魔法つかいプリキュア! 〜勇者イサム伝説〜【凍結】   作:秋葉ばっこ

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めっちゃ時間かかった。
不定期更新タグがついているのでセーフ。
前編と後編に分ければよかった……

わざわざオリ主を擬似キュアにするのにも、意味があります。多分。
 


LEVEL02:イサム爆発!勇気の変身・キュアブレイブ!

「空を飛んでるみたいだね~!」

「すごいモフ~!」

「みらい、モフルン、見てみて! あっちに流れ星!」

「ええっ、どこどこ~っ!?」

 

 カタツムリニアに揺られ、窓に張り付いて外の景色を眺めているみらいとモフルン。勇もまた、対面座席で同じように幻想に魅了されている。

 宇宙空間にも似たこの空間は、リコの故郷である『魔法界』と勇やみらいたちが暮らす世界──『ナシマホウ界』を繋ぐ境界のような場所らしい。

 

「……」

 

 その左隣に座っているリコはというと、モフルンとイサムを交互に見定めていた。どこか訝しげに、それでいて呆れたような表情で。

 視線に気づいたのか、一通り景色を堪能したみらいが振り向いて尋ねる。

 

「リコちゃん、どうかしたの?」

「ぬいぐるみが話せるようになるなんて、そんな魔法聞いたことないわ。ねえ、どうして話せるの!?」

「あ、そういえば……なんで?」

「モフルンはず~~~っと、みらいとお話したかったモフ~!」

 

 そう言って、みらいへと飛びつくモフルン。わたしもだよ~、とみらいも同じように笑顔になり頬ずりをする。

 まるで答えになっていない。話に身構えていたのが途端に馬鹿らしくなり、肩の力を抜いたリコが背もたれへと寄りかかる。

 

「そういえばさ」

「?」

 

 無邪気にはしゃいでいるだけのように見えて、周囲のことも気にかけているらしい。

 よいしょ、と椅子に座り直しながら勇が思い出したように沈黙を破って。

 

「リコやみらいが変身してたプリ……なんだっけ。アレってなんなの?」

「プリキュアね。魔法界では、ずっと昔から伝説として語りつがれている存在なの。とにかくすごい魔法つかいなんだって」

「じゃあさじゃあさ、二人は伝説の魔法つかいになったってこと?」

「……そうだわ!」

 

 途端に立ち上がり、勇やみらいたちに背中を向けて背もたれの上へともたれかかるリコ。

 

「そうよ! そうじゃない! 伝説の魔法つかいになったのよ、わたし……! エメラルドは見つからなかったけど、先生たちは認めてくれるはず!!」

 

 ガッツポーズ。身振り手振りで喜びを表現するのはいいのだが、危険な笑みを浮かべたその姿は、とても年頃の女の子がしていいものではない。

 なにがなんだか。プリキュアになれたのがそんなに嬉しいのだろうか……? 勇たちが首をひねっていると、

 

「カタカタ?」

 

 車内販売だろう。食べものや飲料、そして蝶ネクタイをつけたカエルを殻の上に背負った、大きなカタツムリがこちらへとやってきた。

 

「これ、いただくわ」

「ゲーコ」

 

 それに気づいたリコが、駅の改札を通る時に使用していたICカード──MAHOCA(マホカ)を取り出し、慣れた手つきで決済をすませていく。

 

「車内販売のエスカーゴよ。はい」

「ありがとう!」

「いいの? リコちゃん」

「まあ、ご祝儀ってやつね」

 

 フフン、と得意げにしているリコに礼を述べてから、勇とみらいは受け取った半透明のビニールがかった包みを開く。

 中にはカチンコチンに凍りついたみかん……いわゆる冷凍みかんが入っていた。

 どうやって食べるのだろう? 気長に溶けるの待つしかないか、とじいっとそれを見つめていると、魔法の杖を取り出したリコが。

 

「まあ見てなさい……キュアップ・ラパパ。氷よ、溶けなさい」

 

 杖の先から現れた光が、みらいの膝の上にある氷塊を包み、みるみるそれらを溶かしていく。

 あっという間に見慣れた姿となったみかんに、思わずみらいが「わあ!」と感激の声を上げた。

 

「氷の火山に住むアイスドラゴンのため息で凍らせた、冷凍みかんよ」

「氷の火山にドラゴン! さすが魔法の世界!」

「くうう、本当にゲームみたいだ……! いつか俺も見てみたいなあ!」

 

 目を輝かせてから、勇は同じくリコに溶かしてもらったみかんに皮ごと食いつく。

 ジャリジャリ! 果実にはそぐわない、実に見事でワイルドな噛みごたえだ。これにはシャーベットも顔負けである。

 

「ん~っ、冷たくておいしい~! でも、ちょっと固めだね……」

「モフ」

 

 みらいやモフルンが食べているものも同様らしい。

 気になったリコも彼女から一切れ分けてもらったのだが、結果は言うまでもないだろう。

 

「こ、これぐらいの硬さがちょうどいいんだから」

「アイスクリーム頭痛キタ~!」

「ほ、ほら。彼もそう言っているでしょ」

 

 もっとも、勇は気にせず舌鼓を鳴らしていたのだが。砂利道を踏み荒らすような音を豪快に立てながら。

 ご満悦な表情を浮かべている辺り、きっと甘いものが好きなのだろう。いちごメロンパンを食べている時もそうだった。

 彼が将来、入れ歯にならないことを祈るばかりである。

 

「「あ」」

 

