俺はロリコンではない。ただ成熟した女性より未熟な体の女の子が好きなだけだ。 作:ユフたんマン
イシュタルと名乗る老人に案内され、大きなテーブルが幾つか並んだ大広間にやってきた。
全員席に座ると、メイドさん達が絶妙なタイミングでカートを押しながら入ってくる。一目見て、すぐに畑山先輩に視線を戻し、体調は大丈夫かなど、真剣な顔をしながら話す。真剣な顔も可愛いなァ…
イシュタルからの説明が始まる。
長かったので3行で纏めてみた。
○魔人族と人間族、亜人族がいて、魔人族と人間族が戦争をしている。
○魔人族が魔獣を従え始めた。ヤバイ、人間族ピンチ!
○なので特別な力を持った俺たちを召喚した。世界を救ってください!
ということである。みんなも授業中や集会での校長先生の話でも、こう纏めておけば楽に覚えられるぞ!多分。
まあ率直に言うと巫山戯るな、という話である。戦争やらはどうでもいいが、なんの関係もない俺たちを戦争に巻き込むな、という話だ。
エヒト様がどうたらこうたら言っていたが、恐らく宗教のことだろう。しかし押し付ける宗教は悪い文明。食べれる石鹸を押し付けるのも悪い文明。
帰れないということがわかると、生徒達は口々に騒ぎ出しパニック状態に陥る。すると何故パニックになっているのか心底わからない、エヒト様に選ばれておきながら、といった侮辱の視線をイシュタルは皆に浴びせている。ちょっとキレそう。畑山先輩もさっきプリプリと怒ってたし俺もそろそろキレていいかな?テメーらの価値観を押し付けんじゃねえ!って…
未だパニックが収まらない中、天之河が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒たち。
天之河は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。
俺は心配だった。天之河は優しいのだ。所謂正義の味方、というやつだろう。しかし彼には決定的な短所がある…
それは…思い込みが激しく、自分の力を過信し過ぎているところだ。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。…俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん?どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺たちには大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が張っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
ギュッと握り拳を作り、そう宣言する天之河。無駄に歯がキラリと光る。
ハァー、やっちまったな…
俺は頭を抑える。天之河には良くも悪くも高いカリスマ性がある。ほら、今の言葉で皆流されそうだし。
しかも最悪なことに、人望のある生徒達が続々と天之河に感化され賛同している。これでは他の生徒達も時間の…いや、もう手遅れだろうな…
「駄目ですよ〜」
と涙目で皆に訴えるが、天之河の作った流れの前には無力だった。
そして俺に訴える畑山先輩。コクリと頷く。涙目可愛い、ペロペロしたい、めちゃくちゃ甘やかしてあげたい…いや、ロリコンじゃないけど…
というか…
テメエら先輩を泣かしたな…?
ダンッと机を叩き、天之河以上の音を出すと、またもビクッとした生徒達がこちらに注目する。先程までこれで勝つる気分だった場は静寂に包まれる。
というかビックリする先輩可愛い…
「天之河…テメエ本気でそれ言ってんのか?」
「っ…!!はい!そうです!」
「そうか…じゃあテメエに質問するが…畑山先生が受け持つ教科はなんだったか覚えてるか?それと今何処を習ってる?」
「勿論です。畑山先生は社会を受け持っていて、今は第二次世界大戦のところでしたけど…一体守山先生は何を言いたいんですか?」
そう聞き返す天之河に、ちょっとお兄さんキレちまったよ…
「何故畑山先生にそこ教えてもらってんのにそう簡単に戦争に参加するなんてほざけるなァ!!?」
周りは俺の怒号に背筋を伸ばす。今まで俺は本気で怒ったことはなかった。前に本気で怒ったのは姉さんにプリンを食べられた時ぐらいだ。
「先生に習ってねえのか!?戦争ってのは国同士が自分の意見を通す為に武力行使する最も最悪なもんだぞ!!罪のない国民が殺され、殺すことを知らないような人間まで死地に追いやられ…。テメエらは日本の負の遺産を見に行ったことはねえのか!?なくても知ってるだろ!!特に広島、長崎!!原爆で罪もない国民が何万、何十万と死に追いやられているんだぞ!!」
「ッ…!?それでも!!困った人を見過ごすことなんてできない!!」
生意気にも言い返してくる天之河。はあ?困った人?
