とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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強さの意味

「やれやれ、よりによってあの子とは流石は上やんぜよ」

 

 

日も完全に落ち、上条が暮らす学生寮の近くの広場にいるのは2人の少年だった

肝心の鳴護アリサはインデックスとファミレスへ行っていた

 

 

「ってことは土御門、お前は知っているんだな?アリサが狙われる理由を」

 

 

上条当麻は土御門元春に鳴護アリサが狙われる理由を聞いていた

最初は彼女の護衛である降魔向陽に聞こうと思っていたが、彼は鳴護アリサが正体不明の敵に襲われた時から姿を消していた

 

 

「あの子は聖人……もしくはそれと同等の力を持っていると見なされているからです」

 

 

土御門へした質問の答えが別の方向から返ってきた

暗闇から姿を現したのは、長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方をの裾根元までぶった切ったジーンズを履く前衛的な服装の少女だった

名前を神裂火織

世界に20人といない聖人と称される少女だった

 

 

「暫定で第9位。完全に覚醒すれば、私を上回る力を持つ可能性も」

 

「アリサが聖人?」

 

 

上条は予想を超える答えに驚く

 

 

「ま、あくまで推測。証明も何もされていないにゃー」

 

 

そんな上条に土御門が補足説明をする

普段通りにおちゃらけた表情の土御門に今度は神裂が質問をする

 

 

「土御門、あなたの見解は?」

 

「どーだかにゃー。そもそも聖人の定義も曖昧だし、ねーちんがいろいろ細かく隅から隅までズズズイーっと調べさせてくれば…」

 

 

そう言って土御門は神裂の体を舐め回すように見る

その視線に気が付き、神裂は土御門の視線を遮るように自身の体を抱きしめる

 

 

「じょ、冗談ではありません!!!」

 

 

土御門は神裂へ向けていた視線を上条に戻し

 

 

「それが何であれ、学園都市はあの子の資質や能力を解剖学的に解明して利用したいらしいぜよ。特にあのロリっ娘社長はな」

 

 

土御門は魔術側だけではなく、科学側でも深い位置にいる

しかしそんな彼でも圧倒的に情報が足りていなかった

 

だから、彼を呼んだ

 

 

「しかし、情報が足りないのは事実。そこでスペシャルゲストだにゃー」

 

 

そう言って土御門は暗闇を指さした

その方向からは、カツンカツンカツン、と杖をつく音がする

 

 

「頼むぜい、降ちん」

 

「ったく、面倒な役を押し付けてくれたな」

 

 

そう言ってやって来たのは学園都市同率第1位の降魔向陽だった

しかし、いつもと違うのが目に見えて分かった

全身の至る所に傷を作り、血が滲んでいる

その姿を見て驚いたのは上条だけだった

 

 

「降魔!?お前、何があったんだ!!?」

 

「あ?ちょっとした野暮用だ」

 

 

降魔は暗部組織『カースト』の権限と学園都市第1位の権限を使い鳴護アリサを取り巻く環境を洗いざらい調べていたのだ

そして、鳴護アリサを実験の材料にしようとする研究所や彼女を利用しようとする暗部組織を幾つも叩き潰していた

 

 

「それで?尻尾は掴めたかにゃー?」

 

「生憎だが気味が悪ぃくらいに情報はなかった」

 

 

暗部組織や研究所を潰しても『レディリー=タングルロード』についての情報は一切出てこなかった

魔術と呼ばれる異能の力についてもっと降魔に知識があれば別の見え方も出てくると思い、降魔はこの場にやってきた

 

そんな中、上条と降魔の携帯が気味が悪いくらい同時に震えた

上条はインデックスからの電話のようだが、降魔の携帯に表示されている番号は見覚えのあるものだった

 

 

『ずいぶんと熱心に調べものをしていたのね』

 

「……」

 

『何のこと、なんてつまらないことは言わないで頂戴。こっちにはいろんな情報が回ってきてるの』

 

 

降魔は電話の先の少女の話を聞きながら煙草を咥え、火をつける

完全にこっちの動きは把握されていたようだ

 

 

『私言ったわよね?ちゃんとあの子たちを守ることに集中したほうがいいって』

 

「っ」

 

『次はこの程度では済まさないわ。肝に銘じておくのね』

 

 

