とある科学の幻想操作   作:モンステラ

48 / 87
奇蹟の歌

宇宙エレベーター『エンデュミオン』の開会セレモニーまで残り数時間となった

第7学区にあるいつもの病院のとある病室には4人の男が集まっていた

 

1人は、病室のベッドにいる頭に包帯を巻いたツンツン頭のどこにでもいるような平凡な学生

1人は、ベッドのそばにいる金髪アロハサングラスの多重スパイをこなす陰陽師

1人は、窓際で壁に寄りかかる赤髪に目の下にバーコードのタトゥーが入っている魔術師

1人は、出口の近くのソファに腰掛けている灰色の髪の毛に首筋にチョーカーをつけている学園都市同率第1位

 

 

「決着は僕らがつける」

 

 

最初に口を開いたのは赤髪の魔術師『ステイル=マグヌス』だった

 

 

「決着?」

 

 

それに疑問を投げかけたのはツンツン頭の少年『上条当麻』だ

 

 

「レディリー=タングルロードは本来、こちら側の存在。ギリシャ占星術を得意とする予言巫女(シビル)だ。彼女は鳴護アリサを核にして術式を構築しようとしている」

 

「エンデュミオンを使った超巨大なやつだにゃー」

 

 

ステイルの説明に補足したのは金髪アロハサングラスの陰陽師『土御門元春』だ

 

 

「そんなもんが実行されたら北半球がまるっと全滅ってクラスのな」

 

「っ!!」

 

「とにかく問題が魔術である以上はこれは僕らの領分だ。君たちは引っ込んでいろ」

 

「あ?引っ込んでろだと?科学だの魔術だの馬鹿どもが決めた線引きに従う訳ねぇだろ。こっちは身内に被害が出てるんだぞ」

 

 

ステイルの意見に口を挟んだのは学園都市同率第1位『降魔向陽』だった

 

 

「まぁ、降ちんの気持ちもわかるがとりあえず落ち着くにゃー。ステイルは対処できるのか?場所は宇宙ぜよ」

 

「…核を始末。いよいよとなればあの塔ごと破壊する」

 

 

おそらくステイルという魔術師ならそれくらいのことは実行するだろう

 

 

「核を始末って……つまり、アリサを殺すってことか?」

 

 

ステイルの話を聞いていた上条がステイルを睨みながら問いかける

 

 

「まぁ、そうなるね……」

 

 

上条の問いかけにステイルはバツが悪そうに答える

その答えに上条は思いっきり拳を握る

 

 

「アリサはな、アイツは夢があってそれに向かって一生懸命に努力してて、そんな女の子がどうして北半球をぶっ壊す悪者扱いされなきゃならないんだよ!!!」

 

 

そして大声で言い放った

そのまま上条は自身の近くにあった着替えを掴み、着替え始める

 

 

「とうま!まだ動いちゃダメなんだよ」

 

 

そこへ手にお菓子やら飲み物やらを抱えたインデックスがやってきた

 

 

「そんなこともう言ってられねぇ!!科学と魔術、どっちに任せてもアリサは殺される!!」

 

 

そう言って上条は病室の外へ駆け出そうとする

その様子を見ていて土御門は安心したような笑みを浮かべる

 

 

「そう言うと思って準備はしてあるぜい。降ちんあの場所まで頼むぜい」

 

「チッ、面倒なことばっか俺に振るんじゃねぇよ」

 

 

そう言って降魔は電極を切り替えた

 

 

 

その様子を見ていたのは彼らだけではなかった。物陰から降魔たちを見ているのは見た目が同じ4人の少女

そして彼女らが見たものを脳波リンクで見ている彼女らを統べる小さな少女

 

 

「ふんふん、なるほどー。なんか大変なことになっているみたいってミサカはミサカはわざと大きな声でつぶやいてみたり」

 

「あァ?ったく独り言ってレベルじゃねェぞ」

 

 

真っ白い少年は病室のベッドに寝転びながら文句を垂れる

 

 

 

◇◇◇

 

 

宇宙エレベーター『エンデュミオン』

その中に1人の少女が宙へ浮いていた

 

『私のために歌ってくれないかしら?あなたの奇蹟の歌を』

 

そう自分に言い放ったのはこのライブの主催者であるレディリー=タングルロードだった

だけど自分の気持ちに整理がついていなかった

 