 それはさておき、窓から射し込んできた光に釣られ、みらいとモフルンが小さく漏らした。

 先程までの宇宙のような空間とは打って変わり、窓の外にはぼんやりと白い景色が広がっている。間もなく雲のトンネルを抜けると、そこには──

 

「「わああああ……!!」」

「モフ~!」

 

 見渡す限りの海。地平線を遮るようにして、あちらこちらに点在している島々や樹木たちが見える。

 まるで絵本の中にでも来てしまったみたいだ。窓から乗り出した身に心地のよい爽やかな風を受けながら、勇たちは感に堪えないでいた。

 

「ここがわたしたち魔法つかいの世界、魔法界よ。そして──」

 

 カタツムリニアが進んでいく光のレールの先。

 自分たちの目的地であろう、虹の橋がかかった一際大きな大樹へとリコが指をさして。

 

「あの上に、わたしたちの『魔法学校』があるの」

「魔法学校……! ワクワクもんだあ~!!」

「ジャリジャリ!! ジャリ、ジャリジャリ!!」

「食べながら話さないの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 鉄道の駅を降りてからしばらく歩くと、すぐに魔法学校であろう建物の正門が見えてきた。

 その大きさもさることながら、さもあたり前かのように別校舎が宙に浮いているのだから驚きだ。立地もかなり高い場所に建っているようで、地面のすれすれを雲が漂っている。

 

「魔法学校は魔法界の中心なの」

「「へえ~……」」

「いい? 校長先生にプリキュアになったことを説明するから、あなたたちも強力してね」

 

 リコは可愛らしい三角帽子をかぶり直しながら、頷く二人を横目に再び杖を持って。

 

「キュアップ・ラパパ! 門よ、開きなさい」

『ニャア~ン』

 

 どうやらこの門は、魔法に反応して開く仕組みになっているようだ。ほうきで飛んでいけば、塀を越えて上から入ることもできそうだが。

 正門の上に位置する校章に描かれた黒猫の尻尾がゆらり、と揺れると太い音を奏でながら、扉がひとりでに開き始める。

 

「おお~……! 魔法の杖ってすごいね! いいな~、わたしも欲し~い!」

 

 一部始終を見届けたみらいはよほど羨ましいようで、詰め寄る勢いでリコの持つそれへと覗き込む。

 

「う、無理だと思うわ。杖は生まれてからすぐに授かるものだから」

「そっかあ、残念だなあ……」

 

 傍らで、勇は気になることでもあったのか、自身の持つ『呪文の書(命名:勇)』を忙しなくめくっている。

 リコの魔法に触発されたわけではない。バッティとの戦いの後──カタツムリニアに乗り込む直前、本が鈍く光っていたのを思い出したためだ。

 

「う~ん……」

 

 この本を持ち出すようになってからの五年、先の事例は初めてのことであった。勇本人は覚えていないが、無意識に呪文を用いて、落雷を落としたことさえも。

 みらいやリコたちとの出会い。喋れるようになったモフルン、彼女たちがプリキュアに変身したことで、呪文の書にも何かしらの変化が起きたと考えるのが妥当なのだが……

 

「あれ? このページ、なんだか──」

「リコさん!!」

『!?』

 

 不意の大声に、思わず呪文の書を落としそうになる。

 怯えた表情で自分を呼んだ声へと振り向くリコ。勇たちも視線を追うと、そこにはいかにも魔法つかいらしい風貌の、見知らぬ老女が立っていて。

 

「きょ、教頭先生っ……!」

 

 教頭先生と呼ばれた彼女は、こちらへと近づいてくると同時に、ギラリとした眼光で勇とみらいを一瞥する。

 

「「こんにちは!」」

 

 当人たちは元気よく挨拶をしているものの、なにやらただならぬ雰囲気が漂っているではないか。

 リコは、そこはかとなくその理由を察している。

 よりによって一番やっかいな人物に見つかってしまうだなんて。彼女は息を呑み、観念したかのように肩をすぼめた。

 

「リコさん、あなた……どういうことですっ!!?」

 

 ほどなくして、教頭の叱咤が魔法学校中に響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は少し流れ、普段リコが授業を受けているのだろう教室で、教頭による長たらしい説教が続いていた。

 

「魔法界を許可なく出ただけでなく、あちらの人間を連れてくるとは……!」

 

 あちら、というのは言うまでもなくナシマホウ界であり、魔法界を出自としていない勇とみらいのこと。

 ナシマホウ界の人間に魔法の存在をバレてはいけない。ましてや──そのようなルールがあるとは、怒られている最中に何度も聞いた話だ。こちらの世界で過ごしてきたリコには、なおさら耳が痛いはず。

 

「わ、わたしたちプリキュアになったんです!」

「……プリキュア? 伝説の魔法使いに、あなたたちが?」

 

 それでも彼らを魔法界に連れてきたのは、考えあってのこと。リコは話せばわかってもらえると信じて、必死に訴える。

 しばし生まれる沈黙に、期待の二文字が浮かび上がるものの、

 

「するならもっとマシな言い訳をなさい」

 

 呆れたような教頭の物言いに、見事にそれは打ち砕かれてしまう。

 

「「本当なんです!」」

「俺も近くで見てました! こう、ほうきを使ってばびゅーん、ずがーん! って! ね!?」

 

 負けじと二人も参戦するのだが、擬音語だらけの壊滅的な説明に、とうとう教頭がしびれを切らして。

 

