ペルソナ∞ 作:ジャイル
一時間後、ドイツ郊外の廃工場―
「いっちゃん…」
「時間通り来ましたね、篠ノ之束。待っていましたよ」
「……もう束お姉ちゃんで呼んでくれないんだね」
「何故、あなたをそんな愛称で呼ばないといけないのですか?」
時間通りに廃工場に来た私を待っていたのはいっちゃん(ベラノ)だった。その足元はおびただしい程赤黒く染まっていて、嫌でもあの事件を思い出させる…
「本当にごめんね……私があの時、間に合っていれば……」
「『間に合っていれば』?何を言っているのですか、あなたは確実に『間に合っていた』じゃありませんか」
「………え?」
「誘拐される前から織斑一夏の身を案じていたあなたは宿泊先のホテルから会場までのカメラをハッキングして監視していた」
「そ、そんな訳…」
「そして万が一に備え自分自身もドイツ郊外に潜伏して救助できるようにスタンバイしていた」
「ち、違…」
「でもあなたは行かなかった。瀕死である友人の妹よりも彼女を殺した機体に目を、心を奪われたから」
「そんな事ない…」
思い返されていく二年前のあの日、いっちゃんの言う通り私はいっちゃんを守るために凡人共が使っていたカメラを利用して危害が及ばないようにチェックしていた。ちーちゃん一強だった当時、第二回のモンドグロッソで連覇するのは誰もが予想できていた。だからこそそれを面白く思わない糞共が優勝を阻止しようとしていた。でもちーちゃん相手に正面からぶつかっても勝算がある訳無い。そいつらもそこまで頭は回ってたみたいで、いつからかいっちゃんを影で狙うようになっていた。いっちゃんを人質にとればさすがのちーちゃんも要求を呑むだろう、と。
そんなある時、いっちゃんを映していた監視カメラが突然壊された。すぐに調べると物理的な破壊みたいでこっちではどうしようもなかった。すぐに会場付近のカメラを全部確認した私がようやく見つけたころには、既にここに連れて来られていた。震えていたいっちゃんを解放するために私はすぐに向かった、はずだ。
「では、この音声を聞いてもらいましょう」
そうして流されたのは私が見たことも無いISにテンションを上げている声だった。たしかにあの時、現場で第二移行した機体が気になったのは事実。でも―
「…こんな事、言った覚えなんてないよ…いっちゃんが作ったダミーでしょ…?」
「そんなつまらないもの、作る理由がありません」
投げ捨てられたレコーダーを私お手製の機械で調べた……結果は―
「当人に悪気があろうと無かろうと、覚えていないものですよ」
―本物だった。
「じゃあ…本当に……わた、しは…」
「ええ。ようやく自覚したんですね。あなたが彼女を見殺しにしたんです」
良かったですね、あなたもこれで人殺しの仲間入りですよ。
私が…殺した…?