とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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不浄を祓う者

「な、」

 

 

空いた口が塞がらないとはこのことだろう

それはそうだ、科学の街にいる彼では絶対に知ることができない情報を言ったのだから

 

 

「こっちは科学の結晶体である超能力者だぞ。テメェらの頭ん中覗くくらい朝飯前なんだよ」

 

「・・・科学の力を使って調べたという可能性もありますが?」

 

「別にそう思うなら思えばいい。だけどよ、さっき言ったテメェらの情報はちょっと調べたくらいで出てくるもんなのかは自分でわかるだろ」

 

 

ステイルはともかく神裂は何とか納得してくれたようだ

これでようやくスタート地点

 

 

「それで本題だ」

 

 

降魔は煙草を消し、やる気のない目で空を眺める

 

 

「あのガキの頭にある10万3000冊のせいで記憶を消さなきゃいけないなんてことは絶対にありえねーよ」

 

「ッッ!!??」

 

 

それは彼らの根底を覆すような事実だ

驚きと戸惑いの表情をしている2人に構わずに話を進める

 

 

「完全記憶能力だかなんだか知らねーが、人間の脳ってのは元々140年分の記憶が可能だ」

 

「・・・・」

 

「テメェらみたいな科学に疎い奴にわかりやすく説明すると、人の記憶は1つだけじゃない。思い出と知識は別なんだよ。散々あのガキの記憶を消してきたお前らならわかるだろ。記憶を消した後(・・・・・・・)アイツは歩き方を忘れていたか(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「じ、じゃあ何故!??」

 

「おそらくテメェらの上層部がアイツを管理するために付けた首輪ってとこか」

 

「・・くびわ」

 

「普通に考えてみろ、使い方次第で世界を創り変えるほどの力を持つアイツをほっとくと思うか?」

 

 

降魔は煙草を吸い、煙を吐く

そして一呼吸おいて

 

 

「俺だったら絶対にしねぇよ」

 

 

薄気味悪い笑みを浮かべ、2人の魔術師を見る

 

 

「後はテメェら次第だ」

 

 

そう言い残し、彼は飛び立ってしまった

残された2人の魔術師の顔は浮かなかった

 

1人は歯を食いしばり、怒りを噛み殺しているようだった

1人は己の未熟さを改めて痛感しているようだった

 

 

◇◇◇

 

 

とりあえず必要なものを取りに行くために自分の部屋に戻った

ガチャっと扉を開けると何やらいい匂いが立ち込めていた

 

 

「丁度いいタイミングです、とミサカはあなたの腕を引っ張りながら台所へ連れて行きます」

 

 

ミサカは降魔を見るなり、腕を掴んで台所まで連れて行った

台所にはエプロンをつけたリアが料理をしていた

 

 

「・・・・」

 

 

料理中だからだろういつものホワイトボードに文字を書き込めないため無言で見つめてくる

 

 

「んだよ、手伝えってか?」

 

「・・・」

 

 

リアは無言で何回か頷く

降魔はため息を吐き、台所へと入っていく

 

その時だった

ザシュッと小気味よい音と共にリアの手にしていた包丁がリアの指を刻む

別にそのこと自体は料理をしていればあり得る話だ

 

 

「あっ、とミサカは急いで救急箱を取りに行きます」

 

「ったく、ほら血拭け」

 

 

そう言って降魔は近くにあったタオルを渡す

しかし

 

 

「・・・・?」

 

 

当の本人であるリアは首を傾げ、何のことだかわかっていないようだった

その仕草に降魔は違和感を感じる

包丁で指を切り、血を流していても痛みを感じていないこと

それと、何か得体の知れないナニカがある

 

 

「脱げ」

 

 

降魔は何かを感じとり、リアへそう言った

リアも何の疑問も抱いていなようで、降魔の言われた通り、黙って服を脱ぎ始めた

 

まず見えたのが先日買い与えた白い下着

次に見えたのが傷ひとつない肌

 

そう、彼女には『雑貨稼業』につけられた数々の傷があるはずなのだ

それが一つもない

 

治るにしても早すぎる

 

 

「・・・もういい、服着ろ」

 

 

そう言って、降魔は料理を続ける

疑問は山ほど出てきた

しかし、彼女を問い詰めるのは違うだろう

 

降魔は黙って手を動かした

 

 

 

 

 

ベランダに出て、煙草を吸う

時刻はもうすぐ0時になろうとしていた

 

 

(面倒くせーから上条の監視は明日でいいか)

 

 

予定外の出来事が発生し、時間を取られた

ベランダから夜の学園都市を見下ろす

いつも通りの夜景

 

 

「あ?」

 

 

そこへいつも通りではないものが見えた

爆発でも起こったかのような閃光が一瞬だけ見えた

 

学園都市ならば夜間に何らかの実験という可能性もあるだろう

 

しかし、その閃光が迸った場所は上条当麻がいる月詠小萌のアパートではないか?

