とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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火種

レストランで食事をし終わった降魔たちは適当に近くのバッティングセンターへ向かっていた

その向かう途中、上条はずっと降魔にヘコヘコしていた

理由はインデックスとアリサが食べた大量の料理の代金を上条ではなく降魔が支払ったからだ

 

 

「ほ、ほんとに良かったんでせうか?」

 

「あ?別に気にすんなって言ってんだろ」

 

 

上条と降魔がそんなやりとりをしていると目的のバッティングセンターへ着いた

そしてポツリとアリサが呟く

 

 

「私ね、わりと運がいいみたいなの。こんなチャンス滅多にないなって……。恵まれてる方だなって思う」

 

 

まるで自分には実力はなく、ここまで話がうまく運んだのは幸運だったからと言わんばかりに

そんな彼女を見て、上条はバッティングセンターの打席に入り、コインを入れる

 

 

「それは違うだろ。チャンスだとか成功だとかいうのは、」

 

 

バットを持ち、構える

 

 

「怖がらずに打席に立って!打ちたいって願って!!めいっぱいバットを振った奴にしか訪れないんだ!!!」

 

 

かっこいい決め台詞と共にバットを振るう

しかし、ピッチングマシーンが放ったボールは上条のバットに当たる事なく、後ろに激突する

いわゆる空振りという奴だった

 

 

「説得力がないんだよ」

 

「格好わるいな。おい」

 

 

インデックスはジト目で眺め、降魔は嘲笑うように見る

アリサでさえ苦笑いを浮かべるしかなかった

 

 

「まぁ、俺の不幸は筋金入りだからな……」

 

 

顔を赤くし、頰をかきながら言い訳を並べる

 

 

「でも、アリサは実力で選ばれたんだ。それは誇っていい事だと思うぜ」

 

「…当麻くん」

 

 

上条のその言葉で少しは自分に自信が持てただろうか

そうこうしている間もピッチングマシーンは動き続ける

 

 

「あ!次来るよ!!」

 

 

アリサが警告を発したときには既にボールが投げられていた

機械の不具合か。何故か投げたボールは上条の頭に吸い寄せられるように軌道を描く

 

インデックスたちと座って見ていた降魔は黙って電極に手をかけた

 

 

「うぉわ!!」

 

 

上条の頭目掛けてやってきたボールは降魔の能力によって跳ね返される

跳ね返ったボールは凄まじい勢いでホームランの的へと直撃する

 

『おめでとうございます!!ホームランです!!』

 

そんな放送が入る

既に電極を通常モードへ戻していた降魔は何もなかったかのように上条を眺める

そんな彼を隣のアリサがキラキラした目で見る

 

 

「本当にすごいんだね。向陽くん」

 

「こんなんでも超能力者だからな」

 

 

そう言いながら降魔は何もない虚空を見つめる

その目はいつものやる気のない目ではなく、いつの間にか暗部の人間の獣のような目になっていた

そんな目で彼は何もないはずの天井を見る

 

 

 

 

 

上条たちが楽しそうにバッティングセンターにいる様子を眺める3人の少女がいた

科学の街には似合わない魔女のような格好をした少女たちは、バッティングセンターから少し離れたビルの屋上でモニターのような物を使っていた

 

 

「この子が鳴護アリサ」

 

 

そこに映る少女の名前を呟く

しばらくその映像を見ていたが、そこである少年と目が合う

灰色の髪に杖をついている少年と確実に目が合った

たまたまとかではない、少年は敵意の籠もった目でコチラを見ているのだ

 

しかしそれはあり得ない

向こうからは絶対に見えないようになっているのだ

ゾッとしたような感覚を覚えたのは、単純な恐怖からだろうか

まるで目の前に獰猛な怪物がいるようだった

 

だけど、作戦を中断するわけにはいかない

恐怖を振り払い、行動を開始する

 

 

◇◇◇

 

 

「…こんなに楽しかったのって久しぶりかな!」

 

 

バッティングセンターから帰る途中でアリサがそんな事を言う

彼女の住んでいる部屋まで上条は大量の音楽の道具を届けるために汗だくになっている

 

 

「本当に付き合ってくれてありがとう!」

 

