とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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動き出す能力者達

カーストの隠れ家に着いた降魔はとりあえず抱えている白井をソファに下ろす

白井の意識は先ほどから戻っていない

降魔は隠れ家にある医療道具を持ってくる

 

ソファに横になっている白井の服を脱がす

悪いとは思いつつも降魔は顔色ひとつ変えずに白井の制服を脱がし、傷を確認する

 

電極を切り替え、能力を解放する

まずは、コルク抜きと鉄の杭をどうにかする

優しくその2つに触れ、空間移動でそれらを移動させる

栓を失った傷口から血が溢れる

 

降魔は慌てずに演算を切り替える

 

白井の体の血液の向きを操作し、血液を正常に循環させる

破れた血管から血管まで透明なホースでもあるように血液を一滴たりともこぼさずに巡らせる

能力を使って止血しながら、止血剤を傷口に塗る

その上から包帯を丁寧に巻いていく

 

 

(…ひとまずはこんなもんか)

 

 

未だに意識の戻らない白井に毛布を掛け、血で汚れた常盤台の制服を洗濯機に放り込む

そのまま元々設置されているパソコンの前に腰を下ろし、情報を整理する

腐っても暗部組織の隠れ家だ。通常のパソコンからではアクセスできないような情報にも触れることができる

 

しばらく情報の海を漂い、ある情報に辿り着いた

 

 

「…樹形樹の設計者の残骸、ねぇ」

 

 

降魔が能力を失った日に樹形樹の設計者は破壊されてしまっている

そして、その残骸を求めて世界の8カ国と19の組織が躍起になっている。しかし、その中で復元可能な残骸は学園都市にあるものだけだという

その復元可能な残骸を巡り、幾つもの組織が学園都市へ侵入している

降魔への仕事の依頼は、その復元可能な残骸をあの女が外部組織に渡す護衛という訳だ

 

そして、パソコンには1人の女が映っていた

霧ヶ丘女学院にいる大能力者である赤毛の女

 

 

結標淡希(むすじめあわき)

 

 

降魔を利用し、降魔の絶対的なラインまで土足で踏み込んできた哀れな標的

こんなことになるんだったら仕事の依頼を受けた時に頭の中を覗いておくべきだった

面倒ごとを避けたつもりが余計な面倒ごとを増やしてしまった

 

そんなことを考えていると、ガサッと後ろで物音が聞こえた

降魔は煙草を咥えたまま振り返ると、白井が起き上がっていた

 

 

「起きたか」

 

 

白井は何かを思い出したように立ち上がろうとする

しかし、降魔が治療したとはいえ傷が完治したわけではない

呻き声をあげて、ストンとソファに座ってしまう

 

 

「これは…?」

 

「俺がある程度は治療した。とは言っても所詮は応急処置だ。後でちゃんと病院に行け」

 

「ち、りょう?」

 

 

そこで白井は自身の傷を確認しようと体を見て固まる

白井は下着だけしか着用しておらず、顔を真っ赤にして毛布をかぶる

 

 

「こ、こ、こ、これは!!?いいい一体どういうことですの!!??」

 

「だから治療したって言ってんだろ。まぁ、勝手に服を剥いだことは謝るわ。悪ぃ」

 

 

一切の反省の色もなく降魔は謝る

そんな降魔を毛布をかぶりながら恨めしそうな目で見る

 

 

「さぁて、話をしようか」

 

 

降魔は煙草を消しながら白井に向かってそういった

 

 

意識が戻った白井にはある程度の情報を隠しながらこの事件の内容を話した

詐欺などでの常套手段で大事な情報を隠しつつ、ある程度の真実を混ぜて相手に話すというものがある

そうすると相手は抜かれた大事な情報を勝手に自分で補い、勝手に納得するのだ

 

 

「それで、お前はどーする」

 

 

降魔は煙草に火をつけながら白井に尋ねる

白井は降魔が着ていたパーカーを羽織っている

 

