デビルサマナー葛葉ライドウ 対 帝国華撃団(仮) 作:おおがみしょーい
古い作品同士なのであまり需要がないかなと思っていたのでとても嬉しいです。
少しづつ更新をしていきますので何卒よろしくお願いします。
「俺、さくらくん、カンナ、すみれくんは路面電車線路を中心に左右に展開、マリア、紅蘭は援護、アイリスは降魔達の陽動を頼む。各機、新種も含めた降魔を殲滅せよ!!」
『了解!!』
大神の無駄のない指示と同時に、降魔・悪魔たちとの戦いの火蓋が切って落とされた。
「チェェストォォッ!!」
髪と同じ、真っ赤なカラーリングをしたカンナ機が目の前の“鉤爪”に鉄の拳を叩きつける。
ただの鉄の塊であればどれだけ高速で当てようと傷一つつかない降魔の身体も、搭乗者であるカンナの霊力、そして、そのカンナが継承した桐島流琉球空手の妙技が光武・改の拳にのり、降魔にとって悪夢のような攻撃となって降魔に襲い掛かる。
「そらそら、だらしねぇ! ちったぁ耐えてみせろってんだ!」
カンナは光武・改の拳を、足を、肘を、膝を流れるように“鉤爪”に叩き込み、その全てを一撃のもとに粉砕している。
「やれやれ、カンナさんは本っ当にガサツですこと……もう少し優雅に出来ないものかしら……こんなふうにっ!」
名前と同じ菫色をした、神崎すみれの搭乗したすみれ機が、何の予備動作もなく、ふわりと、そしてくるりと廻り、手に携えた薙刀がその回転に従ってするり、と円を描く。
光武という武骨な甲冑に包まれて尚、その動きは曲線的で、しなやかで、まるで優雅に舞を舞っているかのように軽やかだった。
しかし、その舞は、ただの舞ではない。
神崎すみれが会得している、神崎風塵流の舞であり、そこに巻き込まれた複数体の“鉤爪”の身体は同時に真っ二つに両断をされ黒い霧となって消滅した。
「まぁ、この様に強さも美しさも兼ね備える事が出来るのは、私、神崎すみれだからこそ出来る事ではございますけど……おーほっほっほ!」
そんな高笑いをしているすみれ機の死角から1体の“鉤爪”が忍び寄ってきた。
そして――
キャシャアアアアアアアアーーーーーーー!!
気づかないとみると、名前にもなっているその鋭利な鉤爪を振りかざし、すみれ機に叩きつけようとしたその時、
ダ ン ッ !
という銃声と共に、“鉤爪”の頭が吹き飛び、胴体には振り返ったすみれ機の薙刀が刺さっていた。
「マリアさん、余計なお世話ですわ」
すみれは頭を撃ち抜かれた“鉤爪”を見ながら涼しい顔で呟いた。
「まったく、すみれは……」
制服と同じく黒で染め上げられた光武・改に搭乗しているマリアは、左腕につけられている大口径銃を格納しながら、ため息をつく。
しかし、すぐに気を取り直すと、目を左右に動かし、戦況を把握する。
目に見える情報だけではない。
仲間の光武・改から送られてくるデータ、敵の配置、仲間の動き、光武の隙間から漂ってくる戦いの匂い、風の動き、そして、今までの戦場での経験。
数多ある情報を整理しながら、マリア機は少しずつ機体を移動させながら、的確に、そして確実に、敵を減らしていく。
「そこぉ!」
カンナ機の踏み込みが、一歩届かない位置の“鉤爪”に右のガトリングを放って位置をずらし、すみれ機の薙刀が半歩届かない位置の“鉤爪”を左の大口径銃で撃ち抜く。
マリアの援護によって、花組の殲滅力は乗倍となっている様にも見えた。
そんな中、マリアは前衛への援護のほかにも、時折、別方向へと銃撃を行う。
そして――
「そっちはまかせたわよ、アイリス、紅蘭」
そう、呟いた。
「ほーら、こっち、こっちー」
黄色いカラーリングの光武・改が“鉤爪”の群れを縦横無尽に“飛んでいる”。
そう、文字通りアイリスの搭乗するアイリス機は“飛んでいる”のだ。
蒸気ジェットエンジンを積んでいるわけでは、ない。
アイリスは霊力の極めて強いものが選ばれている花組の中でも、一際高い霊力を保有しているのだ。
その類稀な霊力が物理の法則すらも捻じ曲げて、鋼の塊である光武では基本的にあり得ない動きを実現している。
「鬼さんこちらー」
アイリス機は特に“鉤爪”にたいして攻撃はせずに、ふわふわふわふわ、と、たんぽぽの綿毛の様に移動している。
“鉤爪”たちも目障りに動くアイリス機が気になって仕方がないのか、複数体の“鉤爪”が群がるようにアイリス機を追いかけていた。
その数が、少しずつ増えてきている。
そして、いつしか数十体の“鉤爪”にアイリス機は包囲されてしまっていたのだ。
キャシャアアアアアーーーーーーーーーーー!!!
