RAINBOW X STORY 作:山形りんごをたべるんご
今回から遂にAqours編スタート!!
そして現れるのはあの怪獣……。
それでは早速どうぞ!!
雲一つ無い青空、ギラつく太陽、深緑の木々に止まり鳴く蝉。正に夏というこの日、翔琉はバスに揺られながらとある場所へ向かっていた。窓の外の景色をぼーっと眺めている翔琉。隣りにはXio隊員でラボチーム所属、翔琉の先輩となる水瀬 陽花が座っている。
少し不機嫌そうな表情をしている彼に、陽花が声をかけた。
「何だか、嫌そうな感じっすね?」
「ん?あ、ああ、すんません……」
「いいっすよ気にしなくて。まあ、翔琉さんの気持ちも分からなくないっすから」
陽花と共に移動していることと彼が少し不機嫌な理由。それは少し時を遡ることになる……。
約1ヶ月前にとある地に突如として怪獣が現れた。怪獣は出現した休耕田で眠ったり起きたりを繰り返しているだけで動くことなく、光合成を行い排泄をしないという植物の様な性質を持っていた。一切の害が無く、その地ではこの怪獣を利用して町興しをしようと考えており、Xioは町の住民との協議をし怪獣を保護下に置いてモニタリングをしていた。
「このタイプGの怪獣何ですが、これを見て下さい」
Xio司令室に集まったメンバー達。彼らの前に立つ陽花と涼風はモニターへの注目を促した。そこには2つの多角形のグラフが映されている。涼風は説明を続けていく。
「これは怪獣の栄養値を表したものです。右は現れてすぐの、左は2日前に測定したものです」
「何か、明らかに小さくなってるな」
イヅルの言う通り、右のグラフはバランス良く綺麗な形をしているが、左のものはかなり小さくなっておりバランスも悪い。
「つまり、この怪獣は栄養失調になってるってこと?」
隊長である沙優の言葉に陽花が頷いた。
「けど、この怪獣は光合成をして生きてるんだよね?最近は天気も決して悪くなかったし、何故こんな事に?」
「もしかして、普通に食事が必要なのか?」
「いえ、試しに目の前に野菜や魚、肉などを置いてみたんっすけど、どれにも反応を示さなかったので食事はしないみたいっす」
リュウジとハヤテの疑問に陽花が答える。水を与えたりもしてみたが、それでも栄養値が上がる事をなかった。脳波も弱っていてこのままでは死んでしまうかも知れない。
「町の、住民は、何と?」
「怪獣の治療を望んでいます」
「怪獣に攻撃性は無い。観光の目玉にもなるし、町としては死なせたくないのだろうな…………ん?なんじゃ、翔琉。変な顔しおって」
シャマラ博士の言う通り、翔琉は眉間にしわを寄せて怪訝な表情をしていた。
「え、いや……だって、怪獣が出たんでしょ?だったら悠長なことしてないでさっさと倒すべきじゃないんっすか?」
これまで怪獣や宇宙人と戦って来た彼にとって、それらの存在は悪しきモノであるという認識が強く、それを町興しに利用する為に保護したり、弱っているからといって治療したりしようとするのは理解し難かった。怪獣がいるのなら早急に駆除する。それが彼の考えなのだ。特に前回戦ったダークファウストのことがその思想を強くさせているのだろう。驚異的な力でかすみを精神的に追い詰め、翔琉のことを痛め付けたファウスト……奴に対する怒りが、怪獣や宇宙人を殲滅すべきだという考えを加速させた。
翔琉の言葉を聞き、他のメンバー達は彼の思考を理解して少しだけ笑った。その反応に翔琉が何だと思っていると、紗季が代表する様に口を開く。
「翔琉君は、怪獣は全部倒すべきだって思うの?」
「そりゃまあ……現に怪獣の所為で碌でもない目に遭ってますし」
「けど、この怪獣はまだ何もしてないよ?」
「でも、いつ暴れたっておかしくは無いじゃないっすか?だったら先に倒してしまった方が……」
あくまでも倒すべきだと考える翔琉。そんな中、沙優がある提案をする。
「今回の作戦、翔琉君も現地に赴いて参加してみない?」
「へ?」
「今は夏休みで授業も無いし、良い機会だと思うの。私達Xioのことをよりよく知ってもらえるね。勿論無理強いはしないけど、どうかしら?」
「まあ、別に構わないっすけど……同好会のみんなには話通せばいいだけだし……」