「そいつら他人だろ?異世界の」
「な!?貴方は他人だからという理由で人々を、助けられる命を無下にするのか!?正直言って先生には失望しました!!まさかそんな人間だったなんて…貴方のような人間に育てられていたことが俺の、人生の汚点です!!」
「はぁ…何でお前には俺の言いたいことがわからない…俺が言いたいのはな…この世界に無断で呼び寄せたエヒトって神の言う通りに見ず知らずの人間を救えってことに、生徒達を死地に向かわせる価値があるとは思えないってことだ。
畑山先生もこれは同じ筈だ…俺たち教師はテメエら生徒を無事に家に帰すことも仕事なんだよ。そして何より…生徒たちが大切なんだよ」
「死地に向かわすだって?そんなこと俺がさせるわけないじゃないですか!!俺が全員を守ってみせますよ!」
「巫山戯るなって言ってんだろこのクソ餓鬼ッ!!!お前話理解してんのか!?頭パープリンなのか!?戦争に行くってことは敵を殺さなきゃなんねぇんだぞ!?殺せるのか!?平和な世界で暮らしてきた俺たち一般市民が!!ウサギを殺すのにも抵抗ある俺たちだぞ!?」
「俺が誰も殺させない、この戦争に俺が終止符を打つ!!」
「先生!守山先生落ち着いてください!」
まだブチ切れそうになったが、畑山先生が腕に抱き付き俺を抑える。ん!?未発達な双丘が俺の腕に…!?て、天国だ…ここにエデンはあったのだ…
よし、今ので大分落ち着いた…コイツはもう駄目だ。見捨てよう。何を言っても無駄だ。まさに時間の無駄ですね。
「テメエらは本当に戦争なんてロクでもねーのに参加しようと思ってんのか?結局は俺は俺、テメエらはテメエらだ。最後に決断するのは自分だからな。しっかりと考えてから、参加するか否か決めて欲しい。
戦争ってのは命のやり取りだ。周りに流されて決めるもんじゃない。
けど最後に覚えておいてほしい。俺たちは教師だ。途中で挫折しても、俺たちを裏切っても…テメエらが生徒であり続ける限り、俺たちはテメエらの味方だ。俺たち教師を頼れ!!
以上だ。そういうことなんでイシュタルさん、まさか子供を無理に戦争に参加させるというわけではないですよね?そして参加しない者を処分したりも…ね?」
「そ、そうですな…!戦いに向かぬ者もいらっしゃると思いますし、たった数人でも我ら人間族の味方になってくださるのであれば、それはそれは、大変光栄なことでありますしな。戦いに向かぬ者にも勇者様と変わらぬ待遇で保護させていただきますので、どうか気をお鎮めください…!」
言質とったどー!!けど待遇変えないのは当たり前だよなあ?
というか結構カッコいいこと俺言ったよな?な!?
女子生徒達がなんか白い目で見てる気がすんだが気のせいだよな?気のせいだよね!?俺の言ったことカッコよかったよね!?
「守山くん…ありがとう…」
アーーーーーッ!!(尊死)
やったぜ!
カッコいいこと言ったけど裏切った奴は許さん。特に先輩に危害を与えた輩は生徒であっても苦しめて殺すから覚悟しとけよな。
▽▽▽
その後、イシュタルに外へ案内される。どうやら今いる場所は神山であるらしく、その麓のハイリヒ王国とやらに受け入れ態勢が整っているらしい。
ここの聖教教会はその頂上にあるらしく、凱旋門的な門を潜るとそこには雲海が広がっていた。
何故かピッタリと横にくっついて来る畑山先輩とその光景を見る。
「本当に…ここは異世界なんですね…」
そう泣きそうな顔で言う。君に泣き顔は似合わないよ(さっき可愛いとかペロペロしたいとか言ってた奴)
大丈夫ですよ。俺が先輩を護りますから!
