とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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とても面倒な日常

暑さが厳しい中、学園都市同率第1位として公にされた降魔向陽は同居人であるリアと共に大通りを歩いていた

暗部での仕事や実験の妨害などで彼女らに心配を掛けたため、今回はそのお詫びを兼ねた買い物である

もう1人の同居人であるミサカは先ほど病院に送り、今は調整を受けているだろう

 

 

『どこに行きますか?』

 

 

昨日の夜から楽しみにしていたのだろういつもより少しだけテンションが高いように見える

そんなリアが降魔に聞いてくるが、別に彼自身欲しいものなどはなく、同居人達の服や生活用品を買いに来ているつもりである

 

 

「…どこでいい。お前は行きたいところはねぇのか」

 

『あなたと一緒ならどこでも楽しいです』

 

 

表情にこそ現れていないが、少しずつ目の前の少女も普通の女の子になってきているのだろう

嬉しいと思うと同時に少し気恥ずかしさを憶えた

 

 

「とりあえず、セブンミス」

 

「きゃあっ!!」

 

 

降魔の意見が言い終わる前に前方から誰かが倒れ込むような音と短い悲鳴が聞こえた

 

 

「あ?」

 

 

目線を少女から前に向けると、見覚えのある常盤台の少女達の後ろで倒れ込んでいる女性がいた

それと、必死な表情で走っている男もいた

 

どうやらひったくりのようだ

男はそのまま常盤台の少女を突き飛ばし、こちらに向かって走ってきた

押し飛ばされた少女は何やら文句を言っているが、途中でひったくりに気がついたらしい

即座に能力を使ってひったくりの男を捕らえようとするが、それよりも早く動いた男がいた

 

灰色の少年の靴底が、容赦なく男の腹部へめり込んだ

彼の片手は首元へ当てられており、すでにチョーカー型の電極のスイッチは切り替えてあった

能力の解放

 

 

「跳べ」

 

 

無慈悲な一言だった

あらゆる『向き』を操る自身と同じ第1位の能力

ッッドン!!!鈍い音と共に男の体が吹き飛ぶ

 

それでも威力は抑えてあったのか男の体はちょうどひったくりにあった女性のすぐそばまでしか転がらなかった

 

 

「チッ!面倒ごと持ってきてんじゃねぇよ、ゴミ屑が」

 

 

電極を通常モードへ戻し、煙草に火をつける

それを見ていた周りの観衆が歓声をあげる

それはそうだろう、先日発表された学園都市同率第1位である彼がこんなことをしたのだから

 

 

「降魔さん!!」

 

「あ?」

 

 

名前を呼ばれ、そちらを振り向くと、常盤台の少女達が駆けつけていた

確か泡浮と湾内とかいう奴らだった気がする

 

 

「流石ですわね」

 

「鮮やかでしたわ」

 

 

彼女らは何やら尊敬の眼差しで見てきている気がするが、気のせいだろう

 

 

「…面倒ごとは嫌いなんだ。あとはお前らが何とかしてくれ」

 

 

幸いなことにこの近くに警備員の詰所もある

あとはこいつらに任せても問題ないだろう

 

彼女らがいなくなった後、黒髪の少女がずっとこちらを見ていた

 

 

「…なんか用か?」

 

「い、いえ!何でもありませんわ!!本当はわたくし婚后光子が成敗するべきだったんでしょうが、今回は貴方に譲りますわ」

 

「そうかよ」

 

「一応わたくしはここで泡浮さん達を待ってますわ。貴方は如何なさりますの?」

 

「ダリィから帰る」

 

 

そう言って降魔は現場から離れようとした時、

 

 

「君、ちょっといいかな」

 

 

降魔の前に眼鏡をかけた青年が立ち塞がった

 

 

「あ?」

 

「さっきから見ていたんだど、少しやりすぎじゃないか?」

 

「……」

 

「いくら相手が犯罪者だからって、無闇に能力を使うのは感心しないね」

 

 

降魔は青年の話を聞きながら、煙草を消してポケット灰皿に入れる

 

 

「いきなり、誰ですの?あなたは」

 

 

