芳佳と静夏のお勉強   作:cameletter

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五話

「お待たせしました。それではとりあえず高度を上げましょう。時間がありません」

「やっぱり静夏ちゃんが長機やらない?」

「いけません!」

「そっか……。そうだね。早く上昇しよっか」

「紫電改は高度6,000メートル上昇に約六分かかります。上昇実用高度は10,000メートル。紫電改五十三型や宮藤さんの震電なら12,000メートルも可能ですが、私のは二十一型ですから」

「へーそうなんだ」

「試験勉強の時に教えたはずなんですが」

「やだなー。知ってる。知ってるから。あはは」

「はぁ。まず私たちは高度9,000メートルまで上昇しようかと思います。模擬戦開始時間にまでたどり着けませんが、それは敵も同じ事です。敵が高度5,000メートルあたりに着た頃に演習開始時間になると思われます」

「でも静夏ちゃん。そんなに高度確保してもあまり意味ないんじゃないかなぁ。急降下するにもストライカーユニットが壊れちゃうよ」

 

 高度9000メートルと5000メートルでは4000メートルの落差があり、上空から急襲するための急降下をするには大きすぎるのだ。急降下はエンジン推力に加え重力も加えられるために一気に加速できるが、機体の耐えられる限界速度に達してしまえばストライカーユニットが空中分解してしまう。

 

「宮藤さん。私たちの勝利条件はなんですか?」

「えーと二人とも生き残ること……あっ、そっか。別に敵を落とさなくてもいいんだ」

「その通りです。私たちは高度9,000~10,000メートル辺りで待ち構えていればいいのです。私たちを攻撃するにはその高度まで上がってこないといけないことから五分は時間を稼げます。それに敵は上昇のために速度を失っている一方で私たちは水平飛行なために優速であり、また下降でも速度を得られるためにすごく戦闘も有利になります」

「なるほど。それじゃ一撃離脱がいいのかな?」

「はい。おっしゃられるとおり一撃離脱に徹するべきです。高高度で格闘戦などしては、せっかくの高度も速度も台無しです。速度を失い同等の条件に陥れば、数で押されてしまうでしょうから」

 

 高高度での旋回は簡単に速度の減衰を招き、その結果揚力の不足に陥ってしまう。揚力を失っても、高度が下がれば速度があがり再び揚力を回復するが、多対少の状況で一度失った高度を戦闘中に回復するのは難しいものだ。

 

 芳佳は静夏を置いていかないように、ストライカーユニットの出力を調整しながらも並んで飛ぶ。各国のストライカーユニットに戦法をまぜこぜにして運用する統合戦闘航空団に所属していた芳佳にとって、慣れた行為の一つだった。

 

 

 その頃下では十一人が膝を抱えて相談していた。

 

「どうする?」

「どうしよう」

「まずどう編隊組むか考えないと」

「うん。まず十二人だからロッテが六組できて、ロッテ二組でシュヴァルムができるから、三組できるね。まずロッテになろう」

「はーい」

 

 というわけでできるロッテ五組と余った一人。

 

「あれ? 一人足りなくない?」

「あっ。静夏のルームメイトの子がいないわ」

「なんでよー」

「あのー」

 

 と一人余ってた引っ込み思案の女の子。静夏に耳打ちされた子である。

 

「えーと。彼女ならストライカーユニットの調整に行きたいからって」

「そうなんだ……」

「仕方ないわ暫定的にシュヴァルム二組にケッテ一組にするのはどう?」

「でも、私たちはあまりケッテの練習してないよ」

「あとで合流できると思うからきっと大丈夫よ」

 

 それぞれの長機(事前にジャンケンで勝った方に決まっていた)を務める五人がグーチョキパーで別れようとする。そして何度かの不成立を経てようやくチーム分けが成立した頃にはもう五分が経とうとしていた。

 

「ど、どうする」

「もう取り合えず飛びながら考えようよ。インカムあるし」

 