「とにかく、あなたたちをどうするべきか。そしてリコさん、あなたへの処罰……」

「──っ!!」

「校長先生に伺ってきます」

 

 顔から血の気が引いていくのがわかる。肩を震わせながら、リコは立ち去っていく教頭へと尋ねた。

 

「あの、処罰って……!」

「『校則第八条:許可なく魔法界を出てはならない』、『第十二条:魔法寮生の無断外泊禁止』。二つの校則違反の上、その子たちを魔法界へと連れてきたのですから、覚悟しておくことですね。大人しくここで待っていなさい」

 

 さもなくば退学もありえる、と。無慈悲にもそう言い残して、扉が閉じられてしまう。

 取り残された一同。その様子を無言のまま眺めているリコに対して、みらいが、

 

「ごめん……なんか、わたしたちが来ちゃったから」

「別にあなたたちのせいじゃないから……」

 

 そう言って振り返るものの、彼女の表情は明らかに曇っている。

 

「補修どころじゃなくなったわね……」

「ほしゅう?」

 

 繰り返す勇。コクリと頷いてから、リコは乾いた笑いを浮かべて。

 

「──わたし、本当は苦手なの。魔法」

「へ?」

「春休みの間、魔法授業の補修を受けないといけなくて。強い魔法の力を持つっていう、リンクルストーン・エメラルドを見つければ……先生たちも認めてくれる。補修をうけなくてもすむと思ったんだけれど……」

 

 だから、バッティもエメラルドについて嗅ぎまわっていたのか。合点がいくのと同時に、リンクルストーンにはそれほどまでの力が秘められているのだと理解する。

 結局、エメラルドは見つからず終い。自分とみらいがプリキュアになった話をすれば、きっとわかってくれると踏んだのはいいが……考えが甘かった、と自嘲気味に笑う。

 

「リコ……」

「リコちゃん……」

 

 どう声をかければいいものか。ありきたりななぐさめなんて、と二人が考えあぐねている時だった。

 

「モフ」

 

 突然、みらいの手から離れたモフルンが、リコの座る座席の机上へと器用に転がり。

 

「甘いにおいモフ~」

「え? ……きゃっ!?」

「わっ!?」

 

 それからすぐのことであった。リコとみらいが首にかけているペンダントが、同時に光を発したのは。

 

「キラキラに輝く力を感じるモフ。ダイヤ、光のリンクルストーンモフ!」

「二人が持ってるのもリンクルストーンってことは……リコの探してたエメラルドの仲間ってこと?」

「モフ。リンクルストーンから伝わってきたモフ!」

 

 手中にあるリンクルストーン・ダイヤの片割れをゆっくりと見下ろす。

 そのみらいの眼差しは、どこか決心めいたような、力強いものであった。

 

「わたし、校長先生に話してくる!」

「えっ!?」

「ここで待ってて! リコちゃんがこの部屋から出たら退学になっちゃう!」

 

 そう言って走り出すみらいへと、モフルンが飛びつく。

 

「あ、ちょっと!」

「大丈夫」

 

 焦って立ち上がろうとするリコを静止させたのは、そんな根拠もない陳腐な言葉であった。

 

「俺たちに任せてよ! 絶対、リコを退学になんてさせないから!」

 

 気のせいだろうか。優しく笑いかけてから去っていく少年の後ろ姿が、何故かとても大きく見えるのは。根も葉はなくとも信じられる、心の底からそう思えたのは。

 

『う、おおおおおおおお────!!!!』

 

 ふと、ヨクバールから逃げていた際の出来事がフラッシュバックした。

 モフルンと一緒にほうきから投げ出されたリコを、彼は必死に助けてくれたのだ。出会ったばかりの彼女を、自分も落ちてしまうかもしれないというのに。

 

 ──色眼鏡で見ずともわかる。

 彼が、みらいとは比べものにならないほど、群を抜いたお人好しなのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 物語の舞台は移り、長身の男───バッティがマントを翻し、彼らの居城と呼ぶべき場所へ続く道を練り歩く。

 焦燥を驚きの入り混じった、それらの感情に蓋をしている彼の表情は、勇たちと相対していた時以上に冷ややかなものに感じられる。

 

「おや、バッティさん」

「……?」

 

 そんな彼の名を呼ぶ、ひとつのシルエットが霧の中から浮かび上がる。

 

「リンクルストーン・エメラルドは見つかったんですか?」

「ヤモー」

「ま・さ・か、手ぶらじゃありませんよねえ?」

 

 霧が晴れ姿を現したのは、『ヤモー』と呼ばれた、名前の通りヤモリに近しい容姿をした小柄な男だ。

 わざとやっているのではないか、と思うほど癪に障る悪態のつきぶりに、慣れているのか眉一つ動かさずバッティは口を開く。

 

「プリキュア」

「はい?」

「プリキュアが現れましてね。ドクロクシー様へ報告に」

 

 事実を淡々と告げたものの、

 

「ヌッハッハッハ!! プリキュア、ハッ……! あれはただの伝説でしょう?」

「だが、確かに私はこの目で……ッ!!」

 

 ヤモーから返ってきたのは笑いながらも心底バッティを見下げ果てた態度。

 その証拠に、彼はやれやれとお手上げだと言わんばかりに肩をすくめ、

 

「──ならば、証拠をお持ちください」

「ッ……!」

「当然です。我らが偉大なる魔法つかい『ドクロクシー』様に示しがつかないでしょう?」

 

