魔法つかいプリキュア! 〜勇者イサム伝説〜【凍結】 作:秋葉ばっこ
オリキャラ等は極力出さない方針でやっていきます。
ドラクエ要素もいうて名ばかりです……
(恋愛要素は作者が書け)ないです。
まほプリに男をブチ込む時点で大罪だって、それ一番言われてるから。
でもヒロインいた方がいいのかなあ……
どちらの作品を知らなくても、一応内容を理解できるようには書いているつもりです。
みらリコ目線の描写を随所ではしょったりするので、やっぱり先にアニメを視聴することをオススメします。ダイの大冒険要素は薄いからモーマンタイ。
LEVEL01:キュアップ・ラパパ!
| おきのどくですが |
| あなたの ぼうけんのしょは |
| きえてしまいました。 ▼ |
| あらたに ぼうけんのしょを |
| つくりなおしますか? ▼ |
| →はい |
| いいえ |
| あなたの なまえ を |
| にゅうりょくしてください。 ▼ |
| ……… ▼ |
| よくぞ もどられました |
| ゆうしゃ イサムよ。 ▼ |
| さあ いまこそ |
| ふたたび たびだつとき! ▼ |
***
世の中には『自分ルール』なるものが存在する。
……言い方や解釈に語弊を招きそうではあるが、例えば、横断歩道。白線の上はセーフで、それ以外のアスファルトを歩いたら息絶えてしまう、とか。
道を行き交う人々を、決まった行動や台詞しか喋らないNPCみたいだと思ったり。好物のアップルパイを食べたら、HPが20回復するとか。
とにかく、幼少期の内には誰しもが体験し、大抵は卒業していそうな日課であるが、彼──
「ふわあ〜あ……HP・MP全回復っと!」
喉の奥まで見えるような大あくびをしてから、勇はベッドから起き上がり部屋のカーテンをがらり、と開けた。
窓越しに射し込んでくる日光が気持ちいい。今日もいい天気だな、と小鳥たちのさえずりに耳を傾けながら、身支度を整え始める。
「せっかくの春休みなんだし、遊ばなきゃ損だよね」
そう言って、勉強机の上に無造作に置いてあった古ぼけた本。肩掛けの竹刀袋を背負うと、玄関を出て戸締りを確認する。
誰もいない家へと向け「いってきます」と頭を下げると、勇は元気よく駆け出していった。
本日の
この春、休み明けに勇は晴れて中学二年生へと進級する。
と言っても、まだまだ遊びたいざかりの年頃なのだろう。桜道を走るその無邪気な横顔は、童顔も相まってどこかあどけない。
「うう~ん、どこに落ちたのかなあ」
「ん?」
ふと、一人の少女とすれ違う。何かを探しているのか、周囲をきょろきょろと見回している。
それだけなら、ただすれ違って終わっていただろう。彼女の手提げのバスケットからこてん、ぬいぐるみが落ちるまでは。
「お〜い、これキミのだろう? 落としたよ」
「えっ、わわっ、モフルン!?」
慌てて少女が駆け寄り、勇から受け取ったぬいぐるみを大事そうに抱き抱えた。
よほど大切にされているのだろう、モフルンと呼ばれたそれに優しく頬ずりし「ごめんね」と謝っている。
「ありがとう! 教えてくれ、て……」
「どうかした?」
「う、後ろ! 後ろっ!」
言われた通りに勇が振り向いてみるが、背後には誰もいない。
少女から、もう少し上とせがまれ、よくわからないままに視線を上げると。
「ダメよ、気をつけなきゃ。今日はたまたま彼が拾ってくれたみたいだけど」
──当然のように、彼らを宙から見下ろす少女が佇んでいた。
いや、ほうきの上に座っているという事は『飛んでいる』と表すのが正しいのか。
勇が呆気に取られていると、とんがり帽子を被った少女はじゃあね、などと言ってそのまま去ろうとしてしまう。
そこへ、
「魔法つかいだあ~~~っ!?」
「──!?」
「それ、魔法のほうき!? 本当にほうきで飛ぶんだ……その帽子も素敵だね!」
「な、なに……?」
少女に詰め寄る、もう一人の少女。
驚いてふよふよと漂う、まるで『魔法つかい』のような容姿の彼女へと、ぬいぐるみを持った少女が質問を繰り返している。
「へえ〜、俺以外にもいたんだ……」
一方で、口をぱくぱくとさせていた勇が意味深に呟いた後、遅れて目を輝かせて。
「なあなあ、魔法つかいって本当? さっきのも魔法だよね!?」
「あ、あなたまで……」