 というわけで順次離陸していく学生ウィッチたち。飛びながらもいろいろと作戦を考えていく。のだが、

 

「それで指揮系統決めといた方がいいんじゃないか?」

「うーん、でも誰がする? 私には無理だよ」

「そうねー、主席の静夏はあっち。次席は静夏のルームメイトの彼女で行方不明。……

ということは三番手の子を指揮官にしましょう」

「わ、わたしかっ! こんな大人数の指揮なんてわたしには無理だ!? 部隊の指揮などやったことないんだからな」

「それはここにいるみんな同じよ。ほら、みんなも協力するから頑張ろう。一応理論は学んであるんだし」

「う、うん。がんばってみる。……取り合えず模擬戦の時間は三十分て決まっているから、燃料の心配はほとんどしなくていいと思う。だから魔導エンジンを全開にして昇ればいいんじゃないかなぁ」

「一応指揮官なんだから命令ははっきりね」

「り、了解」

 

 一応の部隊として成立したようなしてないような状況であったが、頭数だけでいえば戦闘航空団に値する戦力が芳佳と静夏の二人に立ち向かう。

 

   *

 

「宮藤さん! 下方十時の方向に敵部隊を発見。数八。シュヴァルム二編隊だと思われます」

「ありがとう静夏ちゃん。私も確認した。……とりあえず十一時の方向で緩上昇でいいかな」

「了解です」

 敵の進路の上空を交差する方向に進路を向ける。まだ接敵には余裕があるためだった。

「静夏ちゃん。逃げ続けてたなんとななりそうな気がするけど」

「はい。しかし、敵は十二人います。今も四人は別働隊で動いているようですし、連携されれば逃げ道を防がれてしまいます。主導権を得るためにも、機を見計らって攻勢に転じるべきです」

「なるほど。まずは別働隊に注意しつつ時間稼ぎて感じでいくよ」

「わかりました」

 

 という感じで逃げ回ること十五分あまり。すでに半分の時間が過ぎ去っていたがいまだに追いかけっこを続けていた。学生ウィッチ達はすでに二機一隊のロッテに戦力を分けて芳佳たち二人の逃げ道を防ぐべく動いていた。大空でありながら芳佳たちの逃げ場はだんだん狭まっていく。しかし同時にこれは兵力の分散という欠点を抱えていた。

 

「いい具合に戦力を分散してくれたようですね」

「そうだねー。とりあえず上方宙返りして、後ろをとってるロッテと他のロッテが連携を取る前に一度攻撃してみよう。無理そうならそのまま離脱かな」

 

 後方を取られたとはいえ、距離が大きく、いまだに有効射程には入っていないし、三十という弾数では一連射、二連射程度であり、牽制用の一発も撃ってきていなかった。

 

 機体の性能は震電が優れているとはいえ、僚機の静夏に合わせる必要がある。つまりは、同じ機体性能で追いかけっこしても水平飛行のままでは埒が明かない。同じ機体性能でも格闘・旋回戦に転じたとしたら個人の力量が大きく反映されるとはいえ、芳佳と静夏の二人が悠長に急旋回を繰り返して、敵を撃破したとしても、その間に周りを囲まれてしまうために論外。となると、できるだけ最小限の動きで敵を射程に入れて攻撃しそのまま離脱するべきだった。

 

「そう上手くいくのでしょうか」

「さぁ。さていくよ!」

 

 芳佳が上方に宙返りしだし、静夏もその跡を辿る。後ろを追いかけていたロッテも慌てて宙返りの準備に入る。直進していては今度は自分たちが後ろにつかれるからだ。

 そうやって宙返りに入るのだが、戦闘機であるならば射撃の方向が定まっているために攻撃できない。しかしウィッチは生身の身体である。芳佳と静夏は背面飛行に移り、手に持った機関銃を腰にためて、自分たちを追いかけてきている敵機の予想未来位置に向けて弾丸をばらまく。