隣で聞いていた婚后が男に詰め寄る

しかし、男は質問には答えずに淡々に話を進める

 

 

「事態を収拾する方法ならいくらでもあったはずだ」

 

「そーかよ」

 

「この先には警備員の詰所もあるし、監視カメラだってある」

 

「一体何が言いたいんですの?」

 

 

降魔より先に婚后が苛立ち始めている

婚后の質問をまた無視し、男は説教くさい言葉をズラズラ並べる

 

 

「それに君はここにいる人たちを危険に晒したことを認識すべきだ」

 

「はンっ、俺が気づいてねぇとでも思ってたのか」

 

そう言って降魔はひったくり男の右手を踏みつける

その手には折りたたみのナイフが握られていた

もちろん降魔は最初から気がついていた。ナイフがなければ彼が動くことはあり得なかっただろう

万が一、億が一の可能性。自身の隣にいた少女が傷つけられる可能性があったから彼は動いたのだ

 

 

「説教くせぇ台詞は終わりか?三下」

 

「っ!?た、偶々今回は上手くいったから良かったが、失敗したらどうしてたんだい?逆上した彼が子供や女性を人質にとったらどうするつもりだったんだい?」

 

「…この『幻想操作(AIMブースト)』をテメェのものさしで測るんじゃねぇよ。失敗なんざ有り得ねぇんだよカス」

 

 

男はこめかみをひくつかせて、降魔を睨みつける

対する降魔は面倒くさそうな目で男を見る

 

 

「そ、それでも…」

 

「ったく、うるせぇな。どうしても能力者を悪者にしたいみてぇだな」

 

 

降魔はポケットから煙草を取り出し、火をつける

おそらく降魔の言ったことが図星だったのだろう、男は先ほどまでの冷静な顔ではなくなっている

 

 

「いいかよく聞けよポンコツ」

 

 

降魔は杖をつきながら男に近づく

 

 

「喧嘩が売りてぇなら勝手に売ってろ。だがよ、テメェらゴミ屑みてぇな闇がうろついてるとイライラしちまうんだわ」

 

「ッッ!!!??」

 

 

目の前に入り男は深さは違えど降魔と同じ学園都市の闇にいる

闇特有の悪臭を降魔は感じ取った

煙草の煙を男の顔に吐きながら耳元で

 

 

「二度と俺らの前にツラ見せんじゃねぇよ」

 

 

そう言って誰も動けない中、降魔とリアは歩いて行ってしまった

降魔の迫力に男は、その場に立ち尽くし、拳を握りしめる

 

 

「…今に見てろ能力者ども」

 

 

確かにそう言っていた

だがそれは誰の耳にも入ることはなく、空気へ溶けていった

 

 

◇◇◇

 

 

買い物から帰ってきた降魔は煙草を吸うためにベランダに向かった

リアは降魔に買ってもらった服や小物を持って自室へと走っていった

 

煙を吸い込み、肺に煙を溜める

フゥ、と煙を吐き出して、煙草を味わう

煙草も中盤に差し掛かったところで、降魔の携帯がふるえる

 

 

「あ?」

 

 

携帯のディスプレイに表示されたのは『白井黒子』と言う知り合いの風紀委員だった

その名前を見た瞬間、降魔は何か面倒ごとが起きる気がして、電話に出るのはやめようと考えた

しかし、電話に出なかった場合、白井がここまで空間移動してくるかもしれない

何ならそっちの方が面倒くさい

 

ならばここで電話に出た方が良いと考え、降魔は携帯のボタンを押す

 

 

『もしもし、降魔さんですの?』

 

「…あぁ、何のようだ」

 

『今から言う場所に来ていただけませんか?緊急事態ですの』

 

「あ?」

 

 

緊急事態というわりには後ろから御坂たちの騒がしい声が聞こえる

断ろうと思ったが、今日の昼の出来事が気になった

学園都市の闇に関わっている男を見かけた

 

 

「……わかった。煙草吸い終わったら行く」

 

 

そう言って電話を切る

すると直ぐに白井から住所だけが書かれたメールが送られてきた

吸い終わった煙草を灰皿に入れる

 

