魔法つかいプリキュア! 〜勇者イサム伝説〜【凍結】   作:秋葉ばっこ

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オリキャラ等は極力出さない方針でやっていきます。
ドラクエ要素もいうて名ばかりです……

(恋愛要素は作者が書け)ないです。
まほプリに男をブチ込む時点で大罪だって、それ一番言われてるから。
でもヒロインいた方がいいのかなあ……

どちらの作品を知らなくても、一応内容を理解できるようには書いているつもりです。
みらリコ目線の描写を随所ではしょったりするので、やっぱり先にアニメを視聴することをオススメします。ダイの大冒険要素は薄いからモーマンタイ。
 


- 誕生の章 -
LEVEL01:キュアップ・ラパパ!奇跡(ミラクル)魔法(マジカル)


 

 

 

 

おきのどくですが
  あなたの ぼうけんのしょは  
きえてしまいました。 ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

  あらたに ぼうけんのしょを  
つくりなおしますか? ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

→はい 
  いいえ  

 

 

 

 

 

 

 

 

  あなたの なまえ を  
 にゅうりょくしてください。 ▼ 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ……… ▼      

 

 

 

 

 

 

 

  

よくぞ もどられました
   ゆうしゃ イサムよ。 ▼  

 

 

 

 

 

 

 

さあ いまこそ
  ふたたび たびだつとき! ▼ 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 世の中には『自分ルール』なるものが存在する。

 

 ……言い方や解釈に語弊を招きそうではあるが、例えば、横断歩道。白線の上はセーフで、それ以外のアスファルトを歩いたら息絶えてしまう、とか。

 道を行き交う人々を、決まった行動や台詞しか喋らないNPCみたいだと思ったり。好物のアップルパイを食べたら、HPが20回復するとか。

 とにかく、幼少期の内には誰しもが体験し、大抵は卒業していそうな日課であるが、彼──龍輝(タツキ)(イサム)にとってはほんの些細な日常の一幕に過ぎない。

 

「ふわあ〜あ……HP・MP全回復っと!」

 

 喉の奥まで見えるような大あくびをしてから、勇はベッドから起き上がり部屋のカーテンをがらり、と開けた。

 窓越しに射し込んでくる日光が気持ちいい。今日もいい天気だな、と小鳥たちのさえずりに耳を傾けながら、身支度を整え始める。

 

「せっかくの春休みなんだし、遊ばなきゃ損だよね」

 

 そう言って、勉強机の上に無造作に置いてあった古ぼけた本。肩掛けの竹刀袋を背負うと、玄関を出て戸締りを確認する。

 誰もいない家へと向け「いってきます」と頭を下げると、勇は元気よく駆け出していった。

 

 本日の津成木(つなぎ)町は晴天。

 この春、休み明けに勇は晴れて中学二年生へと進級する。

 と言っても、まだまだ遊びたいざかりの年頃なのだろう。桜道を走るその無邪気な横顔は、童顔も相まってどこかあどけない。

 

「うう~ん、どこに落ちたのかなあ」

「ん?」

 

 ふと、一人の少女とすれ違う。何かを探しているのか、周囲をきょろきょろと見回している。

 それだけなら、ただすれ違って終わっていただろう。彼女の手提げのバスケットからこてん、ぬいぐるみが落ちるまでは。

 

「お〜い、これキミのだろう? 落としたよ」

「えっ、わわっ、モフルン!?」

 

 慌てて少女が駆け寄り、勇から受け取ったぬいぐるみを大事そうに抱き抱えた。

 よほど大切にされているのだろう、モフルンと呼ばれたそれに優しく頬ずりし「ごめんね」と謝っている。

 

「ありがとう! 教えてくれ、て……」

「どうかした?」

「う、後ろ! 後ろっ!」

 

 言われた通りに勇が振り向いてみるが、背後には誰もいない。

 少女から、もう少し上とせがまれ、よくわからないままに視線を上げると。

 

「ダメよ、気をつけなきゃ。今日はたまたま彼が拾ってくれたみたいだけど」

 

 ──当然のように、彼らを宙から見下ろす少女が佇んでいた。

 

 いや、ほうきの上に座っているという事は『飛んでいる』と表すのが正しいのか。

 勇が呆気に取られていると、とんがり帽子を被った少女はじゃあね、などと言ってそのまま去ろうとしてしまう。

 そこへ、

 

「魔法つかいだあ~~~っ!?」

「──!?」

「それ、魔法のほうき!? 本当にほうきで飛ぶんだ……その帽子も素敵だね!」

「な、なに……?」

 

