とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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9月1日。この世にいる殆どの学生が1年で最も怠い日だろう

夏休みという夢のような時間が終わり、悪夢のような学校生活がスタートするのだから

 

 

「……、」

 

 

降魔向陽もその1人だ

今まで学校なんてものに行っていなかった彼だが、とある事情によって高校へ行かなくてはいけないのだ

そんな彼は自分の家のリビングでエナジードリンクを飲みながら、目の前で嬉しそうにウキウキしている少女たちを見ていた

 

1人は透き通るような長い銀髪に首からホワイトボードを下げている少女

もう1人は肩まで届く短めの茶色い髪に腰にはカエルのストラップが付いている少女

2人とも何の変哲もないセーラー服を身に纏っている

 

鏡の前でキャッキャしている2人を尻目に降魔は自分の服装を見る

いつも着ている灰色のTシャツにワイシャツを着ている

 

降魔向陽

降魔美鼓

降魔リア

 

降魔家全員が今日から初めての学校なのである

 

 

「…そろそろ時間だ。行くぞ」

 

 

降魔はカバンを持ち、少女たちへ声へかける

 

 

「おっと、もうそんな時間ですか、とみさ、」

 

「口癖」

 

「美鼓は準備を急ぎます」

 

 

彼女らは2人とも学園都市の闇に関わっていた人間だ

美鼓は御坂美琴のクローン

リアは不死者

 

流石に勘付く奴はいないと思うが、隙は見せないことに越したことはない

彼は杖をつき、玄関を開ける

その後ろを2人の少女がついて行く

 

降魔の家から高校まではバスで10分ちょっとの距離だ

ちなみにリアたちの中学校は降魔の家から歩いて5分ほどの場所にあった

 

バスに揺られ、怠そうな目で外の景色を見る

降魔の頭の中は学校のどこで煙草を吸うかだけだった

 

 

◇◇◇

 

高校の校舎に辿り着いた降魔は初めて校門というものを通りぬけ、学校生活へ一歩踏み出した

現代的なデザインの杖をつき、職員室を目指す

様々な視線が降魔へ突き刺さる

舌打ちをして、足早に歩く

 

 

「少々お待ちください」

 

 

職員室についた降魔は教員に案内され、応接間に通された

降魔は学校に行ったことはないが、学校には在籍していた

『長点上機学園』という学園都市でも5本の指に入る超有名校

それプラス学園都市同率第1位

 

そんな彼が何の変哲もない学園都市でも低レベルであるこの高校に転校してきたのだ

教師陣は何としてでも彼をもてなすだろう

どうせ特別クラスと言って、隔離されるのだろう

机に足を乗っけて、ソファに寄りかかりながら、同居人2人のことを思う

 

コンコンコン、と扉がノックされる

降魔は視線だけを動かし、扉を見る

ガラッと扉が開けられ、降魔と同じく高校の制服に身を包んだ黒髪の少女が立っていた

 

その少女はソファに座る降魔に気がつくと、テクテクと歩いてきて

 

 

「あなたも転校生?」

 

 

そう言ってきた

も、ということは彼女も転校生なのだろう

 

 

「あぁ」

 

 

短く答える

黒髪の少女は降魔の隣に勝手に座り、こちらをジッと見てくる

 

 

「私は姫神秋沙(ひめがみあいさ)。あなたは?」

 

「…降魔向陽」

 

 

短くそう名乗る

最近になって人との関わりが増えてきた彼だが、元は1人が好きで他人を信用せずに生きてきたような人間だ

そんな彼が初対面の人間に警戒心を抱かないわけはなかった

 

そこからしばらくお互い無言の時間が続く

すると、再びノックがされる

ガラッと扉が開き、入ってきたのは降魔の見覚えのある人物だった

ピンク色の髪に子供のような身長の女性

 

 

「2人の担任になる月詠小萌なのです」

 

 

確か魔術師絡みの面倒ごとのの際に、上条と一緒にいたやつだった

隣にいた姫神は立ち上がってペコリとお辞儀をしていたが、降魔は目線を向けただけだった

 

 

「それではクラスに案内するのですよー」

 

 

そう言ってピンク色の幼女は出て行ってしまった

姫神はそのままついて行ってしまった

少し拍子抜けだ。隔離されると思っていたが、まさか普通のクラスに入れられるとは思っていなかった

降魔は舌打ちをし、杖を掴んで彼女らの後を追った

 

 

 

降魔と姫神はクラスの教室の前に待機させられていた

中からは騒がしい声が聞こえている

その喧しい騒音に顔を歪める

 

心の中でため息を吐き、煙草を吸いたいと思っていると、

 

 

「あれ、こうよう?」

 

 

聞き覚えのある声が聞こえた

降魔は声のした方へ顔を向けると、銀髪のシスターが突っ立っていた

10万3000冊の魔道書を記憶している魔道図書館

 