幸いなことに場所はそう遠くはなかった

歩いていくには今日は暑すぎるし、面倒くさい

能力を使って行こうと考え、電極を弾こうとするが、出かける前にリアに声をかけていくことにした

 

リアの部屋の扉をノックもしないで開けた

 

 

「ッッ!!?」

 

「おい、ダリィが出かけて……あ?」

 

 

声をかけようとしたが、明らかにリアの挙動がおかしい

まるで何かを隠しているかのような反応を示した

 

机の上で何かを見ていたようだ

降魔がそれを確認するために、近づく

 

 

「あ?」

 

 

リアの机の上にあったのは、どこでもあるような中学校の学校案内だった

どうやらリアはこれを見ていたことを降魔に知られたくなかったようだ

 

 

「お前、学校に行きてぇのか?」

 

 

降魔の言葉にリアはホワイトボードに書く余裕もないのか、首を凄まじい勢いで縦に振る

それを見て、降魔はフッと少し微笑み

 

 

「そーか。俺が帰ったら色々準備すんぞ」

 

 

それを聞いたリアの表情が少しだけ明るくなった

それを見た降魔は電極を弾き、姿を消した

 

 

 

空間移動を数回使うと目的の場所にたどり着いた

少し離れたところのベンチに白井たちがいた

 

電極を切り替え、そちらへ向かう

 

 

「ったく、これが俺を呼んだ理由か?」

 

 

白井たちに話しかける

そして白井たはベンチに座る少女を囲んでいた

金色の髪に、透き通るような白い肌、そして少女は何やら棒付きキャンディーを舐めていた

 

 

「生憎だが、ガキのお守りはゴメンだぞ」

 

「いえ、先ほど佐天さんがこの子に知っていることはないか聞いたのですが、その時に出た名前が」

 

 

思い出されるのは先ほどの佐天と少女の会話

 

 

『私はね、涙子っていうの。あなたは、お名前言えるかな?』

 

『フェブリ』

 

 

先ほどまで口を閉ざしていた少女が佐天の手によって開かれる

その事実に周りは声を上げる

 

 

『フェブリちゃんかー。じゃあ何でもいいから知っていること教えてくれないかな?』

 

『…御坂美琴』

 

『へ、私?』

 

 

そう口にした

しかし御坂に目の前にいるフェブリという名の少女に見覚えはない

そして御坂たちが一通り話をしていると

 

 

『……降魔向陽』

 

『『『『へ?』』』』

 

 

この場にいない超能力者の名前を言った

とりあえずフェブリの情報を得るためにあの少年を呼ぶことにした

 

 

「…それで俺を呼んだのか」

 

「はい、降魔さんはこの子に見覚えはありませんの?」

 

 

白井に言われ、降魔はベンチの前まで行き、フェブリと呼ばれている少女を見る

しかし、当然の如く降魔に覚えはない

だが、降魔は覚えのある匂いを感じ取った

 

それは、学園都市の闇でよく感じ取るような人の悪意が出す悪臭だった

 

フェブリは降魔と目が合うと、少し怯え、ベンチから立ち上がり、佐天の元へと走っていってしまう

 

 

「あ?」

 

「ふふ、アンタも私と同じみたいね」

 

 

降魔を慰めるように御坂が肩をポン、と叩いてくる

どうやら御坂もこれと同じような目にあったらしい

 

とりあえずフェブリは、佐天の家でしばらく保護することになった

もう自分がいる意味がないと思い、降魔は家へ帰ろうとする

 

 

「…おい」

 

 

その前に白井に声をかける

白井は降魔が声をかけて着たことが意外なのか、キョトンとした顔をしていた

 

 

「どーも面倒ごとの匂いがしやがる」

 

「どういう、」

 

「あのガキから目を離すなよ」

 

 

そう言うと、降魔は白井の返事を待たずに歩いて行ってしまった

白井はただただその背中を見るだけしかできなかった

 

先日発表された学園都市同率第1位

前々からそれなりの高能力者だとは思っていたが、まさか第1位だとは思わなかった

そんな彼が警告を発した

 

白井は改めて佐天の背中で眠る少女を見る

 

 

 

 

 

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