「・・・ここか」
指定された第7学区のとある寮にやってきた
小柄とはいえ、片手で少女を担いでここめでくるのは一苦労だった
出血がないお陰で、倒れることはなかった
能力を使って、指定のあった一室のベランダにたどり着く
どこにこの少女を置くか悩んだ結果、ベランダの柵に引っ掛けておくことにした
部屋をチラッと覗くと、そこの住人は未だ夢の世界にいるようだった
ベッドにはどこにでもいるような平凡そうな学生が横になっていた
「・・・う、うーん。不幸だ」
窓の外にいても聞こえるくらい大きな寝言だ
夢の中でどれほど不条理な目にあっているのだろうか
「これで仕事は終了」
何はともあれ、仕事は終わった
ベランダから移動し、携帯を取り出して、暗部の仲介人である電話の男へメールを送る
いつもなら直ぐに返信が来るのだが、一向に来ないということは、アイツは寝ているのだろう
「・・・チッ!死ね」
小声で文句を呟き、連絡帳に載っている数少ない番号に電話をかける
『おや、どうしたんだい?こんなに朝早くに』
幸いなことにコチラは直ぐに電話に出てくれた
「
『うーん、無くなったって言われても、診断もなしに判断はできないんだよね?』
「チッ!じゃあ今から行く」
『・・・それじゃあできる限りの準備はしておくよ?』
超能力者、ましてはその第1位とこんなに臆さずに話せる数少ない1人だろう
電話を切り、携帯をしまう
ピリピリとした肩のうずきを感じながら第7学区の病院を歩いて目指す
片腕を失ったことによりバランスが取り辛い、フラフラとしながら何とか歩く
朝日も登り始め、もう少ししたら学校へ行くために学生たちが家から出てくるだろう
彼の今の格好は目立ちすぎる
なるべく急いで病院へ向かわなければ
しかし、思い出すのは先ほどの戦闘
「・・・・魔術」
魔術師という学園都市とは違う法則の前に、第1位が膝を屈してしまった
別に何処かの超能力者のように絶対的な力を求めているわけではない。しかし、何故かイライラが止まらない
「・・・・次はねぇぞ」
次だ、次は殺す
低く呟き、歩みを進める
結果から言うと数日間の入院が必要との診断だった
義手の用意はできるが、自分に馴染むまでの調整が必要とのことだった
降魔向陽は病室のベッドに横になり、同居人に言って持って来させたノートパソコンをいじっていた
白井の件と、前日の魔術師の件、調べることが多すぎる
途中でパソコンを閉じ、ベッドに沈み込む
目を閉じると意外にも直ぐに眠気はやってきた
(そういえば、昨日から寝てねぇもんな)
寝る前に時計を見ようと思ったが、それすらも面倒くさかった
昨日からの疲れで彼の意識はストンっと落ちた
「・・・・んあ?」
目が覚めると辺りは真っ暗だった
どうやら病院の消灯時間を過ぎているようだ
時計で時間を確認すると、深夜の1時を回ったところだった
変な時間に寝て、変な時間に起きてしまった
ため息を吐き、ベッドから起き上がる
ちょうど喉も乾いてきた、この時間だと自動販売機しかないだろう
自販機を探して、夜の薄暗い病院を歩く
病院を歩いていると一際明るい場所を見つけた
どうやら自販機コーナーのようだ
幸いなことに喫煙所もある
「ふぅ」
煙を吐き、カシュッ!と缶ジュースを開ける
そこで己の右腕に目を向ける
「すげぇなあの医者」
包帯でグルグル巻きにされているはものの、痛みもなく、自分のもののように動かすこともできる
何なら自分で少し改造するのもアリかもしれない
喫煙者である降魔は指先からライターのように火が出る機能とかつけようか真剣に悩む
そうこう考えているうちに煙草が終わりかけていた
降魔はジュースを一気に飲み干し、ゴミ箱へ捨てる
「ふぁ、寝よ」
あくびをしながら自身の病室へと戻る
◇◇◇
その日もだらだらと入院生活を過ごしていた
