とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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戦略

降魔向陽は第1種目を終え、美鼓達と合流していた

 

 

「すごかった、と美鼓は素直にあなたを褒め称えます」

 

「そりゃどーも」

 

 

降魔は観覧席のイスに座り足をを組みながら答える

何やらガールズトークをしている少女らは放っておき、パンフレットに表記されている一番近い喫煙所を確認する

彼女らの競技時間まで時間があるのを確認し、席を外す

 

 

 

目的の喫煙所はその角を曲がったすぐそばだ。ポケットから煙草の箱とライターを取り出して少し早歩きで進む

慣れないことをしたせいか体がニコチンを求めている

角を曲がろうとした瞬間、反対側からやってきた人とぶつかってしまう

杖をついている降魔は、バランスを崩して尻餅をついてしまう

 

 

「きゃっ!!って、すみません大丈夫ですか?」

 

 

反対側からやって来て降魔とぶつかったのは大学生くらいの女性だった

その女性はそう言って杖をついている降魔を気遣って手を差し伸べる

 

降魔も自分にしては珍しく気が抜けていたことに反省しながらその手を掴む

 

 

「あぁ、問題ねぇ。こっちこそ済まなかった」

 

 

そこで女性の顔をしっかりと見た

どこかで見たような顔だった

降魔の記憶なる人物の中で該当するやつを探していると

 

 

『ゴォォォォーール!!!!!』

 

 

彼らの近くにあるモニターから実況の声が響いた

そのモニターには知り合いが2人映し出されていた

常盤台の体操服を着た少女とツンツン頭の少年だった

 

 

「…何やってんだアイツら」

 

 

降魔は半ば呆れたように呟いた

 

 

「あっ!!美琴ちゃんだ!!」

 

 

女性は自分の知っている少女を見つけ、嬉しそうに声をあげる

画面に映っている少女を知っているってことは目の前の女性は御坂美琴の関係者だろう

見た目から見ておそらく姉

 

御坂美琴のクローンが側にいる降魔にとっては少々面倒くさい相手だ

さっさと喫煙所へ行こうとする降魔の手を女性が掴む

 

 

「きみきみ、落とし物だぞ」

 

「あ?」

 

 

そう言って女性は降魔の煙草を差し出してくる

早くこの場から立ち去りたい降魔は煙草を受け取ろうとするが、なぜか避けられた

再び煙草を取ろうとすると、再び避ける。それを何度か繰り返す

煙草を吸いたい欲とこの場から離れたい気持ちが合わさり絶大なイライラを生み出す

 

 

「オイ」

 

「アイツらってことは君も美琴ちゃんのお友達かな?」

 

「…まぁ、顔見知り程度の仲だ」

 

 

本当は嘘をつくべきだし、降魔自身も嘘をつきたかったが、何故か目の前の女性にはそんな嘘は通用しないと思ってしまった

 

 

「ってことは君もまだ学生なわけだ」

 

「そーだな」

 

「というわけで君にこれは渡せません!!美鈴さんが預かっておきます」

 

「あ?」

 

 

何なんだこの面倒くさい奴は

降魔はため息を吐き、踵を返した

 

 

「じゃあソレはお前に預けとく。もう1箱あるしな」

 

 

そう言って美鈴と名乗っていた女性に見せびらかすように新品の煙草を見せながら電極を切り替える

 

 

「あっ!!ちょっ」

 

 

美鈴が何かを言い終わる前に降魔の姿が消えてしまった

普段だったらこんなお節介なことあまりしないだろう

しかし、あの少年を見ていたら子供を持つ母親としてお節介を焼きたくなってしまったのだ

 

先ほどまで自分の娘が映し出されてた大型モニターを見ると、そこには先程の少年が映し出されていた

競技中の彼が映っている画面のテロップには『学園都市同率第1位 降魔向陽』と書かれていた

 

 

「ふぅん、降魔向陽君っていうんだ。後で美琴ちゃんに聞いてみよっとー」

 

 

そう言って煙草を胸ポケットに入れて歩き出した

 

 

 

 

御坂美鈴という女性からあった場所から次に近い喫煙所にたどり着いた降魔は携帯で時刻を確認して少しげんなりしていた

この時間では次の種目にはギリギリ間に合わない

別に競技に絶対参加したいというわけではないので別に参加しなくてもいいだろう

 