「俺も無能力者だからさ、レベルなんて関係なしに夢を叶えようって奴がいると思うと励まされるしな」

 

「そうそう!未来に向かって頑張る人を見ると元気になるんだよ!!」

 

「えへへ、」

 

 

上条たちが楽しく話をしているのを降魔は少し離れた位置で眺める

煙草に火をつけ、煙を吸い込む

脳を働かせながら今後の動きを考える

 

先ほどのバッティングセンターでは確実に何者かがこちらの様子を窺っていた

これからそいつらは護衛対象である鳴護アリサに何らかのアクションを取るだろう

 

 

「––––––……♪」

 

 

そんな降魔の耳に鼻歌が聞こえる

どうやらアリサが歌っているようだ

降魔自身も彼女の歌は初めて聞くが、なんかとても暖かい気分になる歌声だった

そして歌に惹かれたのは降魔だけではなく、周りにいる人たちも彼女の歌に惹かれる

 

歩きながら彼女は歌詞のない歌を口ずさむ

降魔も一応彼女らの後をついていく

 

 

「ステキな旋律だね。すごく好きかも」

 

「その曲ダウンロードした中にあったよな。歌詞はないのか?」

 

「これはね今作っている途中なんだ」

 

「へぇー」

 

 

やってきたのは彼女の部屋からすぐ近くの公園だった

 

 

「それじゃあ当麻くん、インデックスちゃん、向陽くん、今日は本当にありがとう。デビューライブ決まったら必ず知らせるね」

 

「楽しみにしてるよ!」

 

 

ごぽ、こぽごぽ、と彼らのすぐ近くの池から何かが湧き上がる

その水しぶきは次第に大きくなり、その中から静かに少女が現れる

ゴニョゴニョっと何かを呟く

 

それにいち早く気がついたのは魔術の特殊な波を感じ取ったインデックスと

コチラを窺うように尾行していた彼女らの存在に気がついていた降魔だった(・・・・・・・・・・・・)

 

降魔の手が電極に伸びるよりも早く、少女が持っていた箒が光り、ドォン!!と低い音と共に水の柱が立つ

 

 

「なっ、何!?」

 

「いつの間に人払いが……!?」

 

 

水の柱がうねり、まるで生き物のように上条たち目掛けて横なぎに払う

 

 

「危ないっ!」

 

 

間一髪に上条がアリサを押し倒すように倒れる

上条の頭を掠め、水が通過していく

降魔は既に電極を切り替えており、襲撃者の攻撃をジャンプして躱していた

そのまま空中で敵全員の位置を正確に把握する

 

 

「気をつけてとうま!水のエレメントを使役する術式だよ!」

 

「ってことは魔術の連中かよ」

 

 

襲撃者は3人

1人は上条の正面の池の中、1人は降魔の近くの岩のオブジェクトの上、1人は2人から少し離れた場所にいる

 

 

「2人とも下がってろ!降魔!!1人頼む!!」

 

 

上条がそう叫び、池にいる敵へと駆け出す

魔術師という単語が降魔の頭の中をよぎる

 

 

「マリーベート!足止めして!!」

 

 

池にいる金髪のウェーブがかかった少女が叫ぶと、上条の足が急に止まる

まるで地面が上条の足を挟み込むように掴んで足止めしていた

 

その間に池の少女が箒を振るう

すると、水が形を変えてまるで短剣のような形に変形する

 

 

「ジェーン!!」

 

 

岩のオブジェクトの上にいる少女が持っている扇を振るう

突風が巻き起こり、風が水の短剣を掴み、上条目掛けて振り下ろす

 

 

「チッ!」

 

 

舌打ちをし、降魔は攻撃のために使おうとした能力を切り替える

降魔は腕を振るい、空間を掌握する

上条目掛けて振り下ろされた風の塊と水の短剣に対して降魔の烈風がぶつかる

 

魔術師の風の塊は降魔の烈風に砕かれ、水の短剣は上条の右手によって砕かれる

 

 

「何者だよ、お前ら」

 

 

上条が低く呟き襲撃者たちを睨みつける

それと同時に3人が動き始める

 

ガクン、と水の上に立っていた少女の体勢が崩れ、水の中へ落下する

 

 