 ヤモーの態度は気に入らないが、彼の言っていることも一理ある。証拠さえあればいいのだから、簡単な話だ。

 息を呑みバッティは思考する。恐らく一人は魔法学校の生徒。であれば、どう動くべきかは瞭然である。

 

「……すぐに捕らえてまいりましょう! イードウ!」

 

 ──魔法学校へと赴き、直接手を下すまでだ。

 闇の魔法を唱え瞬時に姿を消したバッティを見送ったあと、ヤモーは口元を妖しく歪め、

 

「プリキュア……!」

 

 小さくも怨嗟の篭もった声色で、静かにそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び舞台は戻り、魔法学校の中庭で、勇たちはあてもなく歩みを進め続ける。

 校長室への場所を尋ねようにも、春休み期間だからか他の生徒たちの姿は見当たらない。あらかじめリコに聞いておくべきだった、と悔やんでいる時。

 

「「──」」

「モフ?」

 

 さああ、と心地よい風が二人の頬を撫でた。それが不思議と自分たちを呼んでいるような、案内されているような、そんな気がして。

 そうやって辿りついたのは、部屋中の壁を根っこが伝わり広がっている、自然に満ちた空間。

 

「わあ……」

「なんの部屋だろうね、ここ。校長先生の部屋って感じじゃないけど」

 

 部屋の中心にそそり立つ、大きな木に惹かれるままにそっと触れ、二人は天を仰ぐ。

 眩しくも暖かく、それでいてとても優しい木漏れ日のカーテン。あまりの心地さに、目を瞑ってしまえばすぐにでも夢の中へと沈んでしまいそうだ。

 

「立派だろう?」

 

 つい耽てしまっていたようだ。またもや知らない声色に引き戻され、遅れて部屋へとやってきた人物へと二人は目を向ける。

 抱いた印象は、凛々しい顔立ちの美青年といったところか。腰より長く毛並みの整った銀髪も相まって、一瞬女性なのかと錯覚してしまうほど。

 

(このヒト、どこかで……)

 

 勇に限り、それらに加えてこみあげてくるものがあった。その正体がなんなのかはわからないが、とにかく言葉にできないような、複雑な想い。

 ……けれど、不思議と嫌な感じはしない。釈然としないままであったが、彼は青年の語りへと耳を傾ける。

 

「そいつは『杖の木』。魔法の杖を実らせる」

「へっ? 今、魔法の杖って言いました!? 魔法の杖って、木に実るんだ……」

「左様。杖の木は魔法界の各地に存在し、我々を見守ってくれている。魔法界に新たな生命(いのち)が生まれると、それを待っていたかのように杖が実り──そして、その子に授けられる」

 

 しかし、と青年は目を伏せてから。

 

「ここにある木は、もう数百年も杖を実らせてはおらん。永きに渡る役目を終えたのかもしれんな」

「「……」」

「君たちはあちらの世界の子だね。ここで何を?」

 

 勇は依然、息を詰めたまま青年に空目を使っている。

 言われて思い出したようで、はっとしたみらいが、

 

「この学校の校長先生を探してるんです!」

「ほう、校長を。また何故?」

「今、とっても困ってる子がいて……力になりたいんです。わたしの大切なモフルンを守ってくれた……」

 

 言いながら、みらいは腕の中のモフルンをより一層強く抱きしめる。

 

「どうしても、その子の力になりたいんです!」

「「!?」」

 

 彼女の願いが通じたのか、はたまた偶然か。杖の木と呼ばれているそれが、途端に虹色の光に包まれ始めたのだ。

 眩しい──が、目を開けられなくなるほどではない。それどころか、ずっと見ていたくなるような、瞼に焼きついて離れない優しい輝き。

 

「これは……!」

 

 瞠目し、立ち尽くしていると次第に光が止んでいき。

 そこには、先ほどまでと何一つ変わらない光景が広がっていた。

 

「モフ?」

「わわっ、モフルン?」

 

 てんてん、とボールのように二、三度地面を跳ねてから、モフルンが匂いを嗅ぐ仕草をして。

 何かを見つけたらしい。モフルンは「とっても甘いにおいがするモフ~」と言って、樹冠の辺りを見上げている。

 

「なんと……!」

 

 最初に驚いたのは青年だ。

 三人が追ったモフルンの視線の先、副梢の先端から芽吹いたモノは、リコが持っていた魔法の杖と非常に酷似していて。

 

「杖が、実った……!?」

 

 予想に反さず、アレは魔法の杖に違いないらしいが。何百年も杖を実らせなかったはずの木が、どうして今になって……?

 疑問が募るより早く、生まれたばかりの杖はゆっくりとみらいの元へと降下していき。彼女が両手のひらを差し出すと、その上にそっと吸い込まれた。

 

「魔法の杖?」

「恐らく君を選んだんだろう」

「わたしを……? ありがとうございましたっ!」

「モフ!」

 

 みらいを見倣って、ぺこりとモフルンも杖の木へと頭を下げる。

 よくわからないが、彼女たちが嬉しそうならいいか。一連の様子をすっかり静観していた勇も、自分のことのように喜んで。

 

「よかったね、みらい!」

「うんっ!」

「この世界が、この子を──この子たちを、迎え入れようというのか……?」

 

 そんな青年の問いかけともとれる呟きは、誰かが聞いているわけでもなく、誰かが答えるわけもなく、静寂へと溶けていく。

 直後、魔法学校全体を揺るがすほどの地響きが、巨大な振動をともなって唸りを上げた。

 ズン、と直接体内に伝わってくる轟音。嫌な汗が頬をつたうのを感じながら、勇は産毛を逆立たせる。

 

