超音速旅客機は無事に学園都市に着き、土御門と別れる
すでに時刻はお昼の時間を指そうとしていた
これでは学校へは行けないだろう
転校2日目で学校を休むことになるとは、教師陣もびっくりしているだろう
しかし降魔にとって学歴などどうでもいい。上条当麻を監視するためだけに高校へ入学したのだ
気を取り直して、ヴルドたちが住む部屋へと向かう
土御門から渡された紙には住所が書かれていた
降魔は書かれた住所を目指し、いつも通り歩く
しかし、後ろの2人はそうはいかなかったようだ
「お、お姉ちゃん!!あれすごいかも!!」
「お、お、お、落ち着け。科学とはこれほどまでに発展しているものなのか」
興奮気味に周りをキョロキョロしながら歩いていた
降魔を含む学園都市にいる住民にとってはいつも通りの光景かもしれないが、学園都市の外の住人からすればこれは凄まじい光景なのだろう
ため息を吐き、歩みを進める
しばらく歩くと目的の住所までたどり着いた
ヴルドたちがこれから暮らす部屋があるマンションは見覚えのあるものだった
というか降魔がほとんど毎日見ているものだ
ここは降魔が住んでいるマンションだった
少し慌てて土御門の寄越した紙を見ると、部屋番号にも見覚えがある
この番号は降魔の部屋の隣の番号だったはずだ
「まじかよ」
今頃はあの金髪アロハサングラス野郎はしてやったりの表情をしているのだろう
それを考えると少しむかつくが、実際に降魔の目の届く範囲に彼女らがいるのは少し安心できた
マンションに入り、部屋の前まで歩く
「ほらよ、これが鍵だ。隣の部屋が俺の部屋だから何かあったら来い」
「あ、あぁ。すまない」
「家具とか生活用品は揃ってると思うが、何か足りなくなれば俺に言え」
そう言って降魔は自身の部屋に入る
当然だが同居人2人は学校へ行っているため、中には誰もいなかった
義手を貰いにいつもの病院に行こうと思ったが、中々気力が出ない
しかし、このまま片手だと些か不便だ
煙草を吸おうとベランダへ出る
ポケットから煙草の箱を取り出し、中を見る
中身は空っぽになっていた
その事実に舌打ちし、部屋に戻る
煙草を買いに行くついでに病院に寄ろう
適当に理由をつけて動くことにする
降魔は電極を切り替える
景色が一瞬で変わり、自分の部屋からいつもの病院の前に移動する
病院に入る前に近くのコンビニで煙草を買う
案の定だが年齢確認をされたが、彼は腐っても暗部の人間だ。偽造の免許証を提示して店員を黙らせた
そしていつも通り病院に入り、いつも通り受付を済ませ、いつも通りに待つ
いつも通りに喫煙所へ行こうと思い、いつもの喫煙所を目指す
しかしいつも通りではないことがあった
喫煙所の手前の曲がり角で誰かにぶつかったのである
相手も降魔も勢いよくぶつかり、杖をついている降魔はそのまま尻餅をついてしまう
「いててってミサカはミサカは痛みが走るお尻を撫でてみたり」
どうやら降魔がぶつかったのは、肩まである茶色の髪と同色の瞳と立派なアホ毛を持つ10歳前後の少女だった
降魔は立ち上がり、その少女に話しかける
「悪ぃな、大丈夫か?」
「うん大丈夫だよってミサカはミサカは杖をついているあなたを逆に心配してみる」
「…ちょっと待て、ミサカっつたか?」
そこで降魔は少女の見た目、それと特徴のある話し方、そしてある名前に気がつく
自分の知っている奴らよりもかなり幼いようだが、この見た目などで関係ないとは言えないだろう
少女が口を開こうとした時、少女の後ろから誰かがやってきた
「オイ、クソガキ。コーヒー買うのにどンだけ時間かかって、」
「あ?」
その人物に降魔は見覚えがあった真っ白い髪に赤い瞳、灰色を基調とした衣服の少年
しかし唯一見覚えのなかったのは、降魔と同じようにチョーカー型の電極を付け、杖をついていることだった
降魔はその姿を確認すし、一瞬だけ目が合う
その2人の間に何かピリピリしたようなものが流れた
その空気は彼らの近くにいるアホ毛の少女でも感じ取れ、表情を変化させるほどだった
フン、と降魔が鼻で笑い、彼らのもとを離れて喫煙所へ向かう
別にここでドンパチを始めるのも面倒くさい
煙草に火をつけ、久しぶりの煙を肺に入れていると、誰かが喫煙所の扉を開いた
中に入ってきたのは先ほどの少年だった
降魔と同じ学園都市同率第1位の一方通行だ。降魔は煙草を咥えながらそちらを見る
目の前の男が煙草を吸いにきたなんてことはないだろう
降魔は壁に寄りかかりながら煙を吐く、もちろん一方通行など一切見ない
彼がどうなっていようが降魔には関係ない
面倒ごとさえ持ち込まなければ降魔は一方通行に関与しない
「…何も聞かねェのか」
口を開いたのは一方通行だった
今まで見てきた一方通行とは全く違う雰囲気で降魔へ話しかける
そんな白い超能力者を見て、降魔は何とも言えない表情になる
降魔は少しの間だけ目を瞑り、煙を吐く
「別にお前に何があったかなんてどうでもいい」
だけど、と降魔はそう付け足し
