俺はロリコンではない。ただ成熟した女性より未熟な体の女の子が好きなだけだ。 作:ユフたんマン
今日、生徒達は、【オルクス大迷宮】へと挑む為に遠征に出掛けている。ホルアドとかいう宿場町で泊まるそうだ。彼らにはいざという時の為に分身を3人着いて行かせたが、何やら胸騒ぎがするのは気のせいだろうか。
まぁ原因はわからないしどうしようもない。分身の俺を畑山先輩の部屋周辺に配置しておいたしひとまず寝るとするか…
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マズいことになった。順調にオルクス大迷宮を進んでいた俺たちは天之河の一撃で、崩落した場所でグランツ鉱石という綺麗な鉱石を見つけたのだが、檜山が暴走してトラップ確認せずに触れてしまい、トラップが発動して何処かの階層に転移してしまう。
本当にいらんことをするのはやめて欲しい。分身として扱き使われ、畑山成分が補給出来ない今の状況でコレはないわ…やる気でねぇ…
「あれは…ベヒモスなのか…?」
恐竜のトリケラトプスのような姿をした、メルド団長が呟いたベヒモスというモンスターは咆哮をあげた。
「グルァァァァァアアアアア!!」
うるさい。おい、誠ツー。消えて本体に伝えろ。確かベヒモスってのは60何階層の現時点で最強とも言われる魔物だったはずだ。はよ。
了解。
分身の俺が一人消える。これで本体の俺に今の状態が伝わっただろう。
すると背後からさらに大量のスケルトンみたいなヤツが現れる。あ、コレ図鑑で出てたやつだ!(ベネッセ)
たしかトラウムソルジャーってやつだったはずだ。
およそ…数百体…
ここは橋のような場所の為、まさにこれは全門の虎後門の狼だ。
「アラン!生徒たちを率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイル!全力で障壁を張れ!奴を食い止めるぞ!誠は分身で奴の注意を逸らしてくれ!光輝、お前たちは早く階段へ向かえ!」
「了解した。増えよ、我が半身、“影分身の術”!!」
「「「ーーー“聖絶”!!」」」
ドロンッと煙が立ち、中から数百の俺の分身が現れる。皆俺が指示することがすぐにわかったようで、全員嫌そうな顔で俺の命令を待っている。
「足止めするぞッ!!」
分身達は皆、嫌ーッ!!と叫びながら、展開された光の壁を乗り越えてベヒモスへと突っ込んでいく。出来るだけ攻撃が当たらないように動くが、図体もデカく、意外にも俊敏な為、次々と分身達がやられていく。
「グワーッ!!」
「アイエエエ!?」
「おい!落下する奴はすぐに消えろッ!!本体にまで影響が出ちまうッ!!」
クソッ!!マズいなコレは…分身達がまるで紙屑のように…!!
「先生!俺も戦います!あの恐竜が一番ヤバイでしょう!俺たちも…」
「勇者だがなんだかで自分の力量を見誤るんじゃねえ!!テメエらじゃ勝てねぇ!!俺たちでも…なァッ!!」
突然、周りで気を逸らしていた分身達を無視し、ベヒモスは騎士によって張られていた壁に衝突する。
「くそッ!!」
凄まじい衝撃波が起こり、殆どの分身達が奈落へと落とされる。追加で増やすも、既に時は遅く…
「グラァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
赤熱化して真っ赤になった頭部を壁に叩きつけることで、聖絶が破られてしまった。
「クッソ!!いいから下がれ天之河!!」
「嫌です!!団長達を置いていくわけには行きません!!絶対、皆で生き残るんです!
はああッ!!
神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ!神の息吹よ!全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ!神の慈悲よ!この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!ーーー“神威”!!」
俺とメルド団長の指示を無視して天之河は光の極光を放つ。それはベヒモスを飲み込み、天之河が「やったか?」と呟く。
おい馬鹿やめろ!それフラグだ!!
砂煙が次第に晴れていき、無傷のベヒモスが現れる。
「危ないッ!!」
俺は天之河を押し飛ばす。クッソ…ここで終わりか…最後までいたかったんだが…無理か…分身も全員蹴散らかされた
次の瞬間、俺の視界には何も映らなくなった…
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頭に情報が流れ込んでくる。分身の俺が全てやられた。これは本格的に不味くなってきたぞ…!!