 少女に詰め寄る、もう一人の少女。

 驚いてふよふよと漂う、まるで『魔法つかい』のような容姿の彼女へと、ぬいぐるみを持った少女が質問を繰り返している。

 

「へえ〜、俺以外にもいたんだ……」

 

 一方で、口をぱくぱくとさせていた勇が意味深に呟いた後、遅れて目を輝かせて。

 

「なあなあ、魔法つかいって本当? さっきのも魔法だよね!?」

「あ、あなたまで……」

「あ、昨日の夜見たよ! 落ちてくとこ!」

「……っ!? お、落ちてないし!」

 

 『落ちた』という物言いが気に入らなかったようで、ほうきを持ったまま、仁王立ちで否定する魔法つかいだったが。

 

「わたし、朝比奈みらい。十三歳! 今度、中学二年生! 魔法つかいさん、お友達になってください! ねっ?」

「俺は龍輝勇! 以下同文!」

「へ、え──?」

 

 すかさず挟まれる自己紹介と、差し出される二つの手に、魔法つかいの少女はすっとんきょうな声を洩らした。

 が、すぐに我に返り。

 

「聞いてないし、名前なんて。わたし急いでるから、あなたたちに構ってる暇ないの」

 

 つんけんとした態度で二人の申し出を一蹴し、小さく深呼吸したあと、彼女は「キュアップ・ラパパ」と唱えた。

 魔法を使うための合言葉だろうか? 彼女の周囲にある空気が波紋を揺れ描き、ひとりでにほうきを浮かび上がらせる。

 今にも飛び立ってしまいそうな勢いだ。どうにかして話ができないか、と勇はやきもきする。彼の隣にいる、みらいと名乗った少女も同様だった。

 

「ほうきよ、飛びなさい!」

 

 颯爽と場を去ろうとする魔法つかい。

 

「待って、いかないで~っ!」

 

「っ……!? コ、コラ!」

 

 違和感を感じて振り向いてみれば、勇より先に動いたみらいが、ほうきの穂先にしがみついているではないか。

 「お話だけでも~!」と半ばひきずられているみらいの発言に、流石に臆したのか、魔法つかいが逃れんと必死に抗っている。

 

「えっと、えっと……このページじゃない! どこだったっけな~……」

 

 最中、やり取りを繰り広げている彼女たちとは別に、家を出る際に持ってきた本を、勇がぱらぱらとめくっていた。

 

「ほうきよ飛んで! 張り切って、頑張って……っ! 飛べ~~~っ!!」

「──あった!」

 

 求めていた頁を見つけると、勇の顔つきが変わった。

 彼は、徐々に地上から離れていく彼女たちを見やると。

 

「──無作為効果呪文(パルプンテ)!!」

 

 同じく、魔法を発動させるための言霊を口にした。

 突如として突風が巻き起こる。勇が発動した魔法によるものではなく、二人の少女が、大きく飛翔したために発生したものだ。

 その拍子で尻もちをつき、彼女たちが宙へと舞い上がっていく様子を見上げながら、勇は独りごちる。

 

「いててっ、今日はハズレかあ」

 

 地上から約二十メートルほどだろうか。

 上昇を続ける二人に突然、異変が起こり始めた。

 

「な、なにっ? 急に霧が……!」

「わわっ、何も見えないよ~!?」

 

 発生源を謎とした白い霧が忽然と現れ、みらいたちを取り囲んだのである。

 そして次の瞬間、ぷつりと糸が切れたような感覚が、魔法つかいの少女を襲った。

 宙に浮かんでいた筈のほうきが、急に浮力を失ったのだ。

 

「そんな、魔法が!?」

「え、ええ……!? えええええ~~~っ!?」

 

 そうなれば当然、自然のままに落下するのが道理。

 

「やばいっ……! 使ったことない呪文だけど、こいつで何とかするしか──!」

 

 言うまでもなく、あの霧は自分が唱えた魔法によって起きた現象だろう。

 動転とは裏腹に、頭の回転はここぞと早かった。反省や後悔するよりも先に、なんとかしようと、勇は別の呪文の詠唱を試みようとする。

 

「真空、えっ──!?」

 

 突如、事に乗じたように光が発生する。

 直接太陽のそれを見た時のように、燦然とした輝きが勇の視界を浚う。

 

「……?」

「え……?」

 

 光の中で、自分たちの身に何が起きたのかわからないまま、二人の少女が顔を見合わせていた。彼女たちの落下はピタリと止まり、先程の光景が嘘のように、ぷかぷかと浮かんでいる。