 見越し射撃の達人であるマルセイユならともかく、ネウロイよりもはるかに小さい対象に対して弾丸をあてるのは至難の業だ。だが、一方でシールド使用不可な学生ウィッチに一発でもあてられれば撃墜判定を出せる。というわけで、芳佳は勘で弾丸を一帯にばらまく。

 そのほとんどは虚空に消えていくが、運のいいことに一発が学生ウィッチの履いているストライカーユニットに当たったらしい。パッと鮮やかなペイント弾の色が広がる。

 

 一方で静夏の弾丸は敵のかなり後方を抜けていってしまっていた。

 

「すごくすごいです! 宮藤さん!」

「たまたまだよー」

「それでもです!」

 

 その一方で僚機の撃墜判定を出されたもう一人は慌てていた。

 

「ど、どうしよう」

「落ち着いて! もう応援が駆けつけてるから任務続行!」

「は、はい!」

 

 その増援は芳佳と静夏の真上から逆落としして来ていた。それに気づいた芳佳達は降下に入るとともに旋回をして、敵の射線に乗らないようにする。スパイラルダイブという回避運動。急降下では逃げ切れないという判断だ。それにオーバーシュートさせれば反撃のチャンスが生まれる。

 速度差から距離は縮まっているが狙いは定まらない。それでも放たれる弾丸。いくつかの弾丸がすぐそばを通り抜ける音が耳に入るが、シールドを張る必要がある弾丸はなかった。敵はオーバーシュートする直前に離脱するべく、舵を切って二人から遠ざかっていく。とはいえ、すぐに急旋回をして再び追尾に入られる危険性があった。

 

 二人は旋回を止め急降下に移り安全距離を作り出す。

 

「はぁー。危なかった」

「戦闘は短時間だったはずですが、急降下で機体限界速度ギリギリで突っ込んできたようです」

「そうみたいだね。でも、なんとかなってよかったかな」

「はい、しかし……」

「どうしたの静夏ちゃん」

「先ほどので高度を大きく失いました。それに雲が……」

「きれいな雲海だねー」

「この状況では速度を殺してまで高度を稼ぐ利点がありません。雲を利用して隠れましょう。残り時間は十分少しですから」

「うん……わかった」

 

 二人は雲の海に飛び込みその姿が消える。しかしその追いかける側の十人は部隊を二手に分けて、さらに魔導針技術を持ったウィッチもいた。

 

「あっ、見つけた。三時の方向距離1200、高度は500メートルぐらい下……です」

「ありがとう。甲部隊は連絡を密にして包囲して上空に導きだしてください。そして姿を現したら待ち構えている乙部隊が叩こうと思うんだけどどう?」

「いいと思うよ。それじゃ、時間もないし早く行こう!」

 

「っ!」

「もう見つかった!」

 

 もう少し時間を稼げると思っていた二人だったが、そう時間はかからなかった。さらに別の方向からも銃弾が飛んできた。

 

「そんな! まるで最初から私たちの場所がわかっていたみたいな……」

「あっ、魔導針で場所を特定されたのかもしれません。一人だけ魔導針が得意な子がいましたから」

「魔導針を? 私も一回サーニャちゃんに教えてもらったことあるけどからっきしだったなー」

「はい。魔導針は高等魔導技術ですし、才能も必要ですから。ナイトウィッチの訓練を一通り受けましたが、同級生の中で魔導針を満足に使えたのはその一人だけでした」

「そっか。雲の中で逃げるにしても、その子をつぶさないと意味ないんだね」

「おっしゃるとおりです。どうします?」

「そうだね。このまま雲の下にまで下りて――」

 

 そこまでいいかけて下から出現した学生ウィッチを見て、芳佳と静夏は急旋回する。下の逃げ場は失われてしまい、上へと逃げる。徐々に追い込まれつつあることは理解できていたが根本的な打開策はなかった。

 

「宮藤さん! どうすれば!」

「こうなったら上空に逃げるよ! シールドはまだ使えるから敵の一撃をしのげるはず」

 

