にじさんじ妄想バトルトーナメントAブロック決勝 ~英雄再起~   作:桜日紅葉雪

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Pixiv漫画部分+α


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にじさんじ妄想バトルトーナメントAブロック ~決勝戦~

 

 

敬愛する師を貫いた。

 

「さあ!様々なドラマの末ついに訪れましたにじさんじ妄想バトルトーナメントAブロック決勝戦!」

 

誇り高き吸血鬼を斬った。

 

「並みいる強豪を打倒し、決勝の場に立つはこの二人!」

 

師を惑わした敵もこの手で討った。

 

「その肩書に偽りなしか!圧倒的剣技で銃も魔法も怪異をも切り伏せる!“英雄”!エクスッ・アルビオォォ!!」

 

誰も彼も、師を惑わした男でさえ、守るべき者の為に、守るべき矜持の為に戦い抜いていた。

じゃあ、この僕は…?

 

「一度でダメなら二度三度。不死という絶対的アドバンテージを余すことなく生かし、膨大なトライ&エラーを繰り返し今だ成長を続ける人間(バケモノ)!鈴原るるぅ!!」

 

守りたかった人はこの手で殺した。剣を振るう理由(かたきうち)無くした(はたした)

何もない。もはやただの一つも僕には残っていない。

 

「ここに新たな英雄譚が刻まれるか!化け物が英雄を呑むか!」

 

ああ、だったらそうか。

 

「Aブロック決勝戦!試合…開始ぃ!!」

 

僕にとってもう、この戦いもこの世界も僕自身だって、等しくどうでもいい。

 

 

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「初めまして。鈴原るるですっ!よろしくお願いしますっ!」

 

「……」

 

言葉と同時に対戦相手が踏み込んだ。全身の力をばねに蹴りだされた体は最短距離で僕へと跳ね飛ばす。

左側面へと振りかぶられる鉈。腰から肩へ、肩から肘へ、肘から鉈へ。突進の勢いも付いた全身を使っての切り上げを半ば無意識のうちに引き抜いた剣で打ち払う。

聞きなれた、金属同士の打ち合う音。手に感じた斬撃の重さは前の世界で力自慢の大男と切り結んだ際と遜色ない。

容易く鉈を弾かれた対戦相手の顔に喜色が浮かんだ。

反撃に繰り出した斬撃は身を翻す事で避けられ、その勢いのまま回転しつつの回し蹴りが飛んでくる。

半歩分上体を仰け反らせて回避。体を戻しつつさらに踏み込み切り上げの一閃。

 

「あはっ」

 

鉈で受けられ、同時に伸びてきた足を手甲で弾く。

踏み込み切り上げ

避けられ打ち払い

斬りかかり

受け止め

斬る

打。

打ち合うたびに蹴撃はより速く、斬撃はより鋭くなっていく。

 

「あははっ」

 

幾度となく繰り返される応酬は回を重ねるごとに激しくなり続け、間断なく響き続ける音は機関銃のように鳴りやまない。

 

「あはははは!!」

 

ついに抑えきれなくなったのか、対戦相手の哄笑が響く。その顔は声音にたがわず歓喜に彩られていた。

切り結ぶたびに空気が悲鳴を上げ、腕が軋む。

どうでもいい。

お互いに致命傷のみを避け、細かい傷を省みないため傷がどんどんと増えていく。

それすらも、どうでもいい。

 

「すごい!すごいです!私とここまで遊べる人がいるなんて!」

 

言葉と同時に放たれた蹴りを剣で受け止めた。

竜の腕もかくやと言う重すぎる一撃。正面から受け止め切れば剣が折れる可能性すらある。

勢いに逆らわず吹き飛ばされた。壁に衝突し、砂煙でお互いの姿が隠れる。

全身を貫く衝撃は、先程受け止めた蹴りと比べれば感じないも同然だ。

一瞬の油断で死ぬような死闘の最中、ふと疑問が浮かぶ。

 

(なんで僕はまだ戦っているんだろう。この戦いに意味なんてないのに)

