にじさんじ妄想バトルトーナメントAブロック決勝 ~英雄再起~   作:桜日紅葉雪

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最後まで乗っけておいてなんだけど、各キャラの解釈違いとかあったら我慢せずに言おうな!
それで自分の解釈で一本作品作ろう!俺見に行くから!わかりみが深いとか腕汲んで深くうなずくから!


(3/3)

 

 

 

 

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にじさんじ妄想バトルトーナメントAブロック決勝。

試合は佳境を迎えていた。

二転三転する激闘の最中、

新たなる剣を手に

無尽の生命を湯水のごとく消費し

 

幾度目ともしれぬ剣戟の音色が会場に響き渡っていた。

 

 

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右からの薙ぎ払いを叩き落とし地面すれすれで跳ね上がるようなV字斬り。右に抜けるように避けられ腰への蹴り。左に反転して足を切り落とそうと剣を振れば足が急制動で止まり震脚のような踏み込みへと変化する。その勢いのままに振り切られた鉈と剣がぶつかり盛大な音を立て、お互いの距離が弾かれるように開く。地面に足が着いた瞬間眼前に鈴原さんがいた。弾かれる最中に脚力にものを言わせて無理やり着地し、飛び込んできたのだろう。勢いのままさらに弾かれる。分かっていたことだ。異世界で魔王とすら渡り合えたこの体でさえ、単純スペックにおいては鈴原さんに数段劣っている。

 

魔導雷・EX(EX・Tonitrus)!」

 

穿つように放った一条の雷が追撃をしようと向かってきていた鈴原さんを弾き飛ばす。

着地して体制を整えて前傾姿勢。剣を体の後ろまで引き絞り、一閃。

飛ぶ斬撃が手ごたえと共に不意打ち気味に鈴原さんの右腕を斬り飛ばした。鈴原さんは怯みもせずに剣を振り切った姿勢の僕に足元の石を全力で蹴り上げる。

防御は間に合わない。衝撃に備えて呼吸を止めて身を固める。

豪速で飛んできた石が鎧の上から僕の胸を撃ち抜いた。

 

「かはっ」

 

「あははっ!」

 

切り落とされた右腕から鉈を取ると、鈴原さんはためらうことなく自らの首を切り落とす。

先程の焼き増し。彼女は自らの頭を踏み砕き、…一瞬の後何事もなかったかのように右手に鉈を持ち飛び込んできた。

強い衝撃に吐き出された息を何とか吸い込みこちらからも前に出る。

左、下、上右、左左足右上下右左足右上…

途切れない連撃の最中、鈴原さんの左手が閃く。その手に握られた、二本目の鉈(・・・・・)が鈍く輝いた。

 

「なっ、」

 

先程の鉈を拾う動作も今まで片手で鉈を握っていたのも全部ブラフだった!?

咄嗟にそらした上半身を浅くなぞるように刃が通り抜け、鎧に傷をつけながら前髪を数本切り飛ばしていった。流れるような回し蹴り。防御もままならないまま鳩尾に入れられる。肺の中の空気が吐き出され呼吸が止まる。

踏ん張らずに蹴り飛ばされたお陰で鎧ごと足が突き刺さる事態は避けられたものの、あまりの衝撃に一瞬意識が飛んだ。呼吸の仕方が分からない。

不味い、と暗転しかける意識の中で舌打ちと共に思考する。

考えてみればこれまでも左手でも平然と鉈を操っていた。これまで一本しか使っていないから常に一本しか使わないなどと甘えた考えだ。だが悔いるには遅すぎる。

このままでは意識が飛ぶ。たとえ数秒であろうとも、鈴原さん相手には致命的であることは確実だ。だけど、この状況でどうすればそれを回避できる?

空転する思考の中、バチリと、握りしめていたハエたたきから衝撃が走った。

次の瞬間、突き刺すような痛みが手のひらを打ち据える。しっかりしろと入れられた喝に意識が急速に回復した。

呼吸の仕方を思い出し、思いっきり息を吸い込むと全身に力みが戻ってくる。

ああ、ずいぶん強烈な目覚ましだ。師匠が何か仕込んでいたのかハエたたきがふがいない僕にあきれたのか。自身が纏う雷で担い手である僕を感電させてくるなど…全く持って頼りがいがある。