「この感じ……さっきのコウモリ男だ!」

「えっ!?」

 

 突然に駆け出した彼に続く形で、みらいたちは高台へと登り。そこから見渡せる眺めに、彼女たちは驚きを隠せなかった。

 感動の意ではない。紫がかったもやが、校舎や辺り一帯を包み隠している。

 

「我がヨクバールよ。プリキュアをいぶりだして捕らえるのです!」

『ギョイ~ッ!!』

 

 それを広げているのは、ナシマホウ界で撃退した『ヨクバール』と呼ばれていた怪物。

 その近くで、騒動の原因であろうバッティが、忙しく宙を翔けるヨクバールへと指示を仰ぎながら、ぽつんと浮かんでいた。

 

「校舎が!」

 

 勇とみらいの脳裏に浮かぶのは、教室に待たせているリコの存在。

 二人は顔を見合わせてから頷くと、一斉に走り出す。

 

「待ちなさ──ッ!?」

 

 青年は手を伸ばし、彼らを呼び止めようと静止の言葉を投げかけるが、視界に入ったあるモノがそれを打ち切らせた。

 

「あの本は……!?」

 

 既に二人の姿は点となり、かろうじて霧の向こうに影が確認できるだけ。

 そうであっても見間違えるはずがない。

 少年が小脇に抱えていた、あの古ぼけた本は──

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけましたよ。さあお嬢さん、このバッティめと一緒に来ていただきましょうか」

「やだ! 学校をめちゃくちゃにするヒトの言うことなんて!」

「そうだそうだ! お前の言うことなんて聞くもんか! みのもんた!」

 

 またお前か、と。唇を尖らせ野次を飛ばしてくる勇を、ギロリとバッティの双眸が睨めつける。

 同じく彼もまた険しい顔つきになると、みらいを庇うように右手を広げた。

 

「……フン。ならば、力づくで連れ帰らせてもらいますッ!!」

「やれるものならやってみろっ! 火炎()──!!」

 

 凄まじい形相を浮かべ、こちらへと目掛けて飛び立とうとするバッティ。

 牽制の火球をぶつけるべく、勇が手を振りかぶろうとした瞬間。

 

「きゃあああああ~~~~~……っ!!!!」

 

 甲高い金切り声が、その場にいる全員の耳をつんざいた──だけでなく、

 

「だあッ!?」

「きゃあっ!!」

「え、何で俺の方に落ちてどわあああっ!?」

 

 猛スピードで飛び込んできた赤い流星は、バッティを吹き飛ばし、真下で呪文を構える勇に墜落する形で、その激流を終わらせるに至ったのだった。

 

「リコちゃんっ!?」

「お、落ちてないから! 狙って体当たりしたんだし!」

 

 言うまでもなく、赤い流星というのはリコのことだ。慌てて二人の元へと駆け寄るみらいに、開口一番がそれはどうかとは思うが。

 ……ともかく無事でよかった。違う意味で尻に敷かれている勇も、目を回しながら安堵する。ピヨピヨ。

 

「あっ、ごめんなさい……! じゃなくて、二人して何考えてるのよ! 危ないでしょ!?」

「だって、リコが危ないと思って……そういうリコは?」

「う、わたしはただ、あなたたちが道に迷っているんじゃないかと思って。それで……」

「心配になって来てくれたんだ。ありがとう、リコちゃん!」

「~~~っ!!」

 

 二人してこれなのだから、まったくもって心臓に悪い。

 リコは顔を真っ赤にして「世話が焼けるんだから!」と、満更でもなさそうにみらいの手を取った。

 すると、彼女たちが首から下げているリンクルストーン・ダイヤが、またもや燦然と輝き始める。

 

「もうひとりのお嬢さん……! 探す手間が省けましたよッ!!」

『ヨクバ~ルッ!』

 

 光に釣られ、闇に蠢く者たちも血相を変えた。

 体制を立て直し飛び上がったバッティが、待機していたヨクバールを彼女たちへとけしかける。

 

「来たわ!」

「ダイヤの力を信じるモフ!」

「リコちゃん!」

 

 一層濃くなっていく輝きに照らされながら、これからの展開に思いを馳せ、期待に胸を膨らませる。

 同時に、変身ができない自分はやれることをやるだけだ、と勇は自身の頬を叩いて発破をかけた。邪魔になるようなことはしたくない。

 

「「キュアップ・ラパパ! ダイヤ!」」

「「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」」

「二人の奇跡、キュアミラクル!」

「二人の魔法、キュアマジカル!」

「「魔法つかいプリキュア!」」

 

 変身を終えた彼女たちは、数ある建物の中でも、一番高い空に位置する校舎の屋根の上に降り立つ。

 二人が数年もして成長すればあんな感じになるんだろうな。などと考えながら、勇は肩掛けの竹刀入れから手製の木剣を取り出し、

 

「お前の相手は俺だっ!」

「またあなたですか……!」

 

 ヨクバールと戦いを繰り広げるミラクルたちを横目に、バッティへと振りかぶった。

 なんてことはない、ただ棒切れを振り回しているだけの素人同然の動きだ。回避するのは容易い。

 しかし、相手がただの人間であろうと、バッティが警戒を怠るような真似はしない。危惧すべきは、勇が使用する『呪文』の存在。

 

