とある科学の幻想操作   作:モンステラ

54 / 87
参戦

病院に着いた降魔は自身の病室へ戻り、横になりながらバッテリーの充電を開始した

意外にバッテリーは減っておらず、充電自体は1時間足らずで済んだ

美鼓達はリアの病室にいるらしい

いつも降魔が使っている病室だからだろうか、部屋には彼女たちの私物が色々置かれていた

 

携帯を確認するも食蜂からの連絡はなかった

 

舌打ちをして、降魔はベッドに寝転ぶ

目を閉じながら考えをまとめる

 

学園都市の闇にいる何者かが妹達を狙っている

恐らく妹達を狙う理由は、ミサカネットワークだろう

その何者かはミサカネットワークを手中に収め、何をするつもりなのだ

確かにミサカネットワークを手中に収めることができれば、一方通行と降魔向陽の2人の第1位を行動不能にできる

 

だが、そんなこと面倒なことをしなくても一方通行や降魔を追い込む方法など腐るほどあるだろう

 

それを考えると、目的は全く別なところにあるのだろうか

 

 

「…ったく、面倒くせぇな」

 

 

そこまで考えて降魔は煙草でも吸いに行こうかと机の上に置いてある煙草とライターを掴む

病室の扉を開けようとするが、降魔が扉を開けるよりも早く扉の向こうにいる誰かが扉を開けた

降魔のいるこの病室を訪れる人物は限られている

 

 

「あ?」

 

 

だが、病室のドアを開けたのは降魔が本当に知らない人物だった

看護師、なのだろう

服装だけ見れば、病院に勤務する看護師だった

状況を見れば、怪我人である降魔の元へ検診へきた看護師だろう

 

ただ、どう考えてもその目つきは『命を扱う者』として方向性が逆だ

長い髪を後ろでまとめたポニーテールのような髪型も、深爪気味に整えられた衛生的な爪も、看護師らしい外見的特徴が、ドロリとしたその瞳によって排斥されている

胸の所にある身分証を兼ねた名札には『恋査』とだけあった

 

 

「こんにちはー、ちょっち戦ってくれない?」

 

「…、」

 

 

陽気に意味のわからないことを話す少女?を降魔は睨みつける

 

 

「無視かー。学園都市のてっぺんならこんな状況には慣れてんじゃないのー?」

 

 

面倒ごとは御免だ、そう思いながら降魔は恋査の横をすり抜けようとする

すると、目の前の人物はとても嬉しそうに

 

 

「えー、無視しちゃっていいのー?私この部屋に来る子達に攻撃しちゃうぞー」

 

「…、」

 

「うーんと、ゲコ太のキーホルダー、ホワイトボード、可愛らしい修道服、可愛い携帯電話ねぇ。この中のどれがアンタのでどれが『持ち主』ちゃんか、」

 

 

ズドァッッッ!!!!!!と

言い終わる前に恋査の体が、砲弾のように10メートル以上も吹き飛んだ

降魔はただ、恋査を蹴った。それだけだ

一連の動作にベクトル操作が絡み、人間業を超える速度が伴っただけだ

 

降魔の蹴りを真正面から受けた恋査は降魔がいる病室の反対側にある病室の扉だけではなく、その病室の窓すらぶち破って外へ吹き飛んでいく

彼もそのまま加速して恋査を追いかける

幸いなことに扉や窓が壊された病室には人がいなかった

 

 

外へ飛び出し、辺りを見回すが恋査の姿はなかった

通常の人間ならば外へ放り出された後は、落下していくだけだろう

降魔もそう考えたからまずは視線を下に落とした

しかし、下には人間が落下したしたような痕跡はなかった

 

 

(となると、屋上か)

 

 

空中にいる気配もない

何らかの能力を使って恋査は屋上へ逃げたのだろう

 

空気を蹴り上げ、降魔も屋上へ向かう

 

タンッ、と屋上に着地する

そこにはすでに恋査がいた

 

 

「…それで、テメェは何者だ」

 

 

低く、鋭く、降魔は問いかける

そこには先程までの平凡な日を過ごしていた少年はいなかった。そこには、学園都市が生み出した1匹の怪物が佇んでいた

 

 

「それさ、答える意味ある?」

 

 

恋査のその一言が開戦の合図だった

くん……と、降魔の体が僅かに沈んだ

直後、飛び出すタイミングを一瞬ズラし、降魔は恋査の懐へ飛び込む

 

飛び出すタイミングをズラしたのは意識的なことではなく、降魔の癖のようなものだった

小細工など考えない

どれだけ大層な能力者だろうが、コッチは全てのAIM拡散力場を司る能力者の頂点なのだ

さぁ、目の前にいる舐めた馬鹿の体の骨を全てへし折って全身で蝶々結びにでもしてやろうかと考えた

 

