とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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ヒーロー

一方通行と降魔向陽

2人の超能力者が同時に動いた

 

降魔は一方通行に自身の能力を操作され、能力の暴発が起こり、自身に多大なダメージを負った

体勢を崩され、文字通り血反吐を吐きながら目の前の敵を睨みつける

 

今から回避行動をとることはできない

もちろん攻撃へ踏み込むこともできない

 

降魔向陽は右手ではなく、地面につく左手を動かした

ギャリギャリギャリッ!!と金属が擦り合うような音が降魔の左腕の付け根から鳴る

 

左腕を強引に動かす

関節の可動域の外へ出る

 

義手である左腕に痛みなどはない

 

 

「なッッ!!??」

 

 

降魔の体が横へズレる

一方通行が突き出した両手を避けるように降魔の体が移動する

 

両者の体が接近する

 

降魔は右手を振りかぶり、一方通行の顔に狙いを定める

そして、そのまま拳を放つ

 

一方通行は降魔の拳を避ける素振りを見せない

己の反射を信じ切っている

 

直後、ゴチン!と硬いものと硬いものがぶつかり合う音が炸裂した

降魔の右の拳が一方通行の頬を捉え、そのまま吹き飛ばしたのだ

 

 

「な、」

 

 

一方通行は膝をつき、殴られた頬を抑える

口の中が切れたのか、彼の口からは血が垂れていた

 

 

「何しやがったンだ!!テメェはッッ!!!?」

 

 

吠える

殴られた箇所の痛みなど気にしている暇も余裕もなかった

何度目だろうかこの男に『反射』を破られ、ダメージを負わされたのは

 

 

「ネタバラシはテメェが死んだ後にテメェの墓の前でしてやるよ」

 

 

そう言って降魔は足元にかかるベクトルを操作する

ドッッッ!!と降魔の姿がブレる

 

人間の反応速度を超える速さで空中へ舞う

一方通行の耳に降魔の空気を蹴る連続した音が聞こえる

 

 

「チッ!!」

 

 

舌打ちと共に後ろへ下がる

直後、先ほどまで一方通行が立っていた所を凄まじい衝撃波が襲い、地面が砕ける

 

ギロリ、と普段はやる気のない目をしている降魔の目が鋭く己の標的を捕捉し続ける

その目を見て一方通行は背筋に何か冷たいものが走った気がした

 

 

「図に乗ってンじゃ、ねェぞ!!!!!!!!」

 

 

己が感じた感情を否定するように一方通行が降魔に迫る

先ほども自ら接近し、目の前の少年の拳を受けたことも忘れ、目の前の男を殺すために駆ける

 

一直線に迫る一方通行を見ながら、降魔は限られた時間と勝利までのプロセスを組み上げる

その計算は一瞬で終わり、その行動は素早かった

 

37秒

 

一方通行の突き出す両手をいとも簡単に避け、再び一方通行に肉薄する

絶望と驚愕に顔を染める一方通行の顔面に右の拳をめり込ませる

 

 

「ゴフッ!!??」

 

 

みし、メキメキ、と白い少年の顔から何かが軋む音が聞こえた

 

28秒

 

よろける一方通行へ向け、今度は降魔が突っ込む

狭い路地裏を駆け、反撃の隙を与えないために

降魔の視線と一方通行の視線が交差する

 

降魔は躊躇わずに拳を振り上げる

目の前の男にトドメを刺すために

 

そんな、降魔の視界の隅に何かが見えた

 

20秒

 

ゴンッ!!と鈍い音が降魔の脳内に響き渡った

そして遅れてやってきたのは鈍痛だった

 

 

「がッ、!!?」

 

 

視線が強引に横へ振られる

反射の壁を越え、降魔の頭部を襲ったのは、一方通行の拳だった

先ほどまで降魔が一方通行にしていたことを、今度は一方通行が降魔にしたのだ

 

17秒

 

一方通行の能力はベクトルを操作することだ

それを反射に設定することであらゆる攻撃を無効化している

 

