とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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そういえばとある魔術の禁書目録のスマホゲームが1周年でしたね
一方さんの白翼を当てるために60連もしてしまいました

結果は………無事に当てられましたよ

皆さんはどうでしたか??


少年が目指すもの

実験を妨害するために研究所へ向かった次の日

降魔は珍しく朝日が登る前に目が覚めた

のそり、と起き上がってベランダを目指す

 

 

「……」

 

 

同居人の部屋からは寝息が聞こえていた

 

ベランダに行き、薄暗い街を見下ろす

この街のどこかで少女たちは少年に殺され続けているのだろうか

煙草に火をつけながらそんなことを考える

 

フゥ、煙を吐く

実験を止める為に裏でコソコソするなんて柄じゃない

ならば、どうすればいいのか

 

 

簡単だ一方通行を殺せばいいだけだ

小細工なしの真っ向勝負

最強と最強の激突

 

しかし、降魔には戦闘を行ううえで避けては通れない問題があった

それは、

 

 

「…問題はこれ、か」

 

 

降魔はそう言って首筋にある電極に触れた

これの制限時間は10分だ

10分以内に一方通行と決着をつけなくてはいけない

 

時間が1秒でも過ぎれば能力を使うどころか歩くことさえできない

その状態では彼と同じ第1位には勝てるはずもないだろう

 

煙草が終わると同時にゴトッと後ろから物音がした

降魔は後ろを振り返るとミサカが自室から出てきているところだった

彼女は大あくびをしながらベランダにいる降魔に気が付き、近づく

 

 

「おはようございます、とミサカは欠伸を噛み殺しながら挨拶をします」

 

「あぁ」

 

「あなたがこんなに朝早く起きるのは珍しいですね、とミサカは尋ねます」

 

「そうか?」

 

 

降魔は2本目の煙草に火をつける

いつの間にかベランダに出てきていたミサカがこちらをジッと見つめている

そんな彼女に降魔はあることを聞く

 

 

「…今ミサカネットワークに接続できるか?」

 

「はい、とミサカは答えます」

 

「今日の絶対能力者進化実験の予定を調べろ」

 

「…わかりました」

 

 

少しだけ間があった

彼女なりに何か思うことがあるのだろう

降魔が煙を肺に入れ、空気を吐く様に煙を吐き出していると

 

 

「本日は第10010次実験から10019次実験が予定されています、とミサカはあなたに必要な情報を教えます」

 

「…そうか」

 

 

そう言って降魔は空を見上げる

彼より背の低いミサカからでは降魔の表情を見ることができない

そんな降魔を見ながら、ミサカはある思いを吐露する

それがどのような感情かはわからないが、言わずにはいられなかった

 

 

「あの、1つ我儘を言ってもいいでしょうか」

 

「あ?」

 

「ミサカの妹たちを守ってください」

 

 

そう言って彼女は降魔の手を掴んだ

おそらく彼女はこれから降魔がやろうとしていることを理解しているのだろう  

いつものおちゃらけている雰囲気はなく、切実に降魔に頼み込む

 

ジッと降魔の目を見つめるミサカの目に少しばかりの不安の色が見える

彼女からの初めての我儘だった

初めは何の感情も意見もなかった空っぽの少女に様々なものが詰め込まれてきた

降魔はそれが少しだけ嬉しかった

 

そんな彼女を見て、少年は

 

 

「…もとよりそのつもりだ」

 

 

少女の顔を見ずに煙草を消した

そう言うと降魔はリビングへと戻ってしまった

その少年の背中を見る少女の表情はどこか嬉しそうだった

これから彼がする事の危険性もわかっているが、彼ならば大丈夫という絶対的な信頼がそこにはあった

 

 

◇◇◇

 

カツカツ、と杖をつきながら歩く少年

路地裏を歩く少年の目的地である座標はもう少しだ

ミサカからの情報が間違っていなければの話だが

 

 

「……」

 

 

万が一のことを考え、同居人2人は冥土帰しがいる第7学区の病院に向かわせた

これで心配事はなくなった

 

pippipipipi!!!!