彼女がここでリアイアしようが降魔のやることは変わらない

1人でも十分にあの女をぶちのめせる

 

ただ、彼女が自分で選び、結標とぶつかる事を選んだのなら降魔は手を貸す

学園都市の闇が関わっている以上はその闇を振り払うために自分自身で戦い、打ち勝たなければならない

 

 

「私は…」

 

 

そして、白井は真っ直ぐと降魔を見る

そして今まで以上に凛とした声で宣言する

 

 

「私は、お姉様の力になりたい!!!そのためにお力をお貸しください、降魔さん!!!!」

 

 

目の前の少女の叫びを聞き、降魔は煙草を一吸いだけし、煙を上に向かって吐く

そして目の前でコチラを見る白井に近づき、頭に手を乗せる

 

 

「…行くぞ」

 

 

それだけ言って降魔は近くのあった杖を乱暴に掴んだ

降魔はせっせと着替える白井の評価を改める

恐らく彼女の中には凄まじい葛藤があっただろう

本当ならば風紀委員ではない降魔など巻き込まず、1人で解決すべきだと考えているだろう

しかし、自分の力量をしっかりと把握し、降魔へ助力を求めた

自分のために、何より御坂美琴のために選んだ

 

 

「む。何を笑っていますの?」

 

「いや、俺が思ってる以上にお前がスゲェ奴だと思ってな」

 

 

降魔が珍しく褒めると同時に白井の携帯が鳴った

着替えがあらかた終わったのか、白井は電話に出る

 

しばらく誰かと会話をして、白井は準備を整える

降魔はそのわずかな時間を利用し、電極を充電する

 

2人の準備が終わり、降魔と白井は建物を出る

 

 

「結標共の逃走ルートのシュミレートは頭に入ってるな?」

 

「もちろんですの」

 

「行くぞ」

 

 

そう言って降魔が電極を切り替える

その瞬間、2人の姿が消えた

 

 

◇◇◇

 

 

轟音が響き渡った

その原因は1人の少女

学園都市に8人しかいない超能力者の第3位

超電磁砲、御坂美琴だった

 

彼女が放った電撃は鉄柱をへし折り、付近にいた男達を吹き飛ばす

 

 

「出てきなさい卑怯者。いつまでコソコソ隠れているつもり?」

 

 

この場にいるであろう誰かに彼女は言い放つ

 

 

「ふふ、別にコソコソしているつもりはないけれど、私はここで捕まる訳にはいかないの。どんな手を使ってでも逃げ延びさせて頂くわ」

 

 

その誰かは、鉄柱しかない建設現場の上に立っていた

サラシにブレザーを羽織り、結標淡希は御坂美琴を見下していた

 

 

「…無理よ。アンタの能力にはクセがある」

 

 

恐らく結標本人も気がついているであろう彼女の弱点

それは

 

 

「アンタは自分の体を移動させない!!書庫に残ってた暴走事故が絡んでるんじゃないの?」

 

 

過去にあった彼女の能力が暴走した事故

それが原因で彼女はトラウマを抱えることになった

 

 

「そして、演算に慎重になりすぎる余り計算式を確認するのに2、3秒のタイムラグが生じる」

 

 

御坂は結標を睨みながらポケットからどこにでもあるようなゲームセンターのコインを何枚か取り出す

 

 

「3秒あったら、何発撃てるかしら」

 

 

彼女の能力の真骨頂である超電磁砲の脅威が分からないほど結標も無能ではないだろう

結標は一瞬だけ、御坂の迫力に気圧されるが、すぐに余裕を取り戻す

 

 

「うふふ、貴女の方こそ随分と焦っているみたいじゃない」

 

 

まるで哀れむような目線で御坂を見下す

 

 

「そんなに『残骸』が組み直されるのが怖いのかしら?それとも実験が再開されるから?」

 

 

確実に結標は御坂の入ってはならないラインを超えた

しかし、結標が止まる様子はない

 

 