「なら決まりね!ハヤテ隊員、イヅル隊員、紗季隊員、涼風隊員は先行して現地に向かって。翔琉隊員は陽花隊員と一緒に後から合流を。作戦の指揮は涼風、陽花のラボチーム2人に任せるわ。シャマラ博士とミキリ隊員、ミハネ隊員は基地からモニターで状況を観察してサポート。リュウジ隊員とザムザ副隊長はいざという時に備えて基地で待機。それじゃあ、Xio出動!」
『了解!!』
沙優の命を受けて、Xioメンバー達は行動を開始したのであった。
そんなこんなで母に許可を取り、同好会のメンバーに話しをしてから、翔琉は陽花と共にバスに乗って目的地まで向かっているのだ。しかし、やはり怪獣を助けるというのことにはまだあまり納得出来ていないらしい。
「怪獣なんて、俺からしたら敵にしか思えない……。アイツらの所為で、沢山の被害が出てる訳だし。ささっさと倒してしまうのが、一番じゃないかなって」
「なるほどぉ。確かに、翔琉さんの言い分も分かるっす」
だけど、と陽花は言葉を繋ぐ。
「怪獣もこの星に生きてる仲間なんっすよ。それに宇宙人だって、広い宇宙に生きてる仲間。とても尊い命なんっす。だから私達は、それを無闇矢鱈に奪う様な事はしたくないんっすよ」
「それはぁ……分からなくはないですけど……」
怪獣や宇宙人は倒すべきだと考えてる彼だが、別に安易に命を奪う事を好んでいる訳ではない。少しモヤモヤしている翔琉に、陽花はカバンからあるものを取り出して見せた。それはスパークドールズである。
「それって確か、ゴモラでしたっけ?」
「そう!あたしの家族っす!」
怪獣が家族とはどういうことなのだろうかと彼は不思議そうな表情を浮かべる。
「あたしの両親はUMVERの研究者だったんっす。父は考古学者としてスパークドールズを、母は宇宙物理学者として宇宙誕生の謎を研究してたんです。このゴモラは父の研究対象で、小さい頃からあたしは父の目を盗んでこの子に話しかけていたっす。それに、両親はそれぞれの研究をしながら怪獣との共存の道を探してました」
「共存の道……?」
「はい。人間と怪獣、そして宇宙人達と共存していく世界……それが2人の夢でした。だから、大きくなったらあたしもそれを手伝いって思ってたんっす。でも……」
そこまで話した後、彼女の顔は少し曇る。
「18年前、2人はスパークインパクトで亡くなりました……研究所を怪獣が襲って瓦礫の下敷きになったんっす」
「…………怪獣のこと、恨まなかったんっすか?」
「そりゃあ、最初は恨みましたよ……大好きな両親を殺されたんですからね。けど、2人の言葉を思い出したんっす」
「言葉?それって一体……」
首を傾げる翔琉。陽花が思い出したという言葉が何なのか、それを聞こうとした時バスのアナウンスが鳴った。どうやら降りる停留所にもうすぐ着くそうだ。
「もう着くみたいっすね。ほら、アレ」
彼女が指差した方向に彼は目を向けた。
陽に照らされ輝く海。白い砂浜。緑の生茂る山。そしてその風景に妙に馴染んでいる青い巨体……アレが件の怪獣。弱々しく揺れるだけで特に何もしてない。
ここは静岡県沼津市内浦。自然に満ちた美しい町である。
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目的地に着いた翔琉と陽花。町では数日後に行われる祭・沼津サマーフェスティバルの準備が進められていた。既に幾つかの露店が出されており、そこには怪獣まんじゅうや怪獣せんべえ、怪獣みかんパンなる物の他にも、あの怪獣を美少女に擬人化させたキャラクターの描かれたTシャツなどまでが売られていた。
2人は市長に案内されて怪獣の姿がよく見え、店のいくつか出されている場所に来ていた。怪獣は相変わらず動かない。
「いや〜、怪獣のお陰で毎日がお祭りですよぉ〜!観光客もどんどん増えてて本当に怪獣様々です!」
嬉しそうに語る市長。呑気そうな市長を見て翔琉の眉間に少しだけシワがよる。それに気付いた陽花が彼の背を軽く叩いて優しく諫めた。
「その怪獣が栄養失調なのは放っては置けません。ここはどうか一つ、お願いします」
市長は彼らに頭を下げる。観光資源としてと云うのもあるが、1人の人間としてその命を心配しているのだろう。
「任せて下さい。あたし達が、責任を持って怪獣を治療するっす!ね、翔琉さん?」
「へっ?あ、はい。が、がんばるっす」
「いやぁー、頼もしい限りです!」
楽しそうに笑う市長、陽花と苦笑いする翔琉。するとそこへ、市の職員が大慌てでこちらに走って来た。
「た、たた、たた大変です市長!!」