喫煙所に入ると2人先客がおり、その2人の先客は降魔の見知った人物だった

 

 

「何してんだ、お前ら」

 

 

降魔は鋭くそう言い放った

目の前にいるのはイギリス清教に所属しているステイル=マグヌスとクラスメイトの土御門元春だった

既に降魔は杖を持っていない方の手を電極のある首筋に当てており、いつでも能力を切り替える状態だ

『下手な言い訳をするようなら能力で頭を覗き、勝手に情報を引っこ抜くぞ』という降魔なりの警告だった

 

 

「うにゃー、まったく降ちんはタイミングがいいのか悪いのかわからないにゃー」

 

「で?」

 

 

ため息を吐きながらおちゃらける土御門に対し降魔は一切の隙を見せない

 

 

「…学園都市に魔術師が2人潜り込んだ」

 

「土御門、いいのかい?」

 

「まぁこればかりはしょうがないにゃー」

 

 

降魔はスッと電極から手を離し、煙草に火をつけた

 

 

「ローマ正教のリドヴィア=ロレンツェッティとそいつが雇った運び屋のオリアナ=トムソン」

 

 

ステイルが口を開いた

ローマ正教。確かヴルドが所属していた組織だ

そんな奴らが科学の街に何の用なのだろうか

 

 

「奴らはこの街である霊装の受け渡しを行おうとしている」

 

「なるほどな。お前らはそれを阻止したいと」

 

「そういうことですたい」

 

 

学園都市の警備は外からも内からも鉄壁

その鉄壁が唯一甘くなるのがこの大覇星祭というわけだ

侵入者はその瞬間を狙ってやって来たということか

 

 

「…どうせ上条にも声はかけたんだろ」

 

「その通りだにゃー」

 

「じゃ、俺は帰る」

 

 

上条が参加するのならひとまずは大丈夫だろう

そもそも降魔は面倒ごとが嫌いなのだ

別に魔術師がここでどんな兵器を受け渡ししようが、関係ない

 

 

「あ、あれれ?ここは『しょうがねえな、俺も協力するぜ!!』的な発言をする機会ではないのかにゃー!?」

 

「…そんな面倒なことする訳ねぇだろ」

 

 

ちょうど煙草を吸い終わった降魔は煙草を灰皿へ入れる

 

 

「下手に俺が関わっちまうとアイツらを巻き込んじまうかもしれねぇしな」

 

 

最後にそう言い残し、降魔は喫煙所から出て行った

喫煙所に残る土御門たちにひらひらと手を振りながら電極を切り替え、消え去る

 

 

◇◇◇

 

 

喫煙所から観客席に戻るとリアと美鼓がいなくなっていた

おそらく次の競技の準備をして集合場所へ向かったのだろう

 

 

「む。どこへ行っていたのだ?」

 

「あ?これだよこれ」

 

 

何やら屋台の食べ物を食べながら聞いてくるヴルドに降魔は口に人差し指と中指を持っていき、煙草のジェスチャーをする

ヴルドは納得したのか降魔へ大覇星祭の競技予定を渡す

 

 

「リアと美鼓の次の競技は玉入れ合戦だそうだぞ」

 

 

そう言って彼女らの中学校の対戦相手を見ると、そこには『常盤台中学』と書かれていた

これは勝てないんじゃないのか

美鼓たちには怪我しない程度にはしゃいで欲しいと思う

 

 

「飲み物買ってくる、何か飲むか?」

 

「私は紅茶を頼む」

 

「えと、私はヤシの実サイダーでお願いします」

 

 

席を立ち、競技場にある自動販売機へ向かう

硬貨を入れ、指定された飲み物を購入する

すると、降魔の携帯が震えた

 

どうやらバイブの長さからして電話のようだ

電話番号を確認すると降魔の所属する暗部組織のものだった

 

 

『もしもし、降魔向陽ですか』

 

「…何の用だ」

 

 

電話を掛けてきたのはカーストに命令を出す女だった

以前までは男だったが彼は降魔の手によって殺されている

この電話の女が新しい仲介人というわけだ

 

彼女が電話を掛けてきたということは暗部絡みの仕事だろうか

 

