで僕目線だけど一条って誰にでも優しいからな。……まぁ同時にそこが一条の欠点だろうけど。」
「どういうこと?」
「誰にでも優しいってことは特別な人間がいないってことだ。それだからこそ人を寄せ付ける。でも拒否はできない。小野寺も高校の時はあっただろうけどそれでも告白はかなり少なかっただろ?一条を狙っているって分かりきっていたこともあるけど、それでも小野寺は少し欲がなかったんだよ。いつもフォローして一歩引いていた。それが悪いこととはいえないしそっちの方がいい人もいるけど…一条は結構恋愛に関しては消極的だったからなぁ。積極性のある桐崎や橘が有利だっただろうな。」
そう考えると時間っていうアドバンテージを活かしきれなかった小野寺にも責任があったのかもなぁ
「いい青春だったんじゃないの?ちゃんと告白まで行けたんだろ?」
「う、うん。」
「高校生みたいに告白までいけるわけではないしな。大人になったら告白も考えてしまうし、僕たちの年齢だと結婚のことを考えないといけない。そう考えると学生のころに告白できただけマシだと思うぞ。」
自傷的に笑ってしまう。自分の悪い癖だ。
恋愛を既に達観しきっている自分がいる
「……まぁ。僕からみたら妥当だったかな。桐崎と一条が付き合ったっていうのは。近い距離を最大限攻め、地道に距離を詰めていった桐崎がすげぇだけ。小野寺に関しては恋愛に関してわがままになれなかった。欲がなさ過ぎたんだと思っているな。」
「……あはは。耳が痛いや。るりちゃんからもそう言われた。」
「まぁ。僕も人の事言えないけど。つーか思いっきりブーメランだけど。」
どの口がいうって言いたい。店員さんを呼び出しワインを頼む。
こういったことは酒に逃げた方が楽だ。
恋愛なんてもう2度とできる立場じゃない
既にここにきて数十分は経過しており、すでに和風ハンバーグは冷えている
なので適当に腹にたまるおつまみを追加注文をとると小野寺も同じくハンバーグを頼む。
「……まぁひとつだけ言えるのは僕にとってはそんな関係も羨ましいって思うかな。自分の周りでは告白したら人間関係ごちゃごちゃになった人も多くいるし。今でも関係を保っているのは本当にその関係がいい思い出になっているからだろ?なんか桐崎はゴタゴタしてたらしいけど……それでも今では仲がいい親友みたいな関係だろ。いいところに落ち着いたんじゃないのか?」
「そうだね。そういう弥柳くんはどうなの?」
「僕は恋愛は捨ててる。正直芸能界入った時点でほぼほぼ諦めたって感じかなぁ。正直合わないんだよ。芸能界。華やか過ぎていて。僕はまだ新人だし、特に最近は劇団員のお仕事ももらえるようになったから。恋愛するような暇もないしな。」
「忙しい中ごめん!!」
「いや。こうやって昔の友達と話すの楽しいからいいから。芸能界の話はできないし。こういう飲み会ってどうやっても今の仕事になる場合が多いし。こういう恋バナとか仕事の時にするってことが多いから。」
華やかな芸能界に迷い込み未だに足掻きながら仕事を受けている
その現実に未だギャップを覚えており、慣れてはいない。
「……そういえば弥柳くん。明日って空いてないかな?」
「明日?空いているけど。」
「へ?空いているの?」
驚いたように小野寺は僕を見る
「空いているな。……つーかこういう音楽スタジオで収録した後は仕事入れないようにしている。喉休めるときは休めないと。」
「あのさ、春がくれたんだけど水族館一緒にいかないかな?」
「水族館?」
「うん。商店街の懸賞で当たったんだって。昔からよくいく水族館なんだけど。」
「……」
少し考える。明日はゆっくり寝ようって思っていたんだけど
せっかくだからいっか。
「いいぞ。どこ集合?」
「えっ?」
「いや。暇だし。明日平日だから空いていると思うからな。小野寺は?」
「私も今は一条くんと千棘ちゃんのウエディングケーキを作っているかな。千棘ちゃん世界的に有名だから宣伝にもなるし。」
「世間的に注目されているわけか。」
と苦笑してしまう。一躍小野寺も有名になるチャンスってことなのかな。
「そっちも大丈夫?スキャンダルとか。」
「僕のところはゆるいから。もしバレても友達と遊びにいったってそう説明すればいいし。事務所は恋愛自由なのもあるけど。」
「そっか。それなら9時にサツキ町駅集合でどうかな?」
「了解。ついでに連絡先交換しておこうぜ。待ち合わせ場所ですれ違ったら大変だし」
「うんそうだね。」
そう答えるとお互いのスマホでアドレスとSNSアプリの交換をする
この時は思わなかったんだ
既に運命の歯車は動き始めていたことを