ハエたたきを思いっきりスタジアムの床に突き出した。切っ先が10センチほどもスタジアムの床に突き刺さり、柄を握りしめた腕が引きちぎれるかと思うような急制動がかかる。吹き飛ばされた慣性はそのまま遠心力へと形を変えた。

ハエたたきを中心に振り回された体がコンパスの様に半回転。追撃の為前傾姿勢で突進していた鈴原さんを横合いから全力で蹴り飛ばした。

壁にぶつかったスーパーボールの様に吹き飛ぶ鈴原さん。今ので一度死んだのか、その体からは力が抜けきっているようだ。

直感が走る。今だ、振りぬけ、と。

 

「魔、」

 

心臓から腕へ、腕から剣へ、這うように雷が迸る。

 

「導っ」

 

ハエたたきの纏う雷は一瞬の後に一回り大きな輝く刀身へと形成される。

 

「雷!Eィィィ」

 

力なく吹き飛んでいた鈴原さんが空中で再生を終わらせてこちらを睨目つける。

腕に鉈を構えようとしているが、僕の方が早い。

 

「エエエェックスッ!」

 

咆哮と共に振り下ろした剣から砲撃の様に雷が迸り、防御しようとしている鈴原さんごとスタジアムの壁までの空間を呑み込んだ。

間違いなく渾身の一撃であり、会心の一撃。轟音と共にスタジアムの壁が崩れていく。

だが、それでも。いや、正直に言うならやっぱりというのが正確だ。

 

「あはははは!!」

 

試合開始直後と変わらない、歓喜に彩られた哄笑が響く。

砕かれ瓦礫の山となっていたスタジアムの壁が吹き飛んだ。瓦礫の下から鈴原さんが現れる。

 

「本当に、本当にびっくりしました。私さっき、本当に久しぶりに気絶してました!」

「何度でも誰にだって絶対に勝つまで負けない。そう思ってたのにっ!」

「すごいですねっ!素敵ですねっ!私が超えないといけない壁は、倒さないといけないあなたは、こんなにも高く強い!」

 

どこまでも楽しそうに笑う鈴原さんは、今までとは違い完全に再生はしておらず服はところどころ焼け焦げほつれ、顔や足には小さな傷がいくつも残っていた。ただ、腕と鉈だけは完全に再生しており、是が非でも僕を倒そうとしている事が伝わってきた。

だらりと腕をたらし今にも崩れ落ちそうな歩調で歩きながら、目だけがギラギラと輝いていた。

 

「怪我が痛いです、足が重いです、視界は時々ぼやけるし力があんまり入りません」

「いいですね、最高の気分です。控えめに言って絶好調です」

「私考えてたんです。貴方が最初に立ち上がったあの時から」

「なんで貴方がそんなに強いのか、なんで私は貴方をこんなにも超えたいと思っているのか」

 

切りかかろうとして、一瞬で諦めた。確かに僕は鈴原さんを追い詰めた。

渾身の雷は確かに鈴原さんの喉元まで届き得た。

だが、だからこそ、本当に起こしてはいけなかった鈴原さんの中に眠る狂気を完全に目覚めさせてしまった。

瀕死でふらふらと歩む彼女に対して、ただ単純な事実として「いま踏み込めば死ぬ」という事実だけを理解した。

 

「――分かった気がします」

「誰も彼もが"自ら"の明日を賭けてる、"自ら"を捨てる覚悟を決めてる」

 

深淵の底だ。今僕が相対しているのは"鈴原るる"という存在が抱く底の底。

彼女の象徴たる"執念"と彼女を構成する"存在理由(レゾンデートル)"が絡み合う、文字通り彼女の根源といえるモノ。

 

「貴方が、貴方だけが、純粋に"誰か"の明日を守っている、"誰か"の為に自分を"捨てない"覚悟を決めている!」

「エクスさんは知っていますか?誰かの明日を守る存在を何て言うか。自分以外の誰かの為に戦い続ける存在を何て言うか」

「私は知っています。私は理解っています。それこそが私が超えるべき存在。それこそが私の宿敵。認めます、称えます、貴方が、貴方こそがっ!」

 

ハエたたき(聖剣)を握りしめる。理解していたつもりだったが、本当につもりでしかなかったようだ。彼女は今まで戦ってきた誰よりも"化け物"だ。

 

英雄(ヒーロー)なのだとっ!」

 

