うろうろ、うろうろ。
小鳥のさえずりが耳に心地よい朝、静夏は来客用の士官部屋の前でいったりきたりしていた。そして懐中時計を取りだし長針を睨み付けること三分。静夏は意を決した面持ちでドアをノックする。しかし返ってくるは小鳥のさえずりだけである。
「おはようございます。朝になりました」
やさしくも毅然(きぜん)な声でドア越しに言う。
「おはようございます! 朝になりました!」
今度は口調を強くして、ドアをドンドンするのも追加する。
しかしいくらまてどもやっぱり返事がない。それならばドアノブをガチャガチャしてみようと手をかけ、カチャという軽い音をたてて開いたドアに、静夏はサッと顔色を青ざめた。
まさかあの芳佳でも、でもだ、鍵をしめずに寝るなんて無用心な事をするわけが……ない。そうなると考えられるのは、すでに芳佳が起きて部屋にいないか誰かに鍵を開けられたかだ。そこまで考えの到った静夏ははやる気持ちを抑えて部屋に踏み込んだ。飛び込んだという形容の方があっていたかもしれない。海軍の歴とした施設で外部からの侵入はほぼ不可能かもしれないが、芳佳を慕う人間も多く、慕う人間には同年代の若者も多い。そうなると若い学生が短慮を働く可能性が必ずしもないとはいいきれないわけで、外部に比べると進入は不可能ではなく(もちろん警備は厳しいが)同じ扶桑皇国軍人として考えたくない事態が起きてしまうかもしれない、と実は自分もその芳佳を猛烈に慕う一人であることに静夏は気づいていない。だからもし芳佳の身に何かあればと思うと気もそぞろな静夏であった。そんな静夏の心配も、部屋に飛び込んで数秒で霧散してしまった。ベッドの上でふにゃりと顔をにやけさせている芳佳。布団からはみ出ている手は何かを掴かもうかとしているかのように空を切っていた。
心配とともに霧散してしまった意識を再び拾い集めた静夏は、芳佳の顔を見下ろせる位置に立つ。
「朝です。起床してください。三十秒以内に布団からでないと実力行使を行います」
改めて落ち着いた声音でしかしはっきりと。もし芳佳がこれで起きていれば、静夏の笑顔で芳佳も心地よい朝を迎えられたに違いない。しかし連日の勉強疲れに夜更かし、戦場から遠ざかりスクランブルの心配もない平和に慣れてしまった芳佳だ。きっと夢を見ているのだろう。その証拠に、
「リーネちゃん……えへへ」
なんて寝言が静夏の耳に入る。リネット・ビショップ曹長が夢に出ているらしい。それも手をもみもみさせる必要性があるような。
理由もなく静夏は静かに言葉をふるわせた。
「朝です! 起床してください! 三十秒以内に布団からでないと実力行使を行います!」
「リーネちゃん……おっきぃね」
理由もなく静夏は静かに肩をふるわせた。
「いいですね!? 実力行使しますからね!」
「リーネちゃん……くすぐったいよぉ」
理由もなく静夏は静かに唇を大きくふるわせた。
「朝です! 実力行使します」
「リーネちゃん……リーネちゃん」
静夏は「おきぃろ~」と怨嗟のこもった声とともに、芳佳の肩に手をおいて思いっきり揺さぶった。
「ふぇうぇぇえ~!!」
そんなわけで夢で幸福の絶頂にいた芳佳が、突然の世界が揺れる現象に驚愕して、ベッドから跳び跳ねてそのまま転げ落ちる。静夏を巻き込んで。
「あぁ~びっくりした」
「何にびっくりなされたのですか? 宮藤さん」
マイペースな芳佳にのしかかれる形になってしまった静夏が険しい表情で言う。
「リーネちゃんとへんた……リーネちゃんとお話してたら突然静夏ちゃんが現れて、それで気づいたら静夏ちゃんが下にいて……あれ? なんで静夏ちゃんが下にいるの?」