 

(…当麻くん、向陽くん)

 

 

ギュッと拳を握りながら思うのは2人の少年だった

どちらの少年もこんな自分を助けるために必死になってくれた人たちだった

 

 

「まだ悩んでいるの?」

 

 

入り口から声がかけられた

そちらへ視線を移すとそこにいたのはレディリーだった

アリサはレディリーから顔を背ける

 

 

「道端で歌っていたあなたにこんなに大きな舞台をあげたのに、嫌なら断ってもいいのよ。その場合はここにいる招待客全員が死ぬことになるけど」

 

 

もはや選択などなかった

鳴護アリサはその時彼らを思い出していた

上条当麻が、インデックスが、降魔向陽があんなに言ってくれたんだ

 

彼女の瞳に光が宿る

 

そしてそのままレディリーを真正面から睨みつける

 

 

「歌います。でもそれは私の夢の為でもあなたの為でもありません。私の歌を純粋に楽しみにしてくれているみんなの為です」

 

 

アリサの目線の先にはライブ会場でアリサの登場を楽しみにしている観客たちがいた

 

 

「あの人たちのために私は歌います。あなたが何を考えていようと、それを上回る奇蹟の歌を」

 

 

胸を張り、自身を待っている者たちのために彼女はそう宣言した

 

 

 

◇◇◇

 

 

上条たちは降魔の能力を使い学園都市の第23学区に来ていた

そして彼らの目の前には1機の飛行機が用意されていた

 

 

「これは…?」

 

「バリスティック・スライダー。学園都市の次期主力宇宙輸送のコンペで敗れた不遇の新型シャトルシステム」

 

 

上条の質問に電極を切り替えながら降魔が説明する

 

 

「上やんにはこれで行ってもらうぜよー!!!」

 

「え…?どこに??」

 

「宇宙に決まってるぜよ!!!!」

 

 

テンションあげあげの土御門が上条へこれからの計画を説明する

時間的には開会セレモニーのライブが始まったくらいの時間だった

 

上条たちの搭乗を急がせ、バリスティック・スライダーが飛び立つのを土御門と降魔は見送る

 

 

「… 悪いな降ちん」

 

「あ?」

 

 

土御門は普段のおちゃらけた様子ではなく真剣に降魔へ話しかける

降魔は降魔で煙草に火をつけながらそれを聞く

 

 

「本当はアレに乗ってエンデュミオンへ行きたいのは降ちんだろう?」

 

「はン、確かにレディリーとかいうゴミ屑には俺が絶望を与えてやりてぇが、俺がアイツをぶっ殺すだけより上条のやつが向こうへ行って奴の計画をぶっ潰した方が絶望するだろ」

 

「そう言ってもらえると助かるぜい」

 

「…じゃ、俺はエンデュミオンに行くからな」

 

 

降魔は土御門にそう言い残し、電極を切り替えて姿を消す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上条たちがバリスティック・スライダーで宇宙へ飛び立ったのとほとんど同じ時刻にエンデュミオンの前では数十人の警備員が集まっていた

そして彼らの前には 入り口を守るように佇む蜘蛛のような見た目をしている無人の駆動鎧が1体

エンデュミオンへ行くためにはこの入り口を通るしかない

 

 

「突撃!!!!」

 

 

黄泉川が号令を叫ぶ

それを聞いた警備員たちが自身らが持つ自動小銃の引き金を引きながら前進を始める

しかし、駆動鎧も自身に備わっているガトリング銃で反撃を開始する

 

持っている盾はおろか警備員の特殊車両にすら軽々と穴を開ける

1回の攻撃で既に何人もの警備員が負傷していた 

負傷した仲間を引きずるような形で強引に後ろへ下がらせる

 

これには黄泉川も思わず顔を顰めてしまう

ほとんどそれと同時だった

 

駆動鎧の上部にある砲身が不気味に光ったと思ったら、白い光が放たれた

真っ直ぐに放たれた光は彼らの近くの特殊車両に直撃した

ビームのような攻撃に車両は耐えられず内側から爆発してしまう

 

爆発の衝撃が警備員を襲うが、今はそれどころではない

もしアレが人に当たったらどうなるか

人肉など簡単に貫き、一瞬で命を奪えるだろう

 

 

「応援は!!?」

 

「まだしばらくかかるそうです」

 

「……ッッ!」

 