 

 

「チッ!ざけんなよ」

 

 

舌打ちと共に演算を完了させ、飛び立つ

さらなる面倒ごとが彼へ吸い込まれるように発生する

 

 

◇◇◇

 

 

『警告、第三章第二節。Index-Librorum-Prohibitorumー禁書目録の『首輪』、第一から第三までの全結界の貫通を確認。再生準備・・・失敗。『首輪』の自己再生は不可能、』

 

 

降魔が自身の部屋のベランダから異変を感じとる少し前、すでに月詠小萌の部屋では異常が起こっていた

上条は真っ白い純白の修道服を着る少女と向き合っていた

 

しかし、少女の瞳に写っているのは虚無だけだった

代わりに無感情な言葉と無数の魔法陣が現れる

 

 

『現状、10万3000冊の書庫の保護のため、侵入者の迎撃を優先します』

 

 

その両眼には真紅の魔法陣が宿っていた

それは眼であって、目ではない

そこに人間らしい光はなく、少女らしい温もりはない

 

 

『書庫内の10万3000冊により、防壁を傷つけた魔術の術式を逆算・・・失敗。該当する魔術は発見できず。術式の構成を暴き、対侵入者用の特定魔術を組み上げます』

 

 

インデックスは糸で操られている人形のように小さく首を傾げ、

 

 

『これより特定魔術『聖ジョージの聖域』を発動、侵入者を破壊します』

 

 

バキンッと凄まじい音を立てて、インデックスの両眼にあった魔法陣が一気に広がった

彼女の目の前には直径2メートルほどの巨大な魔法陣

 

 

『     。        、』

 

 

インデックスが何か、人では聞き取れない歌を歌った

瞬間、魔法陣が蠢き、爆発した

 

真っ黒い雷のような空間を引き裂き、インデックスを守る防壁のように展開する

上条はその亀裂を見てしまった

 

 

「あ」

 

 

上条は本能で理解してしまった

あの亀裂のなかにあるものが何かなどは知らない

だが、あんなものを真正面から見てしまったら

 

上条当麻という一存在は崩壊してしまう

 

 

「。は」

 

 

震えた

上条は動けない

震えて、震えて、震えた。だって、なぜなら

 

『アレ』さえ倒してしまえば

他の誰でもない、自分自身の手でインデックスを助け出すことができるのだから

 

 

「あはははははははははははは!!!!」

 

 

だから、上条は歓喜で震えた

たった4メートル

もう一度あの少女に触れれば、全てを終わらせることができる

 

上条は右の手を握りしめ、走った

こんなくだらない結末を打ち消すために

 

同時、べキリと

亀裂が一気に開いた

ニュアンスとしては処女を無理やり引き裂いたような痛々しさ

そん亀裂の奥から『何か』が覗き込み、

 

ゴッ!!!と亀裂の奥から光の柱が襲いかかる

 

上条は迷わず右手を突き出した

幻想殺しとインデックスの一撃

真正面からぶつかり、衝撃を辺りに撒き散らす

 

 

「くそ、何をやっている!!この期に及んでまだ悪あがきをッ!!??」

 

 

衝撃に気づき、玄関からやってきたステイルは息をつまらせた

それは神裂も同じだった

 

 

「見ての通りだ!!!インデックスは魔術を使ってる!!お前らは教会に都合のいい嘘を教えられてたんだよ!!!!」

 

 

それはあの少年も言っていた

しかし、信じ切ることができなかった

敵であるあの少年が真実を言うとは思えなかった

 

しかし、目の前で起きている現象はどう説明する

 

グキリ、と無理やり押さえつけている右手から嫌な音がした

少しずつ上条の体が後退し始める

 

 

「テメェらはインデックスを助けたくねぇのかよ!!!」

 

「・・・ッ!!」

 

「ずっとずっと主人公になりたかったんだろ!!絵本みてぇに映画みてぇに、命をかけて1人の女の子を守る、そんな魔術師になりたかったんだろ!!だったらそれは全然終わってねぇ!!始まってすらいねぇ!!!ちょっとくらい長いプロローグで絶望してんじゃねぇよ!!!!」

