とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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凱旋

夕暮れの街中を数人の男女が歩いていた

着ている制服は『学園都市研究発表会』の常連校のものだった

 

ある計画を成功させるために今日も研究所へ向かおうとしていた

自分たちのリーダーである男は、すでに到着しているらしい

 

 

人目のない路地裏をあえて経由する

いつもなら人っ子一人いない

 

しかし今日は違っていた

少し路地裏を進むと、目の前から足音が聞こえた

 

カツ、カツ、カツ、と

足音と一緒に聞こえたのはまるで杖をつくような音だった

 

 

「……ッッ!!」

 

 

先頭を歩いていた男が目の前から歩いてくる少年に気がついた

灰色の髪に、やる気のない目、灰色を基調とするパーカーを着ており、首筋にはチョーカーのようなものがついており、現代的なデザインの杖をついている

 

先頭の男の異変を感じ取ったのか、他のメンバーたちも目線を前に向ける

そこでようやく気がついた

 

学園都市同率第1位

幻想操作

降魔向陽

 

正真正銘の怪物が目の前からこちらに向かってきていた

 

所属するグループには学園都市の表では出回らないような情報も回ってくる    

当然、目の前にいる少年の情報も多少は回ってきていた

目の前にいる超能力者は自ら進んで、事件などに関わるタイプではないはずだ

 

 

「……」

 

 

緊張が走る

ゴクリ、と誰かが鳴らした喉の音すらも聴き取れるほどに五感が敏感になっていた

目の前の怪物から一瞬でも意識を逸らせば命はないと、直感が告げていた

 

恐怖を顔には出さずに第1位を通り過ぎる

あっけない

第1位の少年が通り過ぎると、気持ちに余裕が出てくる

 

そうだ

そうだよ

例の計画のことを第1位が知っているとは限らないし、例え知っていても第1位がそれを止める理由もないはずだ

 

膨れ上がった緊張を解くために、息を吐こうとした瞬間、

 

 

「……オイ」

 

 

確かに聞いた

その一声を聞いた瞬間、全員が動きを止める

指一本動かせば死ぬと思った

 

恐怖で酸素をうまく取り込めない

過呼吸になりそうな体に鞭を打ち、グループの1人が振り向く

 

 

「…な、何かご用ですか?」

 

 

努めて自然に振る舞う

男は目の前の少年が動いたのを確認できなかった

気がつけば、胸に衝撃が走り、世界が回転していた

 

男の体は数メートルは吹き飛び、壁に激突し、意識を失う

誰かの悲鳴が聞こえた

それと同時に全員が走り出した

無駄だろうが無意味だろうが関係なかった。少しでもあの怪物から離れたかった

 

しかし、それすらも相手の予測の域を出なかった

 

 

「ッッ!!??」

 

 

駆け出した全員の体が不自然に倒れる

ある者は地面に寝転がり、またある者は壁に寄りかかっている

全員意識はあるようだが、体を動かす事ができない

リーダーに連絡を取ろうにも携帯すら出せない

 

降魔はグループにいる唯一の少女の前に立つ

その少女の表情は恐怖で埋め尽くされる

 

 

「…テメェら生き残れる唯一の方法は俺の質問に答えることだけだ」

 

 

降魔は煙草を取り出し、火をつける

 

 

「面倒ごとは嫌いなんでな、テメェらが正直に答えてくれりゃそれで終わり。だが、質問を無視したり嘘を言った場合は手荒な手段になっちまうが、文句は言うなよ」

 

 

壁に寄りかかる少女に目線を合わせるように、しゃがみこむ

そして降魔は携帯を取り出し、1枚の写真を見せる

 

 

「…このガキを使ってテメェらは何をするつもりだ」

 

 

驚いて声が出ないとはこの事だった

何故第1位がこの写真を持っている、何故第1位が自分たちの正体に気づいている

何故何故何故何故何故何故

疑問が頭を支配する

 

だが、計画のことは言えない

言えるわけがない。アレは自分たちの希望そのものなのだ

 

 

「……」

 

 