 そして、お互いの首にかかっているペンダントの存在に気がついた。

 

「「同じ──!?」」

 

 二人の声が重なった。

 二つの宝石を模した形のペンダントが、まるで共鳴するかのように輝き始める。

 少女たちが思わず息を呑む。地上にいる勇も、なんとなくであったが、あのペンダントの力なのだと察した。

 

 ──くうう。

 

 直後、可愛らしい腹の虫が鳴った。かと思えば、ペンダントから光が途絶えてしまい、彼女たちは真っ逆さまに地上へと落下を始める。

 ドシン! 魔法つかいの少女が被っていたとんがり帽子が、ゆっくりと宙を舞った。

 

「──」

 

 津成木町のどこか。近くも遠く、勇たちから離れた往来の真ん中で、ひとりの男が歩みを止める。

 黒を基調としたマント、スーツ、ロングブーツ。大きな背丈も相まって、昼間に外を出歩くのにはいささか似つかわしくない格好だ。

 

「感じましたよ。強い力を……」

 

 フフフ、と妖しい笑いを浮かべながら、黒ずくめの男は再び歩き始めた。

 まるで、ナニカを探し求めるかのように──

 

 

 

 

 

 

 

 

 さく、と程よい食感と甘味が口内に広がっていく。

 公園のベンチで幸せをいっぱいに噛み締める勇。同じように舌鼓を打つ魔法つかいの少女へと、みらいが尋ねた。

 

「いちごメロンパン。甘くてさくさくで美味しいでしょ?」

「え、ええ……」

ふぉいひい(おいしい)!」

 

 糖分こそ至高。朝ごはんを抜いてきたから助かった──ではなく。

 頭を左右に振った勇が、もう何度目かわからない謝罪を、みらいたちへのたまう。

 

「ええと、さっきはごめん……俺のせいで、二人を危ない目に遭わせちゃって」

「悪気があってやったわけじゃないんでしょう? もういいわよ……それより!」

「「それより?」」

 

 勇とみらいが揃って小首を傾げ、復唱した。

 魔法つかいの少女は、勇の持っている本を指差しながら、

 

「さっきの、どういう事か説明してもらえる?」

「さっきのって──ああ、魔法だと思うけど」

「今、魔法って言いました!? 凄い、イサムくんも使えるんだねっ!」

「あんな魔法、見たことも聞いたことない! 何もないところから物を生み出すなんて……それこそありえないわ!」

 

 ……両サイドがうるさい。

 

 それぞれ違う意味合いで食いついてくる二人をなだめ、魔法つかいの少女の言い分を聞いてみる事にした。

 彼女の言う一般的な魔法とは、辺りに漂うエネルギーに杖を介してお願いし、初めて使える代物なのだとか。要約するとそんな感じらしい。

 

「そう言われてもなあ。この本、うちの蔵に放置されてるのを見つけたもんだから、俺もよく知らないっていうか……」

「ちょっと貸してみてくれる?」

「あ、わたしも見たい見たいっ!」

 

 ひったくられるような形で、本を魔法つかいの少女へと手渡した。

 いかめしい面持ちで、彼女はぺらぺらとページをめくり始める。それを興味津々に覗き込んでいたみらいであったが、次第に二人の表情が曇っていく。

 何故なら、肝心の本の内容が理解できなかったからだ。

 

「ね、読めないでしょ? たった数ページを解読するのに、五年もかかったんだよ、五年も! それ以外はちんぷんかんぷん!」

 

 そう言って、残ったいちごメロンパンを勇が平らげる。

 彼の発言通り、見たこともない文字や図が、あらゆるページにびっしりと書き込まれていて、とても原理を理解できそうにない。

 納得はしていないが、仕方がないと、魔法つかいの少女が本を閉じた。

 

「それじゃあ、イサムくんは魔法つかいじゃないってこと?」

「そうなるのかな。そもそも、俺が目指してるのは魔法つかいじゃないしね」

「そうなんだ」

 

 みらいにそう答えると、ベンチに立てかけられたほうきを指差し、勇が嬉々として言う。

 

「それって魔法のほうきなんだよね? 俺も飛んでみたいな!」

「わたしも! お願い、魔法つかいさん!」

「え、無理よ。これ一人乗り用だし」

「そういう問題なんだ……」

 

 がっくりと二人が項垂れる。

 それを見かねてか、外していたとんがり帽子を目深く被ると、魔法つかいの少女が、ほうきを持って立ち上がり。

 

「──ひとつだけ。ご馳走になったお礼に、何かひとつだけ魔法を見せてあげる」

 

