とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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鉄橋

 

 

「俺は、おまえとは戦わない」

 

 

上条当麻は両手を上げた状態で御坂美琴に向けてそう言い放った

御坂は目を見開き、驚く

 

 

「は、はぁ!?馬鹿じゃないの!?私が手を出さないとでも思ってんの!?無抵抗だろうが邪魔するなら撃ち抜くわよっ!!!!」

 

「それでも、戦わない」

 

 

感情をむき出しにして叫ぶ御坂に上条は冷静に宣言する

ギリッ!!と御坂は歯が砕けてしまいそうな程歯を食いしばり、

 

 

「フザっざけんな!!!!!」

 

 

電撃を放つ

その電撃は上条の近くの鉄の柱に当たり、凄まじい音と共に金属の柱を焦がし、ヘコませる

 

 

「戦う気があるなら拳を握れ!戦う気がないなら立ち塞がるな!!半端な気持ちで人の願いを踏みにじってんじゃないわよ!!!!」

 

 

怒りで電撃を撒き散らす

それでも上条は瞬き一つせずに、御坂を見つめ

 

 

「…戦わない」

 

「ッッ!!!戦えって、言ってんのよーーッッ!!!!」

 

 

その叫びと同時に一際高威力の電撃の槍が放たれた

先ほどまでとは違い、その攻撃は上条へ放たれた

 

電撃が上条の腹部に直撃し、鈍い音と共に上条の体を吹き飛ばす

何回も転がりながら上条は地面の上に倒れる

 

その攻撃に一番驚いていたのは攻撃を放った御坂自身だった

 

 

(え、嘘…?いつものうち消される感覚とは違う。体を撃ち抜く手応え)

 

 

日頃上条当麻の右手に攻撃を消されるような感覚ではなく、自身の攻撃が上条を貫く手応えに御坂は困惑していた

困惑している御坂の目の前で先ほど吹き飛ばされた上条が必死で立ち上がろうとしていた

 

 

「あ……」

 

 

ほとんど無意識に一歩踏み出し、彼へ手を差し伸べようとしていた

そのことに気がつき、震える手を逆の手で強引に押さえつける

口を硬く結び、優しさを捨てる

 

 

「こ、これでわかったでしょ。私は本気でアンタを………!?」

 

 

御坂の言葉は最後まで続かなかった

何故なら上条が立ち上がり、先ほど同じように両手を顔近くまで上げたからである

 

 

「な、んで」

 

 

殺す気はなかったにしても数十分は立てないほどのダメージだったはずだ

それにそこまでされてもまだ上条は戦わないと言ったのだ

御坂美琴には目の前にいる少年が理解できなかった

 

 

「言っただろ。おまえとは戦わないって」

 

「……ッッ!!どうしてよ!?こんなイカレた実験間違ってるってわかってるでしょ!!?それをやめさせようってんじゃない!!!なんで止めるのよっ!!?」

 

「あぁ、間違ってるよ。こんなモンの為に誰かが傷つくなんて」

 

「だったら!!」

 

「けど、おまえのやり方じゃおまえが救われない」

 

 

一瞬。ほんの一瞬、上条の言葉を聞いた御坂は唇を噛んだ

かつて誰にも届かないような声で『たすけて』と呟いた

その少年は少女の心の叫びに応えるように現れ、一筋の希望を紡いだ

おそらく自分の目の前にいるこの少年も自分が『たすけて』と言えば、どんな奇跡でさえも起こすに違いない

 

だけど、そんなことは許されない

自分のせいで1万人以上の妹達が殺された

そんな自分がのうのうと他力本願に救いを求めることなど許されるはずもない

 

 

「……、死ぬわよ」

 

 

御坂は目を閉じ、呟いた

 

 

「ここから先に救いはない!!次の一撃を食らったらアンタは絶対に生きられない!!だから死にたくなければそこを退きなさい!!!」

 

 

御坂の体から溢れる紫電の音色が鋭く重く、変化していく

それでも少年は一歩も動かない

 

この少年にハッタリは通じない

本当に生きるか死ぬかの一撃を放たなければ、この少年を諦めさせることはできない

ハッタリでないと分かれば流石に戦わざる得ないはずだ

 

しかし

 

 

「どかない」

 

 

聞こえたのははっきりとした返答だった

それを聞いた御坂はついに耐えれなくなり、叫んだ

 

硬く閉じたまぶたを貫通するほどの閃光。耳を覆う両手を突き抜けるほどの轟音

正真正銘の天をも穿つ雷撃があたりを襲う

 

そして最後まで上条当麻は右の拳を握らなかった

 

 

◇◇◇

 

 

上条の視界は明滅していた

最初に耳に入ってきたのは猫の泣き声だった

それと同時に、誰かがすすり泣くような音も聞こえる

 

 

「あ」

 

 

どうやら自分は御坂に膝枕されているらしい

そのことに気がつくのにも数十秒かかった

 

 

「…やっぱアンタ馬鹿でしょ。何も関係ないじゃない。見て見ぬ振りすれば今まで通りの生活に戻れるのに」

 

「……」

 

「能力を使えば私なんて軽く黙らせたのに。短い間だったけど心臓だって止まってたかもしれないのに……なんで」

 

「はは…」

 

 

軽く笑う上条の頬になんか透明の液体が垂れてきた

その正体に気がついた瞬間、上条は手を動かし、御坂の頭に右手を乗せる

 

 

「おまえの味方でよかったと思ってさ」

 

 