「あ、昨日の夜見たよ! 落ちてくとこ!」
「……っ!? お、落ちてないし!」
『落ちた』という物言いが気に入らなかったようで、ほうきを持ったまま、仁王立ちで否定する魔法つかいだったが。
「わたし、朝比奈みらい。十三歳! 今度、中学二年生! 魔法つかいさん、お友達になってください! ねっ?」
「俺は龍輝勇! 以下同文!」
「へ、え──?」
すかさず挟まれる自己紹介と、差し出される二つの手に、魔法つかいの少女はすっとんきょうな声を洩らした。
が、すぐに我に返り。
「聞いてないし、名前なんて。わたし急いでるから、あなたたちに構ってる暇ないの」
つんけんとした態度で二人の申し出を一蹴し、小さく深呼吸したあと、彼女は「キュアップ・ラパパ」と唱えた。
魔法を使うための合言葉だろうか? 彼女の周囲にある空気が波紋を揺れ描き、ひとりでにほうきを浮かび上がらせる。
今にも飛び立ってしまいそうな勢いだ。どうにかして話ができないか、と勇はやきもきする。彼の隣にいる、みらいと名乗った少女も同様だった。
「ほうきよ、飛びなさい!」
颯爽と場を去ろうとする魔法つかい。
「待って、いかないで~っ!」
「っ……!? コ、コラ!」
違和感を感じて振り向いてみれば、勇より先に動いたみらいが、ほうきの穂先にしがみついているではないか。
「お話だけでも~!」と半ばひきずられているみらいの発言に、流石に臆したのか、魔法つかいが逃れんと必死に抗っている。
「えっと、えっと……このページじゃない! どこだったっけな~……」
最中、やり取りを繰り広げている彼女たちとは別に、家を出る際に持ってきた本を、勇がぱらぱらとめくっていた。
「ほうきよ飛んで! 張り切って、頑張って……っ! 飛べ~~~っ!!」
「──あった!」
求めていた頁を見つけると、勇の顔つきが変わった。
彼は、徐々に地上から離れていく彼女たちを見やると。
「──
同じく、魔法を発動させるための言霊を口にした。
突如として突風が巻き起こる。勇が発動した魔法によるものではなく、二人の少女が、大きく飛翔したために発生したものだ。
その拍子で尻もちをつき、彼女たちが宙へと舞い上がっていく様子を見上げながら、勇は独りごちる。
「いててっ、今日はハズレかあ」
地上から約二十メートルほどだろうか。
上昇を続ける二人に突然、異変が起こり始めた。
「な、なにっ? 急に霧が……!」
「わわっ、何も見えないよ~!?」
発生源を謎とした白い霧が忽然と現れ、みらいたちを取り囲んだのである。
そして次の瞬間、ぷつりと糸が切れたような感覚が、魔法つかいの少女を襲った。
宙に浮かんでいた筈のほうきが、急に浮力を失ったのだ。
「そんな、魔法が!?」
「え、ええ……!? えええええ~~~っ!?」
そうなれば当然、自然のままに落下するのが道理。
「やばいっ……! 使ったことない呪文だけど、こいつで何とかするしか──!」
言うまでもなく、あの霧は自分が唱えた魔法によって起きた現象だろう。
動転とは裏腹に、頭の回転はここぞと早かった。反省や後悔するよりも先に、なんとかしようと、勇は別の呪文の詠唱を試みようとする。
「真空、えっ──!?」
突如、事に乗じたように光が発生する。
直接太陽のそれを見た時のように、燦然とした輝きが勇の視界を浚う。
「……?」
「え……?」
光の中で、自分たちの身に何が起きたのかわからないまま、二人の少女が顔を見合わせていた。彼女たちの落下はピタリと止まり、先程の光景が嘘のように、ぷかぷかと浮かんでいる。
そして、お互いの首にかかっているペンダントの存在に気がついた。
「「同じ──!?」」
二人の声が重なった。
二つの宝石を模した形のペンダントが、まるで共鳴するかのように輝き始める。
少女たちが思わず息を呑む。地上にいる勇も、なんとなくであったが、あのペンダントの力なのだと察した。
──くうう。
直後、可愛らしい腹の虫が鳴った。かと思えば、ペンダントから光が途絶えてしまい、彼女たちは真っ逆さまに地上へと落下を始める。
ドシン! 魔法つかいの少女が被っていたとんがり帽子が、ゆっくりと宙を舞った。
「──」
津成木町のどこか。近くも遠く、勇たちから離れた往来の真ん中で、ひとりの男が歩みを止める。