 

『大覇星祭に乗じて他の暗部組織の動きが確認されました』

 

「だからなんだ」

 

『いえ、以前にあなたがこちらに情報の捜査を依頼した組織だったので念ために話しておきます』

 

 

前の電話の男と違ってこの電話の女は少し不気味だ

声に一切の抑揚はなく、何を考えているのか分かりずらい

 

 

「…『メンバー』か」

 

『はい』

 

 

降魔の所属する『カースト』と同じ学園都市の裏の世界で暗躍する組織

別に彼は他の暗部組織を潰したいだとか思っていない

しかし、幻想御手のいざこざの際に『メンバー』は面倒ごとを持ち込んだ

その分のお礼はしなければいけないと思っているだけだ

 

その暗部組織が大覇星祭の紛れて何かをしようとしている

 

 

「詳細をメールに送っとけ」

 

『分かりました』

 

「で?俺に有益な情報を教えてテメェは何を望むんだ?」

 

『…話が早くて助かります』

 

 

そんなことだろうと思った

暗部のクソみたいな奴らがタダで降魔の欲する情報を持ってくるとは思えない

何かしら降魔を動かしたい理由でもあるのだろう

 

 

『近々『カースト』に新しいメンバーが1人加わることになりました。ただ暗部に落ちてきて日が浅いのであなたに教育をお願いしたいのです』

 

「新しいメンバーだと?」

 

『私としてはあなた1人でも十分だと思っているのですが、コレも上層部からの命令なので頼まれてくれますか』

 

「…拒否権なんざねぇだろーが」

 

『では、詳細はメールにて』

 

 

そう言って電話は切れる

それと同時に降魔の携帯にメールが届く

1通は『メンバー』の詳細

もう1通は新しく加わるメンバーの詳細だった

 

両方に軽く目を通し、携帯を閉じる

 

降魔に『メンバー』の情報を教えれば彼がどのような行動を取るか学園都市の上層部が理解していないはずないだろう

組織ごと壊滅まではいかなくともかなりの痛手を与えることも予測できるはずだ

 

 

「…何を考えてやがる」

 

 

降魔はどうせこのやり取りも覗いている学園都市の長のことを考える

あの野郎は何を企み降魔や学園都市を動かしているのか

 

◇◇◇

 

 

降魔がヴルドたちが待つ観客席に戻る頃には美鼓達の競技の時間が近づいていた

 

 

「遅かったな、迷ったのかと思ったぞ」

 

「お前じゃあるまいし迷うかよ」

 

 

自分が思っているより電話の女と話していたようだ

美鼓達が参加する玉入れ合戦のここではなく、少し離れた中学校のグラウンドだ

降魔の能力があれば移動などは一瞬で済む

 

 

「そろそろ行くか」

 

 

そう言って降魔は電極を切り替え、エルドとヴルドの服を掴む

能力を発動させると景色が一瞬で変わり、目的の中学校のグラウンドに辿り着く

 

 

適当な場所に腰を下ろし、グラウンドを眺める

クラスメイトらしき人達と楽しそうに談笑している彼女らを見つけ、頬を緩ませる

そこで彼女ら以外に見知った顔がいないはずなのに、彼女らの中学校の体育着を着た見知った顔を発見する

 

降魔のクラスメイトである上条当麻と土御門元春だった

 

何故高校生であるアイツらが中学の競技に混じっているのか

悪ふざけという訳ではないだろう

おそらく関係しているのは学園都市に潜入している魔術師のことだろう

 

 

『只今より、美波川中学校対常盤台中学校選抜による玉入れ合戦を開始します!!!』

 

 

そんなことを考えているうちに実況の少女の元気な声が響き渡る

隣では降魔が買ってきたジュースを飲みながら美鼓やリアに応援を送る少女達がいた

本来ならば上条達がいるというイレギュラーに対する不安を拭うために降魔が介入すべきなのだろう

しかし、それでいいのか

ここで降魔が介入し、彼女らを強引に引き戻すことは普通に生き、普通に楽しんでいる少女らの普通を降魔自身が奪ってしまうのではないか

 

 

『用意………始め!!!!!』

 

 