「これは、強制詠唱(スペルインターセプト)!!?」

 

 

インデックスが水の上の少女を封じる

彼女を助けようと動く2人の少女に2人の少年が畳み掛ける

 

 

「メアリエ!!」

 

「…よぉ」

 

 

風を操っていた少女の前に学園都市が生み出した怪物が姿を現す

何故降魔が3人の魔術師の存在に気がつきながら放置したのか、それは

 

 

「こっちにも都合があんだよ、悪ぃがここで潰れろ」

 

 

降魔の電極には圧倒的な弱点が存在する

それは電極には制限時間が存在するという点と電極を切り替えるというワンアクションが必要な点である

奇襲や持久戦には滅法弱いのだ

 

だから待った

襲撃者が1人ずつではなく、全員揃って攻撃を仕掛けるようにするために

まとめて全員を確実に叩き潰せる機会を

 

降魔の背中には白い翼が生えていた

その神秘的な羽が蠢き、ジェーンと呼ばれていた少女の服を引っ掛け吹き飛ばす

ギュルンと少女の小柄な体が空中で切り揉み状に回転する

 

先ほどまで少女がいた岩のオブジェクトの上に立ち、電極を切り替える

どうやら上条の方も片付いたようだ

 

そんな彼らを灼熱の業火がおそう

 

 

「チッ」

 

 

左腕の断面が疼いた

降魔には確信があった

この炎は、

 

 

「…ステイル!!これはどういうことなんだよ!?」

 

 

魔術師ステイル=マグヌスの炎だ

かつて降魔の左腕を灰にしたイギリスの魔術師

 

上条が叫ぶと、ステイルは手に持っていた煙草を吸う

そして、

 

 

「Fortis931!!!!」

 

 

雰囲気が変わる

それは降魔だけではなく、降魔よりも深く魔術に関わっている上条も感じ取っていた

 

真紅の炎を纏って、ステイルは上条へ襲いかかる

上条は自身の右手でステイルの炎を打ち消し、受け流す

 

 

「何を呆けている!アレを確保しろ!」

 

 

ステイルが叫び、その指示で先ほどの3人の少女が動き出す

それを聞いた上条がアリサのもとへ行こうとするが、彼の目の前に炎の巨人が立ち塞がる

上条は何とか炎の巨人の攻撃を右手でいなしつつ、声を上げる

 

 

「降魔、頼む!」

 

 

舌打ちと共に岩を砕くような音が別の場所から聞こえた

それを聞いて上条は少し余裕を取り戻しながら目の前の男を見る

 

ステイルの指示で動き出した3人の少女の前に降魔向陽が立ち塞がる

降魔は電極を通常モードに戻しており、杖をつきながら目の前の少女たちを睨みつける

 

 

「…そこから一歩でも前に動いてみろ。今度は手加減なんざつまんねぇ真似しねぇで、ぶち殺すぞ」

 

 

彼が懐から何かを取り出す

それは黒光している鉄の塊だった  

降魔は胸のホルスターから拳銃を取り出し、銃口を少女たちに向けた

 

ピリッとした緊張が走る

いくら魔術師と呼ばれる人間だろうが、銃口を向けられて動揺を見せない奴などいない

その証拠に目の前の少女たちには決して小さくい恐怖と動揺が表れている

 

だがそれでも少女たちは動こうとする

 

バスン、と小気味良い音が連続で鳴る

彼が持っていた拳銃の銃口からは煙が昇っており、彼女らの足元のコンクリートはひび割れていた

次は外さずにその体に穴を開けるぞ、と彼の目が語っていた

 

ドンっ!!と降魔と少女の間の地面が不自然に迫り上がった

それと同時に少女らが動く、3方向からの別々の攻撃

 

舌打ちが1つ

 

降魔が電極へ手を伸ばすのと少女らが魔術を放つのは同じタイミングだった

目の前に迫る魔術

全ての動きがスローモーションのようだった

 

間に合わない

そんな考えが少年の頭をよぎる

 

 

「やめてーっ!!!!!!」

 

 

そんな彼の鼓膜をある少女の声が揺らした

そして揺らしたのは彼の鼓膜だけではなかった

 