無言を貫いていると

第1位はため息を吐き、立ち上がる

 

他のメンバーに聞きに行くのだろうか

そんな甘い考えが少女の頭によぎる

しかし、直後に聞こえたのは耳を塞ぎたくなるほどの絶叫だった

 

 

「いぎ、ぎゃあああああああああッッ!!!!!」

 

 

少女は目だけを動かし、声のする方を見る

そこには自身と同じグループにいる男の胸を第1位が足で押さえつけていた

第1位の正体不明の能力で凄まじい激痛が走っているのだろう。男の目には涙が浮かび、必死に降魔の足を掴もうと必死だった

しかし、一向に足を掴むことが出来ない

 

男は泡を吹きながら意識を失う

時間的には数十秒だっただろうか

降魔は足を離し、再び少女の元に戻る

 

 

「ガキを使ってテメェらは何をするつもりだ」

 

 

少女の呼吸が止まりかけた

次は自分だ。先ほどの行動で少女に確実に恐怖が植え付けられた

手が、指が、足が、一斉に震え始める

カチカチカチ、と歯が鳴る

 

少年が足を振り上げる

 

 

「言う!!言うからっ!!」

 

 

そう叫ぶと、少年の足が動きを止める

 

 

「私たちは、あの子を使って、難病に苦しむ子供達を、助けようとしているの」

 

 

ゆっくりとそう言った

それを聞いた他のメンバーは内心でその少女を褒めた

今の情報はもちろん嘘である

いざという時の為にそれ用の言い訳と詳細レポートを用意している

 

 

「か、カバンにレポートもあるから」

 

 

言い訳としては完璧に近いだろう

しかし、目の前の男は全てが規格外だった

弱者の小細工程度で欺けるほど単純ではない

 

 

「ダウト」

 

 

そう言って先ほどとは違う男の元へ近づいた

そのまま男の首を掴み、持ち上げる

苦しそうな呻き声を上げる男のことなど考えずに、そのまま壁に押し付ける

 

 

「…俺言ったよなァ、嘘言ったら手荒な手段とるぞって」

 

「がふ。あがぁ、ぐぅ」

 

 

苦しそうに抵抗するが、そんなものに意味はなかった

降魔はそんな男を冷めた目で見る

 

 

「勉強できるテメェらなら知ってると思うからよォ、教えてくれねェか?」

 

 

何を、と気く勇気なんて無かった

降魔は残虐な目で、男たちを睨む

 

 

「人間の生体電気や血流を操るとどうなっちまうんだ?俺はわかンねェからよ、実際にやってみていいか」

 

 

声を上げる暇もなかった

バチンッ!!と音が鳴った次の瞬間には、雄叫びのような悲鳴が響き渡った

目や鼻や耳から血が吹き出る

 

そのままカクン、と意識を失う

降魔はその男を放り投げ、また少女の元へ戻る

 

 

「ガキを使ってテメェらは何をするつもりだ」

 

「ひ、ひぃ」

 

 

次元が違うと言うことを思い知らされた

目の前にいる男の能力ならもっと簡単に情報を手に入れることもできただろう

しかし、男はそれをせずに自らの力を見せつけ、コチラの戦意を折ろうとしていた

 

 

少女は気がつくと自らの口で情報を洗いざらい話していた

計画の詳細、研究所の場所、組織に所属するメンバーの事、戦力など全てを聞いた

第1位はまるで事前に入手していた情報と照らし合わせように携帯を見ながら情報を確認していった

 

情報を聞き終わった降魔は、杖をつきながら何処かへ歩いて行ってしまった

 

第1位である彼がいなくなっても数十分は誰1人として身動きが取れなかった

リーダーの男に連絡をすると言う簡単な事さえも頭の中からすっぽ抜けていた

 

◇◇◇

 

 

家に帰ると、ちょうどリアが夕食の準備をしているところだった

同居人1号であるミサカも病院から帰ってきており、リビングでテレビを見ていた

 

 

『お帰りなさい』

 

「あぁ」

 

 