「どうした、そんなに慌てて!?」
「か、かかか怪獣……怪獣……!」
まさか怪獣が暴れ出したのかと思いすぐに振り向く翔琉だったが、怪獣は特に動いていない。
「怪獣の名前をウラッシーにするかヤマゴンにするかでめっちゃ揉めてます!」
「なぁぁぁぁぁにぃぃぃぃ!?内浦のウラッシーが良いに決まってるだろ!?ヤマゴンなんて古臭過ぎる!!」
「でもうちっちーと被ると言う人が」
「名前が似てるなんてよくあるわ!!仕方ない!私が説得しよう!!ではお二人共、怪獣のことよろしくお願いします。せっかくなので祭りの方も見て行って下さい。行くぞ!!」
市長と職員はバタバタと走り去っていってしまった。「嵐かよ……」と呟く翔琉と苦笑する陽花。
「とりあえず、あたしは他のみんなと合流しますね。翔琉さんはせっかくなんで、この辺りを観光してきたらどうっす?」
「でも、大丈夫っすか?」
「はい。作戦開始時には連絡しますんで、それまで自由に行動してもらって大丈夫っす。それにこの町の自然に触れて、少しリフレッシュして気分転換してきたらどうっすか?」
今回の作戦のことやファウストのことでいろいろと頭を悩ませてる翔琉への心遣い。彼はそれを受け取ることにし、「なら、行ってきます」と言ってから取り敢えず海の方へと歩き出した。
10分程歩いて砂浜に辿り着いた翔琉。目の前に広がるのは陽光を受けて輝く雄大な青い海。青空には白い雲が流れており、うみねこの声が鳴り渡っている。振り向くとそこには山が3つ。そしてその間にあの怪獣……異様な風景にも思えるが妙に馴染んでいる。
「怪獣との共存、か」
バスの中での陽花の言葉を思い出す。それと同時にこれまでの戦いのことも。
デマーガ、エンペラ星人、ラドン、ケイプ、ジェイラ、ダイロ、ベムスター、バキシム、レッサーボガール、ゴルメデ、そしてダークファウスト。今まで戦った全ての怪獣や宇宙人が敵意や悪意を持って牙を剥いてきた。翔琉の身体にはそれによる傷が幾つも刻まれている。見つめる先にいる動かないあの怪獣も、いずれ暴れ出して自分と戦う事になるのだろうと彼は考えていた。
「無理だろ、そんなの……」
こんな生物達とどう共存しろと言うのだ……陽花には悪いが、絶対に無理だという考えが彼の頭の中に浮かんでいた。
そんな時強い風が吹き、彼の目にあるものが映った。こちらに向かって飛ばされてくる1枚のタオルとそれを追い掛けて走っている1人の少女の姿。タオルは翔琉の頭上を通り過ぎようとした為、彼は大きく跳び上がりそれを見事にキャッチした。
「おしっ」
「あ、ありがとうございます!」
少し息を切らしながらこちらに走って来たオレンジ色の髪の少女は翔琉に頭を下げた。翔琉はそんな彼女に「ほれ」と掴んだタオルを渡す。
「よかったぁ〜!これお気に入りのタオルだったから、無くなったらどうしようかと思ったよぉ〜!」
「なら、飛ばさないようにな」
「うん!あれ?もしかしてその服、Xioの人ですかぁ!?」
今の翔琉はXioの隊員服を着ている。少女は彼のそれを見て目を輝かせた。
「え、まあ、そんなところかな」
「じゃあじゃあ、ホオリンガのことを見に来たの!?」
「ホオ……リンガ?」
「あの怪獣だよ!」
彼女の指差す先にいるのは動かない怪獣。奴の名はヤマゴンでもウラッシーでもなくホオリンガと云うらしい。けど、何故この少女は怪獣の名を知っているのだろうか?それとも適当に命名しただけなのか?
「なあ、何でアイツの名前知ってるんだ?」
「私の仲間が教えてくれたんです!その子、ホオリンガのこと詳しいから!」
「仲間?」
「あ!そういえばまだ自己紹介してなかったですね!」
少女はキラキラと輝く笑顔を翔琉へと向け、自身の名前を口にする。
「私は高海 千歌!スクールアイドル、Aqoursの一員です!」
翔琉とAqours。これが初めての出逢いであり、彼の運命がまた少し動き出した瞬間でもあった––––––
始まったAqours編、前半はホオリンガの話となります。
そしてウルトラマンX本編で書かれた怪獣との共存についても少しずつ触れていくつもりです。
千歌と出逢った翔琉。Aqoursについては陸から名前だけ聞いてた彼ですが、この出逢いが何をもたらすのか、是非お楽しみに。
それではまた次回
感想、質問、高評価、その他、山形りんご、是非是非お待ちしてるんご!