 雲の中を弾丸をばらまいて牽制しながら必至に回避する。幾人かに当たった気がするが確認する余裕はなかった。

 

 一方上では甲部隊に追われ二人が雲から出てくるの待ち構えている。魔導針を展開しているのは、引っ込み思案の少女。魔導針に関しては優秀なのだった。その少女からの情報を頼りにホバリングで銃を構える乙部隊。静止していることで狙いが定めやすく、銃身もぶれない。一撃で仕留めてしまう気であった。

 

 だから、芳佳と静夏の二人が出てきた瞬間に打ち出される無数の銃口からの無数の弾丸。

不意打ちに相応しい弾幕はしかし、二つの魔導シールドに遮られていた。あらかじめ攻撃があると予想していたために、雲から飛び出ると同時に展開したのだった。予想が外れれば、貴重なシールドを無駄にしてしまったかもしれないが賭けにかった。

 

「シールド! 防がれた!?」

 

 もう一撃を与えるべく撃鉄を引くがすでに弾切れであった。作戦は上手いことはまっていたのだが、装弾数については頭から抜けていたせいで絶好の機会を逃した。乙部隊は一人を除いて弾切れであったし、甲部隊も誘導のために弾を使い切っていた。

 

「! あなたはすぐに追いかけて!」

「はっ、はひぃ」

 

 弾が残っているのは魔導針を張ることに集中していて、射撃しなかった引っ込み思案の少女。そして……静夏のルームメイトのあの少女だった。

 

「あ! あなたは」

「待たせたわ。少し準備に手間取っちゃって」

 

 ルームメイトの少女が、引っ込み思案の少女と合流する。これで二対二。距離もそこまで離れていない。少女達の射程距離に入っている。芳佳たちは旋回を繰り返していたせいで失速ギリギリであり、乙部隊の一連射を防ぐ時に張ったシールドの空気抵抗で失速してしまったからだ。

 

 最後の追いかけっこ。芳佳たちは狙いを定められないように身体を揺らす。四人は上昇と水平飛行を繰り返すために速度は速くない。紫電改の魔導エンジンは全開で動かし続けている。下降するのも手だが、学生ウィッチたちの中には残弾を残しているウィッチもいる可能性がある。しかも、それが誰であるかわからないために、その中に飛び込んでいくのは残り全員からプレッシャーを受けるのだ。例え残弾がなくても牽制には使える。だから、このまま敵が二人のままである方がまだ逃げ切れる可能性がある。

 

「追尾をふりほどけません! 宮藤さん」

「……。静夏ちゃん。どれだけ弾残ってる?」

「えっ、はい。……一連射程度しかないです」

「そっか。私は空っぽ。というわけで、あてなくていいから使い切ってしまって捨てちゃって身軽になろう」

 

 芳佳は逃げに徹する覚悟を決める。機関銃を捨てればその分だけウェイトは軽くなる。静夏は備品を捨てることに躊躇したが、芳佳の目を見て言われた通りにした。

 

「銃を捨てたわね……。お願いがあるんだけど」

「な、なんですか?」

「散発的に撃って牽制して欲しいの。用は無駄な動きをさせるのが目的」

「なるほど。引き離されるのを防ぐの目的ですね。わかりました」

 

 そう言われて引っ込み思案の少女はほんの一瞬だけ指に力を込めて離す。数発の銃弾は空を切る。でも芳佳たちはこれでまっすぐ飛ぶことになおさら集中できない。

 

 時よりインメルマンターンやシャンデルを組み込みながらも逃げ続け、追い続ける。

 いつのまにか高度も再び10,000キロを迎えて、紫電改の実用限界高度になっていた。残り数分逃げ切ればいいのだが、それが長い。

 

 芳佳はいろいろ考えた。そして思いついた。

 

「静夏ちゃん。ちょっとごめんね」

「なんでしょうか? 宮藤さっ!?」

 

