とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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変わるモノ

暗部組織である『スタディ』のメンバーは全員で自身の研究所を走り回っていた

少しでも早くこの研究所を放棄し、新しい拠点へ行くために準備をしているのだ

幸いなことに金ならある

 

もはや時間の問題なのだ

計画の内容、研究所の場所、戦力など全てがヤツに知られてしまった

あの化物のことだ。次に出会ったが最後であろう

 

 

「まだか!!早く作業を終わらせろ!!」

 

 

リーダーである男が顔を真っ赤にしながら命令する

培養器の前にある機械に何かを打ち込んでいる少女、布束砥信は歯を食いしばりながら手を動かす

先日ここから逃したフェブリに2人の超能力者の名前を覚えさした

 

それが功を奏したのか、ここにいるメンバー全員が第1位の少年に出会い、リーダー以外は叩きのめされている

計画を知った彼がどう動くのは布束ですらわからない

だが、あの実験を止めるために動いていた彼ならば…

 

そう信じて、フェブリに彼の名前を覚えさせた

 

しかし、ここで彼らに逃げられてしまえば状況はまた振り出しに戻ってしまう

第1位の彼ならば追跡することも可能だろうが、時間が足りない

少しでも時間が惜しいのだ

 

 

ズウン!!!と、低い衝撃音が響き渡った

それと同時に警報が喧しく鳴り響く

 

 

「し、侵入者…?」

 

 

どうやら研究所の上にあるスタジアムに誰かが侵入してきたらしい

このタイミングでの侵入者

考えられるのはヤツしかいなかった

 

何台ものカメラを使い、侵入者の姿を捉える

そこには

 

 

「第1位!!??」

 

 

学園都市同率第1位降魔向陽

杖をつき、煙草をくわえながらゆっくりと歩いていた

その姿を見ていた全員の顔が真っ青になる

中には全身を震えさせている者までいた

 

 

『…面倒ごとは嫌いだからよ、さっさと潰れろ虫ケラ』

 

 

そう言って彼は首筋の電極を弄り、ただただ地面を踏みつける

それだけで地面が陥没し、スタジアムの下にある研究所に土砂が流れ込んでくる

悲鳴を上げる暇などなかった

その場にいた全員の視界が真っ黒に染まった

 

そして

そして、だ

その静寂の中で

 

 

「え?」

 

 

誰かが素っ頓狂な声を出した

その声が聞こえた者は全員は自分の耳がおかしくなったのかと思った

しかし、どうやらそう言うわけではないようだ

 

まるで研究所にいた全員だけを避けるかのように土砂が降ってきたようだった

怪我をしている者もいない

もちろん培養器の中にいる少女も無事

 

こんな人間離れした芸当ができるのは、これをやった張本人だけだ

 

 

「ったく、こんなジメジメしたとこに籠ってっからこんなチンケな事しかできねぇんだよ」

 

 

聞きたくない声が聞こえた

全員の心の奥に刻み込まれている恐怖が蘇る

誰1人として声を出す者はいなかった

 

 

「…死にてぇヤツ以外は動くな」

 

 

第1位、いや、降魔向陽は床に座り込んでいる者たちを一瞥し、スタスタと歩いて行く

誰1人として動くことができなかった

項垂れ、頭を抱えている

 

 

「…驚いたわ。本当に来てくれるなんて」

 

 

培養器の繋がれているキーボードに何かを打ち込みながら、降魔を見る

対する降魔は煙草に火をつけ、壁に寄りかかる

 

 

「別にお前らのために来たわけじゃねぇよ」

 

「But 貴方は来てくれた」

 

 

手を止め、こちらを見つめる布束から目をそらして降魔は舌打ちする

なんだかよくわからない感情が降魔の胸の中を渦巻く

その感情を排除するかのように煙を吸い込み、吐き出す

 

降魔が吐き出した煙が空気に霧散した瞬間、けたたましい警報が鳴り響く

 

 

「あ?」

 

 

降魔はあたりを見回す

先ほど釘を刺しておいたからか動いている馬鹿は1人しかいなかった

暗部組織『ステディ』のリーダーである男

 

 

「まだだ、まだ終わってなんかいない。僕がこんなところで終わるわけにはいかないんだ」

 

 

何やらブツブツ言いながらスマホを操作し、立ち上がる

どうやら何か面倒なことをしたのだろう

 