同じ視線になるようにしゃがみ、頭を撫でながら囁く。すると先輩は顔を桃色に染めながら満面の笑みで笑う。
「ありがとう!」
うはッ!!?クッ…!!何て先輩だ…!!鼻の奥が一瞬熱くなったぜ…
生徒達の視線が集まっているのに気付いた先輩は顔を真っ赤にして俺から離れる。
「ほ、ほら!何皆ボーッとしてるんですか!行きますよ!早く早く!!」
ああ、恥ずかしい…なぜ俺はあんなことを……いや待てよ…外堀から埋めていくのもいいかも知れんな…
生徒が先輩に「先生たちって付き合ってるんですよね!?」って聞いて付き合っていないというと「えー!?信じらんない!めっちゃお似合いなのにー!」
ってなって俺が「なんかこういうことを言われたんですけど…」「わ、私も…」「じゃあ試しに僕と付き合ってみませんか?嫌だったらすぐに別れてもいいんで」
ここで試しに、ということで難易度が下がるってある恋愛戦争漫画でやってた。
そして交際。そのまま両者特に不満なくゴールイン!見事な作戦だ。よし、これで行こう。
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僕の名前は南雲ハジメ。なんの特徴もない一般的な高校生さ。テンプレの如く世界の危機を救うために召喚された僕達は、状況を飲み込めないままとある大広間に案内されていた。すると美女、美少女のメイドさんが現れ、殆どの男子生徒がメイドを凝視する。
僕も興味はあった。何せリアルではおばちゃんの方が圧倒的に多いのに対し、ここは全員が美がつく女性なのだ。
しかし僕は白崎さんの凍てつく視線を浴びせられたため見ることは叶わなかった。
ふと守山先生を見る。僕はちょっと苦手だけど容姿端麗、文武両道、完璧と言ってもいい先生。なぜそのスペックで教師をやっているのかわからないが…
先生はチラッとメイドを見ただけですぐに視線を畑山先生に向け直し話を続ける。やっぱりそういうところが女子に人気なんだろうなぁと思う。
イシュタルと名乗った老人の話が始まった。その内容は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい勝手なものだった。
イシュタルは恍惚とした表情でエヒトという神のことを話し出す。イシュタルによれば人間族の九割以上が創造神エヒトを崇める聖教教会の使徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。
僕は、神の意思を疑いなく、それどころか嬉々として従うであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えていると、愛ちゃん先生が立ち上がり猛然と抗議する。
しかし…イシュタルが発した言葉に先生は絶句する。
「お気持ちはお察しします。しかし…あなた方の帰還は現状では不可能です」
先生はストンと脱力したかのように椅子に腰を落とす。そして場に静寂が満ち、重く冷たい空気が全身に押しかかる。
「嘘だろ?帰れないってなんだよ!」
「嫌よ!なんでもいいから帰してよ!」
「これってドッキリとかそんなやつなんだろ?そうなんだろ!?そうって言ってくれよ!!」
パニックになる生徒達。
僕も精神状態は平気とは言えないけど、そういう創作物を読んでいたため、最悪のパターンではなかったのでまだ心に余裕がある。
因みに最悪なのは召喚者を奴隷扱いするものだったりする。
僕は守山先生を見る。先生は動揺していない。彼はジッとイシュタルを睨んでいる。彼はイシュタルを見定めているのだろう。確かに彼の目には侮辱の感情が見て取れる。僕のような素人がわかるようなわかりやすい感情を出すなと言ってやりたい。
クラスのリーダー的存在、天之河光輝が戦争に参加することを決意する。それに続き、彼の親友の坂上龍太郎、そして二大女神と呼ばれる美少女の白崎香織と八重樫雫という、クラスのスクールカーストの上位の3人が賛同したことにより、後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。
それを愛ちゃん先生は涙目で駄目だと訴えるが、光輝の作った流れの前では無力だった。しかし…
ダンッ!!と大きな音が部屋に響き渡る。誰もが驚き、その発生源、守山先生へと顔を向ける。
そこからは未知の世界だった。
いつも温厚な先生が声を荒げて光輝を叱ったのだ。マジギレ、ブチギレという奴である。しかしその言葉の中には、僕たち生徒を気遣うことが多々言われていた。そして何よりも心に響いたのは先生の最後の言葉だった。
「最後に覚えておいてほしい。俺たちは教師だ。途中で挫折しても、俺たちを裏切っても…テメエらが生徒であり続ける限り、俺たちはテメエらの味方だ。俺たち教師を頼れ!」
まさに彼は先生として最高の存在だろう。先生は自分よりも、生徒のことを一番に考えている。
光輝が周りで聞く必要はない!やら俺たちで世界を救うんだ!だの理想論を口に出し続けるが、その言葉を誰も聞いていない。そして誰もがこう思っただろう。
流されて決める。これは逃げだと。精神を守るための現実逃避だと。
そして彼は…先生たちはどのような境遇となっても…僕たちの味方であるのだと…
ひとまずこの場では、参加するしないは決定せず、今後ゆっくりと決めていくという方針になり、戦わない者も保護を受けるという言質を先生が取ってくれたため、本当にこれは自己判断となるだろう。
女子は守山先生に光輝以上の熱い視線を、そして男子は尊敬の眼差しを先生に送る。この場に光輝の相手をするのはイシュタルしか存在しなかった。
その後、イシュタルに案内され教会から外に出る。正面門から出ると、そこには雲海が広がっていた。しかし、そんな絶景を見る者は殆どいなく、その殆どは先生たちに視線を送っていた。
「大丈夫ですよ。俺が先輩を護りますから!」
そして守山先生はしゃがみ、愛ちゃん先生の目と同じ高さになるようにし、頭を撫でる。
その瞬間、周りには興奮する女子や、ショックを受ける女子がキャーキャーと騒ぐ。
そして愛ちゃん先生は顔を桃色に染めて、いつもより艶っぽい満面の笑みで…
「ありがとう!」
うおおおおおおおおおお!!!!!
イシュタルが呆れた顔で騒ぐ僕たちを見ていた。
最後は男子全員叫んでます。