 ぱああ、と勇とみらいの表情が晴れた。

 たまたま木の上で眠っていた猫を見つけると、少女は懐から星型のステッキを取り出す。

 

「猫とおしゃべりするってのはどう? キュアップ・ラパパ! 猫よ、お話なさい!」

 

 ステッキの先から溢れんばかりの光が生まれ、猫の体を包んでいく。

 

「わんわん! わお~ん!」

「すごい! ……けど、これじゃおしゃべりできないよね?」

「つ、次が本番っ! キュアップ・ラパパ!」

 

 気を取り直して魔法を使ってみるが、結果は猫が文字通りペラペラ喋りだすというものだった。これでは意思疎通は不可能だ。

 魔法つかいの少女が意気消沈する間もなく、勇が肩をぐるぐると回しながら、彼女たちの前へと躍り出た。

 

「よ~し、今度は俺が!」

 

 彼もまた、魔法を使う気でいるらしい。

 二人の少女が、固唾を呑んでその様子を見守る。

 

無作為効果呪文(パルプンテ)!」

 

 詠唱が木々に吸い込まれるようにこだましていく。

 瞬間、どこからかお皿が割れたような音が彼らの耳をつんざいた。

 しばらくの沈黙の後、勇がゆっくりと振り向いて。

 

「う〜ん……今回はハズレっぽい。何も起きなかった」

「「終わり!?」」

「うん。今の魔法は……ああ、紛らわしいから『呪文』って呼ぶね。パルプンテは何が起きるか、俺にもわからないんだ。たま~に巨人が出てきたり、隕石とかが降ってきたりするし」

 

 あはは、とでたらめな話を呑気そうに勇が語った。

 つくづく呪文とやらが規格外だという事を思い知らされる。ペラペラと舌を回らせていた猫は、とうにどこかへと去っていってしまっていた。

 

「あ、そうだ! モフルンとお話できないかな?」

「モフルン?」

 

 みらいが思いついたように、ぬいぐるみの入った籠を差し出す。

 少女は困ったように、それでいて申し訳なさそうに、眉尻をハの字に下げて。

 

「ぬいぐるみは喋らせようがないわね」

「そうなんだ……そっか、残念だなあ……」

 

 気を落としたみらいが呟く。

 

「この子、モフルンはね……わたしが生まれた時に、おばあちゃんがくれたんだって。それからずっと一緒なの。兄妹みたいに」

 

 桜並木を三人で並んで歩いていると、ふとみらいが話し始めた。

 

「もしできるのなら……お話、してみたいんだ」

 

 両手でモフルンを持ち上げて、笑顔でそう語る。勇と少女は、そんな彼女の顔を横目ながら黙って見つめている。

 不意に、みらいの歩みが止まった。

 

「だけどもし、あの時にモフルンを落としたことに気がつかないままだったら、わたし……だから、本当に、本当にありがとうね! イサムくん、魔法つかいさん!」

「「──」」

 

 とびきりの笑顔。少女を魔法つかいと知った時、そして勇の本を貸してもらった時よりも。純粋に満ち、嬉しさに揺れる微笑みを向けられ、少しとはいえ言葉を失ってしまう。

 ……ああ、この子は本当にモフルンを大切に想っているんだな。出会って間もない真柄でも、それだけは間違っていないと言える。

 

「うん、どういたしまして! 朝日奈さん」

「えへへ、みらいでいいよ」

「そう? じゃあ、みらいって呼ばせてもらうね。それと──」

 

 キミは? と尋ねる前に、少女が帽子を深く被って。

 

「──リコ。わたしの名前、リコっていうの」

「うんっ! よろしくね、リコちゃん!」

「よろしくね、リコ!」

 

 リコは少し照れくさそうに頷いてから、

 

「じゃあ、わたしもう行かなきゃ」

「あ、うん……」

「そういえば、探し物をしてるって言ってたね」

 

 名残惜しくも、嬉しそうに離れていくリコの背中を、二人は静かに見送──

 

「じゃあ、どこから探そっか!」

「俺も手伝うよ!」

「まずは……って、はあ!?」

 

 ──らなかった。

 さも当然かのように、勇とみらいはリコを挟むようにして、並木道を練り歩いている。

 

「みんなで探した方が、きっと早く見つかるよ」

「そうだよリコちゃん。それに、何でこれが光ったのか知りたいし」

 

 そう言ってみらいが手にとったのは、首にかかっているピンク色のペンダントだ。

 リコも目を伏せ、同じく自身の首に下げている、淡紫色のペンダントを見やる。みらいが笑顔で覗き込んでくる。

 