降魔がやったことは簡単だ

一方通行の能力をコピーし、一方通行が反射するために操作するベクトルを降魔が操ったのだ

 

しかし、その手もすでに一方通行に使われてしまった

皮肉なものだろうあらゆる能力をコピーする降魔が、己の技術を真似られダメージを負うなんて

 

15秒

 

両者の体勢が崩れる

ダメージが入り、そのまま地面の上を滑る

 

先に体を起こしたのは降魔向陽だった

全てを能力に頼り切っている一方通行の軽い拳では完璧に降魔を封じることはできなかった

 

8秒

 

電極の残り時間を気にしている暇はない

体が動くと、演算に問題がないと確認した瞬間に動き出す

 

7秒

 

(Model_Case DARKMATTER)

 

能力を切り替え、純白の翼を見に纏い、標的へ迫る

 

6秒

 

ほとんど本能的に一方通行は起き上がり、真っ赤な双眸で自分に迫る標的を睨む

その目は人間ではなく、獣に近い何かのようだった

 

5秒

  

灰色の第1位は純白の翼を纏い

白色の第1位は己の反射を纏い

 

小細工などない激突

真正面から最強と最強がぶつかる

 

4秒

 

 

「「がああああああああああァァァァァぁぁッッ!!!!!!!」」

 

 

2つの叫びが重なった

路地裏にある建物はボロボロになり、戦闘の激しさを物語っている

先ほどまで一方通行に追われていた妹達の1人は降魔達から少し離れたところで気を失っている

これほどの戦闘に巻き込まれて目立った外傷がないのは、灰色の少年による仕業だろう

 

3秒

 

互いの拳が相手を捉える

第1位だとか、最強だとかは関係ない

今はただ目の前の男を倒すことだけに意識を向ける

 

一方通行は利き手である右手を

降魔はより高威力を出せる左手を

 

2秒

 

2人の少年の攻撃がクロスする

僅かに、ほんの僅かに攻撃が当たったのは降魔だった

一方通行の顔が殴り飛ばされ、右手が僅かにずれる

しかし、一方通行の執念とも言える右手が降魔の脇腹を抉り取る

 

 

「ぐ、ぶぅ!!」

 

 

それでもなお、降魔は力一杯に拳を振るう

ゴシャッ!!と降魔の拳は一方通行の顔を捉え、脳を揺さぶった

一方通行の意識は強引に刈り取られ、路地裏の汚い地面へと伏せる

 

1秒

 

倒れ伏す一方通行を見下ろし、傷口を抑える

そのまま妹達の1人のところへ向かおうとした瞬間、グラッと降魔の視界が揺れる

 

0秒

 

世界が歪んだと思ったら、降魔の体は地面に倒れ、見える景色は全てが異常なものになっていた

聞こえる音は異様で、見える景色は異色

肌に感じる触感は異常で、鼻を刺激する匂いは違和感しかなかった

 

 

怪物と化物の戦いは勝者すら立ち上がることの許されない戦闘だった

太陽も沈みかけ、薄暗い路地裏は静寂に包まれていた

 

 

 

◇◇◇

 

 

「ありゃ?」

 

 

ツンツン頭の少年は古本屋の紙袋を持ちながら、店の前で立ち止まった

店の前で黒猫を抱え、少年を待っているはずの少女がいなかった

少女の黒猫だけが地面に置かれていた

 

 

「……?」

 

 

何気なく見回す街の風景にナニカを感じた

古本屋と他の雑居ビルの隙間の路地に何かが落ちていた

 

少年が目を凝らして見ると、それは靴だった

しかも先ほどまで自分と一緒にいた少女が履いていたような靴だ

 

その時、ズゥゥゥンと地面を揺らすような地響きと衝撃音が聞こえた

 

 

「ッッ!!!」

 

 

その時にはもう少年は走り出していた

 

 

 

 

走る少年は何かを踏みつけた

 

 

「……、?」

 

 