「お前のその壊すしかできねぇ能力で誰かを救ったんだろ?自分と誰かを天秤にかけて、お前はその誰かを選んだ」
「……。」
「選んだんなら進めよ。お前の残されたモンでそれを守りきれ」
それは降魔だからこそかけれる言葉なのかもしれない
一方通行よりも先に自らの身を犠牲にして他者を救った彼だからこそ言える言葉
一方通行と同じ超能力者の第1位という同じ土俵に立つ彼だからこそ言える言葉
真の意味で彼と同じ目線で話せるのは彼だけのなのだろう
降魔に一方通行が何を思い、こんな姿になったのかはわからない
もちろん一方通行にも降魔が何を思っているのかはわからない
だけど、言えることはただ一つだ
己の守りたいものを守り抜くことの険しさを知った彼らは確実に前に進んだということだ
「それができねぇならさっさとくたばれクソもやし」
「うるせェなテメェがくたばれクソコピー野郎」
そう言って一方通行は喫煙所から出て行った
その表情は今までの彼からは想像もできないような晴れやかな表情だった
自身の中にあった迷いを断ち切り、己の信じる道へ突き進んでいく1人の主人公の誕生だった
喫煙所の中で降魔は病院の放送で自身の名前が呼ばれるのを聞いた
降魔は煙草を消し、喫煙所から出ていく
いつもの病室を開けると、そこには冥土帰しが困ったような表情でこちらを見ていた
彼の目線は降魔の無くなった右腕に向けられていた
「…そんなにナースを見るのが好きなのかな?それとも痛みで興奮を覚えるマゾってやつなのかな?後者なら良い心療内科か精神科を紹介するよ?」
「そんな訳ねぇだろ。俺は正常だ」
降魔は面倒くさそうな目で冥土帰しを見る
そこからしばらく冥土帰しによる診断が始まった
降魔は上の服を脱ぎ、冥土帰しに身を任せる
彼の体の至る所に傷跡が残っており、それだけで彼が今までどんな環境で過ごしてきたのかがわかる
しばらく、冥土帰しが診察する
「義手が必要になるね?」
それはそうだろう
杖をついている降魔としては、片腕がないだけで行動に制限がかかる
話合いを進め、義手の取り付けは明日ということになった
明日までの間は片腕だけで生活しなくてはいけないということだ
面倒ごとが起こらないと良いのだが、降魔はそればかりを考えていた
病室を出て、支払いを済ませる
そのまま携帯を取り出し、ローマから学園都市に向かう飛行機の中で登録した番号へ電話をかける
しばらく呼び出し音が鳴り響く
そして、ガチャっと誰かが電話に出る
『も!!もしもし!!?私は、ヴルド=レエでございます!!どうぞ!!?』
とんでもなく大きな声で電話で叫ぶのは降魔の隣の部屋の住人であるヴルド=レエという少女だ
土御門の話だとあの部屋に携帯電話を2つ置いておいたらしい。もちろん支払いは降魔だったが別にそこは気にしていなかった
魔術というオカルトにずっと身を置いていたから科学という分野には疎いのだろう
しかし、電話くらいはもう少し冷静に出て欲しかったと降魔は思っていた
「俺だ。電話くらい普通に、」
『俺だと!?お前、今流行っているオレオレ詐欺というやつだろ!??そんなふざけたものでは私は騙されんぞ!!ふ、はははははははは!!観念しろ悪党!!!』
もはや勢いで話をしている感が満載だった
降魔の言葉を遮って凄まじい勢いでヴルドは捲し立ててきた
これには流石の降魔も顔を痙攣らせる
「オイ、落ち着け。俺だ降魔向陽だ」
『ご、降魔か!!?お前こんなふざけたもので連絡してくるな!』
「携帯じゃねぇと連絡取れねぇだろうが」
『ケータイ…。これがケータイというものか!!』
「携帯如きではしゃぐな。俺は今から病院から帰る。エルドも部屋にいるな?」
『あ、あぁ。だが、さっきのケータイの音にびっくりしてしまって、その、なんだ、あれだ』
「あ?」
『……少し漏れてしまったらしくてな、今はトイレにいる」
「………チッ」
舌打ちをして、降魔は微妙な顔をする
「今から帰るから俺が帰ってから必要な細かい生活用品を買いに行くぞ」
『わかった。準備をしておく』
そう言って降魔は電話を切り、壁に寄りかかる
杖を脇で挟み器用に左手で電極のスイッチを切り替える
降魔の体に力が入る
景色が一瞬で変化し、降魔たちの部屋の前に辿り着く
降魔は自分の部屋ではなく、隣のヴルドたちの部屋の扉を特にノックなどしないで開ける
それがよくなかった
「あ?」
降魔の目の前には1人の少女がいた
別にこの部屋は彼女らの部屋だからその少女がいることは何の問題もないだろう
しかし、格好がまずかった
何故か衣服を一切着用していない格好
いわゆる全裸というやつだった
ノックなどをしないで部屋に入った降魔も悪いだろうが、部屋の中とはいえ全裸でいる少女にも幾らかは責任があるだろう
全裸の少女、エルド=レエは降魔の姿を確認すると、茹で蛸のように顔を真っ赤にして
「も、も、漏らしてないからぁ!!!!アレはお姉ちゃんの嘘だからぁァァァァ!!!!」
そう言ってエルドは部屋の奥へ全裸のまま駆け出して行ってしまった
降魔は面倒くさくても携帯の使い方をアイツらにしっかりと教えようと決めた