クッションにしてしまった静夏から離れようと上半身を起こそうとした芳佳の手のひらに布越しのやわらかいふわふわした、そういつまでも揉んでいたいあれに似た感触を感じる。それが何であるか確めるかのように手をわきわき動かす芳佳。まだ寝ぼけているのかもしれない。低血圧の人間ならば朝の思考力は低下し本能が優先されるのかもしれない。
「み・や・ふ・じ・さ・ん」
静夏のドスのきいた低い声で芳佳はようやく我にかえって上半身を起こす。数秒遅れて芳佳の手が名残りおしそうに離れる。
「……おはよう。静夏ちゃん」
「おはようございます。宮藤さん」
「えーと、起こしてくれてありがとうね」
「いえ。これも任務みたいなものですから。……しかしそろそろ私の上から退いていただけれるとうれしいのですが」
「ご、ごめーん! 今から退くね。静夏ちゃん」
芳佳が下敷きにしている静夏から退くために立ち上がろうとして身体を少し動き出したその時、ガタッと扉が開いて風と光りが室内に入り込む。
「宮藤。どうだ?これから朝飯前をいっし……」
芳佳は口を固まらせた坂本をそこに見た。
「その、なんだ? まさかお前たちがそんな関係だとは知らなかった」
芳佳が静夏に馬乗りして、しかも芳佳の手が静夏の胸にのびようとしているような動作で固まっている。芳佳の寝間着は先の拍子にはだけてしまっていて、朝日に照らしだされた乙女の肌はとても幻想的でさえある。そして静夏は静夏で反射的に芳佳の寝間着を直してあげようとついつい手が伸びてしまっており……静夏がはだけさせたようにも見えるわけで……坂本から見て何をしようとしているかは一目瞭然だ。まさか心臓マッサージをしようとしているわけはなく、静夏は坂本の顔を見るや否や絶望したかのような表情のままで凍っている。かわいい弟子たちが一線を越えてしまったとしても、師匠としてやさしく見守るべきかもしれない。
「あー、気にせず続けてくれ。でも時間には遅れるなよ。ではまたな……」
顔をこわらばせた坂本が踵を返して出ていこうする。
「ち、違うんです!これにはとてもとても深いわけがあるんです!」
「いいんだ宮藤。私はお前たちが幸せならいかなるものでもそれを歓迎するぞ。はっはっは」
坂本の乾いた声が部屋に響く。ついでに静夏の脳内でも響き渡った。
「だから私と静夏ちゃんはそんな関係じゃないんです。本当です。坂本さんが! 坂本さんが私の一番なんです! いつも困ったときに導いてくれたのは坂本さんでした! 今私がこうやってるのも坂本さんのせいなんです! 坂本さんが……だから私は坂本さんのものなんです!」
「いや、宮藤。私に縛られるな。宮藤は宮藤だ。宮藤の進みたい道を進むといい。社会的には勧められたことではないかもしれないが、なぁに、ウィッチ同士でそんな関係になることはよくあると耳にする。現にスオムスで、扶桑海の三羽烏と呼ばれていた穴拭智子中尉もそういう関係を持っていたと聞く。だから恥じることはないんだぞ宮藤」
「はい! 坂本さん……あれ?」
芳佳はなんか話がずれてきている事にようやく気づき、そうだ! こんなときは静夏ちゃんだ! と下敷きにしている静夏を見たが、顔を真っ赤にして目をぐるぐるさせていた。
戦闘不能状態である。
「あわわ、静夏ちゃんだいじょうぶ!?」
静夏は教本に載っていない突発的事態には弱いのだが、今回もその事態に当てはまったらしい。芳佳がヘルウェティアで学んだ欧州の最先端医学の内容から今に適した治療法を思いだそうとする。そして、人が倒れていればまずは気道確認して鼓動を確かめるために胸に触れなければならない。それで鼓動の確認して……人口呼吸のためキスをするという的外れ治療方法を思い出していた。治療のため治療のため! そしていざ! というときに坂本が制止の言葉を投げかけた。
「宮藤。どうせ服部がお前を起こそうとして、それで寝ぼけていた宮藤が巻き込んでしまっただけだろ? それで服部は少し頭を打って目を回しているだけでいいな」