女子供が聞いたら、その場で卒倒しそうな程の不気味な咆哮をあげながら、“鉤爪”が一斉にアイリス機に襲い掛かる。
「鬼さん――ばいばーい!!」
しかし、アイリス機は複数の“鉤爪”の腕がその機体を穿つ直前、忽然と姿を“消した”。
そう、文字通り“消えた”のだ。
そしてその直後、集まった“鉤爪”の群れから離れたビルの上に、アイリス機が“出現”した。
――瞬間移動。
比類なき霊力を有する、アイリスのみが可能となる、機体ごとの“瞬間移動”。蒸気科学的に見れば、まさに奇跡と呼んで差し支えない現象だ。
しかし、当の本人はこの――自分にとって――当たり前に出来るこの行為をかけらも不思議と思わずに離脱した先で、大きく光武・改の手を振り、仲間に合図を送る。
「こうらーーーーん、いまだよーーー!」
「よっしゃまかしとき!」
その合図を受けた緑色の光武・改、紅蘭機が、左右腕部の連装榴弾砲と、同じく左右肩部の三連装榴弾砲、計10門を一斉に開放し、アイリス機に群がっていた“鉤爪”の群れに叩き込む。
「景気よくいくでぇ! ほいな!」
10門の火砲が火を噴き、“鉤爪”達はなすすべもなくその火の海に沈んでいく。
「こいつで仕上げや! いけ、チビロボ!!」
その声とともに、紅蘭機のバックパックから4体の球体の左右にU字の磁石の様な手が付いた小さなロボットが複数体発進された。
そして、そのチビロボたちは炎に包まれている“鉤爪”をぐるりと取り囲むと、互いに放電をはじめ、僅かに残っていた“鉤爪”達を残らず倒し切っていった。
「どんなもんや! これが科学の力やで!」
「わーい、わーい」
紅蘭とアイリスはそれを確認すると、喜びの声を上げた。
一方線路周辺では、白銀と桜色の光武・改が互いに競うように“鉤爪”そして、ガシャドクロを斬り伏せていた。
桜色がさくら機、白銀が隊長である大神機である。
さくら機の動きは直線的だ。
搭乗者である敵との最短距離を詰めて、手に携えた太刀で相手を斬る。
わかりやすく、シンプルで、そして効率的だ。
しかしながら、もちろん欠点もある。
それは読まれやすいという事。
動きがシンプルであればあるほど、相手はその動きに対応しやすい。特に今回の様に知能に近い本能を持つ複数の降魔の場合、数回の攻撃で対応されてしまう――通常であれば。
しかし、真宮寺さくらの搭乗する光武・改は降魔を斬り続けている。
何故か――それは緩急。
光武・改の駆動を最大限に稼働させて踏み込んだかと思うと、次の時にはその直前でブレーキをかけ、拍子を外す。このように光武・改の機構をフルに生かすことでシンプルな動きの中であっても、無限ともいえる選択肢を相手に突きつけ降魔達を倒していった。
大神機は手に持った2本のシルスウス鋼で作られた大太刀、「白狼」と「銀狼」を縦横無尽に走らせ、次々に“鉤爪”そしてガシャドクロを倒していく。
後部6本のマフラーから放出される蒸気をフル稼働させ、「白狼」、「銀狼」そして、地面を滑るように駆動する体裁きを駆使して流れるように敵の群れをすり抜けていく。
大神の霊力によって、2本の大太刀から繰り出される太刀筋は紫電の様に青白い軌跡を作る。故に、はたから見ると青白い閃光が線路周辺を
そのように見えるのだ。
大神機とさくら機は互いにフォローしながら次々に敵を倒していく。
花組達の奮闘を、少し離れた場所から外套の剣士――葛葉ライドウが眺めていた。
「なるほどな……あの鋼のカラクリが帝国華撃団とやらの切り札という事か……ようはわからんが、MAGに近いものが感じられるという事は、動力はMAGの様なものなのかもしれんな」
ライドウの足元にいるゴウトが少し感心したように呟く。
「しかし、まだ終わらない」
「そうだな、これだけ“悪魔”が現世に顕現しているんだ。おそらく異界が現れるだろう、そこからが勝負だな」
ライドウの短い言葉に、ゴウトが答える。
その瞬間――周りの景色が、ぐにゃり、と歪む。
「ほう、噂をすれば……というところか。さて、帝国華撃団とやら、ここからが本番だ。この世界の“帝都の守護者”の力、どれほどのものか……」
「……」
1人と1匹は歪みの中へと消えていく。
ライドウは消える直前まで、一点を見つめていた。
その先には、白銀に輝く光武が数多の“悪魔”を相手に戦っていた。
―――――
