ソード・アート・オンライン 罪と罰   作:さいきん

1 / 2
設定だけ思いついたので書いてみます。



僕の罪

周囲を見渡すが、誰もいない。

 

 

五時半の鐘の音が聞こえた瞬間、僕は何もない部屋に飛ばされた。

 

 

部屋というよりは牢獄に近いかもしれない。壁も床も石造りの煉瓦で、窓も扉もない。

 

 

突如、目の前にウインドウが表示された。

 

 

はじまりの街が映っている。

 

 

そこには大勢のプレイヤーが集められていた。そこに映るカーソルは、緑一色だった。

 

 

ソードアート・オンラインではプレイヤーの頭上にカーソルが表示される。

 

 

僕の頭上のカーソルは赤い。それは他プレイヤーを手にかけた犯罪者の証だ。

 

 

βテストの時代から、PK(プレイヤーキル)を行ったプレイヤーは『レッド』と呼ばれていた。

 

 

レッドは安全地帯、いわゆる圏内に入ることはできない。

 

 

おそらく、全プレイヤーが一か所に集められる予定だったのだろう。

 

 

しばらくして、茅場昌彦の演説が始まったーー

 

 

 

 

 

 

 

僕は普段からゲームをしなかった。

 

 

別にそれそのものを否定するつもりはない。

 

 

楽しむ人がいるのはわかる。

 

 

単純に興味が持てないだけだ。

 

 

どちらかというと、実際に体を動かすほうが好みだった。

 

 

しかし、ソードアート・オンラインは違った。

 

 

世界初のVRMMORPG。

 

仮想現実への完全ダイブ。

 

 

これらの言葉に胸を躍らせた僕はパソコンをチェックし続け、βテスターの権利を勝ち取った。

 

 

待ちに待った初ダイブ。

 

 

右手に剣の重さを感じる。

 

 

草木を揺らす風の音、目が眩むほどの太陽。

 

 

全てが現実に感じる。

 

 

これが本当にゲーム?正気か?

 

 

仮想現実は現実以上に驚きに満ちていた。

 

 

仲間との協力、モンスターとの熾烈な争い。

 

 

昨日のことのように思い出すことができる。

 

 

あいつら、今日もログインしてるのかなーー

 

 

 

 

 

 

 

「--まあ、外見が違うしわからないだろうけどね」

 

 

今日からSAOは正式にスタートした。

 

 

前回の経験を活かし、僕のアバターは現実の姿とほぼ同じだ。

 

 

体格を変えると、いつも通りに動くことができない。

 

 

βでの教訓の一つだ。

 

 

「ロージャ?集中しないとやられちゃうよ!

 

 

「こんなところでやられたら、βテスターの名折れだよ」

 

 

ソーニャに軽口を返す。

 

 

彼女はβ時代からの友人だ。

 

 

ひょんなことからパーティを組み、意気投合した。

 

 

僕と同じでゲーム初心者だが、仮想現実への興味からソードアート・オンラインを始めた。

 

 

「将来的にはギルドをつくりたいよね。皆で楽しく、ワイワイやるのがゲームのだいご味でしょ!」

 

 

イノシシのようなモンスターを斬り捨て、ソーニャは笑った。

 

 

彼女は運動が苦手だが、雑魚くらいなら問題なく倒せる。

 

 

「……全員がそう思ってればいいけど。少し下がって」

 

 

首をかしげるソーニャを後ろに、僕は剣を構えた。

 

 

視線を目の前の茂みに向ける。

 

 

「出て来いよ、1対1で相手してやるから」

 

 

返事はない。

 

 

茂みが一瞬ゆれ、男が姿を現した。

 

 

屈強な見た目で、右手には背丈ほどの斧が握られている。

 

 

ぎょろりとした眼で周囲を見渡すと、ため息をつき、あきらめたように斧を投げ捨てた。

 

 

「ほら、ソーニャ。こういう輩もいるんだ。みんな仲良くってのはゲームでも難しいよ」

 

 

「はいはい、わかったわかった。何でかなあ、絶対そのほうが楽しいのに」

 

 

むすっとした表情の彼女は、責めるような足取りで男に近づいた。

 

 

「悪かった。降参だ。やっぱりPKなんてするもんじゃないーー」

 

 

瞬間、男は腰から短剣を取り出した。ノーモーションで振り上げる剣先は、ソーニャを見据えている。

 

 

「な!」

 

 

短剣が振り下ろされる。するどい金属音が鳴り響く。

 

 

男は口角を上げ、そのままガラス片状に砕け散った。僕の右手には、男が落とした斧が握られていた。

 

 

PK。男からの攻撃を受けていないため、僕のカーソルは赤く染まった。システム上、先に手を出したほうが犯罪者である。

 

 

「…碌な奴じゃなかったな」

 

 

何とも言えない後味の悪さが残る。

 

 

頭上のカーソルを見て、更に気が滅入った。。

 

 

「大丈夫?」

 

 

振り返ると、ソーニャはその場にへたり込んでいた。

 

 

「ロージャ、ありがとう…私、もう少しで」

 

 

「まあ、ゲームでよかったよ。なるべくPKはしたくないけどね」

 

 

「ごめんね、私のーー」

 

 

言い終わらないうちに、鐘の音が鳴り響いたーー

 

 

 

 

 

 

 

「…嘘だ」

「……嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ」

 

 

手が震える。足には力が入らなくなり、その場に膝をつくように倒れた。

僕は震える体を自ら抱きかかえた。

 

 

『ゲーム内で死亡したプレイヤーは。脳がナーヴギアによって破壊される』

 

 

 確かに茅場はそう言った。でもこれはゲームだろ?何かしらの蘇生手段があるんじゃないのか?もしも全て嘘だったら?そうさ、そうに違いない!初日から大掛かりなことをするなあ!!信じたくない。本当?いや、これはゲームのはずだ!

 

 

血眼になってメニューを見る。オプション、持ち物、装備、ステータス、すべての項目を探しつくす。

どこにもログアウトボタンはない。

 

 

代わりに、覚えのないスキルを見つけた。

 

 

『業:外見、ステータスを変えることができる。(今までPKした相手の外見やステータスを参照する)』

 

 

「…なんだよ、これ」

まるでチートだ。いや、そうじゃない。このスキルは明らかにPKを前提としている。

もう認めるしかなかった。

 

 

じゃあ彼はーー

 

 

「僕が殺したんだ」

 

 

「僕が真っ先にPKした」

 

 

「この世界で最初の犯罪者だ」

 

 

 

 

 

 

はじまりの街は騒然としている。

 

 

突然のデスゲーム開始の知らせに怯え泣き叫ぶ者や、現実を受け入れずに空元気で笑う者も見える。

 

 

しかしその内容までは、僕にはわからない。

 

 

耳に入っても来ない。

 

 

僕はただひたすら、自問自答し続けた。

 

 

僕は罪を犯したのか?

 

 

僕は罪人か?




誤字脱字はわかり次第直します。
読んでいただきありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告