「な、なんでわかったんですか!」
「宮藤は私のかわいい弟子だからな。これぐらいわかって当然さ」
「えぇぇぇー」
「と……いけない。時間を食いすぎてしまったな。宮藤。私は少し仕事があるのでな。早く身支度を整えて服部を連れて食堂にくるように。私は先にいかなければならないのでな」
顔をにやつけさせながらの坂本の推理に芳佳は一瞬きょとんとしてしまった。
「あの……もしかして先のわざとですか?」
「どうだろうな。はっはっは。まぁ気にするな。陸(おか)に上がったからには冗談の一つや二つ覚えるさ」
冗談になってません坂本さん、て思いながら坂本を見送った芳佳は、ようやく目を回している静夏からはなれる。それから多少はだけていた寝巻きを脱いでいつものセーラー服をはぶり、ズボンをぐいっとはく。扶桑皇国海軍の下士官用の制服であるが、医務少尉になった今も着続けている芳佳だった。ウィッチ用の高価な魔法繊維の生地でできていて、丈夫で保温性にも優れていて、かなり利便性が高いのだ。……ぶっちゃければ士官用の制服をいまだにあつらえていない。欧州に行って戦闘後にサン・トロン基地で少し滞在したあとは、ヘルウェティアにそのまま留学にいった芳佳である。採寸もしてないから持ってない言い訳もある。もっとも一年前と同じ制服を特に窮屈もなく着られている事から、芳佳の身長も胸も特に成長していないことになるので採寸する必要性があるかは疑問であるが。というわけで芳佳は、静夏には士官服持ってない事をばれませんようにって内心唱える。もしいまだに士官服をあつらえていない事がばれたら、静夏はバルクホルンに、芳佳は怒られているハルトマンのような事態になることが想像できるからだ。ちなみに静夏たち学生ウィッチの制服は下士官用の制服の青い部分を赤く色違いにしたものだったりする。色違いである。
「静夏ちゃん。起きて……静夏ちゃーん。起きないといたずらしちゃうぞー」
相変わらず目を回している静夏に、じゃあいたずらしちゃうね、と脇でもくすぐろうかと芳佳が考えていると、ようやく静夏の意識が戻ってきたらしい。
「はっ! 私は何を!」
「あっ、静夏ちゃんお帰り」
行き場を失った手を漂わせている芳佳を静夏は焦点の戻った目でにらみ付ける。
「お帰りじゃありません! 宮藤さん! 坂本教官に勘違いされてしまったではないですか! どうしてくださるんですか!」
「ごめーん。でも大丈夫だよ。坂本さんにはちゃんとわかって貰えたから。二人のこと」
「それはよかっ……た、てよくないです! わかってもらってはいけないではないですか!? 私と宮藤さんが、私と宮藤さんが、私と宮藤さんが、が、そんな関係なんて! 破廉恥です! ふしだらです。うーー」
「えーと、勘違いしてないかなぁ。静夏ちゃん」
「何ですか? 宮藤さん」
「えーと、つまり坂本さんにからかわれたのかなぁ。なりゆきをきれいに当てられちゃったからね」
芳佳はてっへとしてみたが、静夏の反応はとても冷たかった。芳佳が静夏にラムネ飲む? て聞いた時よりもだ。
「……」
「えーと、それじゃ早く朝ごはん食べにいこっか」
「……」
静夏は顔を俯かせてしまって、芳佳からは静夏の表情が見られなかった。
「おーい、落ち込まないで。静夏ちゃん!」
芳佳の幾度目かの問いかけで静夏はようやく顔を上げると、ゆっくりと口を開いた。
「……一人で勘違いして一人で舞い上がって……なんて情けないのでしょう。もうお嫁にいけません」
「えーとお嫁にはいけると思うんだけど? 静夏ちゃん」
「いいえ、よく考えてみれば家事はやったことがなく、料理もまったく出来ない私がお嫁にいく資格など最初からなかったのです。ジャガイモの皮を向けば体積が半分になり、味噌がなかったので塩とマスタードとあんこを混ぜ混んでみたりしたり……」