「おやおや、こんな所に魔法つかいがいらっしゃるとは」

 

 リコが答えるよりも先に、この場の誰でもない声色が耳朶に張り付いた。

 不思議に思い、三人は声のした方へと振り向く。

 

「ちょっと探し物をしているんですが、伺ってもよろしいかな?」

 

 全身黒ずくめの男が、ゆっくりと近づいてくる。

 勇の中の本能が、言葉では言い表せないナニカを掻き立てていく。

 

「……!」

「……イサムくん?」

 

 妙な胸騒ぎがするも、足がぴったりと張り付いて離れてくれない。目の前の男が放つプレッシャーとでも言うべきか、それに当てられ動けなくなってしまったのだ。

 お世辞にもオシャレとは言えない、骸骨の装飾が先端についた杖を持った手を振り上げ、黒ずくめの男は言葉を紡いでいく。

 

「──リンクルストーン・エメラルドについて」

「……っ!? 知ってるの? リンクルストーンのこと!」

 

 聞き覚えがあるのか、顔つきを変えたリコが尋ね返した。

 対称的に、みらいは依然口を開けたままポカンとしている。

 一体あなたは何者なのか。そう質疑を重ねながら近づくリコに、男は妖しく口元を歪め──そして、直感した。アレに近づいてはいけない!

 

火炎呪文(メラ)──!」

「……ッ!?」

 

 勇の指先から放たれた火球が、男の足元に広がっていく。

 留まらず、動揺するリコとみらいを連れて、勇は一目散に駆け出した。その横顔には、先程まで無邪気にはしゃいでいたものとは違い、明らかな焦燥が芽生えているのが見てとれる。

 

「ちょ、ちょっと……!?」

「ごめん! でも逃げないと、なんか危ない気がする……! よくわかんないけど、アイツと関わっちゃダメだ!」

 

 言っていることが無茶苦茶だ。頭の中では理解していても、二人を掴んだ手と、走り続ける足が許してくれない。

 逃げた先の一帯は工事現場だった。どうにか人気のありそうな場所へと向かおうと、勇はみらいたちを連れて、一目散に走り続ける。

 しかし──

 

「お話の途中なんですが」

「──!?」

 

 先回りされてしまったらしい。

 まるで重力が反転したかのように、逆さまの姿で木の枝の上で──勇たちからすれば下だが──平然と腕を組み、黒ずくめの男は立っているではないか。

 

「魔法にまつわる伝説のひとつ、人智を超えた強大な力の結晶『リンクルストーン』。我らが欲するのはその中心となる輝き……リンクルストーン・エメラルド!」

 

 慄き、立ち尽くしたままの勇たちに語るように、男が続ける。

 

「先ほど感じた強いチカラ──ひょっとしたらと来てみれば、そこには魔法つかいさんがいるじゃあありませんか……何か、ご存知だったりしませんかねえ?」

 

 地面に降り立った男の容姿が変貌していく。

 不自然に大きかった耳は開き、マントが展開され、極めつけは赤一色に染まった双眸。ギラリと口から覗く牙も相まって、間抜けにも『コウモリ男』みたいだ、と勇は思ってしまった。

 

「ねえ、お嬢さんがた?」

「っ……!」

 

 たじろぎ、後ずさる勇とみらいの背を、リコの持っていたほうきの柄が受け止めた。こんな状況に置かれていながらも、彼女は冷静かつ迅速に、逃走の機を窺っていたのである。

 

「二人とも、捕まってなさい……キュアップ・ラパパ! ほうきよ飛びなさい!」

 

 みらいはほうきに跨るリコへとしがみつき、勇は穂先にかろうじて捕まっている状態だ。

 逃げようにも、リコが言ったように、このほうきは一人乗り用。二人はまだしも、三人分の体重を支えるには、あまりに不相応の筈なのだが。

 

「す、すっげ~……! 飛んでる飛んでる!」

「静かにして、集中できないから!」

 

 火事場の馬鹿力とでも言うべきか、三人を乗せたほうきはふらふらと怪しい挙動を描きながらも、コウモリ男から逃れんと大空を泳いでいた。

 リコの邪魔をしないようにと黙っていた勇だったが、沈黙を維持できたのはほんの数秒ほどで。

 

『ヨクバ~ルッ!』

「どわあああ~~~っ!? な、何だこいつっ!?」

「怪物を、生み出す魔法……!?」

「『ヨクバール』です」

 