 

車両の影に隠れて攻撃をなんとか避けているがこれも時間の問題だろう

舌打ちをしようとした黄泉川たちの目の前を何かが通り抜けた

 

それは車椅子だった

 

車椅子には2人の少女が乗っていた

車椅子はそのままスピードを殺さずに駆動鎧の目の前に躍り出る

 

 

「ったく、勝手に置き去りにするとか…」

 

 

そのまま1人の少女が指でコインを真上に弾く

 

 

「どっかピントがズレてるのよね、アイツのやることって!!!!!」

 

 

そのまま凄まじい電気を纏いコインを駆動鎧に向かって発射する

発射されたコインは音速の3倍のスピードで駆動鎧を簡単に貫き破壊する

 

その隙を警備員たちは見逃さずに、エンデュミオンの内部へと侵入していく

 

 

「ねぇ、黒子頼みがあるの」

 

「え?」

 

「アンタはここを守って」

 

「お姉様まさか!?」

 

「アンタにしか頼めないの、だからお願い」

 

 

そこで黒子は一瞬戸惑ってしまう

その隙に御坂はエンデュミオンに向かって走り出してしまっている

 

 

「お姉様!!!…っ!!」

 

 

彼女の元へ空間移動しようとするが先日の怪我のせいで思うように動くこともできなかった

そんな彼女の元へエンデュミオン内部から出てきた警備ロボたちが襲いかかる

 

 

「…っ!!」

 

 

咄嗟に鉄の杭を構えるがそれが放たれることはなかった

彼女が演算を始めるより前に聞こえたのは男の声だった

 

 

「オイオイ、とんでもなく面倒なことになってやがるな、こりゃ」

 

 

少年のはいきなり現れ目の前に群がっていた警備ロボを一瞬で粉砕していた

 

 

「降魔さん!?」

 

「あ?」

 

白井黒子の前には第23学区から戻っていた降魔向陽が立っていた

降魔は白井の頭に手を置き、

 

 

「とりあえず状況を整理すんぞ」

 

 

そう言って後ろにいる警備員のところまで歩いていく

それと同時だった

エンデュミオン全体が不気味に振動した

 

白井と共に警備員のテントに行くとそこには黄泉川と初春たちがいた

 

 

「はい、エレベーターの中継ステーション付近で爆発があったみたいです。そのせいでバランスが崩壊してしまっています」

 

「え!?それじゃあ…」

 

「このままだとエレベーターが倒壊してそのまま地上に倒れます!!!」

 

 

それを聞いた降魔は思わず顔を顰めた

そして遥か上空にいるはずの上条たちとアリサを思う

 

 

『何か方法はないの?』

 

「緊急用のパージシステムがあります。本来はリモートで点火できるんですけど、今はシステム自体が凍結されています」

 

 

御坂美琴と通話していた初春がパソコンを使って情報を見つけ出す

 

 

「それって動かせないってこと?」

 

「この4ヶ所にある爆砕ボルトを全て手動で点火させることができれば…」

 

『今はなんでもやってみるしかないわ。1ヶ所は私が引き受ける』

 

「お姉さま、今から私もそちらに……っ!!」

 

 

1ヶ所は先にエンデュミオンに入っている御坂美琴に決まった

白井が空間移動しようとするが怪我の影響で転移することができなかった

 

 

「もう1ヶ所はこっちで引き受けるじゃん」

 

 

2ヶ所目は黄泉川たち警備員に決まった

 

 

「チッ、面倒だが3ヶ所目は俺が行く」

 

 

降魔が煙草に火をつけながらそう言い放った

残るは1ヶ所

流石の降魔もどうするか悩んでいると

 

 

『もっしもーし!!!こちら匿名希望の人生と書いて妹と読むさんだにゃー』

 

 

緊張感をぶち壊すような無線が入った

この声とこのふざけた口調を話すにゃーにゃー野郎など1人しかいない

 

 

『話は聞いたぜよ。4つ目がなんとかできる方法があるんだにゃー』

 

「誰だ?」

 

「わかりません」

 

 

黄泉川たちが無線に割り込んできた男を特定しようとするがそれは叶わなかった

 

それぞれがやるべきことが決まった

黄泉川は部下数人を連れてエンデュミオンへと入っていった

降魔は電極を切り替えて姿を消した

 

 

 

 

