とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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おはようございます。こんにちは。こんばんは。モンステラでございます。
私ごとなのですが、先週手首を折るという不幸に見舞われました。しかもかなり酷かったらしく手術が必要なレベルの怪我だったそうです。
ようやく手術も無事に終わり、退院して何とか生活しております。それゆえ更新が遅くなってしまうかもしれませんが何卒よろしくお願いします。

これからもよろしくお願いします!!!!!!!


見えるはずのない景色

インデックスと別れた上条当麻は、爆心地にいた

見慣れた第7学区の一角のはずだった

そこにはいつもの日常など存在していない

あったのは瓦礫の廃墟だった

 

爆心地から半径100メートル前後にあった建物は軒並み破壊されており、全てが木っ端微塵に破壊されているわけではない

それが生々しく残っている

前方のヴェントによって動けなくなっていた人たちは大勢いたはずだ

あの瓦礫の山にいったいどれだけの人が埋まっているのか、上条にはもはや想像がつかなかった

 

 

その破壊の中心にいるのは1人の天使

 

 

サイズはほとんど人間と変わらない

しかし、異様なのはその翼だ

巨大すぎる翼に人間が飲み込まれそうになっているように見えた

 

爆心地の中心にいたのは少女

風斬氷華

それは、上条当麻も知っているはずの人物だった

気弱で泣き虫で、悪党を殴ることさえ躊躇うような女の子だったはずだ

 

そんな少女が破壊の爆心地にいる

頭はグラリと垂れ、半開きの唇からは半端に舌が飛び出していた

不気味にふらつく眼球には、なんの感情もなかった

 

 

(かざ、きり……)

 

 

その光景を見ていた上条当麻は、自分の顔が引き攣るのを自覚した

止めなければならない、心の底からそう思った

 

 

「風斬ィィィィぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

 

上条は叫ぶ

その声に反応するように風斬の顔がこちらを向く

しかし、ガリリッ!!という金属を擦るような不快な音と共に彼女の頭上にあった輪が高速回転した

輪の外側についている鉛筆ほどの棒が、一斉に輪に突き刺さる

 

悲鳴のような音が聞こえ、風斬の顔が強引に正面へ向かされる

 

それは余りにも風斬の人間としての何かを無視したものだ

許せるはずがなかった

 

だが、自身に宿る幻想殺しではどうすることもできない

あの輪を壊そうと彼女の体に触れれば、AIM拡散力場の集合体である彼女すらも砕いてしまう

上条は役に立たない自分の右拳を瓦礫へ叩きつける

ここに埋まっている人たちも救えない、異変に見舞われた風斬も助けられない

余りに自分が小さすぎて、惨めだった

 

そんな彼に更なる不幸がやってきた

 

 

「おやおや。大罪人同士、傷の舐め合いでもやってるトコだったかしら」

 

 

上条は声の聞こえてきた方へ振り返る

そこには先ほどまで上条を襲撃していた『神の右席』とかいう組織の1人

前方のヴェント

それと彼女の隣にいる見覚えのない真っ黒い服を着た女が立っていた

 

前方のヴェントと一緒にいるということは、彼女も『神の右席』の一員なのだろう

そうなると考えられるのは降魔向陽が出会ったという上方のセレナだろう

 

 

「せっかく後回しにしてやろうって考えてたのに、自分から殺されにきちゃったのかな?」

 

「風斬はやらせない」

 

「へぇ、あんなのにも情って湧くんだ。とんだ博愛主義者よねぇ。黙示録に出てくる『特大の淫婦』の方がまだマシでしょ。そこらの変態でもアレは流石に受け入れられないと思うわよ」

 

「テメェ、撤回しろ!!!!」

 

「撤回って言われてもね」

 

 

ヴェントの言葉に激昂した上条が、拳を握りしめたところでヴェントの隣にいたセレナが一歩前へ出てきた

 

 

「おい。降魔向陽はどこだ」

 

 

そこで出てきたのは上条のクラスメイトの超能力者の名前だった

セレナと呼ばれる女はドス黒い闇が籠った瞳で上条を睨みながら問いかける

先ほどの電話で降魔が彼女とぶつかっていたのは知っていたが、なぜ彼女がそこまで彼にこだわるのかが理解できなかった

 

 