一方的に話して勝手に切った

しかし最後の言葉の意味がわからなかった

電話が切られた後すぐに再び降魔の携帯が震える。今度はメールだった

内容は4枚の写真だった

 

 

最後の言葉の意味はすぐに理解した

4枚の写真には4人の少女が写っていた

美鼓、リア、エルド、ヴルドの4人。これだけならば何の変哲もない写真だろう

 

しかし、それぞれの写真に写る少女に向けられている物が問題だった

黒光している鉄の塊は暗部で活動している彼ならば嫌でも目にする機会がある拳銃だった

降魔は急いで携帯で美鼓へ電話をかける

 

 

『…もしもし、どうかしましたか?』

 

「お前ら全員揃ってるか?」

 

『…??はい、と美鼓はリアの作った夕飯を食べているメンバーを見ます』

 

「ならいい。俺の分の夕飯はいらねぇからな」

 

『了解しました』

 

 

どうやらアイツらに危害を加えた訳ではないらしい

次に降魔が何らかのアクションを起こせば拳銃の引き金を引き、その命を奪うぞ、という警告だ

これによりに降魔の首には恐ろしく重い首輪がつけられた

 

無意識に電極に手が伸びる

ここで能力を解放し、思うがままに暴れてこの街ごとレディリーを殺すことができたらどんなに楽なことだろうか

 

しかしそんな逃げ道に逃げることは許されない

歯を思い切り噛みしめ、杖を持つ手に力が入りすぎて震える

 

それに気がついた神裂が降魔へ言葉をかける前に

 

 

「降魔!!アリサが攫われた!!」

 

 

彼女の護衛である降魔へ上条が叫ぶ

上条の持つ幻想殺しだけでは攫われた鳴護アリサを救い出すことはできない

だから、学園都市の頂点に君臨する少年に手助けを求めた

 

 

しかし、

 

 

「……俺は、行けない」

 

 

絞り出すように出た降魔の声は普段の彼からは考えられないほどに弱々しいものだった

 

 

「は?アリサが攫われたんだぞ!!??」

 

 

熱くなった上条が降魔の胸ぐらを掴むが、降魔は一切の抵抗をしなかった

ここで上条が怒るのは当然だろう。降魔は鳴護アリサの護衛として彼女に関わっていたのだから

そんな彼を見て上条はギリッと歯を食いしばる

 

 

「上やん、今は鳴護アリサの保護が優先だ」

 

 

土御門が冷静に上条に話しかる

彼も降魔の普通ではない態度に何かを察したのか上条を降魔から離す

その言葉で少しは冷静になれたのか、上条は降魔の胸ぐらから手を離し、土御門と共に駆けていく

バランスを崩した降魔が尻餅をつく

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

そんな彼に手を差し伸べる者がいた

神裂火織だった

 

 

「……あぁ」

 

 

学園都市の闇で研究所や暗部組織を叩き潰しているさえでさえ慎重に慎重を重ね慎重に動いていたのだ

鳴護アリサは助けたいが家族を傷つけられたくない

家族を守りたいが鳴護アリサを傷つけられたくない

 

普段とは圧倒的に違う慣れない状況の中、電極の限界まで敵を叩き潰し、電極を充電し、また敵を叩き潰す

人が傷つくことが嫌いな少女のために人を傷つけてきた

己の不甲斐なさを忘れるように暴力を振るってきた

 

降魔が襲撃した暗部や研究所の中には鳴護アリサと無関係な者たちも混じっていた

しかし、そんなことを気にせずに八つ当たりのように力を振るった

 

その結果がこの有様である

家族を人質に取られ、鳴護アリサを助けに行くことすらできない

 

 

「あなたような凄い人でもそんな風になってしまうことがあるのですね」

 

「あ?」

 

「いえ、少し安心しました。以前会った時のあなたは手の届かないような存在でしたが、今は違いますね」

 

「…今の俺はどーだってんだ?」

 

「ほら、こうして私でも触れることができるくらいの普通の少年です」

 

 

そう言って神裂は降魔の手を握る

その優しさが降魔の荒んだ心に酷く澄み渡る

 

心というものに形があれば、今の降魔の心はズタズタに傷ついているだろう

降魔はゆっくりとした動きで煙草を咥え、火をつける

 