うだうだ考えているうちに競技が始まってしまった

上条達がいるのならば多少のことならば大丈夫だと自分に言い聞かせ、競技を見る

 

競技開始の笛が鳴り響いた瞬間、美鼓達が所属する美波川中学の生徒の集団が冗談を抜きにして吹き飛ぶ

まるで砲弾でも撃ち込まれたかの如く何十人単位の生徒が宙へ浮く

 

 

「…容赦ねぇな」

 

 

流石の降魔ですらそう言わざるを得なかった

噂だと常盤台の連中の能力干渉レベルを統合するとアメリカのホワイトハウスすら攻略できるらしい

 

空中へ投げ飛ばされた生徒たちは空中でなす術なく地面に叩きつけられるかと思われたが、常盤台の連中の能力で華麗に着地させられる

 

どうやら美鼓とリアはあの爆発に巻き込まれずに必死に白い玉を投げている

そんな彼女らの頭上をまるでミサイルのような勢いで次々と籠へ着弾していく

戦争でも見ているような感じだった

 

そんな中上条と土御門は何やらグラウンドに設置されている籠を1つずつチェックしているようだった

 

戦況は絶望的だろう

そこで美波川中学の連中は数で押すことを考えたらしい

しかし、統制の取れていない集団がただ闇雲に突っ込み、設置された籠のバランスが崩れる

バランスの崩れた籠は徐々に倒れ始め、隣の籠へぶつかる

歓声に紛れてしまい、審判や観客の注意の声が届かない

 

最悪なのは倒れ込む籠に気づかず、常盤台の少女がせっせと玉を拾っていたことだ

 

事態を把握していた降魔は電極に手をかけたが、そのスイッチが切り替わることはなかった

降魔より早く駆け出していた上条が少女の体を突き飛ばし、籠の落下位置からずらしたのだ

しかし事態に変わりはない。上条は咄嗟に頭を庇うが籠の衝撃はやってこなかった

代わりに訪れたのは凄まじい熱気と閃光だった

 

常盤台のエース『御坂美琴』の電撃の槍によって弾かれた籠は人がいないところへ吹き飛ばされる

そのまま上条と御坂はいつも通りの言い争いを開始する

 

 

「…オイ、何か変だぞ」

 

 

そう言ったのは降魔の隣で先ほどまで楽しそうに競技を観戦していたヴルドだった

 

 

「あ?どういうことだ」

 

 

いつになく真剣な彼女に降魔は競技から目を離し、ヴルドを見る

そこには最近の彼女ではなく魔術師としてのヴルドがいた

 

 

「ここは科学の街のはずなの覚えのある感覚がする」

 

「……」

 

「何かの魔術があるぞ」

 

 

元とはいえローマ正教の魔術師として動いていた彼女の言葉を受け、降魔は慌てて競技に目線を戻す

そこで見たのは見覚えのある2人の少女の体が何かに弾かれている姿だった

 

何かに弾かれていたのは吹寄制理とリアだった

彼女らの体から何かが裂け、何かが砕けるような音が鳴り響く

 

そこからの行動は早かった

電極を弾いた降魔は空間を移動し、リアの元へ駆け寄る

苦しむ彼女の体の中で蠢く何かの波を強引に抜き取る

 

 

「…リアは大丈夫なのでしょうか、と美鼓は…」

 

「心配するな、ひとまずは大丈夫なはずだ」

 

 

様子を見ていたヴルド達もこちらへ駆け寄ってくる

 

 

「お前らはリアと一緒に病院へ行ってやれ」

 

「あなたはどうするんですか、と美鼓は問いかけます」

 

「コレをしでかしたゴミを潰す」

 

 

優しく美鼓と倒れているリアの頭を撫で、リアの近くにあった籠に張り付いている単語帳を見る

おそらくこれが原因だろう

 

少し離れ位置では吹寄が上条に抱えられている

 

 

「…やってくれくれたなクソ魔術師」

 

 

普段の彼からは考えられないような声で呟く

青筋すら浮かべ、杖を握る手は砕けそうなほど握り込まれている

 

彼はそのまま上条達の元へ向かう

 

 

「オイ、さっさとコレをしでかしたゴミクズの場所を調べるぞ」

 

 

そう言って降魔は不気味に笑った

 

 

 

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