とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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お久しぶりでございます
何だか最近暖かくなってきましたね。花粉症が爆発しなければいい春になるのですが…

今回のは少し短めです。それが言いたかっただけなのであとは特に何も言うことはないです
これからもよろしくお願いします


暗部の少年と少女

「…わかった。お前は必ず還してやる」

 

 

学園都市の頂点にいる少年の声が廃墟に響いた

その声を聞いた少女は安心したように意識を手放した

 

それを見た降魔は首に手をかける

チョーカー型の電極のスイッチを切り替える

通常のモードから能力使用モードへ

 

 

「後悔しろ、俺を敵に回したことを」

 

 

言って降魔は笑みを浮かべた

その笑みを見たスキルアウト達は一歩、また一歩と後ろへ下がる

 

だが、怪物の前に立ち、怪物の機嫌を損ねた愚者がタダで逃げられる訳ない

 

降魔が手をかざす

それに応えるように降魔の近くに緑色の光が数個浮き始める

そしてそこから緑色の閃光が炸裂する

 

正式な名称は『粒機波形高速砲(りゅうきはけいこうそくほう)

本来は粒子または波形のどちらかの性質を状況に応じて示す電子を、その二つの中間である曖昧なままの状態で固定し、強制的に操る

学園都市第4位の『原子崩し』

 

圧倒的な閃光が正確に男達の腕を、足を、消し去る

傷口は一瞬で焼かれ、出血はないが、凄まじい痛みが彼らを襲う

 

 

「あ、あぎ。ぎゃあああああああ!!!!???」

 

 

耳障りな悲鳴が廃墟に響き渡る

降魔はそれを聞いても顔色ひとつ変えなかった

ただ煙草を一本取り出し、咥える

 

 

「…うっせぇな。もうちっと静かに喚いてくれよ」

 

 

火をつけながら降魔は蹲っている男のそばにしゃがむ

ふぅ、と煙を吐きつけながら残虐な笑みを浮かべる

 

 

そこからは目を覆いたくなるほどの虐殺だった

 

 

壁に、床に、天井に、真っ赤な血が飛び散っている汚い部屋で降魔は携帯を取り出し、電話をかける

 

 

『もしもし、お仕事は終わりました?』

 

「あぁ」

 

『彼女はいかがだったでしょうか』

 

「…まぁ、合格ってことにしとけ」

 

 

降魔は新しい煙草を取り出しながら話す

リーダーである彼が認めたことで彼女は晴れて『カースト』の一員だ

そしてそれと同時にあることが降魔の中で決定した

彼女にはこの『カースト』から出て行ってもらう

 

今までも降魔がいるこの暗部組織に新入りが何人かやってきた

その全員が例外なく『カースト』から去っている

様々な理由を抱えて組織に入ってきた奴らは今頃普通の日常と呼ばれる平凡な日々を当たり前に過ごしている

暗部に堕ちてくる奴らのほとんどは、学園都市に何らかの弱みを握られていた

降魔がやってきたことは簡単だ

ある程度の仕事を終えたら、降魔がソイツの負の遺産やらを取り除き、暗部から解放する

 

 

『それではお疲れ様でした。何か必要なものはありますか?』

 

「あ?そーだな。四肢がもがれて息を吸って吐くだけしかできねぇ肉の塊の回収だけしろ」

 

『わかりました。お迎えはどうします?』

 

「勝手に帰るから必要はねぇよ」

 

 

降魔は楽な死を与えられずに苦しい生を続けているスキルアウトたちを冷めた目で見ながら電話を切る

そのまま血で汚れている場所から少しな離れている場所で横たわっている少女の元へ向かう

 

 

「おい、さっさと起きろ」

 

 

倒れている少女を降魔は杖で突きながら呼びかける

だが、少女が起きる様子はない

降魔は舌打ちをし、電極を切り替える

 

しばらくすれば『カースト』の回収班がやってくるだろう

この少女もその回収班に任せても良いのだが、自分以外の暗部の人間とあまり関わらせたくない

 

一番近い『カースト』の隠れ家に移動するとしよう

演算を開始し、能力を発動させる

 

少年と横たわっている少女の姿が一瞬で消える

 

 

◇◇◇

 

 

何か長い、とっても長い夢のようなものを見ていた気がする

それは決して普通の人が思い描くような幸せではなかったが、自分にとってはかけがえのない幸せだった

 

