とある科学の幻想操作   作:モンステラ

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邂逅

「特に異常はないね」

 

 

診察室で冥土帰しがそう言った

『雑貨稼業』の男につけられた傷や痣を除けば彼女は健康体だという

それを聞いて、降魔は少しだけ安心する

しかし、問題は残る

 

 

「・・じゃあコイツが喋れない原因は何だ?」

 

「声帯に異常は見られなかったからね、原因があるとすれば『心』の問題じゃないのかな?」

 

「心、か」

 

 

過去のトラウマ、ストレスなどが彼女の心を縛りつけている

超能力者の中には精神を完璧に操る者がいる

降魔の能力ならば、彼女の心の傷を消すことができるだろう

 

しかし、それではダメだ

面倒くさいが能力なしでリアの心の傷を癒すしかなさそうだ

 

 

「あっちの調整はどーなってる」

 

「うん?彼女の方ももう終わるよ」

 

「そうか」

 

「一応君も僕の患者なんだけどね?」

 

「あ?これの調子なら問題ねぇよ」

 

 

降魔はそう言って左腕の義手を触る

以前ほどの違和感はなく、今はもう気にすることはなくなった

 

 

「じゃ、世話になったな」

 

 

それだけ言い残し、降魔とリアは診察室から出ていく

 

 

 

ミサカも合流し、家へ帰る途中で降魔の携帯が鳴った

携帯を確認するとあの男だった

 

 

「・・・もしもし」

 

『降魔向陽ですかー?お仕事の依頼ですよー』

 

 

気に触るような話し方をするのはいつもの男だった

 

 

「そうか、今回は何だ?」

 

『はい、今回のお仕事はある少年の監視です』

 

「監視だと?」

 

『そうなんですよ。対象の名前は『上条当麻』と言います』

 

 

聞き覚えのない名前だ

学園都市にとってその男はよほど重要な男なのだろうか

 

携帯にメールが送られてくる

通話を繋ぎながらメールを確認にすると、その少年の詳細が書かれていた

 

 

「おいおい、コイツ高校生じゃねーか。まさか俺に高校に入学しろと?」

 

『そのまさかです。既に準備は整えていますよー』

 

「は?」

 

『夏休み明けから学校へ通ってもらいます。その前に少しでも対象に近づくことをお勧めします』

 

「・・・・」

 

『それでは、頑張ってくださいねー』

 

 

そう言って、電話は切れた

メールに添付されていた少年の顔写真には見覚えがあった

昨日の夜、魔術師と呼ばれる女と揉めていた奴だ

 

 

「はぁ、まじかよ」

 

 

ため息混じりに愚痴をもらす

そんな様子を見ていた2人の少女が不思議そうにこちらを見てくる

 

 

「どうかしたのですか、とミサカは電話をしていたあなたに問いかけます」

 

「んあ?仕事の電話だ。クソみてーな仕事だ」

 

『何のお仕事をしているんですか?』

 

「・・・お前らは知らなくていい」

 

 

学園都市の闇に浸かるのは自分だけでいい

せっかく光の世界に戻れたコイツらを闇に触れさすべきではない

面倒くさい仕事のことを考える

 

 

◇7月27日◇

 

準備を終えた降魔向陽はとある場所を目指していた

彼の監視のと対象である上条当麻がいる場所だ

 

彼の住んでいた学生寮は1週間ほど前に何者かの手によって焼き尽くされている

 

携帯の地図アプリを見ながら、目的の場所へ辿り着く

そこは、超がつくほどボロボロの木造二階建てのアパートだった

2階の一番奥の部屋に『つくよみこもえ』と平仮名で書いてあるドアプレートを見つけた

 

ピンポーン、とチャイムを鳴らして、しばらく待っていると

 

 

「はいはいはーい、今いくのですよー」

 

 

ドアが開き、ちょこんと覗くのは、ピンク色の髪をした幼女だった

事前に資料を確認していなかったら驚きで声も出なかっただろう

降魔はいつもの仏頂面ではなく、爽やかな笑顔で対応する

 

 

月詠小萌(つくよみこもえ)さんですか?」

 

「あ、はい。えっと、どちら様ですか?」

 

