とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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8月19日

御坂美琴と別れ、家に帰った降魔はシャワーも浴びずに布団へ入った

同居人の朝ごはんの準備もする気になれず、布団に入り、目を瞑る

 

『何でアンタは、何もしないのよ』

 

御坂美琴に言われた言葉だけが彼の頭をグルグル回る

 

面倒くさい

面倒くさい

面倒くさい

面倒くさい

 

 

モヤモヤする気分を鎮めるように意識を手放す

    

 

 

目が覚めるとあたりは真っ暗になっていた

どうやら一日中寝ていたようだ

 

 

煙草でも吸おうとリビングを経由してベランダへ向かう

リビングの机の上を見ると、オムライスとメモが置かれていた

 

『お腹が空いたら食べてください』

 

リアが作ってくれたであろう料理

それを見ていたら不思議と食欲が湧いてきた

 

電子レンジでチンをして、料理を食べる

モグモグと食べていたら、リアとミサカの部屋の扉が開いた

 

 

「あ?」

 

 

その扉の方に目線を向けると、リアとミサカが立っていた

 

 

「・・起こしちまったか?」

 

『美味しいですか?』

 

 

リアが心配そうにこちらを見てくる

その隣にいるミサカは大あくびをしている

 

 

「あぁ、うめぇよ」

 

 

そう言うとリアは嬉しそうな顔をした

降魔は真剣な目で2人を見る

 

 

「お前らは俺が死んだらどーする」

 

 

その質問をした瞬間、2人の顔が強張る

俺が死んだところで彼女らに何か影響はあるのだろうか

 

2人とも冥土帰しの患者だ。あの医者が自身の患者を放置するはずはない

何かしらの援助をするだろう

 

 

「ミサカはあなたに命を拾われた身です。だからミサカはあなたが死ぬのなんて想像したくありません」

 

『私もです』

 

 

2人は真剣な顔で降魔を見る

それを見た降魔は少し驚いたような顔をして、優しく微笑む

 

 

「・・・そうか」

 

 

降魔はそう言ってベランダへ出ていく

そんな彼をミサカとリアは心配そうに眺める

 

 

煙草に火をつけ、星空を眺める

煙を吸いながら自問自答をする

 

 

御坂美琴のために絶対能力者進化計画を止める気はあるか?

 

 

「ねぇよ。何で俺がアイツのために動かねーといけねぇんだよ」

 

 

ならばこれから殺されるであろう妹達を助ける気はあるか?

 

 

「ねぇよ。妹達が殺されようがアイツらが無事ならそれでいい」

 

 

ならばリアとミサカのために一方通行と戦う気はあるか?

 

 

「微妙だな。たとえ俺が殺されようが、アイツらは冥土帰しが必ず保護するはずだ」

 

 

ならば、

ならば、

ならば、

ならば、

 

ならば自分が生きるために一方通行を止める気はあるか?

このまま妹達が殺され続ければ降魔の電極に影響が出るだろう

 

それが理由ならば俺は動けるか?

 

答えは

 

 

「YESだ。俺は俺のために動く」

 

 

決してアイツらのためではない

 

俺は俺のために動く

理由は見つけた

これならば動ける

 

◇◇◇

 

ピ、ピ、ピピと電子音が響く

Sプロセッサ社 脳神経応用分析所の地下室

ウェーブのかかった黒髪に白衣を着た少女が機械をいじっていた

 

 

(御坂美琴の施設襲撃・・・。たとえ彼女が完遂したとしても実験が中止されることはないだろう)

 

 

名前は布束砥信(ぬのたばしのぶ)

量産型能力者計画に参加していた研究者の1人であり、妹達への脳内情報の入力の監修も行っていた少女だ

 

そんな彼女がこの施設にいる理由

それは・・・

 

妹達の脳へ人間の感情データを入力するためだった

この程度のプログラムで真の感情が芽生えるとは思えないが、擬似的な反応くらいは得られるだろう

 

もし、死を当然の事として受容してきた妹達がその運命を嘆いたら

もし、その姿に実験動物以上のものを感じ取る研究者が現れたら

 

そして万が一にも有り得ないことだが、

もし、これ以上戦いたくないという彼女達の声が『誰か』を動かしたら

 

 

そこまで考えた瞬間、

ゴンッッ!!!!という音と共に後頭部と顔に衝撃が走った

 

 

「ぐっ・・あ・・」

 

「関係者である可能性を考慮して上に確認を取りましたが」

 

 

どうやら後ろにいる何者かに頭を押さえつけられているらしい

ついでにても拘束され、身動きも取れそうにない

 

 

「データ類の移送が完了するまでは、ここへの立ちりは超禁止とのことでした」

 

 

ビキ、ビキビキと腕から変な音がする

 

 

「どうやら麦野の読みは超当たっていたようですね」

 

 

布束は軋む腕を気にしながら襲撃者を見る

それは茶髪でボブカットの少女だった

さらにその後ろには少女の部下であろう男が2人いた

 

 

「このまま依頼主に引き渡します。抵抗しても超無駄で」

 

 

瞬間、凄まじい轟音と共に布束を拘束していた少女の体が吹き飛んだ

拘束が解かれた布束が咳き込みながら後ろを見ると、そこには布束も知る人物がいた

 

 

「・・悪ィけどよ、邪魔すンじゃねェよ」

 

 