鈴原さんの宣告にも聞こえる断言と共に、とんでもない重圧が圧しかかる。

これまでと一線を隔すそれに膝さえつきかける。

絶望の具現のようなそれを前に、けれど言わずにはいられなかった。

構えていた剣を下ろし、睨みつける。

 

「確かに僕は英雄になりました。剣を振るい敵を倒し、人を救い…」

「けど、僕は"誰かの為"になんか戦ってません」

 

一番肝心なところで勘違いされている。別に構わないはずなのに、それでも口から零れる言葉は止まらない。

僕を奮い立たせた、僕を僕たらしめた思い出を静かに、しかしはっきりと鈴原さんにぶつける。

 

「最初は確かに、師匠から託された思いを糧に英雄()の使命だと思ってあなたと戦っていました」

「でも、直ぐにやっぱり違うなって思いました。そんな使命を僕は持ったことはない。当たり前です。僕が"英雄"になった理由だって最初は報奨金目当てで、道中だって敵が憎かったりお金が欲しかったりただの経験値と思ったり…」

「結果として僕は英雄になったのかもしれないけれど、僕の両肩に"誰か"なんて不確かなもの乗せれるわけないんですよ」

「それは、今だって変わりません」

 

感じるプレッシャーはそのままに、鈴原さんの歩みが止まる。

面白がるように、試すように、好奇へと変わった視線が僕を射抜く。

 

「貴方は英雄としてそこに立っているわけでは無い。と」

「ああ、そういえば私は答えたのにエクスさんの答えは聞かせて貰えていませんでした。教えてくださいよ、あなたが今ここで戦う理由を」

 

希望の旗印である"英雄"としてではないのなら、いま僕はなんのために戦っているのかと。

手に持つ聖剣へと視線を向けて未だ曇天の空へと掲げてみる。悩むかなと思ったけれど、さらりと答えは見つかった。一度は見失い、だからこそ分かった僕の"戦う理由"。

 

「そうですね、答えは簡単です。守りたいんですよ、世界ってやつを。その世界で生きる、たった一人の女の子の笑顔を」

 

聖剣は刀身を走るルーンによって淡い銀色に輝いている。

それは守りたいと思った少女の髪の色のようで、そう考えただけで気力が少し戻った気がした。

空へと掲げていた聖剣をゆっくりと構えなおす。

 

「昔も今も、立派な理由を掲げて戦うなんてこと僕にはできません。旨い飯の為、綺麗な物を見る為、そしてそんな物で一緒に笑いあうため。どこの誰もが抱く当たり前の理由の為に、僕は戦っているんです」

 

不特定多数の見知らぬだれか、そんなものの為に戦ってなどいない。戦えなどしない。

僕は僕のエゴの為、ここに立っているだけだ。

 

「そうですか…うん、やっぱりエクスさんは"英雄"ですね」

 

そんな僕のエゴを、鈴原さんは笑って受け入れた。その上でやはりお前は"英雄"なのだと歓喜している。

何故か、他の誰に言われた時よりも僕の心にそれは響いた。

 

「今あなたが掲げた理由は確かに普遍的なものです。きっと私やエクスさんが戦ってきた誰もがそんな思いを抱いていたのでしょう」

「だけどあなたは、あなただけが、その理由の為だけに世界を守ると言い放った。自分の周りだけでなく取り巻く世界すらも背負うと答えて見せた」

「とても嬉しいですよ、エクスさん。貴方は間違いなく化け物()の望んだ英雄(宿敵)です!」

 

語る言葉は尽き、二本の鉈が握られた。聖剣を小さく後ろに振りかぶった。

直感する。きっとそれは鈴原さんも同じだろう。

次の交錯で決着が着く。それが1合の下に決まるのか幾千幾万の切り結びの末なのかは分からない。

お互いの思考が一致し、示し合わせたかのようなほんの一瞬の静寂が訪れた。

カラリ、と鈴原さんの背後で瓦礫が僅かに音を立てて崩れる。

その音が鼓膜を揺らす刹那、視界がぶれた。

雷と共に踏み込んだ一歩は音さえ置き去りに、瞬間移動の如く僕の体を前へと弾き飛ばす。

体の事など度外視の、今の僕にできる最速の踏み込み。

スタジアムの床を接地状態から踏み砕き、轟音と共にハエたたきを振りぬいた。

鉈とハエたたきがぶつかり合い火花を散らす。発生した衝撃に目が痛む。邪魔だ、隠すつもりの欠片もない殺気がその鉈の軌跡をこれでもかと教えてくれている。目を閉じろ。

耳に入る音も同様だ。交差の中聞こえるのは刃同士のぶつかり合った音、足音、哄笑。不要だ。耳を閉ざせ。

音も消えた暗闇の中限界を超えた速度に軋む躰を無視して、幾度となく積み重ねた戦いの経験と研ぎ澄まされた勘だけを頼りに剣を振るい足を動かす。閉ざされた瞼の裏に、金色に光る何かが浮かび上がっていた。。