守るべきものが増えれば増えるほど降魔は段々と弱くなっていく

1人だった時は失敗しても失うものは自分の命だけだった

しかし、今は違う。今、降魔が判断を誤り失敗すれば失われるのは降魔の命だけではなく『アイツら』の命もだ

 

だから思う、自分は確実に弱くなっている

 

 

「それは決して弱さではありませんよ」

 

 

降魔の思考を読み取ったが如く神裂が言い切る

煙を吐きながら降魔の目の前で立っている神裂を見る

 

 

「そもそもあなたはそんなに弱い人ではないでしょう?」

 

「………」

 

「あの日、黒い羽から私を守ってくれた降魔向陽という人間はそんなものではないはずでしょう?」

 

「………」

 

「立ちなさい!!降魔向陽!!」

 

 

一際大きい声が降魔の鼓膜を揺らす

その声が降魔の体を巡り、やがて心に届き、燃やし始める

徐々に力が入るのを自覚する

 

降魔の気持ちに彼の体は応える

 

 

「…ったく、だから面倒ごとは嫌いなんだよ」

 

 

降魔は立ち上がり、真っ直ぐと己を鼓舞してくれた魔術師を見る 

その目には先ほどレディリーによって掻き消された光が宿っていた

 

 

「俺は俺のやるべきことをやる。手を貸せ、魔術師」

 

「魔術師ではなく、神裂火織です」

 

「チッ、俺は鳴護アリサを日常へ返す。神裂は、」

 

「あの子たちを守る、でいいですか?」

 

「あぁ、頼むぞ」

 

「はい、幸い私以外にも動けるものは多数いますのでそちらに頼んでみます」

 

 

その後、神裂は誰かに連絡を取っていた

どうやら美鼓たちを護衛する奴らと連絡をとっているようだった

 

 

彼女らを護衛してくれる奴らの到着は早くても明日の朝らしい

とりあえず今日のところは上条のことを信じ、大人しく家に帰るのことになった

 

 

「…おい、神裂」

 

「はい?何でしょうか」

 

 

帰り際に降魔は神裂を呼び止め、神裂に向かって何かを投げた

それは紙を折り畳んだものだった

神裂が中を確認してみると、そこには11個の数字が並んでいた

 

 

「この面倒ごとが終わった後でもいい、何かあったら連絡しろ。助けられた分は動いてやる」

 

 

それだけ言うと降魔は杖をつきながら歩いて行ってしまった

そんな彼を神裂は手のかかる弟を見るような目で見送った

 

 

 

 

 

 

 

降魔は自分の部屋に着き、玄関にある靴を眺める

どうやらエルドたちはいまだに帰っていないようだ

適当に並べられている靴を揃え、降魔はリビングへ向かう

 

 

「お帰りなさい、と美鼓は、」

 

 

降魔の姿を確認した美鼓が出迎えるが途中で表情が変わる

 

 

「お、帰ったのか…ってその怪我はどうしたんだ!?」

 

 

慌てた様子のヴルドが降魔を問いただす

そこで降魔は自分の体を改めて見る

そこには傷だらけの自分の体があった。暗部組織や研究所を潰している最中に負った怪我だ

別に命に別状はないと思い放置していたが、彼女らにとってはそうでもないらしい

 

慌てた様子で家にある救急箱を持ってくる美鼓とリア

いつの間にか降魔のそばに来ていつぞやのように体を触るエルド

心配そうな目でこちらを見るヴルド

 

そんな彼女らを見て降魔は先ほどまで冷え切っていた心が温まるのを感じた

 

 

(……俺はなんて勘違いをしてたんだ)

 

 

目の前にいるものたちを勝手に鎖にし、自身の首に繋げた

彼女らはそんなものではないだろう

 

降魔にとって目の前にいる彼女らが重荷だと?

そんな訳あるか

 

彼女らがいるからこそ戦えるのだ

 

これが守るべきものがいる強さ

降魔が先ほどまで弱さだと勘違いしていたものは、本物の強さだったのだ

 

だからこそ理由は見つかった

 

 

(コイツらも鳴護アリサも自分の目的のために利用するテメェを俺は許さねぇぞ)

 

 

学園都市が生み出した正真正銘の怪物がまだ見えぬ敵に宣戦を布告する

 

 

(奇蹟だか何だか知らねぇが、そんな幻想は俺が操ってやる)

 

 

本当の強さを知った超能力者が舞台へ上がる

 

 

 

 

 

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