 

身体能力のみで獣のように戦う対戦相手の動きは視覚情報に頼らずとも手に取るようにわかる。

思考とは関係なく、戦いに特化した体は相手を殺すためにすでに剣を構えていた。

 

(まあ、戦いの中で死んで地獄に落ちるのも"英雄"らしいか)

 

目の前の化け物には勝てない。このまま戦い続ければ、僕は間違いなく殺される。

"英雄"としての勘はその正解を過たず弾き出していた。

…ただ、順番が回ってきただけだと納得だけがあった。

砂煙の奥から、声が響く。

 

「まだまだまだまだ!鈴原と遊んでください!」

 

剣を振りぬいた。刃の届く範囲の外を切る業、所謂「飛ぶ斬撃」が砂埃を切り裂き奔り抜ける。

肉を切り裂く感覚。手ごたえは確かにあった。しかし(・・・)

 

「…やっぱり」

 

どしゃっ、と腕が地面に落ちた。確殺の意図をもって放った斬撃はしかし、相手の左腕を落とすまでにいなされた。

剣圧に吹き散らされて晴れた視界の中、対戦相手と向き合う。

相手の戦意は衰えるどころか、さらにプレッシャーを増して燃え猛っていた。

 

「すごいですねあなた!お名前を聞いてもいいですか?」

 

「…首から上をもらうつもりだったんですがね」

 

お互いの姿が砂埃で隠れていた状態で、音すら置き去りにする剣閃を対戦相手は見てから避ける(・・・・・・・)事に成功していた。

対戦相手は切り落とされた切断面同士を何度か当ててぐちょぐちょとかき回しながら「くっつかないかなー」と首をかしげていたが、数度繰り返して飽きたのか「これ邪魔なんで持っててくださーい」と観客席に腕を放り投げた。

 

「…どうやらお名前は秘密みたいなので代わりに一つ教えてください…どうして本気を出してくれないんですか?」

 

「……」

 

「あなたが本気を出してくれないと、私も本気を出せません。だってそうですよね?全力の勝負で勝たなきゃ意味がないんです」

 

残った腕をくるくると回しながら、何かを思い出すように目を閉じる。

 

「見せてくださいよ!叶さんとの一戦で使っていた黒い雷(・・・)とか!」

 

言葉とともに見開かれた目には焦がれるような熱と、深さを増し続けるドロリとした狂気があった。

 

(雷、か)

 

少しだけ胸がざわついた。少し前に激情と共に繰った雷を思い出す。幾度となく目に焼き付けた鮮やかな輝く雷光と正反対の、黒く濁った色のそれ。

けれど、それでこそ僕だと思う。それに、未練は確かにあの時断ち切った。まして郷愁など抱く権利は僕にはない。

 

「……アレにはもう役目はありません。全てのカタは付いた」

 

復讐の雷炎に身を焦がして仇を討ち果たした。残ったのは僕という燃え滓だけ。

…少しだけ、聞いてみたくなった。

 

「もうこの勝負も、あなたの命も、こんな世界で生きていく意味だってどうでもいい。あなたは違うんですか?鈴原さん(・・・・)

 

対戦相手…鈴原さんの目を見据えて問いかける。

今まで戦ってきた誰とも違い、誰かを守りたいわけでもなく、誇るべき矜持も持たず、ただ戦いに臨む彼女は、なにをもってそこに立っているのかと。

一瞬きょとんとした彼女はしばらく動きを止めると、にこりと笑って言った。

 

「はい!私はそうは思いません」

 

回顧するように目を閉じると腕を広げ鷹揚な動作で語り上げる。だってそうでしょ?と。

 

「今日という日はこんなに素晴らしい!各地から集った強者が命さえ捨てる覚悟でここに立つんです。誰も彼も今日の為に明日を賭けてる、今を生きている!だから私は―」

 

ジャカッと、袖に仕込んでいた鉈を右手に構え、僕に突きつける。

空間が軋むほどの狂気と気迫。

 