しばらくすると、数えきれない駆動鎧が溢れ出てきた

おそらく侵入者を潰す為に用意されたものだろう

 

 

「能力者共の最大の弱点は、所詮疲労する人間だと言うことだ。それは超能力者である貴様とて変わらんぞ」

 

 

醜く顔を歪め、勝ちを確信したかのように降魔に話しかける

降魔はそれをただただ黙って聞き続ける

 

 

「死ね!!能力者!!!」

 

 

そう叫ぶと、数えきれない数の駆動鎧が降魔へと迫る

降魔の後ろにいる布束もろとも殺すつもりだろう

 

しかし、布束は目を瞑ることすらしなかった

それどころか自身のできること、培養器の中にいる少女を救う為に手を動かし続ける

心配なんてなかった

 

自分の背中を守る者は、学園都市最強の少年なのだから

 

 

「…ダリィな」

 

 

少年はただ一言呟木、首筋に手を当てた

その瞬間、光の線が横なぎに払われた

それは一般的にビームと呼ばれるものだった

 

正式名称を『粒機波形高速砲』

学園都市超能力者第4位の能力

 

たったそれだけ

男が逆転の一手として放ったものは一瞬にして砕け散った

 

 

「ったく、面倒ごとも程々にしろっての」

 

 

煙草に火をつけながら、降魔は男に近づく

降魔が一歩近づくと、男は一歩後ろに下がる

それもいつまでも続かない

 

やがて男の背中に瓦礫がくっつく

声にならないような悲鳴を漏らす

 

 

「選べよ」

 

 

降魔は左手で男の首を掴む

こひゅ、という呼吸だか何だかわからないような音が出たが気にしない

そのまま壁に押しつけて吊る下げる

 

 

「アイツの作業が終わるまで大人しくするか、残虐にぶち殺されるか」

 

 

降魔は残された反対の手の関節を鳴らす

沈黙が数秒続いた

 

 

「わ、がっだ」

 

 

やがて男が口を開いた

それを聞いた降魔は男を放り投げ、布束の元へと戻る

 

 

「作業は?」

 

「順調、とは言い切れないわ」

 

「原因は何だ」

 

「…彼女を目覚めさせようとしてるのだけど、彼女を目覚めさせると自動的に学園都市に向けてミサイルが放たれるようにプログラムされているの」

 

 

恐らく後ろにいる男たちに解除させればいい問題ではないだろう

これは正真正銘最後の手段なのだろう

時間があれば布束でもプログラムを解除できるだろうが、培養器の中にいる少女の負担が計り知れない

それは降魔にとってもよくない展開だ

 

 

「…ミサイルはどっから発射される」

 

「宇宙エレベーター『エンデュミオン』付近にある人工衛星からよ」

 

「…オーケー」

 

 

電極のバッテリーは残り3分

だが、それだけあれば充分だ

 

 

「お前はそのままガキを目覚めさせろ」

 

「However ミサイルはどうするの?」

 

「俺が直接ぶち壊す」

 

 

降魔がそう言い終わると、複数の足音が近づいてくる

培養器の中にいる少女を目覚めさせる為にはフェブリの協力が不可欠だ

彼女を連れてくる為には『彼女ら』もついて来る

 

御坂美琴

白井黒子

初春飾利

佐天涙子

 

そして佐天の手にはフェブリもいる

 

 

「待たせたわね」

 

 

それと彼女たちを呼んだもう一つの理由

万が一の場合に降魔がこの場を離れなくてはいけなくなった場合、布束は1人になってしまう

戦意をへし折ったといえど、ゴミ共の近くに1人で居させるわけにもいかない

そこでゴミ共程度なら簡単に叩きのめせる戦力をここに残すことにした

 

御坂たちの到着を確認し、降魔は電極のスイッチを切り替えようとした

しかし、誰かがその手を掴んだ

 

 

「あ?」

 

 

それは白井だった

その顔はいつもにもまして真剣で、その中に不安が混じっているような顔だった

降魔はそんな白井を見下ろし

 

 

「…何の真似だ?」

 

「ミサイルを破壊する手段はお有りで?」

 

「当たり前だろーが」

 

 

話が長引きそうな為、降魔は煙草に火をつける

布束とフェブリたちが既に作業を開始しているが、時間はまだある

 