「うわー、それであの味噌汁ができたんだね」
あの味噌汁とはガリアのカレーにあるペリーヌの城館で静夏が作った味噌汁である。
「はい。缶詰のあんことゲランの天然塩とディジョンのマスタードを混ぜ混み、エビとカニの味噌を集め、パン粉を投入し、仔牛の脳をフォークでニチャニチャ潰し――」
静夏の目から光が失われていく。あまりの内容に芳佳の顔が青くなる。静夏の独白が続く。
「――レバーも追加して、それで出来上がった味噌らしきものを鍋に放り込み、煮出しとしてアンチョビをぶちこみ、具材としてニンジン、ジャガイモ、たまねぎ、エシャロット、トウモロコシ、グリーンピース、セロリ、ズッキーニ、トマト、にんにく、ルバーブ、アーティチョーク、ブルーベリー、ローズマリー、ミント、シナモン。豆腐のかわりにはブルーチーズを代入し、坂本教官から頂いた海苔と肝油もいれ、グラーヴェリン産のワインに、ロマネ・コンティという最高級のワインに、シャトー・ラフィット・ロートシルトというこれまた高給なワイン、会わせて計三本を鍋に流し込み、それで――」
「もういいよ! 静夏ちゃん!!」
光のない目から涙がこぼれ落ちている静夏にいたたまれなくなった芳佳が、話を無理矢理止める。聞くだけでも気分が悪くなりそうだったのも大きい。
静夏の料理工程は客観的にも主観的にも人間が食べていいものではなかった。
……ミーナさんなら「あら、おいしいわよ」て言いそうだが、さすがにミーナさんでもあの味噌汁はダメだと芳佳は信じている。
「私は軍人として失格です。私などに士官が務まるわけがありません……。申し訳ありません。お祖父さま、お父様、私不肖の子静夏は本日をもって軍を辞めます」
静夏の将来の夢は立派な軍人となる事である。しかし今諦めようとしている。しっかりしているようで実はアレな静夏だった。
「ええええぇぇぇぇーーー!! なんでそうなるの!? 静夏ちゃんは他にいいところがいっぱいあるから! だいじょうぶだよ」
「……あるんでしょうか……」
「あるよぉ! 静夏ちゃんは物知りだし頑張り屋さんだし、ちょと頭は固いかもだけど、いろんな事を知ってるし、そう! 海軍なんとか心得なんかも諳(そらん)じられるでしょ! 私は絶対覚えられないなぁ~。さらに武字(英字)新聞の記事もちゃんとスクラップにして、最新の世界時事も纏めてるとかすごく立派だと思うよ。料理だって私に聞いてくれたらよかったのに、自力でなんとかしようと頑張ったよね。でも静夏ちゃん。戦闘はチームプレーなことは知ってるよね?私は詳しい名前まで覚えてないけど、協力してネウロイを撃破していくのがウィッチには大事だと思うなぁー。だからもっと私たちに頼ってくれていいんだよ?」
芳佳のやさしい言葉が静夏の胸にぐさぐさ突き刺さっていく。
海軍士官心得を諳じられる事を褒められてもうれしくない。
新聞記事のスクラップだってアレは憧れの芳佳の活躍を扶桑の新聞だけでなく欧州の新聞にまで求めた結果だ。静夏の宝物である。だから絶対絶対絶対芳佳に見られてはいけない。先日偶然見られてしまったとき、幸い見開きが武字のスクラップだったので、時事の記事だと芳佳に説明して勘違いさせる事に成功した静夏だったが、純粋に信じきっている芳佳を見て胸がとても苦しい静夏だった。
料理だって芳佳には聞きたくないという理由だけで、出来もしない料理を無理矢理した結果があれだ。それでおしいしならまだよかったのだが、結果はあの毒でないのが不思議なぐらいの破壊的味。まさに決戦兵器級。ネウロイも一口で撃破できそうであった。そういうわけで、当時の静夏は理想の芳佳と現実の芳佳のギャップに苦しんでいて、芳佳の事を幻滅し、任務という義務だけで付き添っていた状態だったのだが、それでも芳佳に料理はできないと正直に申し出ていればよかったのだ。静夏が赤恥をかくだけに終わらず、ガリアの英雄で貴族のペリーヌ・クロステルマン中尉に多大なるご迷惑をおかけしてしまったのだから。