「そのすべてに『勝利』したい。誰かが立ち上がってくれるなら何度でも私は立ち上がります。何度でも何度でも何度でも何度でも!壊すか壊されるまで終わりませんし終わらせない。それだけ(・・・・)が私の幸せ――」

「それだけが鈴原るるの、「生きる意味」ですから!」

 

一瞬だけ、狂気の消えた綺麗なほほえみを浮かべて言い切る彼女は偽りなど一切うかがえないほど幸せそうで…

 

「ハハッ、仮にも女の子かと思ったら…まるで魔王…いや、戦鬼ですね」

 

視線を切る。不思議とこの瞬間に攻撃されるとは欠片も思わなかった。

彼女が笑顔で言い切った言葉がリフレインする。

 

(「生きる意味」、か)

 

ふと、いつかの記憶がフラッシュバックした。彼女(・・)と過ごしていた何気ない一日のこと。

 

 

 

………

……

 

 

―ねえ、せんぱい

 

「エビせんぱいってさ、どうしてまだ英雄やってるの?」

 

「いきなりなんですか師匠…イヤミですかそれ。え?イヤミですよねそれ」

 

「ちげーよ!嫌味とかじゃなくて…」

「だってもう僕達魔王倒しちゃったじゃんか。なのにせんぱいは未だにあちこち飛び回って誰かを救ってる。世界平和とか好きなタイプでもなかろーにどうしてさ?」

 

夜中に川辺で二人並んで釣りをしていた時のこと。

僕より頭一つ分ほど小さな師匠に聞かれた何気ない事。

 

「……好きですよ、世界平和」

「もちろん最初からそんなことを思っていたわけじゃないですよ?魔王討伐だってただの報酬金目当てだったし、故郷が滅ぼされて復讐の為だけに剣を握ったこともあります。モンスターを経験値としてしか見てなかったこともあった。でも―」

「そんな旅路でも楽しかったんです。飯はうまいし、夜空は綺麗だし、大切な人たちも出来た」

 

…無くしたと思っていた。でも、今でもあの時と同じモノを思い出せる。焚火のそばで騒ぎながら食べた飯。旅の途中で見上げた星空。そして、どの思い出の中でも隣で笑っていた大切な人(師匠)

 

「そんな世界をこの手で守り抜くこと。似合わないけど―」

 

 

 

「それが今の僕の「生きる意味」なんです」

 

 

―平和が崩れる時なんて、一瞬ですから

 

―…そっか

 

―……まあ、救った村からは報酬をふんだくるんですけどね!

 

―お前なー!!

 

 

……

………

 

知らず知らずのうちに、頬が綻んでいた。

そうだ。確かに僕は語ったんだ。ほかでもない師匠に、僕の「生きる意味」を

 

「……あぁ、そうだよな」

 

英雄(ボク)が生きる意味(りゆう)はまだ其処にある、そんなこと、わかりきってたことだろう。

 

「……こんなざまじゃまた師匠が怒るだろうな」

 

思い出を胸に温かさが湧き出してきた。

希薄だった意思が鮮明になり、灰となったはずの心に火が灯る。

フワッと、懐かしい香りがした気がした。

 

『「こんなんじゃ師匠に怒られる」今頃そんなことを思ってるんでしょ?』

 

「っ!?」

 

『まったく世話が焼けるよ、覚えの悪い「弟子」を持つと』

 

背中に感じた温かさ。幻想だとはわかっている。だけれど、優しく、そして何よりも力強く僕の背中を押した。

 

「…ええ、あなたもそう思いますよね、「師匠」――」

 

じんわりと胸から全身へ「何か」が広がっていくのを感じる。

そっと胸に手を当てると、師匠の気配が少しだけ強くなった気がした。

立ち上がらなければ(・・・・・・・・)

他の何者でもなく、師匠の前でだけは英雄()負けられない(負けたくない)

 

『僕の魔力残滓(メッセージ)はすぐに途絶える。だからその前にえびせんぱいへ最後の課題を出します』

 