「この一帯が終わったら、南下して月島方面の“降魔”の殲滅にうつる! 先頭は俺と、さくら君。それ以外の各機はそれぞれ南下しながら途中の“降魔”の殲滅を優先。うち漏らしがないように、作戦指令室からの報告はしっかり確認を! しんがりはカンナとマリア、頼んだぞ!」
『了解!!』
大神の指揮の元、日本橋周辺の“降魔”を倒し切った花組は、月島方面へと向かおうとした、その時――
ぐにゃり――と、
周囲の景色が歪んだ。
「くっ……なんだこれは」
「な、なんなんや。センサーがばかになってるで」
「お兄ちゃん! アイリス……気持ち悪い……」
状況の急変に、戸惑う花組の中でさくらの鋭い声が響く。
「大神さん! 皆さん! これ、“神隠し”です!」
さくらは周囲の状況を見渡しながら、自分の身に起こった現象を思い出す。
「各機一度、俺の周囲に集まり周囲の警戒にあたれ」
『了解!!』
大神の号令に、花組全ての光武が大神機の周辺に集まり、背中をあわせながら、ぐるりと360度を警戒する編隊を組む。
「さくらさん、このあとどうなるんですの?」
「わかりません……昨日は深夜でしたし、恐らくこれ程、大規模でもなかったと思います」
「まったく、これだから庶民は困りますわ……」
すみれの悪態も今は誰も気にしないし、気にすることが出来ない。
「なんや、歪みが大きくなっとる気がするで……」
「くるわよ! みんな!!」
マリアの声と、周囲の歪みが花組達に襲い掛かってくるのは同時だった。
次の瞬間、周囲の歪みは消え去り、そこには日本橋の街並みがもどっていた。
「ん? なんや? 何が起こったんや?」
「みんな、大丈夫?」
「あれ? あたし、そのまま?」
「まったく何がどうなっていますの……」
「身体は……痛くねぇな」
「アイリス……頭痛い……」
花組の隊員が周囲を見渡しながら状況を確認する。
集まった直前と、変化はないように見える。
『こちら作戦指令室! 皆さん大丈夫ですか? 一瞬こちらのセンサーから皆さんの機体コードが消えたのですが、異常ありませんか?』
作戦指令室の通信担当であるかすみから連絡が入る。
作戦指令室とつながっているという事は、自分たちは“神隠し”にはあっていないようだ。
しかし、一つ、大きな変化が起こっていた。
それに気づいたのは、さくらだった。
「あれ? 大神さん? 大神さん!!」
自分の隣にいたはずの大神機の存在が消えていることに気づいたさくらは、大声で大神の名前を呼ぶ。
「え? やだ……お兄ちゃんいなくなっちゃった……」
「なんや? こんどは大神はんが“神隠し”にあったっちゅうことか?」
「ちっ……まったくどういう、からくり何だこりゃ……」
隊員の心の支柱ともいうべき大神のいきなりの不在に動揺が広がる。
そんな中で、一人冷静を保っていたマリアが、全員の回線を開き、作戦指令室と通信をする。
「かえで副司令。こちらマリア・タチバナ。状況の報告をします。大神隊長が“神隠し”にあいました」
『なんですって? 他のみんなは大丈夫なの?』
「大神隊長以外の花組は全員健在です」
『そう……よかった』
かえでだけではなく風組3人も含めた作戦指令室内の安堵が通信を伝って感じる。
「かえで副司令。さくらの話を総合すると、“神隠し”にあっても脱出の術がないわけではないようですが、こちらからは現状どうすることも出来ません」
『そうね』
「そこで指揮を私に移行し、私たちはこのまま大神隊長のプラン通り、月島方面での降魔殲滅を継続しようと思います」
『わかったわ。私たちも翔鯨丸をだして空中からサポートします。それから夢組にも連絡を入れて、日本橋、月島周辺の霊力の異常を感知したら知らせるようにするわ』
「ありがとうございます」
『大神君は? どうするの?』
「……私は、私たちは大神隊長を信じています。隊長は、必ず“神隠し”から戻ってきます」
『そうね……みんな、まだ降魔がいる以上、“神隠し”が起こらないとも限らないわ。細心の注意をしながら作戦行動を行って』
「了解」
マリアは一通りの通信を終えると、仲間へと向き合う。
「いい? 聞いた通りよ。先ほど隊長のだした構成で作戦を継続。隊長の代わりにカンナが前衛に出て、しんがりは私一人で請け負うわ。意見のある人は?」
「……」
「それでは作戦開始! 隊長が戻るまで、帝都は私達で守り切るのよ!」
『了解!!』
仲間たちから、力強い返答が返ってきた。
そんな仲間たちの一番後方を走りながら、マリアは空を見上げる。
魔が蠢くと言われる、黄昏が、空を包んでいた