リアが降魔に気がつき、トテトテ歩いてきた

夕飯は生姜焼きのようだった

降魔は自身の部屋で部屋着に着替え、リビングに座る

テーブルには夕食が置かれていた

 

 

「オイ、これが書類だ。名前とか書いとけ」

 

 

そう言って降魔は、書類をリアに渡した

リアはそれを少し嬉しそうに抱え、自分の部屋に走っていった

 

 

「今のはなんですか、とミサカはあなたに質問してみます」

 

「あ?中学校の編入手続きの紙だ。どーやらアイツは学校に行きてぇらしい」

 

「…ふむ、そういう事でしたか」

 

「お前はいいのか?」

 

「何がでしょうか」

 

「学校だ」

 

 

ミサカは何かを少し考えるような仕草を取る

そして真正面から降魔を見つめ

 

 

「行きたくない、と言ったら嘘になります。しかし、ミサカなんかが行っていいものなのでしょうか?」

 

「あ?お前はもう自由なんだ、自分の欲望に正直になれ」

 

「そう、ですか」

 

 

ミサカは何かを決めたような目で降魔を見る

対する降魔はいつも通りのやる気のない目でミサカを見ていた

 

 

「ミサカも学校というところへ行ってみたいです、とミサカは自身の欲望を口にします」

 

「…そうか」

 

 

そう言って降魔は先ほどリアに渡したような書類をミサカに渡した

どうやらあらかじめ2セット持ってきていたようだ

 

ミサカも書類を嬉しそうに抱え、自分の部屋へと走っていった

 

そんな彼女らを見ながら降魔は夕食をとる

世間的にもうすぐ夏休みというものが終わる

学校に行っていない降魔には関係ないはずだが、2学期から降魔もとある高校へ編入することになっているのだ

彼女らの編入も時期的に降魔と同じタイミングだろう

 

面倒ごとが起きないように祈りながら降魔は夕飯を食べ進める

 

 

 

 

 

 

 

夕飯も終わり、降魔家は各々の時間を過ごしていた

降魔もベランダで煙草を吸っていると、ミサカとリアがやってきた

 

 

「書類が書けたのでチェックをお願いします」

 

『お願いします』

 

 

2人が先ほど渡した書類を持ちながら、降魔の元へとやってきた

 

 

「あぁ、ちょっと待ってろ」

 

 

煙草の煙を吸い、一気に吐く

そのまま灰皿へ入れ、リビングへと戻る

彼女らから書類を受け取り、チェックをしていく

 

一通り目を通し、2人の書類に問題がないことを確認する

一箇所を除いて

 

 

「オイ、なんで名前書いてねぇんだよ」

 

「えっと、それは、」

 

 

降魔の当然すぎる疑問に何故だか2人は恥ずかしそうに頬を染める

 

 

『名字はあなたのを使っていいですか』

 

「ミサカはそれもそうなのですが、名前の方もどうしたら良いのかわかりませんでした」

 

 

リアが意を決してホワイトボードに書き込む

ミサカは少し申し訳なさそうに、そう言った

 

降魔はそんな2人を見て、少しだけ口元を緩ませる

 

 

「あ?そんなことかよ。面倒くせぇな」

 

 

そう言って降魔は書類の名前記入欄に字を記入した

降魔リア(ごうまりあ)』 『降魔美鼓(ごうまみこ)

 

名前を書き込み、そのまま2人に渡す

それを受け取った2人は今まで以上に嬉しそうに話しながら部屋へ戻っていった

そんな2人の背中を見ながら、降魔も少しだけ温かい目で見守った

 

 

降魔も自分の部屋へ戻り、パソコンを使って今日得た様々な情報をパソコンに打ち込んでいく

ゴミみたいな計画を立てているクソみたいな組織を完璧に叩き潰す為に、降魔は情報を整理していく

 

 

「…ったく、面倒くせぇな」

 

 

先ほど『家族』と呼べるようなものと話していた少年とは明らかに違う表情だった

感情のスイッチを切り替える

 

降魔向陽から学園都市同率第1位『幻想操作』へ

一匹の怪物として目の前の標的に狙いを定める

 

 

 

 

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