灰色の髪に咥え煙草

超能力者同率第1位『幻想操作』降魔向

彼が少女を吹き飛ばしたのだろう

 

 

「な、んで、あなたが」

 

「あ?実験を続行されると俺も困ンだよ」

 

 

降魔は自身の首にある電極を指差した

彼の首にある電極は降魔の能力使用時の膨大な演算を妹達に代理演算してもらうための機械だ

だからこれ以上妹達が殺されるのを黙って見ているわけにはいかない

 

 

「・・・そう、彼女だけではなくあなたも」

 

「あ?アイツも動いてンのかよ」

 

 

降魔とは別の施設にいるであろう御坂美琴

そんなことを考えていると、ガララっと瓦礫が崩れる音がした

それと同時に瓦礫の破片が降魔目掛けて飛んできた

 

 

「あァ?」

 

 

もちろん降魔は能力を切っておらず、瓦礫は降魔には当たらずに反射していった

 

 

「・・・超やってくれンじゃねェですか」

 

「あ?そこで寝てた方がいいンじゃねェのか三下」

 

「私の窒素装甲(オフィスアーマー)を超なめンな」

 

 

そう言って少女は一直線に降魔へと突っ込んできた

降魔はその少女を冷めて目つきで眺め、ゆっくりと新し煙草に火をつける

 

煙を吐き、彼女の拳が降魔の顔に触れる瞬間、

ドッと少女の体が吹き飛ぶ

 

少年はただただ立っているだけだった

電極を切り替え、杖をついて布束の方を見る

布束は驚いた顔でこちらを見ていた

 

 

「驚いた。脳にダメージがあると聞いていたけれど」

 

「あ?そんなことはどーでもいい。それより作業は?」

 

「もう少しかかりそうだわ」

 

「そうか、俺は帰るぞ」

 

「・・そう」

 

 

布束がこの場所で実験の妨害をしているのならば俺は別に動いたほうがいいだろう

機械と睨めっこしている布束に背を向け、先ほどの少女が吹き飛んだ方へ向かう

少女はドアを突き破り、廊下の壁に埋まっていた

 

 

「オイ」

 

「・・・・」

 

 

少女から返事はなかった

俯いたままピクリとも動かない

 

 

「あ?まさか死んでねーよな」

 

 

無用心にも降魔は能力を切って、少女へ近づいた

情報を聞き出そうにもこのままでは面倒くさい

 

降魔が少女の髪を掴もうと左手を伸ばした瞬間

ガシッと力強く少女が降魔の左腕を掴む

 

 

「・・超、捕まえましたよ」

 

「あ?」

 

「これで逃げれませんね」

 

 

力強く握られた左腕(・・)

降魔は躊躇なく、体を強引に捻った

 

通常の腕ならば骨は折れ、肉が裂かれて激痛が体を支配するだろう

目の前の少女の表情が勝ち誇った顔から驚きの顔に変わる

 

 

「なッッ!!??」

 

「・・心配ならいらねぇよ。元々こっちの腕はねぇから」

 

 

捻じ切れたのは降魔の義手だった

降魔は少女から距離を取り、電極へ手を添える

そこで動きを止める

 

 

「お前、『アイテム』だろ」

 

「何でそれを!?」

 

「俺も暗部組織にいるからな」

 

「・・・それで、超どうするつもりですか」

 

 

煙草を取り出す降魔を睨みながら少女は聞く

そんな質問に降魔は煙草に火をつけながら答える

 

 

「お前には選択肢が2つある」

 

「・・・」

 

「この施設から撤退するか、このまま俺に喧嘩を売って『アイテム』ごと潰されるか」

 

「あなたごときに麦野がやられるとは超思えませんが」

 

「麦野?」

 

「はい、超能力者第4位の麦野沈利(むぎのしずり)です」

 

 

それを聞いて降魔は顔を俯かせた

そして少しずつプルプルと震え始める

 

少女は自身のリーダーである超能力者の名を聞いて絶望しているのだと思った

しかし

 

 

「く、ひ」

 

 

聞こえたのは恐怖に染まった声ではなく、絞り出したような笑い声だった

 

 

「ぎゃっはははははは!!!!あのクソ女ごときにこの俺がやられるとでも思ってんのかよ」

 

「ッッ!!!」

 

「おもしれェ冗談だなァ、オイ」

 

 

降魔は電極を切り替え、ゆっくりと少女に近づく

少女はそこ知れぬ恐怖を感じ取り、後退しようとするが、後ろは壁だ

気づくと灰色の少年が目の前まで来ていた

 

 

「そォいえばよ、名乗ってなかったなァ」

 

 

少女の小さな体を恐怖が支配する

暗部にいてこれほどの恐怖を味わったことはなかった

 

 

「学園都市同率第1位降魔向陽だ。ヨロシクなァ」

 

「第、1位ッッ!!?」

 

 

そのまま少女はペタリと座り込んでしまった

降魔は少女の頭に手を置き、

 

(Model Case_MENTALOUT)

 

必要な情報を抜き取る

少女の体がピクンと跳ね、そのまま気を失う

 

残っている施設はここを含めて2つ

こちらには布束、もうひとつの施設には御坂がいる

 

降魔は新しい煙草に火をつけながら出口へと向かう

 

 

「・・・裏で妨害活動なんざ俺の柄じゃねぇな」

 

 

ポツリと呟く

スパーと煙を吐きながら降魔は闇の中へ消えていく

 

 

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