とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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超能力者と居候2人

家に着く前に降魔は同居人2人のことを考えていた

自分がいない間2人はどんなことをしているのだろうか

片方はとある実験の被害者で、性格や知識に難がある

もう片方は話すことができず、感情らしい感情は持っていなかった

 

 

「・・・何やってんだ?」

 

 

家に帰り、扉を開けると目の前には素っ裸の同居人2人がいた

2人とも髪や体に水滴がついているところから風呂にでも入っていたのだろう

 

 

「おや、買い物にしては遅いので心配していましたよ、とミサカはあなたの心配をしてみます」

 

「・・・・」

 

 

少女2人に恥じらいなどなかった

そんな姿を見て降魔はため息を吐き

 

 

「はぁ、どーでもいいが、服を着ろ」

 

 

降魔は買ってきたパジャマを2人に渡す

目の前でいそいそと着替える2人を尻目にベランダへ行き、煙草に火をつける

 

ふぅ、と煙を吐きながらこれからのことを考える

裏の情報だともう1人の第1位の『あの実験』ももうそろそろ折り返しだそうだ

アイツが自分を超えたら自分は真っ先に殺されるだろう

確信に近い何かがあった

 

だからといって、あの実験を止める気はない

ただ、自分が殺されたら同居人2人はどうなるか考える

 

 

「チッ!めんどくせーな」

 

 

独り言を呟き、煙草を消して部屋に入る

同居人2人は全裸から可愛らしいパジャマに着替え終わっている

もちろん彼のセンスではなく、店にいた店員のセンスである

 

 

「お前にはコレを渡しとく」

 

 

そう言って降魔は先ほど買ってきた袋の中からホワイトボードとペンを取り出し、少女に渡した

 

 

「それで、お前名前は?」

 

「・・・・」

 

 

少女は渡されたホワイトボードにペンを使って文字を書き込んでいく

字が書けるようで少し安堵の息を吐く

 

 

『Lia』

 

 

下手くそな字でそう書いてあった

リア、それが彼女の名前だろう

 

 

「そうか、俺は降魔向陽だ。んでコイツが」

 

「はい、同居人1号のミサカです」

 

 

そう言うとリアは小さく頷いた

いつの間にか時刻は10時を過ぎていた

 

降魔は大きな欠伸をし、リアを寝室へ連れて行く

 

「お前のベッドでけぇから2人で寝ろ。じゃあな」

 

「了解しました、とミサカは欠伸を噛み殺しながら返事をします」

 

『わたしがベッドを使っていいのですか?』

 

「あ?使えよ。ソイツと2人で寝ろ」

 

 

2人を寝室へ押し込めると、降魔も自身の寝室へ行き、布団へ入る

今日はいろいろ疲れた

目を瞑ると意外なほど呆気なく眠気に支配された

 

◇◇◇

 

夢をみた

クソみたいな夢をみた

 

 

「001番、出ろ」

 

 

自分に名前などなかった

呼ばれるのは番号だけだった

 

また実験が始まる

痛み、苦しみが連続でやってくるようなクソみたいな実験だ

 

自分の周りには数十人の子供がいた

それは自分と同じように名前がない子供たち

 

その中で、俺はなかなか優秀だったらしい

何やらAIM拡散力場を操れるかもしれないのだとか

 

 

そんな俺にも友人と呼べるような奴らがいた

同じ研究所で、同じ苦しみを味わい、同じ痛みを耐える

 

中でも自分を弟のように可愛がってくれる女の子がいた

名前など忘れたが、ショートカットで可愛らし女の子だった

 

いずれ自分もこの施設から出され、自由に外を走り回れる日が来るのだろう

普通に笑って、普通に泣いて、普通に恋をして、普通に生きる

そんな日常を迎えられるだろう

 

それだけが自分の希望だった

 

しかし、そんな淡く、儚い希望は一瞬で崩れていく

 

 

 

 

「何としてでも奴を殺せ!!!実験データを持ち出す時間を稼げ!!!モルモット共に殺させろ!!!!」

 

 

研究員の怒号が響く

能力の暴走

 

 

「ぎゃっははははははははははは!!!!!!!」

 

 

拘束具を弾き飛ばし、迫るくる武装した研究員を思うがままに粉砕していく

 

気持ちがいい

開放的だ

だけど、まだまだ足りない

まだ壊したりない

 

何かないか

何かないか

何かないか

 

そんな彼の前に立つのはこの研究所にいる子供たちだった

その中には彼の友達、自分を弟のように可愛がってくれた女の子もいた

 

だけど、そんなことは彼には関係ない

 

 

「いひっ」

 

 

俯きながら醜く笑った

その後の記憶がない

ブツン、とテレビの電源を切るように何も映さなくなった

 

 

再び電源入れると

全身を血に染め、瓦礫の中で1人立っていた

 

