どれだけの時が経っただろう。
気が付くと、見覚えのない所に立っていた。
慟哭しながら、僕は走った。
行く当てもない。
戦う気もしない。
でも、死にたくない。
ひたすらに逃げ続けた。
でも、逃げれなかった。
罪の意識は、どこまでも追ってくる。
では、この罪はどのように償えばいいのだろうかーー僕は自問する。
「僕が殺さなければ、ソーニャは殺されていた」事実である。
「僕は男を殺した」これもまた事実である。
「彼女を守ったことは罪か?」罪ではないだろう。
「男を殺さず彼女を守ることはできたか?」
ーーあのタイミング、あのスピード。男を殺し、砕かなければ、確実に短剣は彼女に届いていただろう。
しかし、これを正当化することはできなかった。
思わず空を見上げる。曇天からは小雨が降り注いでいた。
頬が濡れている。
それが雨なのか、涙なのか。
僕にはわからなかった。
雨が止むと、小さな水たまりができていた。
鏡面となった水をのぞき込み、僕はスキルを使った。
とたん、鏡像が変わる。
そこに見慣れた自分はいない。背の高い、屈強な男性が経っていた。
年は20代後半ほどだろうか。肌と紙は浅黒く、髪が逆立っている。
僕が殺した男だった。
「こいつは、罪人だ」
鏡像に言う。誰が?僕が言っているのか?
口が勝手に動くように感じた。
「こいつは人を殺そうとした。明確な意思をもって」
鏡像と眼が合う。殺気立った眼だ。不快感を感じる。
「お前が死ぬのは、仕方のないことだ。殺そうとした者は、殺されても文句は言えない」
仮想現実だって現実だ。僕は言い聞かせるようにつぶやいた。
続いてスキルを解除する。
鏡像は再度姿を変える。そこには少年が立っていた。
髪は長く、その隙間からはどんよりとした眼がのぞいている。
「こいつは人を殺した。明確な意思を持たず」
「お前は罰を受けなければいけない」
僕にできる贖罪とはなにか?このスキルの意味は?
僕は一つの答えを出した。
「僕は、いや、俺はーー」
再びスキルを使う。
「レッドを殺す」
僕にできること。それは罰を受けることであり、罰を与えることだ。
おそらくこの先も、プレイヤーキルは発生する。アイテムの奪い合い、閉鎖空間での異常。人間は清くも正しくもない。
僕は彼らに罰を与える。
もう手は汚れている。この先何をしようが、僕が誰かを殺したという事実は変わりようもない。
ならば殺す。殺されてもいいものを。仕方ないものを。そしてーー
「必ず殺される」
人を殺すものが生きていいはずがない。いつかレッドに殺されるその日まで、僕はレッドを殺し続けようと思う。
「お前もそれでいいだろ?」
鏡像は笑みを浮かべ、僕を見つめていた。