黒を基調としたマント、スーツ、ロングブーツ。大きな背丈も相まって、昼間に外を出歩くのにはいささか似つかわしくない格好だ。
「感じましたよ。強い力を……」
フフフ、と妖しい笑いを浮かべながら、黒ずくめの男は再び歩き始めた。
まるで、ナニカを探し求めるかのように──
さく、と程よい食感と甘味が口内に広がっていく。
公園のベンチで幸せをいっぱいに噛み締める勇。同じように舌鼓を打つ魔法つかいの少女へと、みらいが尋ねた。
「いちごメロンパン。甘くてさくさくで美味しいでしょ?」
「え、ええ……」
「
糖分こそ至高。朝ごはんを抜いてきたから助かった──ではなく。
頭を左右に振った勇が、もう何度目かわからない謝罪を、みらいたちへのたまう。
「ええと、さっきはごめん……俺のせいで、二人を危ない目に遭わせちゃって」
「悪気があってやったわけじゃないんでしょう? もういいわよ……それより!」
「「それより?」」
勇とみらいが揃って小首を傾げ、復唱した。
魔法つかいの少女は、勇の持っている本を指差しながら、
「さっきの、どういう事か説明してもらえる?」
「さっきのって──ああ、魔法だと思うけど」
「今、魔法って言いました!? 凄い、イサムくんも使えるんだねっ!」
「あんな魔法、見たことも聞いたことない! 何もないところから物を生み出すなんて……それこそありえないわ!」
……両サイドがうるさい。
それぞれ違う意味合いで食いついてくる二人をなだめ、魔法つかいの少女の言い分を聞いてみる事にした。
彼女の言う一般的な魔法とは、辺りに漂うエネルギーに杖を介してお願いし、初めて使える代物なのだとか。要約するとそんな感じらしい。
「そう言われてもなあ。この本、うちの蔵に放置されてるのを見つけたもんだから、俺もよく知らないっていうか……」
「ちょっと貸してみてくれる?」
「あ、わたしも見たい見たいっ!」
ひったくられるような形で、本を魔法つかいの少女へと手渡した。
いかめしい面持ちで、彼女はぺらぺらとページをめくり始める。それを興味津々に覗き込んでいたみらいであったが、次第に二人の表情が曇っていく。
何故なら、肝心の本の内容が理解できなかったからだ。
「ね、読めないでしょ? たった数ページを解読するのに、五年もかかったんだよ、五年も! それ以外はちんぷんかんぷん!」
そう言って、残ったいちごメロンパンを勇が平らげる。
彼の発言通り、見たこともない文字や図が、あらゆるページにびっしりと書き込まれていて、とても原理を理解できそうにない。
納得はしていないが、仕方がないと、魔法つかいの少女が本を閉じた。
「それじゃあ、イサムくんは魔法つかいじゃないってこと?」
「そうなるのかな。そもそも、俺が目指してるのは魔法つかいじゃないしね」
「そうなんだ」
みらいにそう答えると、ベンチに立てかけられたほうきを指差し、勇が嬉々として言う。
「それって魔法のほうきなんだよね? 俺も飛んでみたいな!」
「わたしも! お願い、魔法つかいさん!」
「え、無理よ。これ一人乗り用だし」
「そういう問題なんだ……」
がっくりと二人が項垂れる。
それを見かねてか、外していたとんがり帽子を目深く被ると、魔法つかいの少女が、ほうきを持って立ち上がり。
「──ひとつだけ。ご馳走になったお礼に、何かひとつだけ魔法を見せてあげる」
ぱああ、と勇とみらいの表情が晴れた。
たまたま木の上で眠っていた猫を見つけると、少女は懐から星型のステッキを取り出す。
「猫とおしゃべりするってのはどう? キュアップ・ラパパ! 猫よ、お話なさい!」
ステッキの先から溢れんばかりの光が生まれ、猫の体を包んでいく。
「わんわん! わお~ん!」
「すごい! ……けど、これじゃおしゃべりできないよね?」
「つ、次が本番っ! キュアップ・ラパパ!」
気を取り直して魔法を使ってみるが、結果は猫が文字通りペラペラ喋りだすというものだった。これでは意思疎通は不可能だ。
魔法つかいの少女が意気消沈する間もなく、勇が肩をぐるぐると回しながら、彼女たちの前へと躍り出た。
「よ~し、今度は俺が!」
彼もまた、魔法を使う気でいるらしい。
二人の少女が、固唾を呑んでその様子を見守る。
「
詠唱が木々に吸い込まれるようにこだましていく。