足元のベクトルを操作し、爆発的なスピードで恋査へ迫る

腕ほどの太さの鉄のワイヤーならば軽々と切断できる悪魔の鉤爪で恋査の体を引き裂こうとする

 

真っ直ぐ迫り来る降魔に対し、棒立ちのままの恋査はと言えば、

 

ガッキィィンッッ!!!!!と躊躇なく、降魔のベクトル操作を纏った右手を受け止める

 

 

「な…」

 

 

思わず声が漏れる

降魔はすぐさま電極を確認する

電極はしっかりと動いている、それに演算にも問題はなかった

 

今の感触には覚えがあった

自分と同じ第1位の男と戦った時にこれと同じ感触を味わった

今のは、ベクトル操作とベクトル操作がぶつかった時の感触だ

 

 

「うんうん、なかなかじゃん」

 

 

距離を置きながら降魔は、静かに演算を切り替える

ニヤニヤと不自然に似合っていない笑みを浮かべる恋査を睨みながら、考える

ベクトル操作をアイツ以外が使えるなんてことはない

となると、第1位のベクトル操作の防御面に特化させた能力か

 

 

「前の恋査にゃ悪いけど、こんな楽しいことウチがやるしかないっしょー」

 

「何言ってんのか知らねぇが、」

 

 

降魔は両手を開く

彼の背から純白の翼が飛び出す

 

 

「さっさと死ね虫ケラ」

 

 

対する恋査はジャガッッッ!!という複数の金属が擦れるような、奇怪な音と共に彼女の背から得体の知れない物が飛び出す

メタリックな赤の巨大な花と、おしべやめしべのようにも見える銀色の金属棒が多数

 

構わない

それが何だろうと、粉砕する

恋査の背にある『巨大な花』が閉じた直後だった

入れ替わるように、その背に竜巻のような翼が4つほど接続される

 

互いが互いの姿を見たのは一瞬だった

ッッッドン!!!!という轟音が炸裂し、屋上にあった柵が吹き飛ぶ

少年と少女が真正面からぶつかる

 

 

「なぁなぁ、アンタなら知ってるだろ?」

 

 

降魔と真正面から激突した恋査は、その純白の翼を五指で掴み取る

 

 

「ベクトル操作は触れた物なら何でも『向き』を変えられる」

 

「…クソがっ!!」

 

 

恋査がやろうとしていることを理解した降魔は慌てて距離を取ろうとするが、遅かった

 

 

「アンタが使ってる未元物質だって操れるってことだよ」

 

 

未元物質でできた自身の純白の翼が不気味に蠢き

内側から爆発する

 

 

「がっ、がぁ!!?」

 

 

降魔の体を巻き込み、未元物質の翼は爆散する

全身を衝撃で叩かれた降魔の体が、宙を舞う

 

そんな絶対的な隙を恋査が見逃すはずもなかった

ガシッと恋査のメタリックな赤紫や桜色の腕が降魔の喉を掴み取ると、そのままクレーンのように吊り上げてしまう

それだけでなく、降魔の首に装着されている電極のスイッチを能力使用モードから通常モードへと切り替える

能力を封じられた降魔は両手で喉にある恋査の手を剥ぎ取ろうとするが、日常生活を送るために作られた降魔の義手と軍事用に作られたであろう恋査の機械の腕では性能の差がありすぎる

 

 

「マジでソレのスイッチ切り替えるだけで、能力を使えなくなっちゃうんだー」

 

 

ここまでで既にベクトル操作と未元物質は使ってしまった

それだけでなく、電極のスイッチを切り替えられてまともに能力を発動することもできない

喉を掴む腕を剥ぎ取ることを諦め、彼は懐から拳銃を取り出すが、彼の動きはそれだけに留まらなかった

まるで拳銃がすっぽ抜けたかのように、拳銃は恋査の顔の前へ放り投げられる

 

直後だった

ゴッ!!!と、凄まじい衝撃波が撒き散らされた

降魔が取り出したのは拳銃ではなく、拳銃のようにデザインされた手榴弾だ

自身で火薬を調整し、威力を落とし、相手になるべくダメージを負わせることに特化させた物

 

そんなもので目の前のコイツを倒せるとは思っていない

降魔は下半身を起こし、自分の喉を掴む恋査の腕を股で挟む

そのまま体を捻り、強引に恋査の腕を引きちぎる

 

久しぶりに地面に着いた降魔は引きちぎった恋査の腕を見る

そこに血や肉や骨は一切なく、あるのは機械のパーツだけだった

降魔のように手だけ機械の腕なのだろうか。いや、恋査と呼ばれる少女は体のほとんどが機械でできているのだろう

そこまで考えて降魔は電極を切り替え、ポケットから煙草を取り出して火をつけた

 

 

 

恋査の眼球が僅かに軋んだ

標的の少年が拳銃を投げてきたと思ったら、右腕が引きちぎられた

流石は暗部で活動しているだけのことはある

 