周りにあったのは赤い肉の塊だけだった

 

周りには誰もいなかった

 

1人ぼっちの怪物は1人で汚い空を眺めた

 

 

◇◇◇

 

 

パチ、と目が覚める

全身に嫌な汗をかいていた

シャワーでも浴びようと思い、体を動かそうとする

左腕になんか違和感がある

 

何か重いものが乗っかっている感覚だ

頭を動かして違和感の方向へ目を向けると、そこには知っている少女がいた

 

リアだった

 

いつの間にか降魔の寝室へ侵入し、そのまま布団の中へ入ってきたのだろう

 

 

「はぁ」

 

 

ため息を吐き、彼女を離そうとするが少女の両手がガッチリ降魔の服を掴んでいた

上着だけ脱ぎ捨て、降魔はシャワーを浴びにいく

 

時刻は午前の4時だ

もうそろそろ日がで始めるだろう

 

夜が更ける

 

 

そこから二度寝する気にはなれず、コーヒーを入れて一気に飲み干す

パソコンを使って、適当にネットサーフィンを楽しむ

 

 

どれほどの時間が経ったのだろうが

朝日が窓から眩しく注ぎ込む

 

冷蔵庫を覗き、適当に朝食を作る

目玉焼きを作って、インスタントの味噌汁を入れる

 

あとはご飯を盛るだけだ

 

 

「オイ、起きろ」

 

「んー、まだ起きれません、とミサカは再び夢の世界へ」

 

「じゃ、メシ抜きな」

 

「起きました、とミサカは迅速に行動します」

 

 

まずは同居人1号であるミサカを起こす

その次は降魔の寝室にいるリアを起こしにいく

 

 

「オイ、起きろ」

 

「・・・・」

 

 

降魔が声をかけるとリアはすぐに起き上がり、こちらをジッとみてきた

 

 

「朝メシだ。さっさと来い」

 

 

そう言ってリビングへ向かう

リビングに行くとすでにミサカが朝ご飯をモグモグ食べていた

自分の分とリアの分のご飯をよそる

 

席について自身の作った朝メシを食べているとリアもリビングにやってきた

昨日の夜に渡したホワイトボードも持っている

よく見るとそのホワイトボードには何か書いてあった

 

 

『私も食べていいんですか?』

 

「当たり前だろーが、病院行くからさっさと食え」

 

 

オドオドとした動きで席につき、ゆっくりと朝メシを食べ始める

リアが食べ始めた時にはもうミサカは食事を終え、爪楊枝で歯を弄っていた

 

 

リアも食事が終わると、何やらホワイトボードにペンを走らせている

その様子を尻目に降魔はベランダに行き、煙草に火をつける

 

煙を吸ったのと同時に窓がコンコン、と叩かれる

 

「あ?」

 

窓際には無表情のリアがホワイトボードをこちらに向けていた

そこには

 

 

『何でこんなに優しくしてくれるんですか?』

 

 

煙を吐き、窓を開ける

そして無表情の少女を見つめる

 

 

「・・・お前が知る必要はねーよ」

 

『そうですか』

 

「準備しろ、そろそろ病院に行くぞ」

 

 

煙草を消し、降魔も準備をするために自室に行く

しかし、その前に

 

 

「オイ、お前も今日調整だろーが。さっさと準備しろ」

 

 

リビングでくつろいでいるミサカにも声をかける

 

 

「え?ミサカもですか」

 

「当たり前だ。面倒ごとは嫌なんだよ、一緒に行くぞ」

 

「ラジャー、とミサカは疾風の如く準備を開始します」

 

 

自分の部屋に駆け込むミサカを見ながら自分の準備も進める

 

 

◇◇◇

 

やってきたのはいつもの病院

冥土帰しのいる第7学区の病院だ

 

受付を済ませ、待合室で呼ばれるのを待つ

ミサカの方は先にあの先生の所へ行き、調整を始めてもらっている

 

 

待合室のソファに座り、天井を眺めていると、横の少女が服をチョンチョンと摘んできた

 

 

『あなたは私のヒーローです』

 

 

ホワイトボードにそんなことが書いてあった

突然すぎて降魔は少し混乱してしまった

 

 

「どーいうことだ」

 

『あなたは私を暗闇の底から救い上げてくれた』

 

 

未だに感情の籠らない目でこちらをジッと見つめる

降魔は何とも言えないような気持ちになり、思わず目を逸らしてしまう

 

そんな中ピンポーン、と電子音と共に降魔の名前が呼ばれた

内心では助かったと思いながら

 

 

「行くぞ」

 

 

そう言ってリアの手を掴み、指定された診察室へと連れていく

降魔が彼女の前を歩いていたから気がつかなかっただろうが、後ろを歩く少女の何も宿っていなかった瞳に少年の姿が暖かく刻まれていた

 

 

 

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