 芳佳が静夏に抱きつく。それと同時に震電の魔導エンジンが今まで以上に音を轟かせる。紫電改がだめでも震電なら10,000キロ以上も昇れる。それなら静夏ちゃんとくっつけばなんとかなりそう、なんていう発想。

 

 静夏が加わることでウェイトが重くなり12,000キロにまで上昇することは不可能だろうが、それでも紫電改を振り切ることならばできるはず。

 

 そのことを芳佳は静夏に説明した。静夏は芳佳に抱きつかれているために顔を真っ赤にする。

 

「宮藤さん! めちゃくちゃです!」

「あはは……」

 

 一応今やってることが無茶であることを自覚しているのだが、無茶をやり通すのが芳佳であるからやめるつもりはない。静夏の顔が赤いのも怒っているせいだと思っている。

 

 そんなわけで二人はこのまま模擬戦終了時間までこうやって抱きついていればいいだけになっていた……相手が普通の紫電改であるならば……。

 

「なんで付いてこれるの!?」

 

 後ろを振り返った静夏が異変に気づく。一人追いかけてきているのだ。引っ込み思案の少女はすでに弾を撃ちつくし戦列を離れていることからその一人はルームメイトの少女である。

 

 ルームメイトの少女の本来のスペックを越えたこの原動力は、その並外れた百合への渇望であった。高度10,000キロ以上上空で少女二人が抱きつき合っているようなシチュエーションに遭遇した少女は奇跡を起こしたのだ……という魔法染みたことではなく、ちゃんと理由があった。

 

 ストライカーユニットの魔力分配量。速度・シールド強度・飛行時間に魔力を振り分けることをマッピングという。それぞれのストライカーユニットにデフォルトの分配比率があるのだが、個人の好みでこのマッピングを調整することが可能なのだ。

 

 扶桑海軍は伝統的に飛行時間が多く、シールド強度は少なめだった。紫電改の世代になっても他国よりも航続距離が長いことは変わらない。

 

 またシャーリーが音速を超えた時も、速度に極端に調整されていた(ルッキーニがいじってなおさら)。実戦ではこのようなマッピングで出撃することは許されないが、実戦では堅実なマッピングでシャーリーは臨む。ゆえにスピード挑戦すること自体は基地指令であるミーナーが許可していた。

 

 そういうわけで、ルームメイトの少女はマッピングを調整してきたのだ。シールドに張るための全ての魔力を速度に振り分け、飛行時間も犠牲にしている。シールドを張れない条件なのにシールドに魔力を割く必要はないし、調整のために出発が遅れたが、その分の飛行時間さえ速度に割り振ればどうなるか。

 

 規定状態の紫電改が無理な高度でも不可能ではない。とはいえ、無理をさせていることも確かだった。紫電改の魔導エンジンは発熱が大きくなっていた。空気もエーテルも薄い上に規定以上の出力を出しているせいだ。この状態はそんな長い時間耐えられない。ストライカーユニットが壊れるのが早いか模擬戦が終わるのが早いかという状況だった。

 

 なにがルームメイトの少女にここまでさせているかというと、それはやはり百合への渇望である。命の危険さえ考慮せずに芳佳と静夏を追いかける。そして九九式軽機関銃を構える。

 

 芳佳と静夏がくっついているために動きは鈍くなっている。あてることはそう難しくない。そしてマズルフラッシュが銃口に光った……。これで芳佳と静夏の負けが決まったかに見えた。しかし、

 

「あ、あれ?」

「どうしたんでしょうか」

 

 ペイント弾の弾着に備えていたのだが、かすった形跡さえない。それどころが弾丸の飛翔音さえしない。

 

「機関銃の故障かなー?」

「ありえますが……」

 

 芳佳と静夏が憶測を述べる。ルームメイトの少女はと言うと弾丸が飛び出なかったことに焦った表情はなく、むしろ不敵な笑みさえ浮かべていた。

 