「あっれー?お友達から聞いてなかったのかな。アンタの友達の降魔向陽はこの子の母親を殺しちゃったのよ」

 

「……、」

 

 

黙りこくる上条にヴェントがそう告げる

あの少年と出会ってまだ半年も経っていない

しかし、彼が意味もなく人を殺すようなとんでもない悪党には見えない

時には上条に協力し、多くの事件を解決してきた

 

そんな彼を上条は信じることにした

 

 

「本っ当に気持ち悪いわね。吐き気がするような『天使』と殺人鬼を庇って」

 

「…どーでもいい。テメェをぐちゃぐちゃの肉塊にしてから、あのクソ野郎も地獄に叩き落としてやる」

 

 

2人の『神の右席』のメンバーが上条当麻を睨みつける

対する上条当麻は拳を握りしめ、『神の右席』を睨みつける

 

先に飛び出したのは上条当麻だった

彼は右の拳を握りしめ、振りかぶりながら走る

 

そんな少年を冷めた目で見るセレナが動く

 

上条は一瞬だけ、セレナのその瞳と目が合う

その瞳には魔法陣のようなものが刻まれていたような気がする

それを確認する間もなく、ぐらりと上条の体が眩暈を起こしたようにバランスを崩す

 

やってきたのは猛烈な眠気

全身から力が抜け落ち、上条の体は倒れそうになる

ほとんど反射的に上条は自分の右手で頭に触れる

何かが砕けるような音と共にさっきまで上条を蝕んでいた眠気が消え去る

 

しかし上条が意識を取り戻した時には、既にヴェントが駆け出していた

空気を使った魔術だろうか。凄まじいスピードで上条へ迫る

意識を取り戻したばかりの上条の顔面へ、容赦なく飛び蹴りが炸裂する

 

鈍い音とともに上条の体が濡れたアスファルトの上を転がる

 

 

(がっ、ぁ!?な、にが…、!?)

 

 

鼻を押さえながら上条は慌てて起き上がる

考える暇もなかった

ヴェントは目と鼻の先にいた

振り上げられたハンマーが上条目掛けて振り下ろされる

じゃらら、と鎖が擦れる音がした

血に濡れて赤く染まったしたのチェーンは上条目掛けて、螺旋の槍を描いていた

その形をなぞるように、風の凶器が発生した

 

 

「がああああッ!!!」

 

 

叫びながら右手を突き出す

ヴェントの攻撃は弾け、周囲に風が撒き散らされる

 

2人の『神の右席』から距離を取り、上条はキッと睨みつける

ヴェントだけでも厄介なのにセレナという少女がいる時点で上条は追い込まれている

チラッと後ろにいる風斬を確認する

それが間違いだった

 

何かの魔術を使ったであろう2人の魔術師が一気に上条へ肉薄する

 

 

「……ッ!!?」

 

 

上条が焦ったように回避しようとするが、圧倒的に間に合わない

ヴェントの手にしたハンマーが風を生み出し、それが上条の腹部の直撃する

呻き声すら出なかった

 

風の爆弾が直撃した上条の体が地面をバウンドしながら吹き飛ぶ

口から血を撒き散らす少年は、そのまま地面に倒れこむ

そんな光景を見ても彼女らは容赦をしない

すぐに追撃にかかる

 

 

「私は科学が憎い!!!私たちをこんなにした科学が嫌い!!!」

 

「大事な人を死なせたアイツを匿う科学が憎いんだよ!!!!!」

 

「クソッ……!!」

 

 

上条は必死に起き上がろうとしているが、ダメージが体から抜けきっていない

その動きは余りにも遅い

そして彼を殺すことに彼女らは躊躇しない

上条当麻を殺し、科学の街を終わらせる

 

 

「アンタらを殺してチョーシ乗ってるアレイスターの野郎を引き摺り下ろす!!!」

 

 

ヴェントとセレナの攻撃の準備が完了し、狙いを完璧に捉える

次の瞬間には、上条は呆気なく絶命するだろう

 

 

「あ?」

 

 

そんな声を発したのは今まで完全に有利な状況にいたはずの少女だった

確実に上条当麻の息の根を止められると確信していたが、その攻撃は空を切った

上条の姿がいきなり消えたのだ

 

いや、上条の体が消えたのではない

ヴェントとセレナの2人がいたはずの位置が移動したのだ

上条の幻想殺しにそんな芸当はできない

 