「初めまして。学園都市の治安維持組織『幻想(イマジン)』の降魔向陽です」

 

 

もちろんそんな組織はない

しかし、暗部の力で架空の組織を作り出し、電子上にも記載され、降魔の他にも架空のメンバーも揃っている

普段は絶対出さないような声で、なるべく好印象を与える

 

「は、はぁ、それで何の御用なのですか?」

 

「はい、上条当麻さんはいらっしゃいますか」

 

「いるんですけど、今は寝ちゃってるのですよ」

 

「そうですか。それでは出直します」

 

 

そう言って、立ち去ろうとする

 

 

「ちょ、ちょっと待って欲しいのです!」

 

「はい?」

 

「これから買い物へ行くのでしばらくの間、留守をお任せできませんか?」

 

 

予定とは少し違うが、これはこれでいいだろう

 

 

「はい、わかりました」

 

 

月詠小萌に案内され、部屋に入るとそこは灰皿には山住みの煙草、床に転がるビールの缶

まるでおじさんでも住んでいるかのような部屋だった

部屋には布団が敷いてあり、そこには対象である上条当麻が横になっていた

その横には見覚えのある少女が覆いかぶさるようにして寝息を立てていた

 

 

「こんな状況なので、買い物にも行けなかったのです」

 

「そうですか」

 

「それでは、ゆっくりしていってくださいなのです」

 

 

そう言って、玄関から出ていってしまう

とりあえず、窓際に腰を落とし、煙草に火をつける

 

 

しばらくすると、寝息を立てていた少女が起き上がった

寝ぼけているのかしばらくはボーッとしていたが、降魔を見つけると驚いた声を上げる

 

 

「ひゃっ!!?何であなたがここにいるのかな!?」

 

 

その声には怒気が込められており、目線にも敵意が込められている

おそらく、降魔が魔術師と戦闘をした日のことを覚えているだろう

 

 

「あ?起きたのか」

 

「む。質問に答えるんだよ」

 

「仕事だ。ソイツの監視と護衛」

 

「とうまの?」

 

「まぁ、詳しい事情はソイツが起きてからだ」

 

「敵じゃないんだよね」

 

「とりあえずはな」

 

「それならあなたの名前を教えて欲しいかも」

 

「あ?人に聞くときは自分から名乗るもんだぞ」

 

「あ、それはごめんなさい。私の名前はインデックスって言うんだよ」

 

「そうか。俺は降魔向陽だ」

 

「うん、覚えた。よろしくなんだよ!!こうよう!!」

 

「あぁ」

 

 

目の前の少女の敵意が少しずつだが、薄れてきた

やることも特にないので、降魔は目を閉じ、仮眠をとることにした

 

 

どれ程寝てたのかはわからないが、誰かの話し声が聞こえ、目を覚ます

どうやら上条当麻が目を覚ましたらしい

 

 

「起きたか」

 

「・・・アンタは」 

 

 

降魔に気づき、上条は不思議そうな声を上げる

 

 

「俺は学園都市の治安維持組織『幻想』の降魔向陽だ」

 

「えーっと、それで学園都市の治安維持組織の降魔さんが上条さんに何のようでせうか?」

 

「俺の仕事はお前の監視と護衛だ」

 

「は、はぁ」

 

「ソイツを含め、学園都市に複数人の侵入者が確認されてる」

 

 

降魔は上条の近くに座っている銀髪の少女を見る

 

 

「ソイツら全員と関わりを持ってるお前を心配した学園都市が俺をお前の護衛にしたってわけだ」

 

「そうか、でも見ず知らずの人を巻き込むわけにはいかない」

 

「それは、相手が魔術師だからか?」

 

 

核心に迫る質問をした

上条はその質問に驚いた顔をし、何も言えなくなった

 

 

「それなら心配いらねーよ。アイツらに負けるほど俺は落ちぶれちゃいねぇ」

 

「あっ!とうまそういえばこの人火の魔術師と互角だったかも」

 

「そーいうことだ。お前の俺に対する心配なんてそこのゴミ箱にでも捨てとけ」

 

 