ひとまずオルクス大迷宮に一番近くにいる分身に向かうように命令し、俺は畑山先輩に知らせる。
「先輩!!」
「ピャッ!!?い、いつの間にそこに!?」
俺はロリコンではないが、反応が可愛い。しかしそれどころではない。
「生徒たちに同行させていた分身が消えました!!現在転移トラップを起動させてしまいベヒモスという確認されている中で最も強力な魔物と交戦中です!」
「な、本当に!!?」
「本当です!!ひとまず近くにいる分身に向かわせたのですが…恐らく間に合わないでしょう…」
「そ、そんな…」
「今は分身からの連絡を待つしかないです…」
ああ…これは俺の失態だ…本体の俺が大迷宮に行っていればまた結果は変わっていたかもしれない…それに俺にもっと力があれば…
無事に全員帰ってきてくれ…!
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マズいマズいマズい!!先生がやられた!?それにここに先生の本体は来てないのか!?
僕、南雲ハジメはパニック状態の生徒たちを見ながらどうするべきか必死で思考する。このままじゃ全滅してしまう!
その時、目の前の一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまう。
危ない!!トラウムソルジャーが剣を振りかぶっているのを見た瞬間、体が勝手に動いた。地面に手をつけ、錬成することでトラウムソルジャーの足元を隆起させ、バランスを崩したと同時に突進して多数のトラウムソルジャーを巻き込んで突き落とす。
恐怖と緊張でどうにかなりそうだったがなんとかなった…
「早く前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」
と、自分で言っていて嫌になるけど、それでも誰かがやらねばここは乗り越えられない…!
「このパニック状態…必要なのは強力なリーダー…道を切り開く火力…天之河くん!」
ベヒモスはメルド団長達が足止めしてくれているが、もう持たなそうだ。聖絶も使い過ぎて足が震えている。
「天之河くん!」
「なっ、南雲!?」
「南雲くん!?」
皆が僕が来たことに驚いているけど、そんなのに構っていられる時間なんてない!
「早く撤退を!皆のところに!君がいないと!早く!」
「いきなりなんだ?俺のせいで先生がやられたんだ!なら俺がその責任を取らなきゃならない!それより、なんでこんな所にいるんだ!ここは君がいていい場所じゃない!ここは俺たちに任せて南雲は…」
「そんなこと言ってる場合か!?」
胸ぐら掴んで叫ぶ。天之河くんは何もわかっていない!
「君は先生が言っていた言葉の意味がわかってないの!?先生は引けって言ってたよね!?君がすぐに引いていれば先生はまだここで時間稼ぎを出来てたさ!!それに後ろを見て!!みんなパニックになってる!リーダーが、統率出来る人がいないからだ!!
一撃で切り抜ける力が必要なんだ!皆の恐怖を吹き飛ばす力が!それを出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ!前ばかり見てないで後ろも見て!!」
呆然と混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見た天之河くんは、ブンブンと頭を振ると頷いた。
「ああ、わかった。すぐに行く!メルド団長!すいませんが先に撤退します!!」
「ああ!!さっさと下がれ!!こっちももう限界だ!!俺たちはお前らを失うわけにはいかんからな!!」
そう言って撤退する天之河達に、メルド団長が相槌を打つ。僕はすぐにメルド団長に案を伝える。
「…出来るのか?」
「はい、出来ます!!」
「そうか…では任せる!!絶対に生きて戻れよ!!」
「団長ッ!!もう持ちませんッ!!」
「来るぞ!!」
「グルァアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ベヒモスは遂に聖絶を破り僕たちがいる場所に頭部が迫る。
「下がれ下がれッ!!」
メルド団長は僕を担ぎ、その場から跳びベヒモスの頭突きを回避する。瓦礫が飛んでくるが、それはメルド団長が僕を庇い背中で受ける。
「ぐッ…いけぇええええ!!!」
着地と同時に僕は駆け出す。メルド団長の声を背中に浴びながら…
「“錬成”!!」
床には熱がまだ残っており、僕の肌を焼くけど、それを無視して錬成を続ける。
ベヒモスは埋まった頭を引き抜こうとするがそれは叶わない。なぜなら…
僕がいるからだッ!!
頭を抜こうとするベヒモスに、壊れる床を錬成で直していく。決してその頭を抜かせない!!
さらに隆起した地面はベヒモスの上半身を埋め込んでいく。
チラリと後ろを見ると、もう既に全員階段前に避難は完了している。ならそろそろだ……タイミングを見計らう。一度しかチャンスはない。やってやる…!!
