とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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たとえ死があったとしても

 

胸の怪我は思っていたより酷かった

能力を使っていなければ肋骨が折れ、折れた骨が心臓に突き刺さっていたらしい

妹達の1人を冥土帰しに預け、診察を受けた

 

インデックスには売店の食べ物を与え、今回の事は黙っているように言っておいた

流石に売店のおにぎりを全て食べ尽くすとは思っていなかった

 

 

「…あの少年もだけど、君も病院が好きなのかい?それともナース属性でもあるのかな?」

 

「あ?そんな訳ねぇだろ」

 

「そう言うんだったら少しは怪我をしない努力をして欲しいんだけどね?」

 

 

降魔の怪我の処置を終えた冥土帰しが呆れ顔で降魔を見つめる

彼は黙って近くに立て掛けてあった杖を取る

 

 

「俺が連れてきた奴は?」

 

「彼女なら今は病室にいるはずだ。もちろん安全面は完璧だよ?」

 

 

そのまま降魔は診察室から出て行こうとする

そんな降魔の背中に冥土帰しが言葉を投げかける

 

 

「あの子達に会っていかないのかい?」

 

「…あぁ、面倒ごとが終わってねぇからな」

 

 

降魔はそれに、と呟き

低い声で

 

 

「あの野郎をぶちのめさなきゃ俺の気が晴れねぇんだよ」

 

 

そう言って降魔は診察室から出て行った

冥土帰しはその背中をただただ眺めていた

 

 

 

◇◇◇

 

太陽も落ちかけ、薄暗い道を1人の少女が歩いていた

その少女の表情は暗く、目の前の現実に絶望しているかのようだった

フラフラとおぼつかない足取りで目的もなく歩く

 

 

御坂美琴はある決意を胸にこの場所を訪れていた

学園都市第23学区にある宇宙開発エリア

世界最高のスーパーコンピューター『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』との交信を行う情報送受信センターがある場所だった

学園都市が計画している実験を止めるためにある計画を立てていた

 

2万人のクローンの製造と殺害を指示した超高度並列演算機(アブソリュートシュミレーター)

2度とイカれた指示を出せないように計画を改竄した上でぶち壊す

 

 

そう計画していた

しかし、御坂の希望とも呼べる計画は失敗した

 

『樹形図の設計者は正体不明の高熱源体の直撃を受け、大破したものと判明』

 

そう報告書に書かれていた

樹形図の設計者は大破しており、計画の改竄も不可能

その上学園都市上層部は樹形図の設計者が破壊されたのを知っておきながら実験は継続するとのことだ

 

 

(……どうして)

 

 

フラフラと歩く御坂の脳内をマイナスの考えが支配する

心が壊れそうだった

 

超能力者とはいえまだ中学生である

自分のクローンが勝手に作られ、自身のクローンが虐殺されている

普通の中学生の心ならば壊れていてもおかしくない

 

友人にも頼れず、仲間なんていない

1人で戦うしかないのだ

 

フラフラと歩いているとある看板を横切った

その看板に載っている地図

その研究所は

 

 

「……ハハ」

 

 

昨日調べた計画の引き継ぎ先の施設である

御坂は乾いた笑みを浮かべ、施設を睨む

 

 

数分後にとてつもない爆発がその施設を襲った

 

 

「ひ、ひああああっ」

 

 

あまりの轟音と衝撃で研究所にいる研究者のほとんどが床を転がった

 

 

「爆発…?」

 

「いや、あれは……」

 

 

研究者達の目線の先には土煙に隠れ、電撃をあたりに撒き散らす襲撃者の姿が見えていた

全身に電気を纏い、冷酷な目つきをする襲撃者に研究者の全身が震える

 

バチンッ!!!威嚇のように電撃が彼らの目の前を弾き飛ばす

慌てて腰を上げ、逃げ出す

 

 

(…そうよ、まだ終わった訳じゃない)

 

 

怒れる雷神は手当たり次第に電撃を撒き散らす

 

 

(全部、全部壊してしまえばいい。機材も資金も跡形なく)

 

「あはっ、あはははは」

 

 

壊れた笑みを貼り付け、御坂美琴は辺りを破壊し尽くす

感情の篭っていない笑い声と爆発の音だけが響き渡る

 

 

(そうすれば、そうすればいつか)

『いつか?そんな都合のいい日が来るとして、その日までに何人の妹達が死ぬの?』

 

 

誰かが耳元でそう呟く

その言葉は御坂の身に重くのしかかった

 

 

「うるさいっ!!!!!」

 

 

その言葉を拒絶するように

その言葉から逃れるように

叫び、電撃を撒き散らす

 

 