 

 

 

 

 

 

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「すげぇ…」

 

僕の隣で、濃い化粧をしたとさかのような髪型の女性…?服装からしてたぶん女性がそう呟いた。

思わず漏れたといった調子のそれは響き渡る轟音にすぐにかき消された。

確かに、と心の中で頷く。えびせんぱいのハエたたきを開放して以降、いやきっと僕がここに来る前からなのだろう。

スタジアムの上で行われる死闘は激化の一途を辿っていた。だが、いま繰り広げられている光景は"闘"なんてそんな範疇にはなかった。

地上を走る稲妻だ。黄金と漆黒のそれがお互いを喰らいあうかのように絡み合う。そしてそれは空中を走る稲妻と同じく、軌跡でしかない。

ここにいる誰もが、中継で観戦しているであろう観客の全員が、そのこと如くが目で追うことすら(・・・・・・・・)叶わなかった(・・・・・・)

きっと次にえびせんぱいを見るときはどちらかが倒れたときだろう。脳裏に一瞬血だまりに沈むえび先輩の姿が思い浮かび、ぎゅっと手のひらを握りこむ。

 

(「任せてください!」)

 

込められていた力がふっと抜けた。僕の叫んだ「勝て」という言葉に返ってきた返事がよみがえる。

死にかけてたのに、諦めかけていたのに、笑って応えた自慢の弟子(先輩)

僕には見守ることしかできない。だけどそれでも

 

「約束は守れよ、バカ弟子…」

 

不安は消えていた。きっと今まで通り、全部が終わったら何事も無かったかのようにあの気の抜けた笑顔を向けてくれるのだ。

その背に届けと小さくつぶやいた言葉は響き続ける轟音に溶けて消えた。聞こえていないとは思わなかった。

 

 

 

 

…ところで、隣の女性(?)はなんで生腕を持っているのだろう。ときどきぴくぴく動いて気持ち悪いんだけど。

 

 

 

 

 

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両腕から繰り出される双鉈の乱舞を、聖剣で叩き落す。

広いはずのスタジアムを駆け巡り刃を交わす。お互いにかわす言葉は無くなっていた。

眼前の宿敵を討ち滅ぼす為に裂帛の声を発する。

過去のどんな戦いよりも速く鋭く強く。ハエたたきを振るう腕が、駆け回る足が、あまりの負荷に悲鳴を上げる。遠からず限界は訪れるのだろう。

しかし闇を切り裂かんと雷光の如く切りかかれど、刃で作られた嵐が壁となって立ちふさがる。限界を迎える前にこの嵐を抜け鈴原さんの不死性を超えなければ勝機は無い。幾度となく挑み、尽くをはねのけられた壁を、だ。

じりじりと時間だけが経過していく。振るう剣は未だに衰えるどころか速度を増しているが、それでも時間切れが少しずつ見え始めている。

決意が焦りに変わろうとしたその刹那、閉ざしていたはずの耳に声が聞こえた気がした。

 

 

 

(約束は守れよ、バカ弟子)

 

 

 

「っ!!」

 

限界まで燃え上がったと思っていた心の炉心が更に火力を増すさまを幻視する。

長剣(ハエたたき)のリーチを捨てて短刀()の間合いに踏み込む。抉り込むような突き。心臓を刺し貫かんと伸びる一撃をこれまでと同じように右手に握られた鉈がはじく。下から跳ね上げられたハエたたきにつられ体が泳いだ。

がら空きになった僕の体を断ち切らんと左手の鉈が迫り、

 

「来い」

 

左手に雷が収束したかのような黄金の煌めきが現れた。

防げるはずのなかった一撃が、弾き飛ばされる。

 

「マッチ棒っ!」

 