 と、肯定するようにコウモリ男──バッティが答えた。

 彼らの後を追うべく現れたのは、ダンプカーとカラスを合体させたような風貌の怪物だ。バッティはヨクバールの腹部に、同じように逆さまに立っている。

 

「まあ、退屈な魔法しか知らないあなた方には、こんな真似できませんがね。さあ、リンクルストーン・エメラルドはどこです?」

「……っ! ほうきよ、もっと速く!!」

 

 知りたいのはこっちの方だ、とリコはやきもきする。

 いくらスピードを上げようと、人目につく市街地の空を駆けようとも、ヨクバールはそれ以上の速度でどこまでも追いかけてくる。

 

「リコちゃん、凄い!」

「そ、そう……? 何でいつもより上手く飛べてるのかしら。三人も乗せてるっていうのに……」

「やばい、こっちに来てる──!」

 

 勇の発言もあってか、三人は後方からの襲来を掻い潜る事が出来た。

 しかし、

 

「モフルンッ!」

 

 反動でモフルンが籠から飛び出してしまった。

 

「──!」

 

 リコがどうにか片手で受け止める。

 するとそこへ、狙ったかのようなタイミングで現れたヨクバールが、再び彼らを襲う。

 直撃はせずとも、その振動はひとりの少女を揺れ落とすには十分であった。バランスを崩したリコが、宙へと無造作に放り出されてしまう。

 

「リコちゃんっ!!」

 

 みらいが叫び、必死にリコへと手を伸ばすも、あともう少しの所で至らず。

 このままでは、彼女はそのまま落ちて──最悪の結末が、勇たちの脳裏をよぎった。

 

「う、おおおおお────っ!!!!」

「イサムくん……!?」

 

 次にみらいの視界を掠めていったのは、あろう事か、自ら空中へと身を投げる勇の姿だった。スカイダイビングのように手を広げるのではなく、あえて空気抵抗を減らすような体勢。

 その手には、呪文の記されている例の本がある。彼はリコを追い抜くと、彼女へと目掛けて。

 

真空呪文(バギ)───!!」

 

 突如として発生する突風。

 勇の意思か、それとも拙速な呪文だった故か。少なくともそれは、リコを傷つけることはなく、彼女の体を徐々に舞い上がらせていく。

 そして届いた──ほうきにぶら下がりながらも差し出したみらいの手を、リコの手ががっしりと掴む。

 ……だが、これでは入れ違いになった少年が。自分の安否よりも先に、二人の少女が、勇の姿を捉えようとして視線を落とす。

 

「──あ、ぐ、痛い……けど、助かったあ……!」

「イサムくんっ!」

「良かった、無事だったのね……!」

 

 周囲がビル街だったのが幸いしたのか、近くの建造物の屋上に勇はいた。先と同じように、呪文によって落下の軌道を変え、衝撃を和らげていたのだ。

 みらいとリコがほっと胸をなで下ろすが、事態が好転したわけではない。

 一連の様子を見ていたバッティが、不敵な笑みを浮かべながら、ヨクバールと共に彼女たちへと近づいていく。

 

「フフフ、もはや浮いているのが精一杯のようですね。さて、もう大人しく──」

「待って、この子たちは関係ない!」

「それを決めるのは私です。それとも、まだ抵抗しますか? しかし、両手が塞がっていては魔法も使えませんねえ?」

 

 最も、どうにかできる力があったのなら最初から使っているだろう、とバッティが嗤う。

 

「キュアップ・ラパパ……!」

「うん……?」

「怪物よ……! 怪物よ、あっちへいきなさい!」

「──ハハハハッ! そんなでたらめな魔法がありますか。それで私のヨクバールが吹き飛んでしまうとでも? ハッハッハッハ!」

 

 そんな些事、魔法つかいであるリコ自身がよくわかっていた。

 バッティが哄笑している中、彼女は同じように、何度も何度も詠唱を繰り返す。そればかりでなく、遂にはみらいまでもが加わった。

 

「みらいとリコを離せっ!」

「おや……そう言えば、もう一人いましたね。フフ、あなたはそこで見ていなさい。彼女たちの後でちゃんとお話の続きをさせていただきますから」

「この野郎ォ! 火炎──!」

 

 フェンスから身を乗り出し、メラを喰らわせようとする勇だったが。

 

「うっ、ぐ──、もう魔法力が……!」

 

 がくん、と四肢から力が抜けていき、場に倒れ込んでしまった。

 呪文を使うために必要な魔法力を、リコと自分の身も守る為に使い果たしてしまった。これでは彼女たちを助けることが出来ない。

 

「ふざ、けるな、よ……!!」

 