であれば、これをやった奴がいるはずだ

 

 

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色 盛者必衰の理を表す。ただ、俺たちを除いてだがな」

 

 

その声のする方へ目を向けると、そこには煙草を咥えた灰色の少年が獰猛に笑いながら立っていた

隣には先ほどまで倒れていた上条がゆっくりと立ち上がり始めている

 

 

「…テメェ」

 

 

ヴェントの隣にいるセレナが青筋を浮かべながら降魔を睨みつける

対する少年は煙草の煙を吐きながら宣言する

 

 

「さぁ、最終ラウンドだ。この腐りきった戦いを終いにするぞ」

 

 

そう言って2人の少年が別々に飛び出した

 

 

上条当麻は前方のヴェントの元へ

降魔向陽は上方のセレナの元へ

 

制限時間は12、3分といったところか

殺すという選択肢は既にない

何がなんでも彼女を救い出す

それが降魔向陽という悪党に課せられた使命だ

 

何をすれば彼女の怒りを鎮めれらるかは、わからない

しかし、何もしないなんてことはできない

降魔はこの命を簡単に手放すわけにはいかない

セレナは降魔の命を奪わないと気が済まない

 

だから、互いの納得が得られる場所まで拳を交えて探し出す

 

降魔は超能力をセレナは魔術を使って一気に互いの拳が届く位置まで肉薄する

 

その瞬間、セレナの瞳に刻まれている魔法陣が蠢く

降魔が彼女と目が合ったのは1秒にも満たない時間だっただろう

しかし、セレナの魔術は確実に降魔へと牙を剥いた

 

 

◇◇◇

 

 

「……、」

 

 

そこで降魔向陽は目を覚ました

いや、その表現があっているのかはわからない

何か夢を見ていたような気もするし、瞬きをしただけだったのかもしれない

 

そこはどこかの公園のような場所だった

 

 

「…急に立ち止まってどうしたの?」

 

 

その声のする方へ目を向けると、買い物袋を持った女性と灰色の髪の少女がいた

その2人は心配するような目でこちらを見ていた

 

そこで思い出した

確か、夕飯の買い物の帰りに小さい頃に何度も来た公園に寄ろうという話になったのだ

 

 

「…いや、なんでもない」

 

 

そう言って降魔向陽は普通に歩き出した

仲の良い母と娘と息子はその幸せに対して何も疑うこともなく帰路へ着く

 

 

「あっ!お醤油買い忘れちゃった」

 

 

突然母がそんなことを言った

娘と息子は『またか…』という目で母を見る

買い物へ行くと必ずと言って良いほど何か買い忘れるのだ

 

 

「ハァ、俺が行ってくるわ。買うのは醤油だけでいいのか?」

 

「うーん…。買いに行ってくれるのは嬉しいけど、スーパーまで結構距離があるよ?」

 

「別に能力を使えば…」

 

「能力?」

 

 

思わず口にして首筋に手をやったがそこには何もない

それに能力とは一体なんだろう

 

 

「あっひゃひゃひゃ!!能力って、アンタいつの間に厨二病になったの!!」

 

 

息子の言葉に腹を抱えながら笑ったのは娘の方だった

 

 

「そんな変なのと一緒にするなクソ姉貴」

 

「ああん?生意気言うじゃんクソ弟」

 

「ほらほら、喧嘩しないで早くお家帰るよ」

 

 

睨み合う姉弟を宥めながら母は歩いていく

どこにでもいるような普通の家族は夕暮れの公園を歩いていく

 

しばらく歩くと公園を抜け、住宅街へやってきた

この住宅街の一角に彼らの家はあった

もうすぐ太陽も沈む

薄暗くなってきた道を歩いていく

 

 

すると、突然誰かに腕を掴まれて暗い路地に連れ込まれる

 

 

「…オイ、ありえねぇモン見せられて呑気に満足してんじゃねぇよ」

 

 

低い声と共に体を壁に押し付けられる

そこで自分を路地裏に連れこんだ犯人の姿を見ることができた

灰色の髪にやる気のなさそうな目

 

自分と瓜二つな少年がいた

だが少しばかり違うところもあった

首筋にあるチョーカーと自分を掴む手とは反対の手に握られた杖

 