「撮れたわ。あぁ、二人が抱き合っている写真が撮れました。家宝がまた一つ加わりましたわ!」

 

 少女は小声で呟く。少女の持っている九九式軽機関銃。しかし、それは練習用にガンカメラを搭載したタイプ。ペイント弾は発射されない。代わりに写真を撮る。先の閃光はマズルフラッシュではなくただのカメラのフラッシュ光。

 

 模擬戦さえ利用して己の欲望を優先させるルームメイトの少女だった。だから気づかない。己の履くストライカーユニットから黒煙がたちこめているのを。そして右足のユニットからボンッという鈍い音をたてて魔導エンジンが停止するまで気づかなかった。宮藤理論によって異次元に収納されていた右足が排出される。魔導エンジンが壊れれば爆発してウィッチを傷つけないように自動的になる安全機構。少女の右足から離れたユニットは少し自由落下したのち爆発した。

 

「あっ、いけない」

 

 我に返った少女はすぐさまもう片方のユニットの出力を下げる。片方だけになっても飛行は不可能ではない。それだけのことをやる技術も持ち合わせている。とはいえ、遅すぎた。一度引き絞った魔導エンジンはそのまま停止し、二度と動かなくなった。

 

 少女が高度10,000キロ以上上空から自由落下を始めるのにそう時間はかからない。

 

「はるか雲の上に百合のつぼみ見つけし、されど花開くを見るは叶わず」

 

 あぁ、もっとこの先のものが見たかった。そう思いながら少女は重力に身をまかせる。

 

「時世の句読んでる場合じゃないでしょう!」

 

 と爆発音を聞くと同時に反転してきた芳佳と静夏に救出される。その拍子に手に持っていたガンカメラ搭載機関銃を落とす。

 

「あああああああああああああああああああっっっぁぁぁーーああ!! いやああああ」

 

 家宝になるべきフィルムを搭載した軽機関銃は三人から離れ落下していく。雲海を突き抜け、そして春先の穏やかな波の瀬戸内海のどこかに沈んでいったのだった。

 

 

 

 

 

あとがき

 

真面目に戦闘シーン書くのは勢いを殺してしまうし冗長になってしまう、というわけでこんな感じになりました。真面目に書くような内容も想定してなかったですしね。

 

それにこの小説は百合を利用したギャグ小説です。だからオチを作らないといけない。というわけでルームメイトの少女大活躍です。調子に乗りすぎたらしっぺ返しがくるよーていうね。

 

というわけで、しんどかった。伏線張ってるのに回収してないのが多すぎる。というか無視した。常に軽い感じで書こうしていたから。

まぁ、基本的な動きは戦闘機に準拠してます。でもいろいろ御都合主義あるかもですがギャグ小説ですしあまり気にしない方がいいかもです。

 

それから、あけましておめでとうございます。

自分は昨日車とごっつんこしました。打ち身程度ですが。いやー。HDD壊れたとか骨折したとかそういうフラグて現実に結構あるんだろうね。うんうん。

 

以上、横道の模擬戦でしたが、次から予定通りに進めるはずなので、おそらくあと二話です。でも、次の更新は早くて二月後半。遅いと四月半ばかと。リアルとか新作書いたり改訂したりで二次創作に割く時間がなさそうなんだよねー。

 

ガルパンの十一、十二話の放送待つ感じで、きっとあっという間さ。

 

といいつつ、息抜きで書いて案外すぐに投稿するかもですけどね。

 

設定の方はまたまた今度で




あと2話か。。。どんな設定だったんだろうなぁ。当時。。。
いつの頃か、残り最終話だけだと思い込んでたよ。

残りは、クリスマス用の短編1つと、
2012年当時にかき集めたストライクウィッチーズの世界観への見解の投稿が残っています。

後者の見解については、
島田フミカネ THE WORLD WITCHES 2018の情報を元に、追記更新かけます。
ストライクウィッチーズの小説広がれーー

続き書くことは挑戦します。
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