「あれらは実験のために作られたものでしょう?だったら本来の使い道みたく壊してあげればいいのよ」

 

「……本気で言ってんの?」

 

 

御坂は電撃と共に敵意や怒気を滲み出させる

 

 

「だって結局貴方は私と同じでしょう?自分のために戦っている。後悔、悲嘆そして怒り…。そんなちっぽけな自己満足のために」

 

「そうね」

 

 

御坂は否定しなかった

それと同時に拳を固く握る

思い出されるのは、先ほど自分の後輩と電話をした時のこと

 

 

「……私はムカついてる。頭の血管がブチ切れそうなくらいムカついてるわ」

 

 

自分が気づいていないとでも思っているのだろう

電話越しでもわかるくらいなあの子の声

 

 

「ええ!!私はムカついてるわよ!!ウチの後輩を巻き込んだ事と!!目の前のクズと!!この状況を作り出した自分自身に!!!」

 

 

怒りを含んだ叫びと共に御坂が電撃を撒き散らす

それと同時に結標が軍用の懐中電灯を振るう

それだけで御坂と結標の間に無数の鉄柱が現れる

 

 

「そんなスッカスカの盾なんて……!!!」

 

 

御坂は電撃を放ち、鉄柱を吹き飛ばす

しかし、次に現れたのは、黒い影

 

 

「さて問題。この中に無関係の一般人は何人混じっているでしょう?」

 

 

御坂の前に現れたのは数十人の人間だった

そして確実に御坂の動きが止まる

 

その隙を結標は逃さなかった

 

 

「何よ…。気絶してるのは全部あいつの仲間じゃない」

 

 

御坂は気絶して地面に倒れている男達を見て、顔を歪ませる

そして結標の姿は消えていた

恐らく御坂の動きが止まっている隙にどこかへ逃亡したのだろう

 

 

「くっ……!!!」

 

 

御坂は慌てて結標を追おうする

そんな彼女に近づく奴がいた

 

 

「待て」

 

 

それは降魔向陽だった

彼は1人で御坂へ近づく

 

 

「闇雲に探し回ったって時間の無駄だ。場所を絞るぞ」

 

「なんで…。何でアンタがここにいるのよ」

 

「お前の後輩と一緒に動いてたんだが、1人で突っ走っちまった」

 

「黒子と一緒だったの!?」

 

「あぁ」

 

 

降魔は煙草を取り出し、火をつける

 

 

「俺が下手に巻き込んじまった」

 

「アンタねぇ!!」

 

 

御坂が激昂し、降魔の胸ぐらを掴みながら叫ぶ

もし降魔が結標の仕事を受けていなかったら白井は巻き込まれなかっただろうか

もし降魔が白井を優先していれば白井を巻き込むことはなかっただろうか

もし降魔が怪我をした白井を病院に届け、彼1人で行動していれば……

 

IFの話をすればキリがない

今回の事件は確実に降魔の判断ミスによるものだ

 

 

「お前にもアイツにも悪ぃと思ってる。償いは必ずする。だけど今はアイツの安否を確認する方が先だ」

 

「……」

 

「だから急ぐぞ」

 

 

普段のやる気のない目ではない

真っ直ぐとした目で御坂を見る

その目を見た御坂はゆっくりと降魔の胸ぐらから手を離す

 

 

「……納得はできない。でも、今は黒子が心配だからアンタの手が必要」

 

 

そう言って彼女は歩き出だす

降魔もその後ろをついていくように歩く

 

 

「それで、あの女が行きそうな場所に心当たりがあるの?」

 

「…あるっちゃあるが、絶対じゃない」

 

 

降魔は立ち止まり

 

 

「俺はその場所へ行く。お前は風紀委員と警備員の情報を調べて、確実にアイツの場所へ行け」

 

 

それだけ言って、降魔は電極を切り替えてどこかへ跳んでいってしまった

 

 

「…ったく、しょーがないわね!!」

 

 

御坂も近くの公衆電話を探すために走り出す

 

 

 

 

 

 

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