瞬間、どこからかお皿が割れたような音が彼らの耳をつんざいた。
しばらくの沈黙の後、勇がゆっくりと振り向いて。
「う〜ん……今回はハズレっぽい。何も起きなかった」
「「終わり!?」」
「うん。今の魔法は……ああ、紛らわしいから『呪文』って呼ぶね。パルプンテは何が起きるか、俺にもわからないんだ。たま~に巨人が出てきたり、隕石とかが降ってきたりするし」
あはは、とでたらめな話を呑気そうに勇が語った。
つくづく呪文とやらが規格外だという事を思い知らされる。ペラペラと舌を回らせていた猫は、とうにどこかへと去っていってしまっていた。
「あ、そうだ! モフルンとお話できないかな?」
「モフルン?」
みらいが思いついたように、ぬいぐるみの入った籠を差し出す。
少女は困ったように、それでいて申し訳なさそうに、眉尻をハの字に下げて。
「ぬいぐるみは喋らせようがないわね」
「そうなんだ……そっか、残念だなあ……」
気を落としたみらいが呟く。
「この子、モフルンはね……わたしが生まれた時に、おばあちゃんがくれたんだって。それからずっと一緒なの。兄妹みたいに」
桜並木を三人で並んで歩いていると、ふとみらいが話し始めた。
「もしできるのなら……お話、してみたいんだ」
両手でモフルンを持ち上げて、笑顔でそう語る。勇と少女は、そんな彼女の顔を横目ながら黙って見つめている。
不意に、みらいの歩みが止まった。
「だけどもし、あの時にモフルンを落としたことに気がつかないままだったら、わたし……だから、本当に、本当にありがとうね! イサムくん、魔法つかいさん!」
「「──」」
とびきりの笑顔。少女を魔法つかいと知った時、そして勇の本を貸してもらった時よりも。純粋に満ち、嬉しさに揺れる微笑みを向けられ、少しとはいえ言葉を失ってしまう。
……ああ、この子は本当にモフルンを大切に想っているんだな。出会って間もない真柄でも、それだけは間違っていないと言える。
「うん、どういたしまして! 朝日奈さん」
「えへへ、みらいでいいよ」
「そう? じゃあ、みらいって呼ばせてもらうね。それと──」
キミは? と尋ねる前に、少女が帽子を深く被って。
「──リコ。わたしの名前、リコっていうの」
「うんっ! よろしくね、リコちゃん!」
「よろしくね、リコ!」
リコは少し照れくさそうに頷いてから、
「じゃあ、わたしもう行かなきゃ」
「あ、うん……」
「そういえば、探し物をしてるって言ってたね」
名残惜しくも、嬉しそうに離れていくリコの背中を、二人は静かに見送──
「じゃあ、どこから探そっか!」
「俺も手伝うよ!」
「まずは……って、はあ!?」
──らなかった。
さも当然かのように、勇とみらいはリコを挟むようにして、並木道を練り歩いている。
「みんなで探した方が、きっと早く見つかるよ」
「そうだよリコちゃん。それに、何でこれが光ったのか知りたいし」
そう言ってみらいが手にとったのは、首にかかっているピンク色のペンダントだ。
リコも目を伏せ、同じく自身の首に下げている、淡紫色のペンダントを見やる。みらいが笑顔で覗き込んでくる。
「おやおや、こんな所に魔法つかいがいらっしゃるとは」
リコが答えるよりも先に、この場の誰でもない声色が耳朶に張り付いた。
不思議に思い、三人は声のした方へと振り向く。
「ちょっと探し物をしているんですが、伺ってもよろしいかな?」
全身黒ずくめの男が、ゆっくりと近づいてくる。
勇の中の本能が、言葉では言い表せないナニカを掻き立てていく。
「……!」
「……イサムくん?」
妙な胸騒ぎがするも、足がぴったりと張り付いて離れてくれない。目の前の男が放つプレッシャーとでも言うべきか、それに当てられ動けなくなってしまったのだ。
お世辞にもオシャレとは言えない、骸骨の装飾が先端についた杖を持った手を振り上げ、黒ずくめの男は言葉を紡いでいく。
「──リンクルストーン・エメラルドについて」
「……っ!? 知ってるの? リンクルストーンのこと!」
聞き覚えがあるのか、顔つきを変えたリコが尋ね返した。
対称的に、みらいは依然口を開けたままポカンとしている。
一体あなたは何者なのか。そう質疑を重ねながら近づくリコに、男は妖しく口元を歪め──そして、直感した。アレに近づいてはいけない!
