とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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実験

 

 

「・・・世話になったな」

 

 

降魔は病院の正面玄関で冥土帰しに軽く挨拶をしていた

魔術による脳へのダメージを受け、目の前にいる医者に治療をしてもらっていた

超能力者である彼の演算能力は完全には元には戻らず、首元にある電極に補助してもらっている

 

 

「うん、それじゃあ暫くは合わないことを祈るよ?」

 

「あ?俺だって好きで来るかよ」

 

 

そう言って降魔はタクシーへと乗り込んでいった

 

走り出したタクシーは市街地を通り、降魔の家へと向かう

降魔はのんびりと窓の外の流れる景色を眺める

 

 

「あ?」

 

 

一瞬、たった一瞬だった

見覚えのある常盤台の制服、見覚えのある短い茶髪、見覚えのある風貌

御坂美琴(・・・・)、ではなかった

 

降魔は少しだけ表情を曇らせた

その変化は微々たるものだった

 

だが、確実に降魔の表情が切り替わった

 

 

 

 

 

数週間ぶりの帰宅だった

リアは何回か見舞いに来ていたが、ミサカの方は降魔が来させなかった

御坂美琴と関わってしまった以上バレるのは避けたいからだ

 

 

「退院おめでとうございます、とミサカは久しぶりに会ったあなたに感動を覚えます」

 

『お帰りなさい』

 

 

2人の少女が降魔を出迎えてくれた

降魔はあぁ、と短く返事をしてベランダへ向かう

 

 

『元気ないですね』

 

「ふむ、何か悪いものでも食べたのでしょうか、とミサカは勝手な憶測をします」

 

 

ベランダに出て煙草に火をつける

煙を吸い込み、先ほどの出来事を思い出す

 

理由を見つけなければ

空を見上げ、降魔は珍しく悩む

以前までの彼だったらあり得ない感情だっただろう

 

この世界は面倒ごとかそれ以外でできていると考え、面倒ごとならばNOでそれ以外ならYESという考えで生活をしてきた

しかし、最近の出来事はその考えでは解決ができない

解決しようとしてもナニカが引っかかる

 

 

「ったく、面倒くせーな」

 

 

煙草を消し、頭をガシガシと掻く

 

 

◇◇◇

 

 

(ったく、何なのよあれ。調子崩されっぱなしだったわ)

 

 

自身のクローンである『妹達(シスターズ)』の1人と初めて出会い、御坂美琴は混乱していた

真実を彼女から聞き出そうとしたが、実験の関係者ではない彼女には何も教えてもらえなかった

 

 

(一緒に猫と戯れて、一緒にアイス食べて、缶バッチ取り合って、これじゃあまるで・・・)

 

 

その先を考えようとしたが、気持ちが追いつかなかった

首を振り、目の前のやるべきことに集中する

 

 

(とりあえず、製造者をとっちめる!!)

 

 

先ほどの少女が言っていた符丁のことも初春に聞き、近くの公衆電話に入る

電気を扱う能力者、それも超能力者クラスになれば電子の海に眠る機密情報など丸裸も同然だ

 

クローンの製造元を知り、それらを叩き潰せば問題は解決すると思い、ハッキングを開始する

 

しかし、そこに乗っていた情報は

 

 

「・・・何よ、これ」

 

 

声を震わせ、自身のタブレットを見る

そこに書いてあったのは、ある実験のことだった

御坂の顔に冷や汗が浮かぶ

 

 

【妹達を運用した絶対能力者(レベル6)への進化方法】

 

 

そう書かれていた

 

【妹達を運用した絶対能力者への進化方法。学園都市には8人の超能力者が存在するが、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)への予測演算の結果、まだ見ぬ絶対能力者へと辿り着ける者は2名のみと判明した。この被験者に通常の時間割り(カリキュラム)を施した場合、絶対能力者に到達するには被験者Aは250年、被験者Gは230年もの歳月を要するため、このプランを保留とし、実践による能力の成長促進を検討した】