さらにウィッチとしてだって欧州でコアなしの雑魚ネウロイの単独複数撃破に気をよくしてしまって、中型高機動変形ネウロイと交戦中、ビーム攻撃を今までの雑魚ネウロイと同じように避けたのだが、これまでとは段違いの火力で村に大きなクレータが出来るのを目の当たりにしてしまった。ついで静夏自身撃墜されてしまったのだ。芳佳からは時間を稼ぐように命令されていたのに、雑魚ネウロイで自分の実力を過信してしまった。士官は冷静な判断力が必要となるのに出来ていなかった証拠である。
軍を辞めるだけでは不十分な気がしてきた……ここは潔く腹を切ろう、静夏がそう決心しかけた時、再びガチャと扉が開く。
「いつまでもこないと思ったらまだ部屋にいたのか」
「あ、坂本さん」
「坂本教官! 先ほどは申し訳ありません!」
なんか助かったっと顔を明るくした芳佳と深く深く九十度以上でお辞儀する静夏。そんな二人を見て坂本が一度大きくため息を吐いてから手に持っている小包みを掲げる。
「いつまでも御前達がこないからもしやと思ってな。ほらおむすびだ。時間がないから試験会場まで歩きながら食うといい」
といって坂本がでこぼこした楕円形のおむすびを取り出す。
「わーい、ありがとございます。これ坂本さんが作ったのですか!?」
「いや、これは頼ん――」
「おいしいです! 形は不格好ですけど塩加減も少し強いかもしれませんが、とてもおいしいです! ありがとうございます! 坂本さん」
「いや、だからこれ――」
「ほら静夏ちゃんも! せっかく坂本さんが作ってくれたんだよ」
「は、はい。ありがたくいただかさせてもらいます……はむ」
おむすびをくわえている二人を尻目に坂本は天を仰いだ。すでに戦えない身になったからには料理の一つや二つぐらいできた方がよかろうかと、おむすびを作ってみたのだが、どうも三角にならない。それならばとまん丸にしようとしてもでこぼこした塊になってしまう。料理は奥が深いと坂本美緒二十二歳にて理解した。
で、自分が作ったというのは恥ずかしいから知り合いのに作ってもらったことにしようと考えていたのだが、誤魔化しを言う前に坂本作と決定付けられてしまったのだった。
「そのなんだ、すまんな。変な形で。どうも料理は苦手でな。まさかまん丸にもならないとは思わなかったぞ。はっはっは!」
「坂本さん……わかりました! また今度一緒に修行しましょう!」
「お、そうか。それなら頼む」
「静夏ちゃんもどうかなぁ?」
「はいっ!? 私ですか!」
「うん。私は静夏ちゃんと一緒にお料理したいなぁー」
「服部、私がいうのも変だが、軍規軍規ばっかしでなく少しは料理を習った方がいいぞ。五〇一では宮藤やリーネが基本作ってくれていたが、あのバルクホルンもたまにカールスラント料理を作ってくれたし、シャーリーもハンバーガーとかそういうのは作っていたからな」
「そうなんですか……わかりました! 是非ご一緒させていただきます!!」
とりあえず静夏が持ち直したところで坂本が無慈悲な宣告をする。
「それはそうと試験開始まであと三分だぞ」
「えぇぇぇー!? 行こう! 静夏ちゃん!」
「わ、わかりましたから引っ張らないでくださいーー」
芳佳が静夏の腕を引っ張って走り出す。
「廊下は走るなよー」
「そうです! 宮藤さん! 坂本教官のおっしゃる通り廊下は走っていけません! これが軍規です! ルールなんです!」
「だからなんなの!! 歩いてたら間に合いません!」
「よし、緊急事態だ。走ることを許可する。はっはっは!」
「坂本教官までぇ、軍規は絶対なんですぅーー」