「
「……ッ!?」
勇の指先から放たれた火球が、男の足元に広がっていく。
留まらず、動揺するリコとみらいを連れて、勇は一目散に駆け出した。その横顔には、先程まで無邪気にはしゃいでいたものとは違い、明らかな焦燥が芽生えているのが見てとれる。
「ちょ、ちょっと……!?」
「ごめん! でも逃げないと、なんか危ない気がする……! よくわかんないけど、アイツと関わっちゃダメだ!」
言っていることが無茶苦茶だ。頭の中では理解していても、二人を掴んだ手と、走り続ける足が許してくれない。
逃げた先の一帯は工事現場だった。どうにか人気のありそうな場所へと向かおうと、勇はみらいたちを連れて、一目散に走り続ける。
しかし──
「お話の途中なんですが」
「──!?」
先回りされてしまったらしい。
まるで重力が反転したかのように、逆さまの姿で木の枝の上で──勇たちからすれば下だが──平然と腕を組み、黒ずくめの男は立っているではないか。
「魔法にまつわる伝説のひとつ、人智を超えた強大な力の結晶『リンクルストーン』。我らが欲するのはその中心となる輝き……リンクルストーン・エメラルド!」
慄き、立ち尽くしたままの勇たちに語るように、男が続ける。
「先ほど感じた強いチカラ──ひょっとしたらと来てみれば、そこには魔法つかいさんがいるじゃあありませんか……何か、ご存知だったりしませんかねえ?」
地面に降り立った男の容姿が変貌していく。
不自然に大きかった耳は開き、マントが展開され、極めつけは赤一色に染まった双眸。ギラリと口から覗く牙も相まって、間抜けにも『コウモリ男』みたいだ、と勇は思ってしまった。
「ねえ、お嬢さんがた?」
「っ……!」
たじろぎ、後ずさる勇とみらいの背を、リコの持っていたほうきの柄が受け止めた。こんな状況に置かれていながらも、彼女は冷静かつ迅速に、逃走の機を窺っていたのである。
「二人とも、捕まってなさい……キュアップ・ラパパ! ほうきよ飛びなさい!」
みらいはほうきに跨るリコへとしがみつき、勇は穂先にかろうじて捕まっている状態だ。
逃げようにも、リコが言ったように、このほうきは一人乗り用。二人はまだしも、三人分の体重を支えるには、あまりに不相応の筈なのだが。
「す、すっげ~……! 飛んでる飛んでる!」
「静かにして、集中できないから!」
火事場の馬鹿力とでも言うべきか、三人を乗せたほうきはふらふらと怪しい挙動を描きながらも、コウモリ男から逃れんと大空を泳いでいた。
リコの邪魔をしないようにと黙っていた勇だったが、沈黙を維持できたのはほんの数秒ほどで。
『ヨクバ~ルッ!』
「どわあああ~~~っ!? な、何だこいつっ!?」
「怪物を、生み出す魔法……!?」
「『ヨクバール』です」
と、肯定するようにコウモリ男──バッティが答えた。
彼らの後を追うべく現れたのは、ダンプカーとカラスを合体させたような風貌の怪物だ。バッティはヨクバールの腹部に、同じように逆さまに立っている。
「まあ、退屈な魔法しか知らないあなた方には、こんな真似できませんがね。さあ、リンクルストーン・エメラルドはどこです?」
「……っ! ほうきよ、もっと速く!!」
知りたいのはこっちの方だ、とリコはやきもきする。
いくらスピードを上げようと、人目につく市街地の空を駆けようとも、ヨクバールはそれ以上の速度でどこまでも追いかけてくる。
「リコちゃん、凄い!」
「そ、そう……? 何でいつもより上手く飛べてるのかしら。三人も乗せてるっていうのに……」
「やばい、こっちに来てる──!」
勇の発言もあってか、三人は後方からの襲来を掻い潜る事が出来た。
しかし、
「モフルンッ!」
反動でモフルンが籠から飛び出してしまった。
「──!」
リコがどうにか片手で受け止める。
するとそこへ、狙ったかのようなタイミングで現れたヨクバールが、再び彼らを襲う。