上条は御坂の頭を撫でる

そこいたのは学園都市第3位の『超能力者』とか、名門中学校である常盤台中学のエース『超電磁砲』でもなかった

そこにいたのは暗闇で震え、涙を流す小さな女の子だった

 

 

「だから泣くなよ」

 

 

そう言って御坂の涙を拭いとる

 

 

「わかったんだ。実験を止める方法」

 

 

意識を失っている間に何故だか浮かんだ違和感と共にその方法は思い浮かんだ

 

 

「実験は『一方通行』が最強ってのが前提で予測演算(シミュレート)されてる」

 

 

上条は強引に体を動かし、起き上がる

 

 

「じゃあソイツがめちゃくちゃ弱かったら?例えば学園都市最弱の無能力者なんかに負けちまったらその前提は崩れるんじゃないか?」

 

「ッ!!?待ってよ、まさか!!」

 

 

上条は起き上がり、御坂を真っ直ぐな目で見て、答えた

 

 

「俺が戦う」

 

 

御坂はその方法を聞いて全身に鳥肌が立つのがわかった

なぜそんな方法を提案できるんだ、と

 

 

「む、無理よ!!!アイツは私なんかとは次元が違う!!あんな化け物と対抗できるのはアイツと同じ第1位のアイツだけ」

 

 

なんでも解決してくれるママはここにはいない

 

 

「お願い!!1万人の人間を死なせた私の罪に誰にも巻き込んだりできない!!!」

 

 

困ったときだけ神頼みしても、奇跡が起きるわけじゃない

 

 

「これは、私が1人で終わらせなきゃいけないの!!!」

 

 

泣き叫んだら駆けつけてくれるヒーローは

 

 

「…俺の夢は、何一つ失うことなく皆が笑って帰ることだ。だからそれが叶うように協力してくれよ」

 

「………」

 

「待っててくれ。必ず御坂妹は連れて帰ってくる。約束する」

 

 

そう言い放った

御坂は溢れてくる涙を抑えきれず、大粒の涙を流した

 

 

 

◇◇◇

 

 

上条が去ってから御坂はしばらくその場から動くことができなかった

 

 

(止められなかった。止めなきゃいけなかったのに)

 

 

しかし、アイツならば自分にできないことをやってのけるのではないかという予感があった

 

 

(でも、なんの根拠もないし、一方通行と同じ第1位である彼以外、一方通行のベクトル操作を破る術なんて理論上ない)

 

 

地べたに座り込んでいるとミャー、という猫の鳴き声が聞こえた

最初は自分に向けて鳴いているのだと思った

 

しかし、黒い子猫は全く別の方向を向き、御坂に何かを知らせるように鳴いていた 

 

不意に、前方の暗がりから、何者かの人影が出てきた

その人影は明らかに普通の歩き方ではなかった。頼りないというよりは、不安定さが目立つ挙動

 

その人影はゆっくりと近づいてくる

御坂も目を凝らし、その人影をみた

その人影の正体がわかると、御坂の顔は一気に驚きに変わった

 

降魔向陽だ

 

自分と同じ学園都市第1位に挑み、死にはしなかったものの酷い怪我を負っていたはずの少年だった

その場面を自分はモニターを通じて見ていた。あれは決して数時間でどうにかなるような怪我ではない

 

 

「ちょ、アンタ何してんのよ!?」

 

 

慌てて御坂は降魔へ駆け寄る

フラフラ安定しない彼の体を支えるように肩を貸す

 

無理をしてきたのだろう息は切れ、顔は青白くなっている

それにいつもと違う所が沢山あった

いつもついている杖ではなく、病院にある点滴を吊すためのスタンドだった。体に巻かれている包帯は赤く変色している

 

 

「退、け」

 

 

降魔は御坂のことを手で払おうとするがその動きはノロノロと遅すぎる

 

 

「馬鹿!!なんでアンタもアイツもそんな無茶するのよ!!」

 

「あ?」

 

 

降魔は少しだけ御坂を見て、いつもとは違う真剣な表情で呟く

 

 

「…アイツの、初めての我儘だ。俺はアイツらに幸せになってほしいと思っている。だから、俺は行く」

 

「……」

 

 

御坂にはアイツが誰かはわからなかった

しかし、少しだけわかったような気もした

 

 

「わかった。なら私も行く」

 

「あ?」

 

「アンタもアイツも戦うのに私1人がここでじっとするなんてできない」

 

「チッ!勝手にしろ」

 

「…アンタそれが肩を貸してもらってる人に対する態度なの」

 

 

そこには先ほどまでのように切羽詰まっていた御坂の姿はなかった

いつもの御坂美琴が降魔に笑いかけた

 

 

それと同時にゴォォン!!と低い地響きが聞こえた

音の方を見ると暗闇にオレンジ色がうつっていた

 

どうやら上条当麻と一方通行の戦闘はすでに始まっているようだった

 

 

「急ぐぞ」

 

「え、あ、ちょ!!」

 

 

そう言って、降魔は電極を弾いた

御坂の返事を待たずに御坂を抱え、空気を蹴り、爆心地へと急ぐ

 

 

「ちょ、ちょっと!!アンタこんな動いて平気な訳!!?」

 

「あァ?平気だろうが平気じゃなかろうが関係ねェよ」

 

 

傷口が開き、大量の血が出ていようが関係ない

痛みを遮断し、得意のポーカーフェイスで押し切る

 

2人はトップスピードで実験が行われている場所へと急ぐ

 

 

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