ぬるっとした生温かい鉄くさい液体が鼻を刺激する

自分の手を握っていた少年の手はやけに温かった

違う。自分の手が冷たいのだ

 

力を振り絞り、少年の姿を目に焼き付けようとする

最後の最後に見えた少年の目はドス黒い闇が燻っていた

その目から垂れる透明な液体を拭おうとするが、体は動かない

『泣かないで』そんな簡単な言葉すらも出ず、口をパクパクさせるのが限界だった

 

ブツン、とテレビの電源を切るように視界が真っ暗になった

 

 

「…ぅん?」

 

 

ゆっくりと瞼が開く

そこからの景色に見覚えはなかった

そこでようやく意識を失う前の記憶を思い出す

 

ガバッと起き上がり、周りを見回そうとするが体の様々な場所に痛みが走る

突然の痛みに体を振るわせる

ある程度の痛みが引いたのを確認し、今度はゆっくりと見回す

 

やはり知らない場所だ

 

自分はあのあとどうなったのだろうか

確か、あの少年の声を聞いた気がするが、意識が混濁してたためそれすらも確証を持てない

しかし、体に包帯やらの治療の後が残っているということは、自分はあの少年に助けてもらったのだろうか

 

 

「…起きたか」

 

 

扉を開けながら降魔向陽が入ってくる

そんな彼を見つめる

何だか先ほど、仕事に行く前とは雰囲気が違うような気がした

刺々しい感じではなく、何だか少し優しそうに見える

 

 

「なんで私を助けた」

 

「あ?」

 

 

今度は逆にこっちが刺々しくなってしまった

だが、一度口から出してしまった言葉はもう取り消せない

目の前の少年はこちらを見ながら机の上に置いてあった煙草を手に取り、咥える

 

 

「別に理由があった訳じゃねぇよ。気分だ気分」

 

「気分……」

 

 

命を救われた自分が言えることじゃないだろう

それどころか目の前にいる超能力者の機嫌を損ねれば今度こそ命の保証はできない

だが、これは言わなくてはいけない

言わずにはいられなかった

 

 

「私の、命はアンタの気分で救われるほど安いものじゃない!!!!」

 

 

そう叫んで痛む体を無視し、降魔の胸ぐらを掴んだ

彼の胸ぐらを掴み、キッと睨みつけたところで我に帰ったが、もう遅かった

 

最強の超能力者はため息を吐きながら面倒くさそうな目で少女を見る

 

 

「…離せ」

 

 

そうしてただ一言だけ呟いた

少女はゆっくりとした動きで降魔から手を離す

 

わかっているこの少年がそんな下らない理由で自分の命を救ったのではないと

しかし、理不尽に暗部へと堕とされて普通の生活を取り上げられた怒りをどこへぶつければいいのだろう

 

謝罪と感謝の言葉を言わなければ

震える体に鞭を打って口を開こうとする

 

 

「俺は帰る。お前は勝手に生きてろ。この部屋も自由に使っていい」

 

 

少女が言うよりも早く降魔が口を開いた

彼を止めようと手を伸ばすが、既に彼は歩き出してしまっていた

 

 

外に出て降魔は携帯を取り出して電話をかける

 

 

『もしもし、何か御用ですか』

 

 

電話に出たのはいつもの電話の女だった

 

 

「新入りについて聞きてぇことがある」

 

『私が教えられる範囲でならば教えますよ』

 

「あの女を俺に接触させて何がしてぇんだ」

 

『…近々暗部同士の激突があると思われます。そのための戦力増強です』

 

 

電話の女は極めて丁寧にそう言った

上層部の考えなどわかりたくもないが、あの新入りはそれだけのためにこの組織に入れられた訳じゃないだろう

あの程度で戦力増強だと?笑わせてくれる

確実にコイツらは何かクソ下らないことを考えている

 

 

「図に乗ってんじゃねぇぞゴミ屑」

 

 

低く唸るように降魔は言葉を紡ぐ

電話の女はそれをただ黙って聞いている

 

 

「テメェらが何を考えてるかなんざ毛ほども興味はねぇが、テメェらの思惑に表の人間を巻き込むんじゃねぇ」

 

『…用件は以上ですか?』

 

 

それを聞いた瞬間、降魔は舌打ちをしながら電話を切った

この街の闇に潜むゴミ共へ向けて忠告する

 

 

「今に見てやがれ、俺の牙がテメェらの喉元食いちぎってやる」

 

 

牙を研ぎ続ける怪物が唸る

 

 

 

 

 

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