直撃はせずとも、その振動はひとりの少女を揺れ落とすには十分であった。バランスを崩したリコが、宙へと無造作に放り出されてしまう。
「リコちゃんっ!!」
みらいが叫び、必死にリコへと手を伸ばすも、あともう少しの所で至らず。
このままでは、彼女はそのまま落ちて──最悪の結末が、勇たちの脳裏をよぎった。
「う、おおおおお────っ!!!!」
「イサムくん……!?」
次にみらいの視界を掠めていったのは、あろう事か、自ら空中へと身を投げる勇の姿だった。スカイダイビングのように手を広げるのではなく、あえて空気抵抗を減らすような体勢。
その手には、呪文の記されている例の本がある。彼はリコを追い抜くと、彼女へと目掛けて。
「
突如として発生する突風。
勇の意思か、それとも拙速な呪文だった故か。少なくともそれは、リコを傷つけることはなく、彼女の体を徐々に舞い上がらせていく。
そして届いた──ほうきにぶら下がりながらも差し出したみらいの手を、リコの手ががっしりと掴む。
……だが、これでは入れ違いになった少年が。自分の安否よりも先に、二人の少女が、勇の姿を捉えようとして視線を落とす。
「──あ、ぐ、痛い……けど、助かったあ……!」
「イサムくんっ!」
「良かった、無事だったのね……!」
周囲がビル街だったのが幸いしたのか、近くの建造物の屋上に勇はいた。先と同じように、呪文によって落下の軌道を変え、衝撃を和らげていたのだ。
みらいとリコがほっと胸をなで下ろすが、事態が好転したわけではない。
一連の様子を見ていたバッティが、不敵な笑みを浮かべながら、ヨクバールと共に彼女たちへと近づいていく。
「フフフ、もはや浮いているのが精一杯のようですね。さて、もう大人しく──」
「待って、この子たちは関係ない!」
「それを決めるのは私です。それとも、まだ抵抗しますか? しかし、両手が塞がっていては魔法も使えませんねえ?」
最も、どうにかできる力があったのなら最初から使っているだろう、とバッティが嗤う。
「キュアップ・ラパパ……!」
「うん……?」
「怪物よ……! 怪物よ、あっちへいきなさい!」
「──ハハハハッ! そんなでたらめな魔法がありますか。それで私のヨクバールが吹き飛んでしまうとでも? ハッハッハッハ!」
そんな些事、魔法つかいであるリコ自身がよくわかっていた。
バッティが哄笑している中、彼女は同じように、何度も何度も詠唱を繰り返す。そればかりでなく、遂にはみらいまでもが加わった。
「みらいとリコを離せっ!」
「おや……そう言えば、もう一人いましたね。フフ、あなたはそこで見ていなさい。彼女たちの後でちゃんとお話の続きをさせていただきますから」
「この野郎ォ! 火炎──!」
フェンスから身を乗り出し、メラを喰らわせようとする勇だったが。
「うっ、ぐ──、もう魔法力が……!」
がくん、と四肢から力が抜けていき、場に倒れ込んでしまった。
呪文を使うために必要な魔法力を、リコと自分の身も守る為に使い果たしてしまった。これでは彼女たちを助けることが出来ない。
「ふざ、けるな、よ……!!」
そんな事が、許されてたまるものか。
歯噛み、棒になった間接を力づくで折り曲げ、勇は立ち上がる。
「もう嫌なんだ、目の前で誰かが傷つくのは……!! だから、俺は……!!」
「キュアップ・ラパパ! 怪物よ、あっちへいきなさいっ!!」
意地を張り続ける少女たちと、怒りに震える少年。
プログラムされた台詞を垂れ流すNPCのような。呪詛のように繰り返されるそれらが、いくら面白可笑しいとしても、飽きはいつしか訪れるものだ。
馬鹿馬鹿しいと吐き捨ててから、バッティはヨクバールへと指示を出した。
「ヨクバール、先にあの二人を捕らえなさい」
『ギョイ~』
巨影がみらいとリコへと迫る。
二人は希望を捨てず、お互いの手を強く握り、再び言葉を紡ぎ始め──交えて、ひとりの少年が願った。
