とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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最強

「ぎゃははは!!逃げろ逃げろォ」

 

 

薄暗い路地裏に響くのは悪魔のような声

それと誰かが地を蹴り、息を荒げるような音だった

 

 

「はぁはぁはぁ、はぁ」

 

 

常盤台の制服に身を包み、特殊なゴーグルをしている少女は無様に走っていた

その後ろをゆっくり歩いているのは白い少年だった

 

その顔はまるでゲームを楽しむような表情だった

 

走っていた少女が何かに躓き、体勢を崩す

慌てて体勢を立て直し、後ろにいる少年の居場所を確認する

 

 

「……?」

 

 

そこに人の姿はなかった

先ほどまで自分の後ろをついて来ていた超能力者の姿が確認できない

 

 

「なンだァ?もう鬼ごっこはもうお終いか?」

 

「……ッ!!??」

 

 

耳元で声が聞こえた

ほとんど反射的に体を動かす

転がるように前へ退避する

 

そのまま牽制するように電撃を放つ

バチンッッ!!!と一瞬だけ閃光が迸る

 

次の瞬間には全身に痺れるような痛みが走っていた

電撃が反射されたのだ

 

 

「がっ、ぐぅ!!!」

 

 

自身の電撃に体を貫かれ、地面を転がる

痺れて思うように動かせない体

 

その近くに足が置かれる

誰の足かなど言うまでもないだろう

 

 

「…あァ?」

 

 

そこで少年は、一方通行は、あまり嗅ぎ慣れない臭いを感じ取った

最初は目の前の実験動物(モルモット)の何かの策かと思った

しかし、目の前の少女の目に余裕は一切ない

 

これは『煙草』の臭いだ

学園都市で煙草を吸う人は少数だ

吸う人間は学園都市にいる大人かスキルアウトのような不良共だろう

しかし、スキルアウトのような半端な不良や一般の大人が学園都市の闇が関わっている実験が行われているこの場所に近づけるだろうか

 

そうなるとこの煙草の臭いは

『あの男』だ

確信に近い何かがあった

 

自身の足元にいる少女から目を離し、辺りを見回す

カツン、カツン、と一方通行達がいる路地の真正面から誰かが歩いてきていた

沈みかけている夕日をバックに1人の少年が向かってきている

 

杖をつき、面倒臭そうに歩いている

その口には1本の煙草があった

 

 

「…オイオイ、この場合、実験ってなァどうなっちまうンだ?」

 

 

一方通行は足元の少女の顔を踏みつけながら睨みつける

だからだろう一方通行目の前の少年の手が首筋の機械に触れていたことに気が付かなかった

 

轟!!!と少年の背から天使のような6枚の翼が羽ばたく

一方通行が目の前の少年の異変に気がついた時には、一方通行へ烈風が放たれていた

しかし、その烈風は一方通行の体に当たった瞬間に霧散してしまった

 

 

「ったくよォ、こんなそよ風で俺に届くとでも思ってンのかァ?」

 

 

改めて2人の少年は睨み合う

学園都市第1位

 

ベクトルを操る少年『一方通行』

AIM拡散力場を操る少年『降魔向陽』

 

最強の怪物と最強の化物の戦闘が始まった

 

 

最初に動いたのは降魔だった

背中にある6枚の白い翼が蠢いた

ゴバッ!!!と彼の白い翼が凄まじい光を発した

 

それは彼の後ろにある夕日なんかよりも輝いていた

 

 

「ッ!?」

 

 

異変を感じ取った一方通行はすぐさまその場を離れた

ジリジリと焼けるような痛みが一方通行を襲ったのだ

 

全てを『反射』するはずの一方通行が外部からの影響を受けた

 

 

「…テメェ」

 

 

一方通行は低く呟き目の前の男を睨みつける

自身と同じ第1位

 

 

「あ?ネタバラシがして欲しそうな顔だな」

 

 

降魔は煙草を根元まで吸い、煙を吐く

その煙草を捨てると同時に、ズァ!!!と翼を羽ばたかせる

 

 

「…する訳ねぇだろ三下」

 

「ッ!!」

 

 

その声が聞こえた時には既に6枚の翼は放たれていた

通常の法則では有り得ないような動きをしながら、一方通行へ迫る

 

一方通行は足元にかかるベクトルを操作し、回避しようとする

今まで生きてきた中で回避することなどなかった一方通行が初めて回避行動に移る

 

しかし、ギュイン!!と白い翼は弾道を変え、正確に一方通行の体を捉える

 

 

「ごっ、ばァ……!?」

 

 

ゴキゴリゴリ!!という鈍い音が一方通行の体の中で炸裂する

初めてとも言える『痛み』と共に一方通行の体が勢いよく吹き飛ばされる

 