 

「帰ってこれますの?」

 

「……、」

 

 

白井の質問に答えることができなかった

電極のバッテリーは残り3分

余裕は一切ない

何らかのトラブルが少しでも発生すれば、降魔の電極のバッテリーは切れ、能力を使えなくなった生身の人間が凄まじい勢いで地面に叩きつけられるだろう

いや、もしかしたら宇宙空間から帰ってすら来れないだろう

 

降魔は白井から目をそらし、煙草の煙を吸い込む

そんな降魔を見て、白井はため息をつき

 

 

「…ならば私が一緒に行きますわ」

 

 

真っ直ぐとした瞳で降魔を見てそう言い放った

そんな彼女を見て、降魔は少し笑みを浮かべる

 

 

「勝手にしろ」

 

 

そう言った彼の横顔は何だか嬉しそうだった

そのまま彼は携帯を確認する

 

何かを確認し、今度こそ電極のスイッチを切り替える

 

 

「行くぞ」

 

 

そう言って降魔は白井を抱え、地面を蹴った

人を横向きに抱え上げてその胴を脚を両腕で支持する抱き方。いわゆるお姫様抱っこである

抱えられている白井は頬を赤くし、何やらブツブツ言っている

 

空気を蹴り上げ、軽々と音速を超える

生身の人間に耐えられる速度ではない

並のロケットを超えるスピードで移動する白井たちの体が無事なのは降魔が緻密なベクトル操作を行っているからである

 

降魔たちはもはや宇宙と言っても差し支えないところまで来ていた

彼らの後ろには青く美しい水の惑星がある

 

 

そんな彼らの横から何かが移動して来る

 

 

(これは、人工衛星ですの?)

 

 

降魔の完璧な演算に組み込まれている人工衛星

どこの国の物かなんて知らないが、使えるものは何でも使わせてもらう

 

ドンピシャ

 

降魔の目の前に人工衛星がきた瞬間、拳を握る

真正面から

人工衛星へと右の拳を振り抜いていく

 

余計な轟音などなかった

余すことなくベクトルを拳に注ぎ込む

最強最悪の一撃を放つ

 

 

完璧に放たれた悪魔の一撃は、凄まじい勢いでこちらへ向かって来るミサイルに直撃する

太陽に負けず劣らずの光が彼らを包み込む

 

 

それを見届けた降魔は流れに身を任すように、体の力を抜いた

電極のスイッチを通常モードへ切り替える

視線を正面から横にずらす

そこには宇宙エレベーター『エンデュミオン』がそびえ立っていた

 

 

「あ?」

 

 

偶然か必然か

誰かがエンデュミオンの中から降魔を見ていた

目が、合った

何か気味の悪いものを降魔は感じ取った

 

舌打ちをし、目を逸らす

 

 

 

ポスっと誰かが後ろから降魔を抱える

恐らく一緒にきていた白井だろう

その瞬間、景色が変わる

 

 

数回景色が変わり、気がつくと見覚えのあるグラウンドが見えてくる

 

 

 

 

無事に帰ってくると、フェブリによく似た少女が起き上がり、何やら楽しそうにフェブリや布束と話をしていた

どうやら上手くいったようだ

煙草を取り出し、くわえる

 

火をつけようすると、フェブリともう1人の少女がトテトテ歩いて来た

そして降魔の足元まで来て、ジッとこちらを見上げていた

流石の彼も純粋すぎる瞳を向けられ、戸惑う

 

 

「…何だ」

 

 

煙草には火をつけずに話しかける

そのまましゃがみ、目線を合わせる

 

すると少女たちは小さな声で「せーの」と言い

 

 

「「ごーま。ありがと!!」」

 

 

そう言って降魔目掛けて突っ込んできた

杖で体を支える彼に彼女らの突撃に耐えられるはずもなく、降魔は後ろへ倒れてしまう

 

 

「テ、テメェら……」

 

 

顔を引きつらせながら文句を言おうと彼女たちを見た降魔の言葉が途中で止まる

その代わりに出たのは暖かい笑みと、両手だった

 

笑顔で降魔に抱きつく彼女らの頭を撫でながら降魔は

 

 

「めんどくせぇな」

 

 

少し嬉しそうに微笑みながらそう言った

 

 

 

 

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