そう言って、降魔は煙草に火をつけて窓際で煙草を吸い始めてしまった

上条はその姿を見て、「俺と歳変わらなそうなのに喫煙者かよ」と思っていた

 

 

「なんか食べる?お粥と果物とお菓子の病人食フルコースがあるんだよ?」

 

 

既にインデックスの手には箸が握られている

視界の端でギャーギャーやっている2人を横目に煙草を消し、再び横になる

 

 

 

降魔はノックの音で目が覚めた

一瞬で起き上がり、反射的に懐にある拳銃に手をかけ、戦闘態勢に入る

 

 

「気を付けろ」

 

 

低い声でそう言った

突然のことで上条もインデックスも呆気にとられている

 

あれー、うちの前で何やってるですー?と言う声が聞こえた

買い物に行っていた月詠小萌がドアをノックした人間を見つけたらしい

 

 

「上条ちゃーん、何だか知らないけどお客さんみたいですー」

 

 

ガチャンとドアが開き、そこには見覚えのある2人が立っていた

月詠小萌の後ろには降魔も上条も知っている2人の魔術師がいた

 

拳銃を引き抜き、発砲することも能力を使い叩きのめすことも考えた

しかし、アイツらから敵意や殺意は感じ取れない

 

 

「・・・」

 

 

魔術師2人は降魔を見て、ギョッとした表情を一瞬だけ見せる

しかし、刀を抜いたり、炎を出す気配はない

 

 

(まぁ、やる気ならぶち殺すけどな)

 

 

とりあえずここは何もせずに流れに身をまかすべきだろう

降魔は戦闘態勢を解き、煙草に火をつける

 

 

「ふうん、その体じゃ、簡単に逃げ出すこともできないみたいだね」

 

 

赤髪の魔術師は楽しそうに笑いながらそう言った

しかし、降魔はその歪な笑顔に違和感を覚える

 

 

「帰って、魔術師」

 

 

インデックスは上条の前に立ち、両手を広げてそう言った

 

 

「・・・ッ」

 

 

ビクン、と2人の魔術師の体が小さく震えた

降魔はその隙を逃さなかった

 

(Model_Case MENTALOUT)

 

演算を瞬間で終わらせ、能力を使う

その能力で2人の魔術師の頭を覗く

 

そして

 

 

「・・・あぁ、そーいうことか」

 

 

舌打ち混じりにそう呟いた

学園都市が誇る最高の頭脳が正解を導き出す

クソみたいなことをするのは学園都市(ココ)だけじゃなかったようだ

 

いつの間にか2人の魔術師は部屋を出ていっていた

 

 

「煙草買ってくる」

 

 

上条とインデックスは無言で彼を見送った

そう言って、降魔は月詠小萌の部屋から出ていく

部屋を出て、階段を下り、降魔は能力を切り替える

 

(Model_Case ACCELERATOR )

 

風の翼を背中に接続し、地を蹴り、飛び立つ

目当ての人物たちは意外にもすぐそこにいた

 

 

「よぉ」

 

 

ビルの屋上でインデックスと上条を監視するように立っている2人の背後から声をかける

2人は驚きながら、こちらを向き、戦闘態勢を取る

 

 

「おいおい、武器を引っ込めろ。俺は話をしにきただけだ」

 

「話、だと?」

 

「あぁ、そうだ。さっきお前らの頭の中を覗かせてもらった」

 

 

懐から煙草を取り出し、火をつける

 

 

「敵であるあなたの言葉を信用しろと?」

 

 

日本刀を持った神裂火織(かんざきかおり)という名の女が敵意を丸出しに問いかける

それもそうだろう、いきなり出てきた正体不明の男の言うことなど信じれるわけなどない

 

ならば、信じれるだけの記憶を語ろう

 

 

「10万3000冊の魔導書を記憶する魔導図書館であるインデックス、イギリス清教第零聖堂区必要悪の教会(ネセサリウス)所属のルーンを極めたステイル=マグヌス、元天草式十字凄教の女教皇で必要悪の教会所属の神裂火織」

 

 

煙草を吸いながら、言い放った

 

 

「面倒ごとは嫌いなんだ、さっさと話を進めよう」

 

 

 

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