10メートル以上後ろにあるコンクリートの壁に激突する

ビルを支えるコンクリートの壁にヒビが入る

こぽこぽと一方通行の口から血が流れ出る

 

 

「どうだ、久しぶりの痛みは?気持ち良すぎて何も言えねぇかよ」

 

 

新しい煙草に火をつけながら蹲る一方通行を嘲笑う

そんな一方通行は信じられないという表情を一瞬し、キッと降魔を睨みつけ

 

 

「……調子乗ってンじゃ」

 

「あ?」

 

「ねェぞ!!!三下がァァ!!!!!!」

 

 

ただ飛び出す

ッッダン!!!とコンクリートを削り取る勢いで加速する

 

一方通行は全てを削り取れるような手を振るう

降魔の首をへし折り、その体をズタズタにするために腕を振るう

しかし、その手は空を切る

 

 

「はは、必死だな。俺から見りゃテメェもそこに居る妹達も同じに見えちまう」

 

 

降魔は6枚の翼を使って宙へ浮き、一方通行を見下す

そんな降魔を見て舌打ちをし、一方通行はギリッと苛立ちを表情に表す

 

 

「…何が言いいてェンだ」

 

「そこのガキもテメェも人間ってこった。生きるのに必死で、自分の命を脅かす者を排除しようとする」

 

 

降魔の言葉を遮るように一方通行が地面を蹴り、空中にいる降魔へ向けて両手を突き出す

まるで聞きたくないような言葉を言い放つ少年を止めるように

 

 

「そこに何の違いがあるってんだ?」

 

「吠えてンじゃねェぞ!!!!!!!!」

 

 

ゴチンッッ!!!!!!!と拳と拳がぶつかる

既に降魔は能力を切り替えている

 

『Model_Case ACCELERATOR』

 

先ほどの能力は確かに一方通行の反射を貫くことができるが、使い過ぎると能力を解析され、対策を練られる可能性がある

ならば使うのは目の前の男の能力

 

ベクトル操作とベクトル操作

互いの演算が一瞬で完了し、互いを吹き飛ばす

 

轟音と共に吹き飛ぶ両者

その目で見ているのは己の敵のみだった

 

 

だからだろう先ほどからの轟音に違和感を抱き、路地裏に足を踏み入れてきた少女に気がつかなかったのは

 

 

「そこで何をしているの?」

 

 

怪物と化物が一斉に声のする方に目を向けた

そこには白い修道服を着ている少女がいた

 

その少女を見て表情を変えたのは

一方通行ではなく、降魔だった

 

 

「あ?」

 

 

その一瞬の演算の綻びを一方通行は逃さなかった

第1位と第1位の戦闘で、僅かでも気を逸らすことが許されない世界

 

そんな世界で降魔は愚かにも気を一瞬だけ目の前の男以外へ向けてしまった

 

音が聞こえた瞬間には鮮血が散っていた

 

 

「ぶ」

 

 

降魔の口から出た血は螺旋を描き、地面へと落ちていく

ベクトル操作をモロに受けた降魔の体は背後へ吹き飛ばされる

全身の血流や生体電気を逆流されなかったのは不幸中の幸いだろう

 

一方通行は追撃の手を緩めない

目の前の男の命を刈り取るために地を蹴る

邪魔するもの全てを破壊する一方通行の突進がピタッと止まる

 

 

「あァ?何してンだ、オマエ」

 

 

一方通行の前に立ち塞がったのは白い修道服を着ている少女、インデックスだった

降魔を庇うように一方通行の前に立ち塞がっていた

 

 

「退け」

 

「退かないんだよ」

 

 

あの一方通行に一切物怖じしない

インデックスはジッと目の前の少年の赤い双眸を見つめる

 

 

「チッ」

 

 

舌打ちがあった

それ同時に聞こえた轟音は地面に倒れていたはずの降魔からだった

 

彼が行ったのは至ってシンプルだ

ただ地面を蹴った

そこにベクトル操作が絡み、ロケット並みの加速を生み出す

 

 

「わ、ひゃあああ!!」

 

 

場違いな悲鳴を出すインデックスの腕を掴み、空気を蹴る

虚を突かれた一方通行の横を通り過ぎ、倒れている妹達の1人も空いている手で掴む

 

そのまま風の翼を背中に接続する

空気を叩き、加速する

チラッと後ろを確認するが、一方通行は追ってきてはいないようだった

 

 

「わ、飛んでるんだよ!!」

 

 

降魔の腕に抱えられながら呑気な声を出す少女

先ほどから黙って抱えられている少女

対照的な2人を抱えて、降魔は病院を目指す

 

 

「ったく、やっぱり面倒なことはするもんじゃねぇな」

 

 

降魔は愚痴を漏らしながら学園都市の空をかけた

 

 

 

 

 

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