 

エンデュミオン内部へと侵入した降魔は電極を通常モードへ戻し、杖をつきながら先へ進む

事前に受け取っていた無線機で他のメンバーの状況を確認しつつ前へ進む

どうやら御坂と黄泉川たちのところで少々問題が発生したようだ

 

 

『こちら黄泉川。すまない、このままじゃ辿り着けそうにないじゃん』

 

『大丈夫です。構わず3カウントで点火してください、とミサカはお願いしてみます』

 

 

その無線の連絡と同時に覚えのあるAIM拡散力場を複数確認する

 

迷っている暇はない

降魔向陽は電極を指で弾く

 

 

 

『3!!!!』

 

 

 

御坂美琴がコインを弾き、狙いを定める

最大出力10億ボルトを誇る学園都市第3位の代名詞である超電磁砲を放つ

 

 

 

『2!!!!』

 

 

 

ステイル=マグヌスが手に持つルーンのカードに魔力を通す

摂氏3000度の炎の巨人が天才魔術師である彼の手から放たれる

 

 

 

『『1!!!!』』

 

 

 

2人の第1位が地面に触れ、ベクトルを変換させる

彼らの手によって変換されたベクトルは爆砕ボルト付近の地面ごと抉り出される

 

 

 

 

 

凄まじい地響きと共にエンデュミオン全体が揺れ、建物が崩れ始める

どうやらエンデュミオンのパージには成功したらしい

じきにここら辺も瓦礫で埋まるだろう

 

 

「チッ、面倒だが行くしかねぇな」

 

 

降魔は電極を再び切り替え演算を行う

目標のAIM拡散力場を見つけ、そこへ転移する

 

降魔が転移した場所には妹達と呼ばれる御坂美琴のクローンが数人いた

 

 

「あなたがなぜここに、とミサカは疑問を投げかけます」

 

「理由なんざどーでもいい。外へ移動させるぞ」

 

 

そう言って降魔は彼女らに有無を言わさずに外へ移動させる

降魔はそのままもう1つの目標のAIM拡散力場がある場所へ向かう

 

 

「遅せぇぞ、掴まれ」

 

 

そこには薄暗いエンデュミオン内部を走っている御坂美琴がいた

 

 

「は!?なんでアンタがこんなところにいるのよ!!」

 

 

妹達と同じような質問を聞いてやはり妹達のオリジナルなのだと実感した

 

 

「…妹達を安全に外へ逃すついでだ、ついで」

 

 

それを聞いて御坂美琴は笑みを浮かべながら降魔の手を掴んだ

一瞬で空間を移動し、白井達がいるところへ戻ってきた

 

初春の情報によるとエンデュミオンの落下コースが変わり地上への衝突は回避したらしい

 

 

降魔はエンデュミオンの上の方を眺めながら煙草へ火をつける

そして

 

 

「…お前の歌はすげぇよ」

 

 

心からそう思い、降魔は優しい笑みを浮かべた

心残りがあるとすればもう1回彼女の歌を聞きたかったことだろうか

 

 

 

◇◇◇

 

 

「貴様!!!あのARISAの護衛をしていたのか!!??」

 

「何故黙っていたのですか、と美鼓はあなたを問い詰めます」

 

「そうですよ、私もARISAに会ってみたかったです」

 

『とても残念』

 

 

場所は降魔の部屋。そのリビングで降魔は4人の少女に正座させられていた

秘密にしていた仕事の内容がバレており、彼女ら(特にヴルド)に何故彼女に会わせてくれなかったのかと文句を言われていた

 

彼女らが無事なのは喜ばしいことだが、これはこれで少々うざい(特にヴルド)

 

だから降魔は以前、アリサを知らないと馬鹿にしてきたヴルドに向かって凄まじくムカつくドヤ顔をした

 

 

「き、貴様ァァァァ!!!!」

 

 

エルド、美鼓、リアに押さえられるヴルド

そんな彼女らを放っておき、降魔はベランダに出て煙草に火をつけた

 

煙を吸い込み、吐く

 

 

「あ?」

 

 

それは確かに降魔の耳に届いた

街の喧騒の中から聞こえたのはとある少女の綺麗な歌声だった

それを聞いた降魔はベランダに寄りかかりながら雲ひとつない空を見上げる

 

 

「ありがとな、アリサ」

 

 

そう言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。