「今だ!!」
数十度目の亀裂、その瞬間に最後の錬成を放ち、僕は一気に駆け出した。
ベヒモスはすぐに拘束を破り、地面から這い出る。僕との距離は一瞬で詰められるだろう。一人なら。
「放てぇえええ!!!」
メルド団長の声が響くのと同時にあらゆる攻撃魔法の雨がベヒモスに殺到する。ダメージはないだろうけど、これで足止めは出来ているはずだ!!
クイッと一つ、魔法が軌道を逸らす。
「え?」
それは僕の目の前に炸裂し、来た道へと吹き飛ばされてしまう。や、やだ…!!ここで…死にたくない…!!
ベヒモスの凄まじい咆哮が鳴り響く。思わず振り向いて見てしまった。腰が抜けてしまう。動けない。
助からない…
最後に見たのは僕に手を伸ばして泣き叫ぶ白崎さんの顔だった…
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分身から連絡が入った。無事だったようだ。大きな怪我もしていないようだった。しかし…一人を除いて…
南雲がベヒモスと一緒に奈落の底へと落ちてしまったらしい…本当に俺が不甲斐ない。
メルド団長や先輩は俺に気に病むことはない、貴方には何の罪もないと励ましてくれるが、それでも俺があそこにいれば結末は変えられたはずだ。
死んだのが無能でよかったと王の間でほざいた貴族がいた…それを俺は許すことは出来なかった。
「よかっただと!?何がいいんだよこのクソ野郎!!」
貴族の胸ぐらを掴みながら叫ぶ。
「命に優劣をつけんじゃねぇよ!!」
「先生落ち着いてください!!」
生徒達に抑えられる。でもそれでも気が治まらない。傍観している王にも忠告する。
「テメエら人ごとだと思ってんじゃねえぞ?俺がその気になりゃあこの国を滅ぼすことも容易いんだぞ?俺が手を下さずにもな…!!偽の情報をありとあらゆる国に報告すれば連合軍との戦争が起きる…!!魔人族にも情報を売り渡すことも出来んだ…!!発言には気を付けろよこの蛆虫共!!次に俺が聞けばどうなるか、俺を敵に回すとどうなるかキチッと考えとけよ!!?わかったな!?」
「守山殿…!!気をお鎮めください…!其奴のようなハジメ殿を罵った人物は処分致しますので…!!どうにか寛大な処置を…!!」
「フゥ…ああ。もういい」
少し熱くなり過ぎた…生徒の前で何やってんだか…
しかしこれは俺も…覚悟を決めんとだな…
▽▽▽
一人、部屋で過ごしているとドアがノックされる。どうぞ、というと入ってきたのは白崎だった。
「白崎…?起きたのか。体調はどうだ?」
「はい、大丈夫です…」
迷宮から戻ってきてから白崎は5日も寝ていたのだ。肉体には傷がなく、医師が言うには心の問題だとか。
「先生…私の代わりに怒ってくれてありがとうございます…雫ちゃんから聞きました…」
「ああ、八重樫から聞いたのか…」
「率直に聞きます…先生は南雲くんが死んだと思ってますか?」
「本当に率直だな…あの高さじゃ生存は絶望的だと思う…」
「先生…私の目を見てください」
そう言われて白崎の目を見る。そして驚いた。彼女の目には決意した人間の目をしていたのだ。まるで便秘気味だった母がトイレという戦場へと向かう時のような…
「私は貴方を責めません。本来ならあんな危険な目に遭いませんでしたし、誰も想定してなかったことですし私は気にしてません。
だからいつものように明るくいてください。南雲くんは死んでません!私は南雲くんが死んだなんて信じません!だからいつも通りの先生でいてください!!」
白崎の目から涙が流れる。そうだな…そうだよな…誰も南雲が死んだなんて確認してないしな…。生きている可能性はゼロじゃない。彼が帰ってくる時、笑顔で、いつも通りの俺で迎えてやらないとな…
「ああ、わかった…南雲は死んでいない…そう信じよう。だが生きていてもかなりの下層にいるだろう。助けに行けるように、強くならなくてはな…」
「はい…!!」
髪を撫でる。少しドキッとしてしまったのは悪くないだろう。俺も独自に動こう。先輩も守りながらな…
今度はもう誰も取りこぼさない…!!