 

「あ?」

 

「あっ!秋沙もいるんだよ」

 

 

どうやらインデックスと隣の少女は知り合いだったようだ

そんなことより気になるのは、何故インデックスがここにいるのかだ

姫神と楽しそうに話していたインデックスは何かを思い出したように

 

 

「そういえばとうまはどこかな?」

 

 

そう言って彼女は教室の扉を開けて中に入って行ってしまった

しばらくすると中から上条の悲鳴が聞こえ、それと同時に月詠がインデックスを連れて廊下へ出てくる

 

 

「んもー!!シスターちゃんは転校生じゃないでしょう!?」

 

「でも私はとうまにお昼ご飯の事を…」

 

 

チラチラとこちらを見てくるインデックスにため息をつき、降魔は自身の財布から1万円を取り出す

 

 

「…ほらよ。これで好きなモン食って黙って帰って面倒ごと持ち込むな」

 

 

インデックスは降魔からお金を受け取ると嬉しそうに何処かへ歩いて行ってしまった

教室の中にいる上条が名前を呼ぶが、インデックスには聞こえていないようだ

 

 

「今日は転入生を紹介するのです!!喜べ、野郎どもと子猫ちゃんたち。転入生は女の子と男の子なのです」

 

 

クラスの中からドデカい歓声が聞こえる

教室の扉はすでに開いている。扉の向こうにいる月詠小萌が合図を出す

先に姫神が入り、その次に降魔が入る

 

真ん中にある教卓の横に立たされ、黒板に名前を書く

 

 

「霧ヶ丘女学院から来た姫神秋沙さんと長点上機学園から来た降魔向陽さんでーす」

 

 

男子たちは姫神に夢中になっている

そんな中、降魔にも決して少なくない視線が集まる

 

 

「霧ヶ丘と長点上機って、能力開発部門トップクラスの名門校じゃん」

 

「何でウチなんかに?」

 

「なぁ、アイツって最近発表された新しい超能力者じゃね?」

 

 

幼少期から日常から隔離されていた彼にとってこういった視線には慣れているが、慣れているからと言っていい気分になるわけではない

ピンク色の幼女に席を教えられ、降魔は指定された席に着く

 

そこはちょうど上条の真後ろだった

 

 

「…お前って高校生だったんだな」

 

 

席へ着いた降魔へ上条は話しかける

 

 

「まぁな」

 

 

一言だけ言って降魔は真新しい教科書を出す

 

 

「ん?何なん。上やんの知り合いなん?」

 

 

上条の隣の席にいた青髪の少年がこちらを見てくる

慣れない感覚を味わいながら、降魔は怠そうな目を青髪の少年に向ける

 

 

「あ、あぁ。夏休み中に知り合ってな。なぁ」

 

「あぁ」

 

 

上条に同意しておく

すると、青髪の少年は降魔の前に手を差し出し、

 

 

「僕ぁ、皆から青髪ピアスって呼ばれとります。ヨロシクな降ちん」

 

「あ?降ちん?」

 

「あれ?お気に召さんかった?僕の考えたあだ名は」

 

「…いや、面倒だがいいかもな」

 

 

そう言って青髪ピアスの手を握る

席に座り、窓から見える雲を眺める

 

面倒くさいがこういうのも悪くない、そう思えた

 

 

◇◇◇

 

 

始業式も無事に終わり、降魔は同居人たちに連絡を取ろうと携帯を取り出す

彼女らもそろそろ学校が終わるだろう

今日は慣れない事ばかりだったため疲れた

家に帰って飯を作る気にもなれず、3人でどこか食べに行こう

 

 

「あ?」

 

 

その携帯を取り出し、美鼓へ電話をかけようとした瞬間に何か変な『波』を感じ取った

AIM拡散力場を司る彼は、能力が制限されているとは言え些細なAIM拡散力場の変化を感じ取るくらいはできる

今、明らかな異常なAIM拡散力場の波があった

電極へ手を伸ばし、スイッチを切り替えようと思ったが、思い留まる

 

電話をかけると、相手は数コールもしないで出た

 

 

「…学校は終わったか?終わったんなら昼飯食いに行くぞ」

 

『ラジャー!!と美鼓は見えないあなたに向かって敬礼します』

 

「お前ら今どこに、」

 

 

彼女らの場所を聞き出そうとした瞬間、電話の先でポンッと小気味良い音が聞こえる

 

 

(あ?今の音は確か……)

 

 

それと同時に人々が逃げ出すような騒音と悲鳴が聞こえる

先ほどの音は、風紀委員の避難命令の為の簡易信号

恐らく何らかのトラブルが発生したのだろう

 

 

『み、美鼓は……』

 