「コラ~ッ! 飛んで逃げるなんて卑怯だぞ!」

「これ以上動き回られても厄介というもの。念のためにカラスの羽を持っておいて正解でした」

「!? と、止めないと……!」

 

 ……でもどうやって? 空を飛ぶ手立てがないというのに、どうしろと? 雑念と焦燥に邪魔をされ、良案が浮かばない。

 そうこうしているうちに、そこいらの地面に転がっていた石ころを見つけたバッティが、ニヤリと口元を歪めた。

 

「負担が激しいので、この手は使いたくはありませんでしたが……! 魔法入りました! いでよ、ヨクバールッ!!」

『ヨクバアアアアアルッ!!』

 

 ミラクルたちが戦っているヨクバールが、ダンプカーとカラスの羽を。眼前で誕生したそれは、石ころと同じく羽を。

 ──そんなちゃちなものか! アレを石ころと呼んでも、岩と呼んでも、お釣りが大量に有り余る。それぐらい巨大な怪物が、勇を悠々と空から見下ろしていた。

 

「あんなのが暴れたら──!!」

 

 冗談じゃない。まだ校長を見つけてすらいないのに、学校そのものを壊されてたまるか。

 勇の驚きはすぐに過去のものとなる。次の一秒には踏み込み、校舎と校舎をつなぐ架橋から飛び降りていた。

 

火炎呪文(メラ)、からの真空呪文(バギ)ッ!」

『ヨクバッ!?』

 

 みすみす自殺するような真似はしない。彼は前者をヨクバールの顔目掛け放ち、後者を駆使して足りない跳力を補ったのだ。

 立て続けの詠唱に驚き、ヨクバールとバッティは固まっている。

 狙うならここしかない。落下の速度を乗せた一撃を、力いっぱい振りかざす──!

 

 ガキィン!

 

「──」

『ヨクバール?』

「か、硬いね、キミ……!」

 

 跳ね返ってきた反動がよほど大きかったらしい。

 勇は目元に若干の涙を浮かべながら、じいいん、と痺れきった両腕をプルプルと震わせている。

 

「こんなに硬いなんて聞いてないよ! 見てよこれ、木剣ポッキリいっちゃってるじゃんか~! 弁償してよ! 制作費2120円(税込)!」

『ヨクバール……』

「……やはり、あの時の力は私の見間違いだったみたいだ」

 

 呆れを通り越して同情してしまいそうだ。

 警戒して距離をとっていたバッティが、嘆息と共にそう漏らして。

 

「ヨクバール。とっとと彼を片付けて、あなたもプリキュアを捕らえるのです」

『ギョイ!』

「え、わ、ちょっ!? うわわ~~~っ!?」

 

 バッティからの指示を受け、途端に身をよじらせるヨクバール。頭上の人間を振り落とそうと、右往左往と激しく。

 抵抗むなしく、勇は背中から校舎へと打ち付けてしまい、流れるように地上へと墜落してしまう。

 

「ガ、ハッ! ゲホッ、ゲホ……!」

 

 冗談ではすまされない痛みに、肺中の空気という空気が押し出ていってしまう。

 荒れた呼吸を整えようと、彼は必死に酸素を取りこもうと喘ぐが、視界に侵入してきた巨大な影がそれを許そうとしない。

 

『ヨクバアアアアアルッ!!』

「──っ、ぐ、うわあああっ!!」

 

 荒ぶる視界から察するに、攻撃を喰らったのだろう。最早、相手の動きを捉えることすらかなわなかった。

 何度目かの衝撃のあと、地面を数回転がってから、ぶれぶれだったカメラが安定する。

 

「ううっ……!」

「存外にしぶといですね。そろそろ諦めては? こちらとしても、あなた個人の命などどうでもいいんですがね」

「うるさいっ……!! 諦めて、たまる、か……!!」

 

 こちらがいくら立ち上がろうが、現状は変わってくれやしない。悪い方向へと傾くばかり。

 それでも──それでも勇は、自身の内から込み上げる欲動に突き動かされざるを得なかった。目の前に悪が在る限り、それは留まることを知らない。

 

「力だ、力が要る……!」

 

 木偶の坊になりかけの身体を無理やりに捻じ曲げ、立ち上がる。

 目算もなしに立ち向かえば、待っているのは同じ結果だろう。やられて、立ち上がり、やられて──立ち上がる。終わりは訪れない。

 

「みらいやリコがなっていたような、あの力が……!!」

 

 だからこそ手を伸ばし、打開を求める。

 

「ヨクバール、終わらせなさい」

『ギョイ!』

 

 過程や根底などはどうでもいい。

 この詰んだ状況をも覆す、常軌を逸する絶対的なもの。或いは、人間が奇跡と呼ぶものを。

 

「勇者になる前に、死んでたまるか────!!!!」

 

 少年は、掴み取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り。

 

「「プリキュア! ダイヤモンド・エターナル!!」」

 

 リンクルストーン・ダイヤの力によって変化した、彼女のたちの魔法の杖──リンクルステッキを駆使した必殺の金魔法が、ヨクバールを浄化していく。

 破壊された景色はみるみる元の姿を取り戻し、またヨクバールも、元通りダンプカーとカラスの羽に別れ、ナシマホウ界へと還った。

 

「やった、やったよ! マジカル! わたしたち、学校を守ったんだよ!」

「そうね。ところであなた、どうして魔法の杖を持っていたの?」

「えっとね~……」

 

 勝利に浮かれ、のほほんとした口調でミラクルが答えようとしたその時であった。

 