 

文字を読むたびに呼吸が早まる

手の震えが止まらず、真夏にも関わらず寒気すらしてきた

 

【特定の戦場を用意し、シナリオ通りに戦闘を進めることで、成長の方向性を操作する。予測演算の結果、被験者Aは128種類、Gは120種類の戦場を用意し、超電磁砲を戦場の数だけ殺害することで絶対能力者へと進化すると判明した。しかし、超電磁砲を複数確保することは不可能であるため、過去に凍結された量産型能力者計画(レディオノイズ)の妹達を流用し、これに変えることとする。武装した2万体の妹達との戦闘シナリオをもって、絶対能力者への進化を達成する】

 

乾いた笑いが飛び出た

まるでテレビの向こう側にあるものへ向けての笑いのようだった

 

 

「は、はは。何よ、これ。私を殺すとか、代わりにクローンを殺すとか・・・」

 

 

データにはまだ続きがあった

ミサカは震える手で画面を見る

 

【なお第一絶対能力者進化計画は実験成功の可能性がより高い被験者G、すなわち超能力者同率第1位の幻想操作である降魔向陽を採用するものとする】

 

そこに書いてあった名前は自身もよく知る人物だった

 

 

「・・・は」

 

 

もはや笑いすら出なかった

空気が口から出る際に変な音を出した

 

今まで見てきたあの少年を思い出す

普段はやる気のない目で面倒ごとを嫌う少年

しかし、一回だけその残虐性を垣間見たことがあった

 

テレスティーナとの戦闘の時に見せた彼の残虐性

あれはこの実験によるものなのだろうか

 

【しかし、幻想操作は第1次実験にて、実験を拒否。そのまま妹達を連れて逃走。これにより第一次絶対能力者進化計画を凍結し、以降の実験を被験者Aへと変え、実験を継続することを決定した】

 

 

そう締めくくってあった

少し、少しだけ安心した

あの少年がこんな正気の沙汰とは思えない実験に手を貸していた訳じゃないと知り、息を吐いた

だが、問題は山積みだ

 

【第9928次実験 開始時刻8月15日 21:00】

 

最後に書いてあったのは実験の詳細だった

その日付と時間を見た瞬間、一気に現実へと引き戻された

開いていた口を閉じ、歯を食いしばる

 

急いで公衆電話から出て近くにある時計で時間を確認する

時刻は21時5分

 

 

『さようなら。お姉様』

 

 

妹達の1人と別れる際に彼女が言った言葉が思い出される

その瞬間には走り出していた

 

 

「・・もうッ!!!!」

 

 

御坂美琴は先ほどの実験詳細に書いてあった場所へ急いだ

自分が行ってなんとかなるとは思わないが、走らずにはいられなかった

 

◇◇◇

 

 

「はっ、はぁはぁ」

 

 

少女は何かから逃げるように階段を駆け下りる

軋む体に命令を送り、強引に動かす

目的の場所はすぐそこだ

 

 

「ぎゃっはは、逃げろ逃げろォ、その分だけ長生きできるからよォ」

 

 

そんな少女を橋の上から見下ろすのは真っ白い髪に真っ白い肌、赤い瞳の少年だった

その真っ白い少年の体が不自然に傾く

 

 

「こいつは命懸けの鬼ごっこだからなァ」

 

 

そのまま少年の体は橋から落下していく

しかし、フワッと少年の体が浮き、静かに着地する

 

少年の数メートル先には先ほどの少女がいた

 

 

「追いつかれたらゲームオーバーだぜ」

 

 

揶揄うように少女へ言葉を投げかける

少女は歯を食いしばり、また逃げる

 

 

「遅っせェ」

 

 

少年が地面を足で小突く

それだけで砂利や石の塊がショットガンのように走る少女へ襲いかかる

 

 

「がッ!?くぅ!」

 

 

少女の体は宙へ浮き、受け身も取れずに地面に叩きつけられる

 

 