 そんな事が、許されてたまるものか。

 歯噛み、棒になった間接を力づくで折り曲げ、勇は立ち上がる。

 

「もう嫌なんだ、目の前で誰かが傷つくのは……!! だから、俺は……!!」

「キュアップ・ラパパ! 怪物よ、あっちへいきなさいっ!!」

 

 意地を張り続ける少女たちと、怒りに震える少年。

 プログラムされた台詞を垂れ流すNPCのような。呪詛のように繰り返されるそれらが、いくら面白可笑しいとしても、飽きはいつしか訪れるものだ。

 馬鹿馬鹿しいと吐き捨ててから、バッティはヨクバールへと指示を出した。

 

「ヨクバール、先にあの二人を捕らえなさい」

『ギョイ~』

 

 巨影がみらいとリコへと迫る。

 二人は希望を捨てず、お互いの手を強く握り、再び言葉を紡ぎ始め──交えて、ひとりの少年が願った。

 

「俺は、『勇者』になるんだ────!!!!」

「「キュアップ・ラパパ────!!!!」」

 

 ──瞬間、世界が輝いた。

 初めて出会った時と同じように、お互いのペンダント──リンクルストーン・ダイヤが共鳴しあい、彼女たちを守るべく光の空間が覆うと、勇のいる屋上まで運んでいく。

 

「くっ……! 逃がしませんよ!」

『ヨクバアアアアアルッ!!』

 

 一体──否、二体、何が起こったのか。

 ヨクバールを伴って襲撃をしかけたはずのバッティの体を、ひとつの雷撃が穿つ。

 

「──ッ、今の雷は、もしや……!?」

 

 空中で大きく後退しながら、彼は建物の上でこちらを虚ろな瞳で睨めつけ、掌をかざしている勇の姿に瞠目した。

 

「「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」」

 

 あの少年がやったのか、などと目を見開いたのは一瞬で、新たな驚きが波のようにバッティの意識をかっさらった。

 

「二人の奇跡、キュアミラクル!」

「二人の魔法、キュアマジカル!」

「「魔法つかいプリキュア!」」

 

 瞬く間に現れたのは、二人の大人びた雰囲気の魔法つかい。みらいとリコがプリキュアへと変身した姿である。

 感傷に浸る間もなく、猛進を続けていたヨクバールが肉薄するも、彼女たちは信じられない脚力で跳躍し、攻撃を避けてみせた。

 

「あれ、俺は何を──って、ええっ!? みらいとリコが大きくなってる~!?」

「プリキュア……プリキュア!?」

 

 口々にそう洩らすのは、状況を飲み込めていない勇とバッティだ。

 驚いているのは空中のみらい──ミラクルとマジカルも同様で、自身に起きた変化に東西を失っている。

 

「キュアミラクル?」

「キュア、マジカル……」

 

 ながらも、背後からの奇襲を受け流し、阿吽の呼吸でヨクバールをはたき落とす。

 

「伝説の魔法つかいプリキュア……!! さっきまでほうきで飛ぶのが精一杯だった、ひよっこ共が……!?」

「す、すげ~……! 二人とも俺より背が高い! ずるい!」

「……」

 

 もっと他に触れる点があるだろうに。

 勇と同列に舌を巻いているのが酷く惨めになり、バッティは押し黙った。

 

『ヨクバールッ!』

 

 翼を握りこぶしへと変え、ヨクバールが襲いかかる。

 それを俊敏な動きで攻撃を躱し、翻弄するミラクル。生じた隙を見逃さず、上空から体重を乗せた蹴擊を下すマジカル。

 彼女たちは地上だけに留まらず、巧みに操ったほうきを足場にしながら、着実にダメージを与えていた。

 

「「怪物よ、あっちへいきなさあああああいっ!!」」

『ヨ、ヨクバアアアルッ……!』

 

 息のあった拳。

 ピシリ、とクチバシに亀裂を走らせ、ヨクバールが落下していく。

 

「ここは退いて、ドクロクシー様に報告を……!」

 

 渦を巻く白煙から、勢いよくバッティを乗せたヨクバールが出てきた。

 反撃に転じるのかと思いきや、既に戦う気はないようだ。

 「オボエテーロ!」と唱えられた奇妙な魔法により、彼らはたちまち姿を消してしまう。

 

「プリ、キュア……?」

「わたしたち、伝説の魔法つかいに……?」

「すっごく格好よかったよ! いいなあ、俺もあんなふうに変身できたらなあ……」

 