不自然に魔術師の少女たちが放った魔術が揺れ、掻き消える

降魔が何かをしたわけではない

まるで『奇蹟』が起きたように彼を傷つけようとしていた魔術は消えた

 

 

「あ?」

 

 

だが、そんなことを調べる暇もなかった

ズドドドドン、と連続した爆発が辺りを襲う

 

ゆっくりと周りを見渡すと降魔や魔術師を囲むように複数の特殊機動兵器が展開されていた

数を確認しながら上条やアリサがいるところまで向かう

 

 

『我々は学園都市統括理事会に認可を得た民事解決用緩衝部隊である。これより特別介入を開始する』

 

 

まるで海生生物のような特殊機動兵器はそう宣言した

魔術の次は科学

学園都市に数ある私設治安維持部隊の1つだろう

 

 

「降魔!アリサが、」

 

 

上条が抱えている鳴護アリサは意識がなく、ぐったりとしていた

降魔は上条が抱えるアリサの手首に触れる

脈や呼吸は安定していること確認する

 

 

「…心配はいらねぇよ。気を失ってるだけだ」

 

 

そう言って降魔はどこかへ歩いて行こうとする

 

 

「お、おい!どこいくんだよ!?」

 

「…お前はソイツを保護しとけ、しばらくしてからまた連絡する」

 

 

そう言うと返事も待たずにどこかへ飛び立ってしまった

 

 

◇◇◇

 

 

降魔は空気を蹴りながら標的を確認する

怪物に捕捉された哀れな獲物は先ほど降魔たちを囲んでいた特殊機動兵器の1つ

聞きたいことは山ほどある

 

真上からの襲撃

彼が特殊機動兵器の上に降り立つだけで、その無駄にデカい体が地面に沈み込む

演算を切り替え、バチン!!と電撃を撒き散らす

降魔の電気は特殊機動兵器の電子に侵入し、制御を乗っ取る

完全に沈黙した兵器の出入り口のハッチを開ける。鍵がかかってようが関係ない。強引に鋼鉄のハッチを布団をめくるようにこじ開ける

 

 

「…よぉ、ちょっとばっかし聞きてぇことがあるんだが、答えてくれるか」

 

 

中にいる隊員にとっては恐怖以外のなんの感情も湧かないだろう

自身の部隊の隊長に連絡を取ろうにも既に機械類の制御は効かない

どうすればいいか、そんなことを考えている間に襲撃者に胸ぐらを掴まれ、外に出される

 

そのまま引きずられて近くの路地裏に連れ込まれた

そして、ようやくはっきりと襲撃者の顔を見た

 

灰色の髪に煙草を咥えている

獣のような目つきの少年だった

 

 

「質問に答えりゃ親鳥の所に帰してやる」

 

 

そう言って額に銃口を押し付ける

汗が自分の顔を伝っていくのがわかる

 

だが目の前にいる悪党に情報を渡すわけにはいかなかった

自身が所属する『黒鴉部隊』は秩序の維持を第一義としている

 

質問に答える気がないと言うのが伝わったのか少年はため息を吐き、銃口を額から離す

そして何の躊躇もなく、発砲した

 

 

「ぎ」

 

 

痛みを認識するまで数秒かかった

掌を撃たれ、そこから真っ赤な血が流れている

その血と激痛がこれが現実だということを改めて認識させる

 

 

「が、ぐっががああああああ!!??」

 

 

響き渡る悲鳴に降魔向陽は顔色ひとつ変えない

既に電極の制限時間が迫っているため、能力は使えない

だからそれ以外は全て使う

 

 

「…うるせぇな」

 

 

文句を言って次は反対の掌を撃ち抜く

男の体がビクンと大きく震える

今度は悲鳴ではく、ガタガタと全身を震わせ始める

 

 

「いいかよく聞けよ」

 

「あ、ひぃ…もう」

 

「口以外で煙草を吸えるような体になりたくなかったらさっさと俺の質問に答えろ。無駄な駆け引きなんざするんじゃねぇよ」

 

 

目が合う

恐らく彼は本当にやるだろう

だからこそ本物の恐怖が襲いかかる

 

もはや選択肢はひとつしかなくなっていた

 

そこから崩れるように口は開いた

みっともなくベラベラとあらゆる情報を話していた

 

 

 

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