黙って目的地に向かう少年の携帯が鳴った

 

 

「あ?」

 

 

携帯を確認して降魔は電話に出るべきか一瞬悩む

電話をかけてきたのは降魔の所属している暗部組織『カースト』の男だった

このタイミングでの暗部組織からの電話

面倒なことが起きる気しかしない

 

だが、出なかった場合の面倒を考えると電話に出たほうがいいのだろう

 

 

『もしもしー降魔向陽ですかー?』

 

 

相変わらず人の神経を逆撫でする様な喋り方だ

 

 

「…何の用だ。テメェと違ってこっちは暇じゃねぇんだよ」

 

『これは手厳しーですね』

 

「オイ、世間話がしてぇんなら他所でやれ」

 

『……』

 

「何回も言わせんな。こっちは暇じゃねぇんだよ」

 

 

降魔の一言をきっかけに雰囲気が変わる

だが、そんなこと少年にとってはどうでもいい

 

 

『絶対能力者進化計画は学園都市が総力を挙げて取り組んでいる計画です。邪魔はしないでいただけませんか?』

 

「あ?」

 

『あなたが実験を妨害するのはわかっていますよ。面倒ごとはお嫌いですよね?』

 

「あぁ、嫌いだね。お前らみてぇなクソ共と話すこともな。いいか、よく聞けよポンコツ」

 

「………』

 

「面倒かどうかは俺が決める。テメェらが勝手に決めんじゃねぇよ」

 

 

降魔は壁に寄りかかり、煙草に火をつける

 

 

『…これは命令ですよ』

 

「だからなんだ」

 

『命令を無視できるような立場だとでも?』

 

「俺に何でも命令できるとでも思ってたのか?」

 

 

降魔と電話の男の間に沈黙が訪れる

ピリッとした空気が辺りを包み込む

聞こえるのは降魔の煙草の音だけだった

 

 

『…仕方ありませんね』

 

 

電話の男がため息と共にそんな風に呟いた

そして

 

 

『彼女たちには死んでもらうしかないようですね』

 

 

そう言い放った

『彼女たち』が誰を指すのかがすぐに理解できてしまった

その可能性があったからアイツらを病院に向かわせた

 

しかし、彼女らだけで行かせたのは完全に降魔の失敗だった

 

 

ミシミシ、と降魔の携帯から嫌な音が鳴る

知らないうちに力が入ってしまう

 

 

『できればこんなことをしたくはなかったんですがね。これで命令を聞く気になりましたか?』

 

「…あァ、そうだな」

 

 

降魔は低く呟いた

漏れ出る殺意は小動物程度ならショック死せれるほどだった

男は降魔の漏れ出る殺意に気づくことはなかった

 

降魔の言葉を肯定と受け取ったのか電話の男の声色に余裕が出ていた

 

 

『そーですか。それでは私も仕事が、』

 

「コロス」

 

 

電話の先の男の言葉を遮って降魔は言い放って携帯を握りつぶした

それと同時に電極へ手を伸ばし、能力を解放する

 

演算は一瞬で終わった

次の瞬間には景色は変わっていた

 

降魔はどこにでもあるような部屋の机の上に立っていた

どうやらどこかのビルの上層階のようだ

 

センスの悪い部屋だった

彼の側には男が1人とソファに横たわっている2人の少女がいた

 

 

「よォ」

 

「なっ!!?」

 

 

ギロリ、と男を睨みつける

それだけで男は蛇に睨まれた蛙のように身動き一つ取れなくなってしまう

学園都市同率第1位という正真正銘の怪物が目の前にいるのだ

その怪物の気分次第でいとも簡単に自分の命は刈り取られてしまう

そんな状況で平常心を保っていられるほど男は強者ではなかった

 

 

「や、やあ、降魔向陽」

 

「あ?」

 

 