「ならっ!!どうすればいいのよ!!?」

 

 

悲痛な叫びは誰にも届かなかった

言葉という刃は自分自身に深く浮き刺さるだけだった

 

 

「計画を!今!!すぐに!!!中止に追い込む」

 

 

あたり一面を瓦礫に変え、暴れ尽くす

 

 

「どんな方法があるっていうのよッッ!!!!!!!」

 

 

肩を震わせ、叫ぶ

その視界の片隅にあるモニターが入った

 

息を切らし、そのモニターに流れている映像を見る

その映像に写っているのは血塗れで走る少女と真っ白い少年

そして、LIVEの文字

 

今現在行われている実験を中継しているようだった

 

 

「あ、あぁ、」

 

 

言葉が出なかった

目で見ているものを心が拒絶している

 

倒れ込む少女の傷に少年が触れようとする

もちろんそれは治療をするためなどではないだろう

残虐に相手を殺すための一手だろう

 

 

「やっ、やだ。やめっ」

 

 

画面に縋るように御坂は震える

誰でもいい

神様でも、悪魔でも、怪物でも、化物でもいい

 

誰か、あの子を助けて

 

 

少年の白い手が傷口に触れそうになった瞬間、バンッ!と水っぽい音が御坂の耳に届く

 

 

「あ、あぁ、あああああああああ!!!!!!!」

 

 

思わず目を背けた

そして世界を恨むように叫んだ

 

死んだのだ

また1人死んだのだ

自分が殺したようなものだ

 

残酷な世界を拒絶するように耳を塞ぎ、叫ぶ

心が壊れた

 

精神という器に日々が入り、全てが漏れ出ている気がした

 

喜びが

怒りが

哀しみが

楽しみが

 

感情という感情が漏れ出てしまう

 

 

開いた穴を覆うような声が聞こえた

 

 

『…よぉ、昨日の借りを返しにきたぜクソもやし』

 

 

最初は自身の弱い心が生み出した幻想かと思った

バッとモニターを見ると

そこにいたのは、御坂もよく知る人物だった

 

一方通行(化物)と肩を並べるもう1人の超能力者

 

降魔向陽

 

幻想ではなかった

御坂の絶望は1人の少年によって打ち砕かれた

 

 

「…な、なんで、アンタが……」

 

 

聞こえるはずもない彼に御坂は問いかける

答えはなかった

聞こえたのはジュッと煙草に火をつける音だけだった

 

 

『オイオイ、こんくらいでへばってんじゃねぇぞ』

 

 

何をしたかはわからないが、降魔が一方通行を吹き飛ばし、ダメージを負わした

降魔の背中には純白の翼が生えていた

 

 

怪物と化物の2回目の衝突

 

 

 

いつの間にか起き上がっていた一方通行が降魔に肉薄する

それを降魔の白い翼が迎え撃つ

ガンゴンガガガン!!と鈍い音が炸裂する

 

 

『何度も同じ手が通用すると思ってンじゃねェぞ!!!!!』

 

 

一方通行が手をかざす

その瞬間、降魔の純白の翼が暴発する

 

 

『ばっ、ぐ!!?』

 

 

ギュルン!!と降魔の体が不自然に回転した。ゴキゴキグキ、とカメラを通して御坂まで降魔の体からの異音が聞こえた

 

体制を崩し、凄まじいダメージを負った降魔へトドメを刺すために

前回のように邪魔など入らなぬように確実に殺すために一方通行が駆ける

 

 

 

 

彼が何を思い、彼女を救ったのかはわからない

今までもそうだった

彼女達が関わった事件になんだかんだ言いながら付き合い、解決に協力してきた

 

 

「…お願い」

 

 

ポツリと御坂が呟いた

無意味でも、無価値でも、何も変えられなくても

 

御坂美琴は叫ぶ

先ほどの絶望の叫びとは質が違う

希望の光に未来を託すような叫びだ

 

 

「あの子達を助けて!!これ以上あの子達の命を奪わせないで!!!!」

 

 

初めてだろう御坂美琴という人間が他者にこんなに助けを求めるのは

 

そして、その時がきた

降魔の体制は崩され、体にも深刻なダメージがある

そんな少年に一方通行の必殺の一撃が確実に届く準備が整った

 

当然、白い超能力者は躊躇しない

己の目的の障害となる少年を殺すため、即座に行動に移った

 

しかし、御坂美琴は耳にする

 

少女の声など聞こえているはずもない

ましてや自分の命が脅かされている状況で

 

理不尽な世界を壊すような少年からの返答が

 

 

「了解」

 

 

短い言葉の後だった

降魔向陽と一方通行

2人の超能力者が同時に動く

 

 

 

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