 

「は、え?」

 

 

頑張ってその少年の拘束から抜け出そうとしたが、一向に抜け出せない

体格は同じはずだ。それに目の前の少年は杖をついている

なのに何故か少年の拘束から抜け出せない

 

 

「さっさと起きろ!!これは夢だ」

 

「な、にを…?」

 

「お前の母親は死んだ!!姉も不幸のどん底だ!!」

 

 

完全に太陽が沈み、気味の悪い街灯だけが彼らを照らす

少年は胸ぐらを掴みながら叫ぶ

 

 

「そんな訳ねぇだろ!!母さんも姉貴もさっきまで一緒にいたんだぞ!!」

 

「思い出せ!!これは夢だ。都合のいい夢に縋るんじゃねぇ!!」

 

「…ッ」

 

「アイツらを1人にするつもりか!?」

 

 

その一言が決定打だった

栓が弾け、さまざまな記憶が脳を駆け巡る

 

そこでようやく思い出した

自分がすべきことを

 

 

「…思い出したよ」

 

「よし。ならお前の戦場はここじゃねぇことくらいは理解できるな?」

 

「当たり前だろーが」

 

 

2人の少年が煙草を取り出し、火をつけた

 

 

◇◇◇

 

 

「…ッ!?」

 

 

降魔はそこで目を覚ました

瞬時に状況を把握し、体に力を巡らせる

気を失っていたのは一瞬だ

であれば、すぐそばにアイツがいるはずだ

 

そう思い、倒れかかっている体を起こそうとする

そんな彼の顔面に衝撃が走る

顔の左側を襲った衝撃を受け流しきれずに、吹き飛ぶ

 

 

「ちょーどいいところに頭があるから蹴っちゃった!!」

 

「チッ」

 

 

舌打ちをしながら体勢を整える

自身の体に異常がないことを確認しながら、思考を巡らす

 

 

(あの攻撃の発動条件は何だ?)

 

 

気がついたら意識を失ってあり得ない夢の世界にいた

対象を眠らせて様々な夢を見させる

それがセレナの魔術なのだろう

 

発動条件がわからない以上は下手なことはできない

 

だからと言って引く訳にはいかない

口の中が切れたのか、鉄臭い液体を吐き捨てながらセレナのいる方を見る

 

セレナは既に地を蹴り、こちらへ向かってきていた

降魔も足に力を込めて地面を蹴り上げる

 

再び彼らは肉薄する

降魔は拳を振りかぶり、照準を定める

それは、降魔だけではなかった

セレナの方も拳を握りしめ、狙いを降魔へ定めていた

 

ほとんど同時に2人の拳がとぶ

その硬く握られた拳は正確に互いの頬を捉える

 

拳から伝わる相手の肉を叩く衝撃と相手の拳が自身の肉を叩く2つの衝撃が彼らを襲う

 

 

「がっ!!」

 

「ぐっ!!?」

 

 

2人の顔が弾ける

だが、それでも目だけは己の敵を捕捉し続ける

 

降魔は、最高峰の脳を使って勝利までのプロセスを組み立てる

セレナは、自身の魔力を体に巡らせて魔術を発動させようとする

 

魔力は問題なく彼女の体を巡り、彼女の想いに応える

セレナの眼球が不気味に痙攣する

その瞬間、彼女の瞳に刻まれた魔法陣が再び蠢いた

 

降魔はその瞳と目が合った瞬間、己の失敗に気づいた

魔術を深く知らない彼は先ほどの魔術についても検討がついていなかった

だから魔術を発動させる手順を踏ませなければ大丈夫だと思っていた

 

それが失敗だった

 

ステイルのようにルーンのカードを撒く必要も、シェリーのようにチョークで記号を書く必要も、オリアナのように単語帳をちぎる必要も彼女にはない

ただ、己の魔力を瞳に刻まれた魔法陣に通せばいいだけだ

だから降魔は対処を間違えた

 

顔をしかめる暇もなく、降魔の意識は落ちていった

 

 

 

 





上条「そういえば、さっきのセリフなんだったんだ?」

降魔「あ?」

上条「いや、諸行無常のナンタラとか言ってたじゃん」

降魔「あぁ、先週の呪術○戦のチョンマゲゴリラが言ってたセリフだ」

上条「パクリかよ…」
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