「俺は、『勇者』になるんだ────!!!!」
「「キュアップ・ラパパ────!!!!」」
──瞬間、世界が輝いた。
初めて出会った時と同じように、お互いのペンダント──リンクルストーン・ダイヤが共鳴しあい、彼女たちを守るべく光の空間が覆うと、勇のいる屋上まで運んでいく。
「くっ……! 逃がしませんよ!」
『ヨクバアアアアアルッ!!』
一体──否、二体、何が起こったのか。
ヨクバールを伴って襲撃をしかけたはずのバッティの体を、ひとつの雷撃が穿つ。
「──ッ、今の雷は、もしや……!?」
空中で大きく後退しながら、彼は建物の上でこちらを虚ろな瞳で睨めつけ、掌をかざしている勇の姿に瞠目した。
「「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」」
あの少年がやったのか、などと目を見開いたのは一瞬で、新たな驚きが波のようにバッティの意識をかっさらった。
「二人の奇跡、キュアミラクル!」
「二人の魔法、キュアマジカル!」
「「魔法つかいプリキュア!」」
瞬く間に現れたのは、二人の大人びた雰囲気の魔法つかい。みらいとリコがプリキュアへと変身した姿である。
感傷に浸る間もなく、猛進を続けていたヨクバールが肉薄するも、彼女たちは信じられない脚力で跳躍し、攻撃を避けてみせた。
「あれ、俺は何を──って、ええっ!? みらいとリコが大きくなってる~!?」
「プリキュア……プリキュア!?」
口々にそう洩らすのは、状況を飲み込めていない勇とバッティだ。
驚いているのは空中のみらい──ミラクルとマジカルも同様で、自身に起きた変化に東西を失っている。
「キュアミラクル?」
「キュア、マジカル……」
ながらも、背後からの奇襲を受け流し、阿吽の呼吸でヨクバールをはたき落とす。
「伝説の魔法つかいプリキュア……!! さっきまでほうきで飛ぶのが精一杯だった、ひよっこ共が……!?」
「す、すげ~……! 二人とも俺より背が高い! ずるい!」
「……」
もっと他に触れる点があるだろうに。
勇と同列に舌を巻いているのが酷く惨めになり、バッティは押し黙った。
『ヨクバールッ!』
翼を握りこぶしへと変え、ヨクバールが襲いかかる。
それを俊敏な動きで攻撃を躱し、翻弄するミラクル。生じた隙を見逃さず、上空から体重を乗せた蹴擊を下すマジカル。
彼女たちは地上だけに留まらず、巧みに操ったほうきを足場にしながら、着実にダメージを与えていた。
「「怪物よ、あっちへいきなさあああああいっ!!」」
『ヨ、ヨクバアアアルッ……!』
息のあった拳。
ピシリ、とクチバシに亀裂を走らせ、ヨクバールが落下していく。
「ここは退いて、ドクロクシー様に報告を……!」
渦を巻く白煙から、勢いよくバッティを乗せたヨクバールが出てきた。
反撃に転じるのかと思いきや、既に戦う気はないようだ。
「オボエテーロ!」と唱えられた奇妙な魔法により、彼らはたちまち姿を消してしまう。
「プリ、キュア……?」
「わたしたち、伝説の魔法つかいに……?」
「すっごく格好よかったよ! いいなあ、俺もあんなふうに変身できたらなあ……」
いつの間にか二人の姿も元に戻っていたらしい。みらいとリコの元へ、笑顔を浮かべた勇がやってくる。
彼の腕の中には、プリキュアになってから、おざなりにしてしまっていたモフルン。ついでにリコの帽子があった。
「イサムくん! それにモフルンまで! 良かったあ、無事で!」
手渡されたモフルンを、みらいは力いっぱい抱きしめる。
勇とリコが、その光景を微笑ましく見守っていると。
「モフ~……苦しいモフ」
「ちょっと、強く抱きしめすぎよ」
「わわっ、ごめんねモフルン。つい──」
ピタリ、と三人の時間が止まった。
スタートボタンを押され、まるでポーズ状態に陥ったかのように固まり、しばしの沈黙が流れ。