―― …ザッb… ザザッ9

―【…ザザッ …ザッ…… 

― ザッザッ……・ザザE…ザッ

 

ノイズが走るような音とともに、胸の暖かさが全身に広がっていく。背中の温もりが薄れていくのを感じながら、僕はいつかの様に手を掲げた。

 

『――勝てよ、バカ弟子。魔法(とっておき)は君に託した』

 

掲げた手を叩かれる感触。心の炉心の火が燃え盛った。

そうだ、今、確かに僕は託された。

ノイズが晴れる。

 

―   Ex=Albio Lv:99

―【 継 承 ス キ ル 】

― 魔 導 雷 ・ E X

 

 

体から力が迸った。僕が見惚れ、憧れた黄金色の雷光が天を貫く。

 

「!?」

 

「鈴原さん」

 

目を見開き驚く彼女に問いかける。

 

「あなたをこのまま勝たせたなら、間違いなく大会の出場者は皆殺しだ。くわえて、勝利(さつりく)の余波は全世界へと広がりかねない。違いますか?」

 

(英雄)の前に立ちふさがる者(・・・・・・・)か?と。

 

「それは…」

 

彼女の口が笑みの形にゆがんだ。

 

「勿論です!鈴原はいずれ世界にだって勝ちたい!」

 

鳴りを潜めていた狂気と重圧が一気に噴き出してきた。けれど、僕はもうさっきまでの僕じゃあない。

フッと口角が上がるのを感じた。

 

「…そうですか。それが聞けて良かった」

 

迷いを、後悔を、僕を絡めとっていた闇のすべてを師匠が押し流してくれた。ならばもう、恐れるものなど何もない。

 

「僕の名前を知りたがっていましたよね。なら自己紹介でもしておきましょうか」

 

裂帛の気合を込めて剣を突きつける。

さあ、再び似合いもしない英雄譚を始めよう。

あの人が笑って語ってくれるような、そんな英雄譚を!

 

「『エクス・アルビオ』電脳世界の「英雄」として、「今」を生きる者の一人として、ここであなたに『勝つ』男だ!」

 

「どうもはじめまして(・・・・・)、エクス・アルビオさん。そのお名前、私が地獄の果てまで連れていきましょう。何度『負け』ても絶対に諦めませんから!」

 

「行くぞ――」

「行きます――」

 

「「勝負!!」」

 

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------

 

 

 

 

全力で戦った。それでも僕は勝てなかった。

いや、そもそも勝つことなんて考えてなかった。ただ激情に支配され、あるはずもないことを信じて力を振るっただけだった。

これはその報い。僕の胸を刺し貫いた剣にふれて、らしくもなく涙を流す()を見上げた。

体から力が抜けていく。僕はもうすぐ、死んでしまうんだろう。だから、最後に僕を殺した君に願う。

この戦いに終止符をと。僕はもう消えてしまうけれど、僕の生きた証(魔法)が、どうか君の力になりますように、と。

絶望に染まっていく君の顔を見ながら、僕の意識は闇に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

唐突に意識が覚醒する。そこは見慣れた自分の部屋の中。

咄嗟に貫かれたはずの胸を見下ろしたが、傷一つ付いてはいない。

呆然とあたりを見渡し、ふと、布団の上に何かが落ちているのに気が付いた。

いつだったか、記念だと貰った不思議な人形。銘は確か、「甲子園の不死のトーテム(・・・・・・)」。

まるで身代わりとなったかのように、胸のあたりから砕けてしまっている。

 

えびせんぱい(・・・・・・)…」

 

行かなければ。

あの試合の時とは違う、暖かな激情が体を満たす。

ローブを羽織る時間さえ惜しんで、魔導書だけをひっつかむ。

ドアを開けて、曇天のもとへと躍り出た。

 

 

 

今は見えずとも、晴れぬ空などない。その向こうには日輪が確かに輝いている。

英雄は失ってなどいない。大団円への最後のカギが今、走り始めた。

 

 




なんか、あつらえたように重要アイテム渡し合ってんだよなぁ、エビマル
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