とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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奇蹟の少女

スペースプレーンでの宇宙旅行を実現したオービット・ポータル社による開業記念試験飛行の際、 帰還直前のオリオン号がスペースデブリと接触、 エンジンブロックに損傷を受けたことで大事故に発展する。 第二三学区の飛行場へ不時着を果たしたオリオン号は、 着陸のショックにより損傷したエンジン部と機体客席部が分断されたことで、 その被害は最小限のものとなり、乗客乗員88名が奇蹟的に生還した。 この大事故により学園都市のスペースプレーン計画は凍結、 オービット・ポータル社は航宙事業からの撤退を余儀なくされた。

 

その規模の大きさに対して犠牲者が出なかったことから、『88の奇蹟』として語り継がれている

 

 

 

 

テレビでは宇宙エレベーターのエンデュミオンの完成に向けた特番が放送されていた

 

 

「むむむ、と美鼓はテレビを見ながら唸ってみます」

 

 

テレビを見ながら呟くのは、肩まで届く短めの茶髪に特徴的な話し方の少女

学園都市第3位の御坂美琴の軍用クローン

名前を降魔美鼓

 

 

『もうすぐ完成ですね』

 

 

その少女に反応するようにホワイトボードに文字を書く少女

学園都市の実験のせいで体を弄られた不死者

名前を降魔リア

 

 

「宇宙エレベーター『エンデュミオン』ねぇ」

 

 

テレビに映るオービット・ポータル社が建設した宇宙エレベーターを眺める少年

学園都市が誇る超能力者の序列は第1位

名前を降魔向陽

 

様々な事情が重なり、彼らは一つ屋根の下で暮らしている

そして彼には1つの仕事の依頼が舞い込んできている

暗部組織『カースト』としての仕事だ

 

内容はエンデュミオンのイメージソングを歌う少女の護衛

普段の彼ならば護衛など面倒くさい依頼は蹴っていただろう

しかし、引っかかることが多すぎる

 

面倒だがこの依頼を受けることにしていた

 

時間はちょうどお昼の時間

彼女らの昼飯は事前に作ってある

 

 

「…じゃあ俺は仕事に行ってくる」

 

「お気をつけて、と美鼓はあなたに敬礼します」

 

『頑張ってください』

 

 

2人の少女の敬礼を見ながら降魔は電極を切り替える

依頼主から護衛対象の情報をもらっている。さらに細かい容姿や性格、AIM拡散力場の情報まで調べていた

以前の似たような仕事ではこの確認を怠り、さらなる面倒ごとを招いてしまった

今回の依頼主は用意周到なのか何人もの仲介人を挟んでいた為、本人の情報を掴むことはできなかった

だから、せめて護衛対象の少女だけは調べ尽くした

 

 

鳴護アリサ(めいごありさ)、か」

 

 

護衛対象の少女の名前を呟き、演算を働かせる 

何万ものAIM拡散力場を感じ取り、対象のAIM拡散力場を捕捉する

どうやらレストランにいるようだ

 

能力を発動させ、降魔の姿が消える

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

降魔が家を出る前、まだリアや美鼓の昼飯を作る前

上条当麻とインデックスはある少女の歌声に魅了されていた

路上でライブを行う彼女の前には人だかりができており、上条たちもその中にいた

毛先を結んだ鴇色の長髪と、鳥のエンブレムがついた水色の鳥打帽子が特徴の少女だった

 

 

 

「ありがとうございました!!」

 

 

歌い終わった彼女は深々とお辞儀をした

パチパチと歓声と拍手が巻き起こる。そして徐々に人だかりもなくなっていく

彼女もそろそろ機材の片付けをしようと思ったが、まだ拍手をしてくれている人がいた

 

どうやらそれは真っ白い修道服を着た少女とツンツン頭の少年だった

シスターのような少女は全身を使って感情を表現しており、それを見ていると歌を歌って良かったと思える

 

 

「すごいすごいすごーい!!とーっても素敵だったんだよ!!」

 

 

興奮気味に拍手を送り続ける少女に向かって微笑む

 

 

「ありがとう。私は鳴護アリサ……きゃっ!!??」

 

 

お礼を言いながら近づこうとすると、コードが足に引っかかってしまい前につんのめって倒れそうになってしまう

 

 

「危ない!」

 

 