まぁ、試験のある教室にはぎりぎり間に合うだろう、と時間を引き延ばした張本人の坂本は一人高らかに大きな笑い声を上げてから自分の仕事をするために早足で立ち去った。
そして坂本の姿が見えなくなるとほぼ同時に芳佳のベッドの下から這い出てくる学生ウィッチの制服をきたある少女。その少女の左手に鈍色に光る一筋の針金。その針金はなにかに使ったのか変形している。
「あぁ。宮藤さんの部屋の鍵を開けていたらあの静夏のこと、とても面白いことが起きるとは思っていましたが想像以上でしたわ……。まさかあんないい物を見させてもらえるとは……」
ベッドの下に隠れていた少女。ベッドから二人がもつれ倒れてきた時は一瞬ばれるのではないかとひやひやしたが、てんぱってた静夏が気づけるわけもなく、芳佳も同様で、二人の展開を超特等席で見守っていたのだ。さらに時間がかかりそうだったので念のためにいつも持ち歩いている扶桑の伝統携行糧食、干飯(ほしい)を朝ご飯に。干飯は堅いが、口にあふれ出てくるよだれのおかげで難なく食す。
静夏の応援もかねてこの場をあつらえたが、おおむね大成功で少女の満足いくものであった。一つ問題があるとしたら……静夏の同級生であるからには少女も試験を受ける立場にもあることだったりする。
「これは久しぶりに本気を出さないといけませんわね……!」
残り一分を示す懐中時計を懐にしまってから少女がそう呟いたとたん、さっと旋風を起こして少女の姿がかき消えた。
「おっ、そうか。今日の試験は遅刻者も一人もいなく無事に開始できたのだな」
「はい、坂本少佐。それにしても変わりませんね、彼女は」
「そうだな。それが宮藤のいいところだ。はっはっは!」
「……それはそうと本当に明日よろしいのですか?」
「あぁ。こうやってウィッチでなくなった今、改めてもう一度挨拶にいかなければと思ってな。いい機会だ。宮藤達も紹介しようと思ってる」
「了解しました。坂本少佐」
「すまんな。お前には苦労をかける」
「いえ、坂本少佐のためにこの程度なんともありません」
彼にはいつも苦労をかけっぱなしだと自嘲しつつ電話を切り、呉でやり残した仕事を淡々とこなす。戦艦大和が生まれたのもここ呉海軍工廠。カールスラント奪還作戦のためにも大和はまだまだ活躍してもらわなければならない。陸でもやるべきことはたくさんある。
あとがき
少々小説書きから遠ざかってました。時間がなかなかね。
というわけで描写増やしてみたら朝だけで終わってしまったの巻。おっかしいなー。一日全部おわらせるつもりだったのに、ダイジェスト的に流して次の話に持って行くか、ちゃんと書くかどうするかなぁー。
とまぁ、若干のキャラ崩壊があるような気もしつつ今回はこれぐらいで。設定の方も毎話ごとに一応更新していくと思うんで。
ストライクウィッチーズシリーズ、いつまで作品追えていたのかざっとみてみました。
が、正直ブランクありすぎてわからない。。。。
島田フミカネ THE WORLD WITCHES (2014/2/21)
→買ってると思うけど自信がない
けど、本小説は2012年執筆で、プライベートが忙しくなりすぎて停滞。
THE WORLD WITCHESが出ると知って、これを買って設定を確認してから続き書こうと思った記憶はある。
実際どうしたのだろうか。。。この頃には、一日の睡眠時間が4時間になるのが通常運転に。ほんと記憶にない。
ストライクウィッチーズ アフリカの魔女 ケイズ・リポート3 (2014/3/1)
→2は絶対買っている。3も買っていると思うけど自信がない。。。2冊買っちゃたてたような気がする。。。
と、2014年3月ぐらいを最後に、原作を追えなくなって、そのまま今にいたる。
本棚購入したら収集再開しようかな……。