見舞いに来るような知り合いもおらず、ただただボケーっとテレビを見て過ごしていた
今日もすることはなく、思い出すのは、病院の入院食がそんなに美味しくなかったことだろうか
「・・・あ?」
煙草でも吸いに行こうかと思い、病室を出て、喫煙所へ向かう
その途中で見知った奴らと出会った
「何であんたがこんなとこいるのよ?」
診察室の前に座っていたのは超電磁砲こと御坂美琴だった
「何の用もなく病院に来るかよ。ちょっとヘマして怪我しただけだ」
そう言うと御坂は降魔の右腕に注目する
確かに彼の右腕は包帯でグルグル巻きにされている
「・・・それで?何でお前はここに居るんだ?」
「うーん、黒子がちょっと怪我しちゃったらしくてね」
「へー、あそ」
聴いたのは彼なのに返事は適当だった
御坂はその態度に少しムッとする
「前に言ってた事件に進展あったのか?」
「あぁ、なんか『
御坂は自身の携帯を弄りながら、あっけらかんと言った
「ほーん、幻想御手ねぇ」
「あんたの方はなんか進展あったの?」
「あ?ねぇよんなもん」
「はぁ、」
御坂はため息を吐きながら、頭を押さえる
そんな彼女を見て、降魔は目的の喫煙所を目指すため、歩き始める
「じゃあな、ツインテールにもよろしく言っとけ」
そう言い残し、去っていった
御坂はその背中を怪訝そうに見つめていた
◇7月24日◇
入院生活にも慣れが出てきた
右腕の義手も体に馴染み始め、前までの生活と変わらないように生活できるようになった
しかし、やることもないので、病室にこもってパソコンをカタカタいじる
そこへコンコン、とノックが聞こえた
彼は聞かなかったことにし、作業へ戻る
すると再びコンコンコン、とノックが聞こえた
病院の関係者ならば入ってくるだろう。ならば、居留守を決め込む
布団を頭から被り、寝たふりをする
しばらくすると、ガラッと扉が開かれる音とともに足音が近づいてきた
(寝たふり寝たふり)
シャーっとカーテンまでもが開かれ、降魔は完全に無防備になる
「ちょろっとー、さっさと起きないと消し炭にするわよ」
聞き覚えのある声と、とんでもない脅しが聞こえた
だが、面倒ごとは嫌いだ
こんなものは無視しておけばいい
そんなことを考えていると、直ぐ近くでAIM拡散力場の波を感じ取る
バッとベッドから抜け出すと、その直後にベッドに向けて電撃が発射された
「・・・オイコラ、ここは病院で、俺は怪我人だぞ」
メンドくさそうに電撃を飛ばした張本人を睨む
「へー、学園都市同率第1位である降魔向陽が怪我、ねぇ」
「あ?」
眉間にシワを寄せながら、御坂美琴を睨む
学園都市一の電撃使いの名は伊達ではないということだろう
重要なのはどこまでの情報を知られているかだ
一番厄介なのはアイツのことを知られていることだ
「否定しないのね」
「まぁ、お前が言ったことは事実だからな」
それで?と降魔向陽は呟き、
「どこまで調べた」
核心に迫る質問をする
「どこまでって、アンタの情報には気持ちが悪いくらい規制がかかっててそれ以上の情報を見るのはやめたわ」
「・・・そうか」
少しだけ安心する
超電磁砲を含めアイツらは完全に表の人間だ。裏への関わりなんて持つべきじゃない
「それで、お前は何しにきたんだ?」
「何って、お見舞いよ、お見舞い」
そう言って手に持っていた紙袋を渡してくる
中を見るとどうやらクッキーのようだ
「はぁ、」
「何よ。なんか文句あんの?」
「いや、煙草が良かったなぁっと思って」
「・・・アンタねぇ」
御坂は頭を抱えてしまっている
そんな御坂を見ながら降魔は鼻で笑い
「冗談だ」
軽く笑い飛ばした
そのまま紙袋を棚へ置くと、布団に包まって本当に寝てしまった
御坂美琴は降魔向陽を見下ろし
今まで会ったことのない奴だなーっと降魔の認識を少し改める