男の人の声が聞こえ、ドン!と硬い地面ではなく男の人のガッチリとした体にぶつかる

しかし、意外に勢いがあったのか彼女を支えるために前に出た上条のバランスも崩れてしまう

 

 

「わわっ」

 

「きゃっ」

 

 

2人揃って硬い地面に倒れてしまう

しかし、上条が少し支えたおかげか鳴護アリサは上条に覆いかぶさるように倒れる

2人が密着した距離で2人の目は合い、顔が真っ赤になる

 

ガチンッ!!と上条の耳に何かやな音が聞こえた

健康そうな歯をガチガチ鳴らしながら近づいてくるのは、

 

 

「とうまぁあああああ」

 

 

直後には鋭い痛みが上条の後頭部を襲っていた

上条の叫び声が嫌に響き渡った

 

 

 

上条たちも機材の片付けを手伝い、場所を少し移動した

 

 

「ほんとにほんとーにすごかったよ!感動したよ!ね、とうま!!」

 

「ああ、俺はあんまり歌とか聞かねーんだけど、それでもすごかったってのはわかったよ」

 

 

上条は何やら携帯をいじりながら答える

 

 

「ほら、全部ダウンロードできたぞ」

 

 

どうやら機械音痴のインデックスのためにアリサの歌をダウンロードしていたようだ

それを見たアリサは少し恥ずかしそうにしながら俯く

 

 

「ありがとう。気に入ってくれると嬉しいかな」

 

「ふふん。私、こう見えても歌にはうるさいんだよ。でもアリサの歌は本物だね」

 

「ほ…ほんと!!?」

 

「うん!だって歌詞に呪文(スペル)をのせたりしてないのにみんなの心を魅了してたんだもん!」

 

 

慌てて上条がインデックスの口を押さえるが遅かった

 

 

「スペル?」

 

「あ、いや。えーっと、すげーリアルに歌の情景が伝わってくるって感じでさ、精神感応(テレパス)能力か何かと思ったけど、違うみたいだしな」

 

 

上条は暴れるインデックスを押さえながらなんとか話題を変える

 

 

「あはは、それはないかな。だって、あたし無能力者(レベル0)だもん」

 

「あ、そーなのか」

 

 

いつの間にか上条の手から脱出したインデックスが上条に噛みつく

しかし、上条はそれを無視しながら話を進める

 

 

「うん、昔は悩んだけど、今は感謝してる」

 

「感謝?」

 

「何か能力があったらきっとそれに頼っちゃってただろうし、そもそも歌も歌ってなかったと思う。私、勉強とかもダメダメだし」

 

 

上条に噛みついていたインデックスもアリサの話に聞き入る

 

 

「でも、たったひとつできることが歌うことなの。だったら歌おう…そのためならなんでもしよう……」

 

 

アリサは上条たちの前に少し出て、夢を語る

 

 

「いつかね!ストリートじゃなくて、大きな場所でたくさんの人に私の歌を届けれたらいいなーって」

 

「「はぅ!!」」

 

 

上条とインデックスは夢を持つ少女の輝きに目をやられてしまう

そんな彼らを少し離れた位置で見ているアリサの携帯が震える

そしてその着信画面を見て少し固まる

 

 

「えと、いい…かな?」

 

 

どうやら大事な電話だったようだ

上条とインデックスは電話に出てオーケーのサインを出す

緊張した様子でアリサは電話に出る

 

 

「はい鳴護です!!…はい!……はい!本当ですか!?ありがとうございます!!…はい!わかりました!はい、今日中ですね…大丈夫です。はい、よろしくお願いします!」

 

 

電話を切った後、彼女は大きく深呼吸をした

まるで信じられないような出来事を前にして、自身を落ち着かせるように

 

そして満面の笑みで振り返り

 

 

「…私、オーディション受かっちゃった!!デビュー…できちゃうんだって!!!」

 

「うおぉ!スッゲェ!ってことはプロじゃん。ってことはテレビとかに出るのか?」

 

 

上条やインデックスも自分のことのように喜んでくれる

それが何よりも嬉しかった

 

 

「テレビってことはカナミンと同じになるってこと!?それはすごいんだよ!アリサ!!」

 

「ひゃー。ど、どうしよー!!」

 

 

インデックスとアリサは手を繋ぎながらピョンピョン跳ねて喜んでいる

そしてインデックスがアリサの手をガシッと強く掴み

 

 