 

 

爪が割れ、血が舞い散る

だけど、上条は諦めない

 

 

「手を伸ばせば届くんだ。いい加減始めようぜ、魔術師!!!!」

 

 

メキメキメキッ!!と上条の右手が妙な音を立てた

不自然な方に曲がって、折れたと気がついた瞬間、インデックスの光の柱は、ついに上条の右手を弾き飛ばした

上条の手が大きく後ろへ弾かれる

完全に無防備になった上条の顔面に、凄まじい速度で光の柱が襲いかかる

 

ドゴァッッッ!!!!!と

上条と光の柱の間に割って入るように灰色の竜巻が落ちた

 

着地の衝撃で床の畳はひしゃげ、インデックスの足場が奪われる

その結果、光の柱が真上に逸れる

 

 

「だァから言ったじゃねェかよ、」

 

 

学園都市第1位その襲来

めんどくさそうに魔術師の2人を見る

 

 

「テメェらのくだらねェプライドなンざ捨てちまえ、そうしねェと救えるモンも救えねェぞ」

 

 

その彼らの頭上から何十枚の純白の羽がひらひらと舞い落ちてくる

 

 

「気をつけて!!それは伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義です!!余波の光の羽が当たっただけでも危険です!!」

 

 

神裂が叫ぶ

上条はその声を聞きながら、インデックスの元へと一気に走る

だが、それより先にインデックスが首を巡らした

 

巨大な剣を振り回すように光の柱が再び振り下ろされる

動いたのは降魔ではなかった

 

 

魔女狩りの王(イノケンティウス)!!!!」

 

 

身構える上条の前に炎が渦を巻いた

人の形をとる炎の巨人は両手を広げ、真正面から光の柱の盾になる

 

 

「行け!!能力者!!!」

 

 

ステイルが叫び、降魔も動く

足下にかかるベクトルを操作する

凄まじいスピードでインデックスの真後ろへと回り込む

 

そのまま両手を突き出す

気を失わせれば、いくらでもやりようはある

 

しかし、現実はそんなに簡単ではない

ビュン!!と幾つもの魔法陣が降魔を取り囲む

 

 

「あ?」

 

 

魔術は完璧に反射することはできない

しかし、ある程度逸らすことができる。ダメージはない

そう考えていた

 

視界が真っ赤に染まった

インデックスの魔術は降魔の反射の壁を軽々と超えて、彼の体に深刻なダメージを与える

 

 

「ぶ」

 

 

血がせり上がり、勝手に口から出てきた

血が沸騰していると錯覚するほどに身体中が熱い

 

ガン、と倒れそうになる降魔を神裂が抱え、後退する

 

 

「大丈夫ですか」

 

「・・・あァ」

 

 

それと同時に上条もインデックスの頭めがけて、右手を振りかぶる

何かが砕けるような甲高い音ともに、何かが壊れる

 

インデックスは力を失い、床に倒れた

上条は駆け寄り、インデックスを抱えている

 

 

「今回は、あなたを信じ切ることができなかった私たちの責任です」

 

「はぁ、面倒ごとは嫌いだ。全部終わったんだからどーでもいいだろ」

 

 

能力も切り、降魔は神裂の横に座り、煙草に火をつける

その瞬間だった、上条とインデックスの頭上から一枚の純白の翼が落ちてきた

 

それは上条の頭に吸い込まれるように落ちた

凄まじい衝撃音と共に上条の体が力を失って倒れる

 

慌てて駆けつけようとする降魔は何かを感じ取った

勘、と言えばそうだが、暗部で培われた危機察知の能力

 

それは、ひらりひらりと舞い落ちてきていた

上条を襲った純白の羽とは真逆の色

 

漆黒の羽が一枚舞い降りていた

その羽は上条へ駆け寄った神裂たちの頭上を舞っている

それに気がついたのは上条を少し離れた位置で見ていた降魔だけだった

 

見過ごすことも考えた

所詮成り行きの関係だ

仲間、親友、家族ではない

 

だが、神裂にはさっき助けられた

 

面倒ごとは嫌いだ

 

 

「退け」

 

 

血を流し、言うことの聞かない体を強引に動かす

ほとんどタックルするような形で神裂たちへぶつかる

 

 

直後だった

自身の内側に鈍い音が響き渡り、視界がブラックアウトした

 

最後に聞こえた声は誰のものだろうか

 

 

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