「「「喋ったあああああ~~~!!?」」」
「モフ?」
町中に響き渡った絶叫のうち、三分の二が喜びの感情に満ちていたとか、いないとか。
「ありがとうリコちゃん! お話できるようになって、すっごく嬉しいよ!」
「モフルンも嬉しいモフ!」
「もう、何がなんだか……とにかく一緒に来て!」
リコに連れられ三人が真っ直ぐ向かったのは、津成木駅だった。
彼女が言うには、学校に戻りしかるべき人物に、先ほどの事を相談するのだとか。
「ん、俺の顔に何かついてる?」
「……別に、なんでもないわ」
それだけではない。彼の使った『呪文』とやらも、調べてみる必要があるとリコは判断したのだ。
リコはそう答えると、取り出したICカードのようなモノを改札へと通してから、小走りで通り抜けていく。
「三人分っ!」
「ご利用ありがとうございます」
「「──!?」」
遅れて二人が続いた。
その途中、ぺこりと駅員が頭を下げる。お化けのような──いや、お化けそのものか。ここまで来るともはや何でもありだ、と勇とみらいが続いて改札を抜けると。
「わあああ~っ……!」
「おおおおおっ! ハレー・ボッターに出てくるヤツみたいだ!」
間の抜けた感想はともかく、そこは自分たちの知る駅とは何かもが違っていた。
広い面積のプラットホームには四つの電車が並び、そこかしこを忙しそうに、お化けの駅員が飛び回っている。
『──間もなく、本日最終の『魔法界・魔法学校』行きが出発いたします』
「今、魔法学校って言いました~!?」
チャイムと共に流れるアナウンスに促されるがまま、みらいが小走りでリコを追いかける。
「あ、待って待って! 俺も──うん?」
たまさか歩みが止まる。と言うのも、肌身離さず持っていた本が、唐突に淡い燐光を帯びたからだ。
何だろう……? その場で確認したい衝動に駆られるも、「急いで!」とこちらを呼ぶリコの声がそれを打ち切らせたのだった。
今回のステータス
イサム
せいべつ:おとこ
レベル:1
最大HP:23
最大MP:20
ちから:12
みのまもり:10
すばやさ:10
たいりょく:10
かしこさ:10
うんのよさ:255
攻撃力:14
防御力:12
EXP:0
そうび
E:木剣
E:普段着
E:呪文の書
木剣 攻+2
技術の授業でつくった
てづくりのつるぎ
普段着 防+2
かなり厚着をしていためか
夏場は大変なことになる
呪文の書
とくに意味はないが
もっていると安心する
じゅもん
・メラ
・バギ
・パルプンテ
無作為効果呪文(パルプンテ) 消費MP2
効果がランダムで発生し、詠唱者でさえ何が起こるかわからない。
今回登場した効果
・あやしいきり - 霧に包まれた者は魔法・呪文を使えなくなる。
・しかし なにも おこらなかった!
火炎呪文(メラ) 消費MP2
指先に灯した小さな火の玉を敵1体にぶつける、メラ系の基本呪文。
真空呪文(バギ) 消費MP4
敵1グループを真空の刃で切り刻む。調節することで様々な応用が可能。
中■電■呪文(ラ■デ■■) 消費MP■
バッティへと向け勇が使用した、落雷を呼ぶ呪文。
呪文の表記等はダイの大冒険を基準・参考にしています。
次回、オリ主がプリキュアに覚醒するかも……?
イメージしやすいようにオリ主くんのイラストを貼っておきます。
【挿絵表示】
【挿絵表示】
テンプレ・ザ・テンプレって感じでお恥ずかしい。
オリ主との絡みが見たいメンバー(あなたの推し)は?
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朝日奈みらい
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十六夜リコ
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花海ことは