「これは絶対お祝いしなきゃだよ!!そうだ、これから私たち美味しいものたくさん食べにいくんだよ!!アリサも一緒に行こうよ!!」

 

 

その言葉にギョッといたのは上条だった

もともと今日はインデックスのご機嫌を取るための食事だった

 

 

「え、でも悪いよ…」

 

「いいよね、とうま」

 

 

キランと光るインデックスの鋭い眼光に上条の抵抗は一瞬で崩れた

上条はガックリと頭をうなだれた

 

 

「じ、じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」

 

 

上条たちはすぐ近くのレストランへと向かった

インデックスとアリサには先にレストランへ入っててもらい、上条は近くのATMでお金を下ろす

 

少し遅れて上条がレストランのインデックスたちの席に行くと、そこにはテーブルいっぱいに料理が置かれていた

上条は自分の顔が引きつるのがわかった

既に伝票はとてつもない長さになっていた

 

ため息を吐き、上条も適当にテーブルの上にあるポテトをつまむ

 

 

「オーディションてあのエンデュミオンに関係したやつなのか?」

 

「うん!キャンペーンに使うイメージソングに私の歌が選ばれたの!!」

 

「私、知ってるんだよ!宇宙エレベーターだよね!ってことはアリサは宇宙に行くの?」

 

「うーん、まだわかんないけど、オープニングセレモニーで歌ったりするから行っちゃうかも!!」

 

 

その間にも凄まじい勢いで伝票が溜まりまくっている

上条はそれを掴み、叫び声を上げる

 

アリサは何かを思い出し、それを上条に確認する

 

 

「それで、もうすぐ護衛の人が来てくれるらしいんだ」

 

「護衛?」

 

「うん、オープニングセレモニーまでいてくれるの」

 

 

学園都市には危ない連中も数多くいる。内部でそれなのだから外部にはもっといるのだろう

それに宇宙エレベーターなんて物をよく思わない連中も出てくるだろう。それらから彼女を守るために護衛があるのかと上条は勝手に納得する

 

 

「…護衛かぁ。この街で護衛が務まるのなんてかなりの高能力者とかだろうな」

 

「私、ちょっと緊張してきたかも」

 

 

そんな話をしていると、急に誰かが現れた

何もなかったはずの虚空から誰かが飛び出してきたのだ

 

現れたのは灰色の髪にやる気のなさそうな目をし、首にはチョーカー型の電極を巻き、現代的なデザインの杖を持っている少年だった

 

上条はその特徴に全部当てはまる知り合いが1人いる

学園都市超能力者同率第1位であると同時に上条のクラスメイト

 

 

「降魔!?」

 

「あ?上条か?」

 

 

降魔は少しだけ驚いたような表情をする

対象の少女のAIM拡散力場を感知してここまできたが、まさか上条たちがいるとは思わなかった

上条は右手に宿る幻想殺しのせいでAIM拡散力場を発しないし、インデックスは学園都市のカリキュラムを受けていないためAIM拡散力場を発しない

 

 

「えーっと」

 

 

上条と降魔が顔見知りだというのをアリサも知り、少しうろたえる

そんな彼女に降魔が近づく

 

 

「今日から護衛をさせてもらう降魔向陽だ」

 

「あ、うん。よろしくお願いします」

 

「…敬語じゃなくていい」

 

 

そう言う少年を失礼だとは思ったが全身をまじまじと見てしまう

上条と比べると筋肉はなく、むしろ痩せすぎだと思うような体型。それに杖をついている

護衛という重苦しい言葉を聞いていたからもっと映画やドラマで見るようなムキムキのスーツの人が来るのだと思っていた

しかし、やってきたのは普通の少年だった

 

そんなアリサの視線に気がついたのか降魔はフン、と鼻をならして席に座る

 

 

「……そんなに心配しなくてもいい。こんなんでも大抵の奴にゃ負けねーよ」

 

「そうだよ!こうようはれべるふぁいぶの第1位なんだよ!!」

 

「えっ!!?超能力者!!?」

 

 

アリサは改めて降魔を見る

超能力者といえば学園都市に230万人の頂点。しかもその第1位

一応自分の知り合いに1人だけ超能力者の少女がいるがその少女よりも序列が上だった

 

 

「じゃあ、よろしくね。向陽くん」

 

「あぁ」

 

 

短く返事をして降魔はテーブルにあった山盛りポテトに手を伸ばす

 

 

 

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