学園都市第23学区からいつもの病院に帰ってきた
ここでいつものと言える時点でかなり異常だろう
病院に着くと冥土帰しのところへ行き、簡単な処置を受けた
前の怪我を含め、特に異常はないとのことだった
軽く礼を言って、診察室を出る
そのまま屋上へ向かい、夕陽を眺める
煙草に火をつけ、煙を吸い込む
そして夕陽に向かって煙を吐きつける
まったりとした時間が流れる
降魔は煙草を吸っている間のゆっくり流れるこの時間が好きだった
ピピピッとそれを邪魔するように彼の携帯が鳴った
それはいつもの男からの電話だった
『もしもし降魔向陽ですかー?報告を聞いたときは驚きましたよー』
「あ?こっちは疲れてんだよ。用件を言え」
『おっと、失礼しましたー。用件はあなたの電極についてです』
電話の男にそう言われ、降魔は自分の首についている電極に触れる
これがなければ降魔は能力を使うどころか、歩くことも話すこともできない
正真正銘、降魔の命綱なのである
「・・・俺のこれがどーかしたのか?」
『いえいえ、よろしければ『カースト』の技術を使って性能を上げませんかー?』
「あ?」
『そのままだと何かと不便でしょう?『カースト』の技術なら15分、いや、30分までバッテリーを延長できると思いますよー』
それは降魔にとって魅力的な提案だった
実際、コレのバッテリー問題は降魔に永遠に付き纏う問題だったのだ
しかし、降魔は煙を吐き
「断るに決まってんだろ」
そう言い放った
『・・・・理由を聞いても?』
「テメェらなんか信用できるわけねぇだろうが、ふざけんのも大概にしろ」
降魔は暗部の人間を信じてはいない
最近になってようやく人との関わりが増え始めてきた
しかし、それとこれとは話が別だ
『そうですか。では私も忙しいので切りますねー』
そう言って電話は切れた
降魔は新しい煙草に火をつけ、考える
大方、電極を改良すると同時に暗部の上層の自由に電極を管理できるようにするのだろう
学園都市同率第1位の降魔に文字通り『首輪』をつけるために
(ハッ、そんな馬鹿なんてこの世にいるのかよ)
自身の命綱を他人に、ましてや信用のできない奴らに握らせるなど降魔は御免だ
そんなことを考えていたら、夕日が沈み、空が暗くなり始めていた
ジジジッと煙草が燃える音がやけに耳に残った
◇◇◇
「もうそろそろ退院しても大丈夫だね?」
定期的に検診に来る冥土帰しが降魔にそんなことを言った
特に体に異常がないため、退院できるのは少し嬉しい
「んじゃ明日出てく」
そう言って降魔は眠そうな目を擦りながら布団を被った
そんな彼を見て冥土帰しはやれやれと言った表情をし、病室から出て行った
すでに降魔のベッドからは寝息が聞こえていた
ジリリリリリッッ!!!
銃撃音のような音の後に非常ベルが病院に鳴り響く
原因は輸送中の犯罪者によるものだった
彼らは輸送されている仲間を救い出し、屋上へ向かっていた
「おい、早く開けろよ」
「ちょっと、待、」
「止まれ!!逃げても無駄じゃん!!学園都市全域に緊急配備も手配済み!!」
警備員が犯人たちに向かって怒鳴るが、犯人はニヤッと笑い
「黙れ!!余計な真似はしてくれるなよ?ガキの頭が吹き飛ぶぜ」
ある少女の頭に銃を突きつける
少女は目に涙を溜め、抵抗しているが、男の力には及ばない
「・・・わかったじゃん」
警備員は悔しそうに銃を下ろした
それを見た犯罪グループの男たちは屋上へ逃げていく
警備員は無線を使って部下へ連絡を取る
「黄泉川先生?」
「お前ら何で!?」
そこで御坂は黄泉川という警備員の持っている拳銃に目がいった
黄泉川は少しだけバツが悪そうな顔をして銃をしまった
「過激派もどきが屋上を封鎖して、立て篭もった。お前たちも早く、安全なところへ」
するとドンという音とともに彼女らの先に枝先が必死な表情をして歩いていた
「衿衣ちゃんが、衿衣ちゃんが戻ってこないの・・」
壁に寄りかかりながら必死に自分の友達の安否を気にしていた
「え!?それって」
「お前らの友達が人質にとられたじゃん」
「そんなッ!!!」
「佐天さん」
ヒートアップした佐天は御坂の声でハッとさせられる
御坂の方を向くと、彼女は小さく頷いた
フラフラとする枝先に肩を貸しながら彼女の病室まで戻る
枝先をベッドに腰掛けさせる
「ありがとう。でもっ!!あのっ!!衿衣ちゃんが!!」
「大丈夫」
ただ一言そう言って、病室の窓を開けた
そして、そのまま飛び出した
「「うぇ!!?」」
御坂は能力を使って、壁をよじ登っていった
屋上では逃走用のヘリコプターが離陸しようとしていた
「いやぁ!!離してっ!!!」
「うるせぇ!!ジタバタすんな!!よし、いいぞ出せ!!!」
強引に春上を抑え込み、ヘリに乗せる
操縦士が離陸させようとした瞬間、ガコンッ!!!とヘリの衝撃が走る
そして男たちがある少女に気がつく
「私の友達に、何してくれてんのよ!!!!」
「チッ!能力者か!!」
御坂は磁力を使い、鉄の塊であるヘリコプターを食い止める
男たちは慌てた様子で離陸させようとするが、操縦が効かなくなっていた
「クソッ!!こいつの仲間か。だったらッ・・・!!!」
「きゃあ!」
春上を抑えていた男が思いっきり春上を投げ飛ばした
春上の体は宙へ浮かび、屋上のはるか向こうへ行ってしまう
「春上さん!!!」
御坂は能力を切り、彼女のもとへと走る
屋上のギリギリまで走り、思いっきり手を伸ばす
しかし、御坂の手が空を切る
息が止まった
そんな彼女の耳に聞き覚えのある声が聞こえた
「ったく、また面倒ごとかよ」
春上を抱え、宙を蹴る降魔の姿があった
「うわぁ、浮いてるの」
「チッ!こんなこと今回限りだからな」
呑気な声を出す少女に舌打ちをし、微笑む少女から目を逸らす
春上を屋上に下ろし、慌てて離陸していくヘリコプターを見る
降魔は電極のスイッチを切り替え、杖をついて煙草に火をつける
既に御坂美琴の姿はなかった
どうやら白井の空間移動で犯人共を追ったようだ
屋上の隅に腰掛け、煙草を吸う降魔を初春が不思議そうな目で見る
「あれ、降魔さんは行かないんですか?」
「あ?面倒ごとは御免だ。アイツらが行ったなら大丈夫だろ」
別にあの程度の犯罪者共がどうなろうが降魔には関係がない
「ったく、退屈しねぇなこの街はよ」
独り言を呟き、煙草を味を楽しむ