「「!?」」

 

 雲を裂き、突如として現れた光の柱が、そう遠くない位置に聳え立ったのは。

 あそこには確か、まだ勇が残っていたはずだ。二人はすぐにでもと走り出し、柱のもとへと急ぐ。

 

「あれって、さっきの怪物と同じ……!? もう一体いたなんて!」

「それに、あそこにいるのって……イサムくん!?」

 

 彼女たちの視線の先にいたのは、折れた木剣と呪文書を携え、ボロボロの格好で佇んでいる勇だったのだが……どうも様子がおかしい。その瞳には光が灯っておらず、心ここにあらずといった感じだ。

 そして、差し出された右手のひらの前には、光の柱──に覆われている、見たこともないリンクルストーン。乳白色の宝石が在った。

 

「あれって、リンクルストーンだよね?」

「エメラルド……? じゃない。けど、わたしたちのダイヤとも違う」

 

 これにはバッティも驚いたようで、新たなるリンクルストーンの登場に目を丸くし固まってしまっている。

 

「リンクルストーン・オパール」

 

 一変した空気を破ったのは、他でもない勇だ。

 虚ろな瞳を浮かべたまま呟くと、彼は掠め取るように『リンクルストーン・オパール』を手にする。同時に、それらを覆っていた光は一斉に瓦解して、何事もなかったかのように消え去ってしまう。

 

戦闘開始(コモン・エンカウント)鎧化(アムド)──!」

「まさか……!?」

 

 後者の言葉は誰のものだったのか。前者の勇の呟きを皮切りに、周囲の空気の流れが乱れ、また呼応するかのように彼の持っている木剣に変化が起きていく。

 折れた刀身は元通りになるだけでなく、木製にあるまじき光沢を生み、次第に立派な装飾の施された両刃の剣へと生まれ変わった。

 勇自身の容姿も、聖なる白鎧と甲冑、額部分に青い宝石のはまったサークレット状の冠を被ったものへと変貌している。姿こそ騎士のようだが、あれではまるで──

 

「プリキュア……!? この短期間で、もうひとり……!?」

 

 場の誰もが思ったことを、バッティが代弁する。

 あれは間違いなくプリキュアだ、と。変身した勇から伝わってくるプレッシャーが、ミラクルたちにそう理解させた。

 

「……あれ?」

 

 そして、彼がきょとんとした表情を浮かべたのも、ほぼ同時のタイミングであった。

 

「うわっ、なんだこの格好……それに剣まで!? 銃刀法違反で捕まっちゃうよ~!!」

「「……」」

 

 中身までは変わってないようだ。

 拍子抜けしたような、安心したような。ぽかんとその様子をマジカルとバッティが眺めている矢先、

 

「すごいよイサムくん! プリキュアになっちゃうなんて! これでみんなお揃いだね!」

「ええっ、俺がプリキュアに!? ……でも、背ェ伸びてないよ?」

「個人差があるんじゃないかな?」

「そっか。ならしょうがないね」

 

 納得するんかい。見かねたマジカルがのほほんとした空間に割って入り、

 

「いつまでやってるの二人とも! ふざけてないで、あの怪物もどうにかしないと!」

「大丈夫だよ。ここは俺がなんとかするから、ミラクルとマジカルは休んでて」

「なんとかするって……」

 

 マジカルが言い切る前に、空気を読んでおとなしくしていたヨクバールの前へと勇が躍り出て。

 

「──氷系呪文(ヒャド)!」

『ヨクッ!?』

 

 有無を言わさず放たれた冷気が、みるみると岩石の巨体から生えた片翼を氷漬けにする。

 バランスを失ったヨクバールは、当然地上へと真っ逆さまだ。

 

「やっぱり。読めるページが増えてたから、気になってたんだ」

 

 何故読めるようになった理由はわからない。が、一度ナシマホウ界にてヨクバールと戦い、経験を積んだからだと勇は推測する。要するに、力量(レベル)が上がったというわけだ。

 それに、変身する前に消耗した魔法力も回復している。これがプリキュアの恩恵か。くうう、と勇は胸をいっぱいにする。

 

『ヨクバールッ!!』

「おっと! すごいすごい、これだけ着込んでるのにすいすい動けるぞ~!」

 

 激情したヨクバールが転がり反撃に出るも、いとも簡単に避けられるという屈辱的な状況に、バッティは歯噛みし。

 

「相手が三人では、流石に分が悪い。ここは一旦退却して、ドクロクシー様に報告するとしましょう……オボエテーロッ!!」

「あれ? 帰っちゃった」

『ヨ、ヨクバール……!』

 

 どうしていいか分からず慌てふためくその様子は、飼い主を失った大型犬そのものだ。そんな立つ瀬のないヨクバールへと、

 

「よ~し! 俺も必殺技で決めてやる!」

 

 剣を逆手に持ち替え前傾姿勢になり、後ろへと振りかぶる勇の姿が近づいていた。

 次第に刀身が淡く煌くようになり、バチバチ、と火花が音を立てる。

 

「てえええええ────いっ!!!!」

『ヨ、ヨクバ───……!!』

 

 光の波動が迸った。名前のまだない必殺剣は、ヨクバールを真っ二つに斬り裂くと、それらを元の石ころと羽へと浄化する。

 悪意あるものだけを斬るこの剣は、決して他を傷つけることはない。それどころか、ボロボロだった周囲の地形や校舎までをも直していくではないか。

 