 いつの間にか二人の姿も元に戻っていたらしい。みらいとリコの元へ、笑顔を浮かべた勇がやってくる。

 彼の腕の中には、プリキュアになってから、おざなりにしてしまっていたモフルン。ついでにリコの帽子があった。

 

「イサムくん! それにモフルンまで! 良かったあ、無事で!」

 

 手渡されたモフルンを、みらいは力いっぱい抱きしめる。

 勇とリコが、その光景を微笑ましく見守っていると。

 

「モフ~……苦しいモフ」

「ちょっと、強く抱きしめすぎよ」

「わわっ、ごめんねモフルン。つい──」

 

 ピタリ、と三人の時間が止まった。

 スタートボタンを押され、まるでポーズ状態に陥ったかのように固まり、しばしの沈黙が流れ。

 

「「「喋ったあああああ~~~!!?」」」

「モフ?」

 

 町中に響き渡った絶叫のうち、三分の二が喜びの感情に満ちていたとか、いないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうリコちゃん! お話できるようになって、すっごく嬉しいよ!」

「モフルンも嬉しいモフ!」

「もう、何がなんだか……とにかく一緒に来て!」

 

 リコに連れられ三人が真っ直ぐ向かったのは、津成木駅だった。

 彼女が言うには、学校に戻りしかるべき人物に、先ほどの事を相談するのだとか。

 

「ん、俺の顔に何かついてる?」

「……別に、なんでもないわ」

 

 それだけではない。彼の使った『呪文』とやらも、調べてみる必要があるとリコは判断したのだ。

 リコはそう答えると、取り出したICカードのようなモノを改札へと通してから、小走りで通り抜けていく。

 

「三人分っ!」

「ご利用ありがとうございます」

「「──!?」」

 

 遅れて二人が続いた。

 その途中、ぺこりと駅員が頭を下げる。お化けのような──いや、お化けそのものか。ここまで来るともはや何でもありだ、と勇とみらいが続いて改札を抜けると。

 

「わあああ~っ……!」

「おおおおおっ! ハレー・ボッターに出てくるヤツみたいだ!」

 

 間の抜けた感想はともかく、そこは自分たちの知る駅とは何かもが違っていた。

 広い面積のプラットホームには四つの電車が並び、そこかしこを忙しそうに、お化けの駅員が飛び回っている。

 

『──間もなく、本日最終の『魔法界・魔法学校』行きが出発いたします』

「今、魔法学校って言いました~!?」

 

 チャイムと共に流れるアナウンスに促されるがまま、みらいが小走りでリコを追いかける。

 

「あ、待って待って! 俺も──うん?」

 

 たまさか歩みが止まる。と言うのも、肌身離さず持っていた本が、唐突に淡い燐光を帯びたからだ。

 何だろう……? その場で確認したい衝動に駆られるも、「急いで!」とこちらを呼ぶリコの声がそれを打ち切らせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のステータス

 

イサム

 

せいべつ:おとこ

レベル:1

 

最大HP:23

最大MP:20

 

ちから:12

みのまもり:10

すばやさ:10

たいりょく:10

かしこさ:10

うんのよさ:255

攻撃力:14

防御力:12

EXP:0

 

そうび

E:木剣

E:普段着

E:呪文の書

 

木剣 攻+2

技術の授業でつくった

てづくりのつるぎ

 

普段着 防+2

かなり厚着をしていためか

夏場は大変なことになる

 

呪文の書

とくに意味はないが

もっていると安心する

 

じゅもん

・メラ

・バギ

・パルプンテ




無作為効果呪文(パルプンテ) 消費MP2
効果がランダムで発生し、詠唱者でさえ何が起こるかわからない。

今回登場した効果
・あやしいきり - 霧に包まれた者は魔法・呪文を使えなくなる。
・しかし なにも おこらなかった!

火炎呪文(メラ) 消費MP2
指先に灯した小さな火の玉を敵1体にぶつける、メラ系の基本呪文。

真空呪文(バギ) 消費MP4
敵1グループを真空の刃で切り刻む。調節することで様々な応用が可能。

中■電■呪文(ラ■デ■■) 消費MP■
バッティへと向け勇が使用した、落雷を呼ぶ呪文。


呪文の表記等はダイの大冒険を基準・参考にしています。
次回、オリ主がプリキュアに覚醒するかも……?

イメージしやすいようにオリ主くんのイラストを貼っておきます。


【挿絵表示】


【挿絵表示】


テンプレ・ザ・テンプレって感じでお恥ずかしい。

オリ主との絡みが見たいメンバー(あなたの推し)は?

  • 朝日奈みらい
  • 十六夜リコ
  • 花海ことは
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