机に乗る降魔に話しかけてくる男の声には聞き覚えがあった

髪をオールバックで纏め、服やアクセサリーはブランド品で揃える男だった

 

それはいつもの電話の男だった

しかしその声色にいつもの余裕はなかった 

顔は引き攣り、声は震えていた

少しでも目の前の怪物のご機嫌を取ろうと必死だった

 

 

「彼女たちなら大丈ぶべらっ!!??」

 

 

そう言いながら近づいてきた男の顔をを蹴り上げる

ダンッと降魔は机から飛び降り、男のすぐそばまで近づく

 

 

「何勘違いしてンだよ」

 

 

そう言って首を掴み、そのまま持ち上げる

すでに電極は切り替えられ、降魔の悪魔的な能力は解放されている

苦しそうに空気を漏らす男の目は恐怖で染まっていた

 

 

「がふぁ、ま、待っ!!ぐ、あがっ」

 

「お前らみてェなゴミ共がアイツらに関わった時点でテメェらの死刑は決まってンだよ」

 

 

降魔は片手で男を持ち上げながら今日に煙草を取り出し、火をつける

男はただただ恐怖に顔を歪めることしかできなかった

 

 

「さァて、どうせ死ぬテメェに選ばせてやるよ」

 

 

降魔は煙を男の顔に吹き付けながら醜く笑った

 

 

「全身の皮を剥ぎ取るバナナの気持ち体験コースか内側から爆散させられる熟れたトマトコース」

 

「ひ、ひぎ、ぎぎぎ」

 

 

恐怖で全身を震わせ、言葉さえも話せなくなった哀れな男

そんな男の股間の部分には何やらシミのようなものができていた

しかし、そんなことに構っている余裕はない

 

せっかくのおもちゃが目の前にいるのだから

 

 

「選べよ」

 

 

そう言って持っていた煙草を男の額へ押し付ける

ジュッと煙草の火が消える音と同時にカクン、と男の意識が落ちる

許容外の恐怖で意識が強制的に刈り取られた

 

 

「チッ、恐怖で意識が落ちたのかよ」

   

 

降魔は興味を失った哀れな男を窓の方へ放り投げる

ガシャン、とガラスが砕ける音と共に男の体がビルの外へ放り出される

数秒に聞こえたのは肉の塊が地面に叩きつけられる悲惨な音だった

 

この高さではまず助からないだろう

どうせ殺すつもりだったのだ。意識がない間に死ねたのだから

 

少年は電極を切り替え、ソファに横になっている少女に近づく

彼女たちの呼吸は安定しいる

その事実に胸を撫で下ろし、再び電極を切り替える

 

2人に触れながら能力を使う

再び一瞬で景色が変わる

 

 

「……もう少し普通に入ってきてくれるかい?」

 

 

少し驚いた表情をしている冥土帰しが降魔に言った

降魔たちが訪れたのは第7学区の病院だった

 

 

「コイツらの治療を」

 

 

そう言って降魔は冥土帰しの返事を待たずに少女たちを付近のベッドに寝かせた

 

 

「俺はコレを充電してそのまま出る。俺が戻らなかったらコイツらを保護しろ」

 

「戻らなくなるような予定でもあるのかい?」

 

「…さぁな」

 

 

そう言い残して降魔は病室から出て行った

そんな灰色の少年を見送った後、冥土帰しは口を開き

 

 

「死ぬなよ。死なない限りは助けてやる」

 

 

低くそう呟いた

 

 

◇◇◇

 

ピピッという電子音が聞こえ、降魔は電極をもとに戻そうとする

しかし、力の入りにくい体ではそれすら難しい

 

何度も何度も電極を弄り、数分かけてもとに戻す

 

 

「…行くか」

 

 

まるで自分に言い聞かすように降魔は呟き、病院を後にした

目標の場所は定まっている

 

そこには白い少年と感情のない少女がいるはずだ

 

 

彼は、降魔向陽は、その場にいる少年を殺すために一歩踏み出す

 

 

 


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