そもそも彼女が降魔向陽を襲撃したのは、彼女の存在する理由を証明するためである

仮に降魔向陽という学園都市の全ての能力を使うことができる最強の超能力者が学園都市へ敵対する行動を取ったら

仮に8人の超能力者が全て同時に統括理事会へ敵対する行動を取ったら

彼女はそのような非常事態に対する対応策なのだ

 

降魔向陽を殺す必要なはないが、それなりのデータを取ってこい。と自分の主人から言われている

 

降魔が放った手榴弾の煙が晴れ、少年の姿が現れる

既にある程度のデータを収集しているが、恋査は少しだけ悩んだ

せっかくなら自身が扱える超能力者の全ての能力を全力で使ってみたいと思ってしまった

 

ガシャコン!!と

恋査の背面が花のように開き、折り畳まれていた複数の編み棒が飛び出し、彼女の人体内部の配線が迅速に組み替えられていく

学園都市に8人しかいない最上位のグループ

超能力者と同じ能力を使おうとしたが、

 

 

「…な」

 

 

ばづんっっっ!!!という嫌な音が、頭の奥から響いた

上下左右の感覚を失った恋査は、まるで棒切れのように真横へ倒れる

 

 

(だ……ぐ、なんっ!?こ、高度の問題を、確……。し、ステムに、侵入の、形セキ、が、が、が、???????)

 

 

ビクンビクン、と痙攣を繰り返す恋査は自分の意識が徐々に何者かに侵食されていくのがわかる

しかし、具体的な解決策は浮かばない

そんな彼女の後頭部に重みを感じる

 

 

「…体のパーツが殆ど機械でできてるテメェにゃ効くだろ」

 

 

ゆっくりと首だけを動かして、声のする方を見る

そこには煙草を咥えた少年がコチラを見下していた

 

『Model_Case RAILGUN』

 

その言葉が恋査の脳裏に浮かぶ

電気を操る能力を使い、降魔は恋査のシステムに侵入し、制御を乗っ取ったのだ

 

 

「が、ガガ、ガガガがガガガ、ガガガガガガ」

 

 

もはや声すら出せていなかった

地面に這いつくばる恋査の目的は知らないが、面倒ごとを持ち込み、アイツらに危害を加えようとしたコイツをこのまま終わりにすることはできなかった

降魔は、恋査の頭部を完全に破壊するために足を振り上げる

そのまま勢いよく足を振り下ろそうとした瞬間、

 

 

「何をやっているのですか」

 

 

その声が聞こえ、降魔の足がピタッと止まる

屋上へ来るための入り口には体操服を着ている美鼓がいた

恐らく競技が終わり、降魔の病室へ行ったが降魔がおらず、屋上から様々な轟音が聞こえたからこの場所に来たのだろう

 

降魔は舌打ちをして、足を下ろす

 

 

「…命拾いしたな」

 

 

それだけ言い残し、電極を切り替えて屋上に落ちている杖を拾う

そのまま美鼓の元へ向かう

 

彼女と一緒に病院の中へ戻ろうとした瞬間、ゾクっと降魔の背に何か冷たいものが走る

その何かを感じ取った方を見る

 

 

「ぁ」

 

 

その小さい声を降魔は聞き逃さなかった

次の瞬間にはドサっと、美鼓の体がいきなり倒れた

しかし、異変はそれだけでは留まらなかった

 

 

「透かさずに遠くに放り投げる…っ!!?」

 

 

倒れた美鼓の元へ駆け寄ろうとした降魔の体から力が抜けた

自分が何を言っているのかわからなくなる

上下左右の感覚が失われる

 

いきなり降魔の演算能力が失われたのだ

 

恐らくミサカネットワークに何らかの異常が発生したのだろう

これをやった奴らが何を考えているのかは知らない

しかし、学園都市の頂点に君臨する2人の超能力者の動きを封じることができた

 

降魔はノロノロとした動きで電極に触れる

ほとんど本能的に降魔は電極のスイッチを切り替えようとする

この事態を引き起こした奴らが何を考えているのかは知らないが、今回は降魔の方が一枚上手だった

 

『科学の亡霊』を使った代理演算

 

ミサカネットワークから科学の亡霊へと演算が引き継がれ、降魔の体に力が戻る

ガバッと起き上がり、美鼓の容体を確認する

 

 

(…意識を失ってるだけ、か?)

 

 

彼女は息を荒くしながら意識を失っている

降魔がどうすればいいか考えてる途中で、ズドンッッ!!!!とどこからか轟音が炸裂した

その轟音がした方へ目線を向けると、どこかのビルから天空に向かって雷が飛び出していた

 

多分だが、あそこへ行けば彼女がこんなになってしまった原因がわかるだろう

そしてその原因を取り除くことだけが彼女を救える唯一の方法だろう

 

 

「チッ、迷ってる暇があんのかよ!」

 

 

そう言って彼は電極を弾いた

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。