「おいおい、寝っ転がってる暇なンざねェぞ」

 

 

横たわる少女の体に少年の足がチョンと触れる

ッッドン!!と少女の体がありえないほど吹き飛び、近くのコンテナにぶつかる

あまりの衝撃で少女は動けなくなっている

 

そんな少女を見て、少年は面倒臭そうな声で

 

 

「ったくよォ、もう壊れちまったのかァ?つまンねェな」

 

 

少女に話しかける訳でもなく、独り言を呟いていた

しかし、少女は立ち上がってまた走り出す

 

 

「いいじゃねェか」

 

 

少年はまた足のつま先で地面に触れる

天然のショットガンが少女の小さな背中に突き刺さり、前のめりに倒れてしまう

少女は口から血を吹きながらも白い少年の位置を確認する

 

 

「・・・・・」

 

「どーしたどーしたァ?もうへばっちまうのかァ」

 

「・・・・・・」

 

 

少女は態勢を立て直すように立ち上がり、自身の予想を口にする

しかしダメージが蓄積されすぎた彼女の声は少年には届かない

 

 

「なァにブツブツ言ってンだァ?」

 

「逃亡、ではありません。目的地への誘導を達成した、とミサカは訂正を求めます」

 

 

少女の体から電気が放たれる

それは少年ではなく、少年の足元へ向けてだった

 

ピピピッと電子音と共に、凄まじい爆発が少年を襲う

土煙の中少女は立ち上がりながら

 

 

「・・目標、完全に沈も、ッッ!!?」

 

 

足音が聞こえ、その先には先ほどの少年が立っていた

怪我はおろか汚れさえ付いていない

 

 

「残念ねンでしたァ」

 

「ッッ!!」

 

 

少女は慌てて逃走しようとするが、ガシッと少年の細い手が少女の足を掴む

 

 

「テメェの考えは的外れなンだよォ!」

 

 

そのまま

少年は手に力を入れ、そのまま引き千切る

 

 

「うッ、がっは、あぁ!!??」

 

 

片足をもがれてもなお、諦めない

失いそうになる気を繋ぎ止め、電撃を放つ

 

放たれた電撃は少年へ直撃するはずだった

しかし、少年は避けるどころか目も瞑らない

 

 

「がはッ!」

 

 

自身が放った電撃は少年に当たらず、自分へと帰ってきた

その衝撃で少女の服につけてあった缶バッチが外れ、宙を舞う

 

 

「追いかけっこできなくなっちまったなァ」

 

 

そのまま吹き飛ばされ、地面へ倒れる

それでも少女はナニカを求めるように地面を這い蹲りながら、移動する

その無様な姿を見て、少年はめんどくさそうに移動する

 

 

「チッ!もういいわ、オマエ」

 

 

少年は近くにあった大型のトレーラーを触る

 

 

少女が目指していたもの

それはゲコ太の缶バッチだった

 

自身のオリジナルである御坂美琴から貰ったものだ

少女は震える手でそれを掴んで、少し嬉しそうに見る

 

そして、缶バッチを大事そうにギュッとした瞬間

ドゴォォン、と凄まじい音と共に大型のトレーラーが少女の体を押しつぶした

 

 

「本日の実験、終ー了ー」

 

 

それをやった張本人である少年は面倒な終わったかのように呟いた

トレーラーの下からは大量の血が溢れてきていた

そんなことに気にも留めずに帰ろうとする

 

 

「帰りにコンビニでも寄って、」

 

 

その瞬間、少年に電撃が放たれる

それも先ほどの倍以上の威力で

 

電撃は弾かれ、少年の後ろのコンテナを焦がす

 

 

「あァ?」

 

 

白い少年が電撃が放たれた方を見ると

 

 

「あああああああああッッ!!!!!!!!」

 

 

先ほど処理した少女と瓜二つの少女がこちらへ向かって走ってきていた

雄叫びを上げ、少年を殺さんとばかりの形相で走る

 

少年はそれを見て、笑った

 

 

 

 

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