ゆっくりと確認するとそれは、金色というより銅に近い金属だった

単三電池くらいのサイズの金属の筒だった

それは映画でしか見たことないような薬莢に見えた

心なしかあたりには煙のような、火薬のような匂いがうっすらと感じ取れた

 

足音を殺し、ゆっくりと先へ進む

一歩一歩進むたびに空気が濁っていくような気がした

 

路地裏のコンクリートには無数の傷痕

 

違和感が少年の体を包み込む

まるでとてつもない化け物がここで暴れたかのような痕跡

 

 

さらに進むと、凄まじい戦闘の爪痕と壁や地面には血痕があった

しかし、それだけで誰かが倒れているわけではなかった

 

少年は息を呑み、あることに気がつく

地面に溜まっていた血が路地雨あらの奥へ続いている

誰かが這いつくばって奥へ行ったような痕跡があった

 

恐る恐る先へ進む

そこには1人の少年が這いつくばりながら少女を引きずっていた

 

 

「み、さか……?」

 

 

這いつくばる少年に引きずられていたのは先ほどまで自分が話をしていた少女だった

少年は、上条当麻はそれを見た瞬間に走り出していた

 

 

「おい!!大丈夫なんだよな!!?」

 

 

上条は御坂妹と彼女を引きずっていた少年に声をかける

そこで上条はギョッとした

少年の横腹には拳ほどの大きさの穴がポッカリ空いていたのだ

それに少年の意識があるのかわからないような状態だった

 

 

上条当麻は慌てて救急車を呼ぶ

救急車を待っている間に上条は倒れている男を思い出す

 

確か初めて会ったのは常盤台中学の盛夏祭の時だった

彼はインデックスと面識があり、記憶を失う前の上条当麻と知り合いだったようだ

確かインデックスが向陽と呼んでいた気がする

 

彼は何故こんなに傷だらけになりながらこの場所にいたのだろう?

御坂妹と向陽の関係は?路地裏で何があったのか?

 

上条の脳内に疑問が支配する

 

 

そんな上条の後ろに何者かの気配がし、バッと上条は振り返る

 

見覚えのある茶色い髪、顔も、身長も、服装も、何もかもに見覚えがある少女が立っていた

そこにいたのは

 

御坂妹だった

いや、違う

御坂妹はここに倒れている

 

それでは目の前の少女は誰だ?

 

 

「な……?」

 

 

あまりに光景に上条の脳が思考を停止してしまった

目の前にいる少女はゆっくりとこちらへ歩いてきて、地面に倒れ伏す少年のそばに座った

 

 

「…お前は、誰だ?」

 

 

上条は冷や汗を流しながら目の前の少女の質問する

すると少女は悔しそうに顔を少し歪ませながら、

 

 

「ミサカは、この少年に命を救われ、外の世界を教えてもらったミサカです」

 

「……、」

 

「あなたは見たところ実験に関係のない一般人です。早く家に帰って今まで通りの日常を送るべきです」

 

 

少女は真っ直ぐと上条の目を見て、そう言い放った

上条が少女に何か言い返そうと思った瞬間、救急車が到着した

 

救急隊の人が慌てた様子で降魔と御坂妹をストレッチャーに乗せる

ミサカと名乗った少女は降魔に付き添うように救急車に乗った

 

上条も御坂妹の方の救急車に乗ろうと思ったが、そこで先ほどのミサカの言葉を思い出した

一瞬躊躇し、上条は救急車へ乗ることをしなかった

 

ただただ救急車を眺めていることしかできなかった

 

 

そして、救急車も出発し、1人になった

ゴンッ!!と壁を思いっきり叩く

鋭い痛みが走るがそんなことは関係ない

 

確かあの少女は『実験』と言っていた

それがどのような実験なのか、御坂美琴とどのように関係あるのか

 

上条は自分の足元に擦り寄る黒い子猫を抱き、常盤台中学の学生寮を目指して走った

 

 

「…ヒーロー擬きじゃない、ヒーローになるだろ!?上条当麻!!」

 

 

己を鼓舞するように1人のヒーローが舞台へ上がった

 

 

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