「命名:イサムストラッシュ! 我ながら勇者っぽくてかっくいい~!」

 

 最期まで締まらないのが、彼の性分でもあった。

 勇が変身を終えると、先程まで持っていた剣も消えてしまう。そして、また一段階強くなった奇妙な感覚を覚える。

 

「これ、結局なんなんだろ?」

 

 手元に残っていたのは、いつの間にか手にしていた『リンクルストーン・オパール』。

 勇はじっと、手のひらの中にあるそれを見つめる。

 

「くんくん……」

「うわっ、モフルン!?」

「なんだか不思議なにおいがするモフ」

 

 今までどこにいたのだろう? ひとまず無事なのを確認すると、勇はモフルンを抱き上げてみらいへと手渡した。

 凄かったね~、と彼女は相変わらずであったが、リコはと言うとどこか不機嫌そうな面持ちだ。勇がプリキュアになったのが気に入らないのだろうか。

 

「リコ、どうだった? 俺の活躍見てくれた?」

「ええ、凄かったわね」

「えへへ、でしょ~!」

「調子に乗らない! あなた、ボロボロじゃないの!」

「あ、本当だ。忘れてた」

 

 リコの指摘通り、変身前にヨクバールと戦っていたせいか、勇の格好は不格好そのものだ。もっとも、一方的なあれを戦いと呼んでいいものか微妙なところだが。

 素で忘れていたと答える勇に、リコはまたムム、と顔をしかめるのであるが、彼が気づくはずもなく。

 

「そういえば、プリキュアになった時の名前とか考えてなかったかも。どうしようかなあ」

「──ブレイブ。勇敢を意味する、ブレイブという名はどうかな」

「ブレイブ……キュアブレイブ! うん、いいねそれ! 採用……って、あなたはさっきの」

 

 無邪気に振り返った先には、みらいの持つ魔法の杖が生まれる際、誕生の瞬間を共にしていたロングヘアの青年が。

 

「こ……こ……!?」

「どうしたの、リコちゃん?」

「モフ?」

 

 ころころ表情の変わる女の子だ。

 肝を潰されでもしたのか、リコは魚のように口をぱくぱくとさせている。

 

「校長先生っ!?」

「「えっ!?」」

 

 二人が驚くと、校長と呼ばれた先生は優しく微笑む。

 魔法でも使ったのか、先ほどとは打って変わって煌びやかな服装に早変わりした彼へと、みらいが尋ねる。

 

「あなたが、魔法学校の校長先生!?」

「左様」

「あ、あの、お話があるんです! わたしたちプリキュアに……!」

「みなまで言うな」

 

 まるで心配するな、とでも言いたげに校長は答えた。

 そして、しばしの沈黙の後、

 

「……授業を受けてもらいたい。君たち、三人に」

「授業ってことは……退学じゃないってことだよ! リコ!」

「よかったね、リコちゃんっ!」

「え、ええ」

 

 笑顔のみらいに抱擁され、困惑しつつも嬉しそうに口元をほころばせる。

 それを見て、にこにこと勇も眉を開いていたが、

 

「ん? 君たち三人って……」

「ああ、君たちもだ。しばらくの間、この学校に留まってくれないだろうか」

「「「……えええ~~~~~っ!!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 イサムは レベル3に あがった! ▼ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のステータス

 

イサム

 

せいべつ:おとこ

レベル:2

 

最大HP:27

最大MP:20

 

ちから:14

みのまもり:10

すばやさ:10

たいりょく:12

かしこさ:10

うんのよさ:255

攻撃力:16→27

防御力:12→20

EXP:33

 

そうび

E:木剣→ブレイブソード

E:普段着→ブレイブアーマー

E:呪文の書

 

ブレイブソード 攻+13(レベルで変動)

悪意あるものを きりさく

でんせつのつるぎ

 

ブレイブアーマー 防+10(レベルで変動)

なにものにも そまらぬ

まっしろな よろい

 

じゅもん

・メラ

・バギ

・ヒャド

・パルプンテ




氷系呪文(ヒャド) 消費MP3
小さな氷塊や氷の矢を一瞬で作り出し、敵1体を攻撃する。

リンクルストーン・オパール
勇の『プリキュアになりたい』という願いから生まれた、乳白色に煌くリンクルストーン。
他のリンクルストーンと違い、勇以外に扱うことはできない。
宝石言葉は《純真無垢》や《幸運》。

キュアブレイブ
HPとMPはそのままに、通常のステータスの何倍もの実力を発揮する。
ダイの大冒険でいうところの、竜の騎士が竜闘気を開放している状態。
変身している際は呪文の威力が増大する。が、MPはまだまだ少ないので連発できない。

キュアと銘打ってありますが、今作では擬似キュアという扱いです。
変身しても、基本的にはブレイブでなく、名前のまま呼ばれます。

鎧のイメージは『仮面ライダーエグゼイド』に登場する、仮面ライダーブレイブ レガシーゲーマー レベル100。名前までパク……オマージュである。
冠はまんま勇者のかぶと。剣に関しては皆様のご想像にお任せします。

イサムストラッシュ(仮)
見た目は完全にアバンストラッシュ(アロータイプ)!!!!
今作でいうところの金魔法、必殺技になります。
いい感じの名前が思いついたら、またそのうちね……

今後はオリ主単体の活躍はあまりさせないかも。だって面倒だし()

オリ主との絡みが見たいメンバー(あなたの推し)は?

  • 朝日奈みらい
  • 十六夜リコ
  • 花海ことは
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