金色の軌跡をなぞるように炎が立ち上り、驚愕に目を見開く鈴原さんの顔を照らす。

勝利の確信が、加虐への期待が、目を焼く金の閃きが、鈴原さんに一瞬の硬直をもたらした。圧倒的劣勢に立たされていた死闘の中にあってこれ以上ない好機。経験が、感が、意思が。体を動かしていた全ての感覚が重なった。

 

「っけえぇ!」

 

師匠から貰った二振りの聖剣が一つ。「聖剣マッチ棒」。金色の刃が鈴原さんを切り裂き、吹き上がった炎が包む。

呻きながら飛びのいた鈴原さんは炎にまかれたままその首を自ら落とす。

そしてこれまでと同じように首を踏みつぶし…そのまま膝をついた。

先程までの剣戟の音が消え、痛いほどの静寂がスタジアムを包み込む。ぽつり、とだれにというわけでもなく呟いた。

 

「この世界に来てから知ったんですけど…本当の切り札というものは最後まで取っておくものなんだそうです」

 

上がりきった息を何とか整えながら左手に握った剣を見やる。

聖剣マッチ棒。その金色の刃に師匠が与えた権能は火属性、そして…不死者(アンデッド)特攻。

まさか今日という日を見越して渡してきたわけではないだろうが、魔力を持たない僕にとって唯一にして最高の切り札だった。

視線を戻すと、炎こそ消えていたものの切り裂かれた傷がそのまま残っている鈴原さんがいる。

膝をついたままその傷を一瞥した鈴原さんは、不思議そうに傷をなぞってゆっくりと立ち上がった。同時に口の端から、一筋の血が流れる。

 

「不思議です、ね。痛くて、苦しい、っはずなん、ですが」

 

小さく吐血を繰返しながら紡がれる言葉はとぎれとぎれではあったが、はっきりとしていた。

 

「なん、だか…暖かいです(・・・・・)

 

自らの生きる意味を話していた時と同じような、狂気の剥がれた綺麗な微笑み。

瞬きの後には、それが幻であったかのように狂気と重圧が放たれたが、

先程までと比べるとその重さは随分と軽くなっていた。

鈴原さんが鉈を構える。

 

「お待たせ、しました…続き、を、やりましょう」

 

「その体で、まだ続ける気なんですか?」

 

「私は、言った、はずです。あなたが立ち上がるかぎり、私も、立ち上がるって」

 

獣の様に素早く、しかし精彩を欠き切った単調な突撃。

きっと彼女は、最期まで終われない。自らのレゾンデートルに従い、その生命か、或いはこの世の全てを燃やし尽くすまで。

精彩を欠いてなお、あの細腕からは想像もできないほど重い鉈を弾きながら覚悟を決めた。

 

「…わかりました。僕は貴女(化け物)と対峙する英雄として、その執念を断ち切ります」

 

これが最後と心に決めて、全力で雷を纏う。地上から天に上る雷霆は頭上の雲を吹き飛ばし、青空から太陽の光が降り注いだ。

踏み込み、鉈を弾き、切り裂く。淀みなく行われた一連の流れはそれまでの激闘が嘘のようにあっけなく。

黄金の剣に切り裂かれ炎に包まれた鈴原さんは、最期にアハッと笑い「楽しかったですよ、英雄さん」と言い残し、

力尽きたようにその場に倒れこんだ。

 

そのまま10秒経ち、20秒経ち…30を数える頃にゆっくりと銀の聖剣を頭上に掲げる。

 

「決まったあああぁ!Aブロック優勝は、【英雄】!エクスッ・アルビオオオォォォ!!」

 

ワアアアッ!!!と耳に痛いほどの歓声が上がった。

…正直、あまり嬉しくはない。鈴原さんを切ったことに後悔はないが、僕らがやったのは結局ただの殺し合いだ。

その前の叶さんも葛葉さんも…師匠の時だって。

 

 

だけど、振り返れば師匠がへたり込んだままサムズアップをしている。

それだけで、

 

グッと親指を立てて突き出す。

太陽の明かりに照らされた師匠の顔に笑顔が咲いた。

 

だから、まあ。失ったものは大きすぎるけど…

 

「完全勝利…でいいよな」

 

きっと僕は守りたいものを守りきれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 




うい、これにて供養完了です。
駄作にもかかわらずの読了、ありがとうございました。

もしもあらすじにおいてるpixivの元漫画読んでない人いたらぜひ見てね。
俺がこんなのを書きたいって心動かされるくらいには熱くて素晴らしい作品だから。
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