「能力を使え。こっちで場所を読み取る」

 

 

その瞬間、電極を切り替える

演算が働き、学園都市中の能力者の情報が入ってくる

その中から探している発電能力者を見つけ出す

 

とん、と一歩踏み出すと景色が一瞬で変化する

目の前には制服姿の美鼓とリアがいた

電極を切り替え、2人の頭を撫でる

 

 

「無事か」

 

 

いつも通りの日常、ではないことが目の前で起こっていた

見覚えのあるツインテールの風紀委員と黒ずくめのゴス女が戦闘を繰り広げていた

見覚えの、聞き覚えの、感じ覚えのあるモノ

アレは恐らく……

 

そんな考えをしている内に風紀委員が金髪のゴス女を地面に拘束する

降魔は後ろにいる彼女らを少し下がらせる

そして、電極のスイッチを…

 

 

 

「日本語が正しく伝わっていませんの?」

 

 

学園都市の外からの侵入者

既に何名かの警備員も負傷させられているらしい

しかし、地面に拘束してしまえばできることはない

 

なのに何故だか目の前の女は余裕の表情を崩さない

 

ドゴンッ!!と背後で何かが爆発したかのような音と共に衝撃が走った

振り返ると、そこには目を疑うような光景が広がっていた

 

 

「な、んですの……?」

 

 

まるで巨人の腕のようだった

野太いナニカが地面から生えていたのだった

思考に空白が生じる

 

 

「痛っ」

 

 

その空白は突然の激痛によって破られる

痛みの原因である足元を見ると、地面の岩と岩が自分の足を挟み込んでいた

大きな、大きな口が自分の足を咥えて離さない

 

ぞわり、と自分の背中に何か得体の知れないモノが走った

何とも言えない未知なる恐怖

 

その恐怖を感じ取っている間にも目の前の腕は攻撃の標準をこちらへ定めている

ヤバイ、そう思った時には既に轟音が炸裂していた

 

 

「ったくよォ、面倒ごとは嫌いだっつってンだろォが」

 

 

岩の巨大な腕を容易く砕き、煙草に火をつける少年がいた

その少年はそのまま地面を踏む

ドッッ!!地面に力が伝わり、風紀委員の少女を挟んでいた岩も砕かれ、少女の体が宙に浮く

 

少年は風紀委員の少女、白井黒子の体を抱える

 

 

「ご、うまさん…?」

 

「あ?」

 

 

いつも通りの少年だ

怠そうな目にくわえ煙草

 

降魔は白井を地面に置き、目の前のゴス女を見る

案の定AIM拡散力場は感じ取れない

インデックスや神裂、ステイルと同じ魔術師と呼ばれる者だろう

 

第1位である彼が身構えた

魔術師の力はその片鱗すら把握できていない

自身の脳の一部をぶち壊したのも魔術と呼ばれるモノなのだ

警戒しないはずがない

 

 

魔術師の女は地面に寝たまま地面にチョークで何かを書く

すると、先ほどと同じように岩で出来た巨人の腕が地面から生える

しかし、先ほどと同じじゃないのは巨人の腕が生えた場所だ

 

降魔と白井がいる場所がからやや離れた場所

すなわち、美鼓とリアが立っている場所

 

 

「チッ!!!!」

 

 

盛大に舌打ちをし、腕をふるい、空気を掴み取る

空間を掌握して、空気の塊を打ち出す

音速を軽々通り越し、破壊の烈風が岩を噛み砕く

 

岩を噛み砕いた烈風は形を変え、少女らを包み込み、降り注ぐ岩の破片から守り抜く

 

降魔は殺気の籠もった目で魔術師の方を見るが、そこに既に姿はなかった

右手から炎を出し、煙草の吸殻を灰も残さず燃やし尽くす

まるで自身の怒りを具現化させたかのように炎は熱を帯びた

 

 

「…オイ、お前はあいつらを保護しろ」

 

 

地面に座って傷の治療をしている白井に低く呟く

返事を待たずに、歩き始める

降魔は歩きながらリアたちの方を見る

彼と目があった2人は真っ直ぐな目で頷いた

 

 

「ぶち殺しが確定したぞクソ魔術師」

 

 

低く呟き、金髪の魔術師の行方を追う

あのクソ魔術師に思い知らせてやらないといけない

誰を狙ったのかを

降魔を狙う分には構わない。一発入れてきたのならば百発返すだけだ

だが、アイツが狙ったのは美鼓やリアだ

降魔の初めて出来た『家族』という宝を狙った

 

魔術師『シェリー=クロムウェル』は知らず知らずの内に怪物の尻尾を踏みつけ、怪物の宝を傷つけようとしてしまったのだ

 

静かに怒りの炎を燃やす怪物が標的を見つけるために歩く

 

 

 

 

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