RAINBOW X STORY 作:山形りんごをたべるんご
遅くなりましたが3話目、どうぞんご
怪獣。古来よりその存在は世界各地の古文書や壁画などに記されていた。しかしそれらは所詮伝説上だけの存在であり実在はしないと考えていた。
だが今から約90年前、太平洋にある髑髏島に向かったアメリカの調査団がそこに巨大な生物が生息していたことを政府に報告していた。この事は長らく伏せられていたのだが、ある事件を切っ掛けに公開されることになる。
それは髑髏島調査から15年後。終戦直後のアメリカ・ニューヨークに四足の巨大生物が現れた。体長は60メートル前後、蜥蜴の様な姿。極めて凶暴な性格であり、素早い動きで町を破壊し、大きく裂けた口を開いて人間を捕食。水爆実験の影響で目覚めたとされるそれは猛威を振るい、ニューヨークを阿鼻叫喚の図に変えた。
当時偶然ニューヨークに居て事件に遭遇した日本人がそれを見て怪奇なる獣・
その後、リドサウルスと名付けられた怪獣はアメリカ軍の開発した新兵器により絶命。約8000人の犠牲者を出した世界初の怪獣災害はこれにて終結する事になる。
怪獣の出現、そして撃破は世界に伝えられ、それを成したアメリカは世界から評価される。しかし同時に、髑髏島に巨大生物が存在していたことを隠蔽しようとしていた事が露見し追求される事にもなった。
また、この時期世界各地で怪獣の人形型オーパーツ・スパークドールズが発見された。最初はただの人形かと思われていたが、研究を進めていくとこれらには何と生命反応があることが判明。そして何らかの影響でのスパークドールズが実体化し怪獣となるという事件が、発見から数年後に発生し、以降多発する事になる。何故人形に生命があるのか?何が原因で実体化するのか?その謎は未だ解明されていない。
リドサウルスの出現から10年後。日本に初めて、怪獣が出現。日本海から現れ上陸したその怪獣は圧倒的な力で都市を破壊。まで結成して間も無い自衛隊が立ち向かったが全く歯が立たず、アメリカ軍も出動したが全て破壊し尽くされた。
日本を蹂躙した怪獣はその後、中国、ロシア、フランス、オーストラリア、アメリカにも渡り、各地域で猛威を振るう。その様から、奴は怪獣王として全世界から恐れられる事になる。
奴の登場以降、スパークドールズの実体化も含めて多くの怪獣が現れる様になった。未開の地であったインファント島からの巨蛾、阿蘇山より現れた鳥獣、南海に現れた巨大な亀と蟹、人を殺す事に長けた怪鳥獣等、様々な危機に人類は直面する。更に、宇宙より異星人が地球を訪れる様になったのもこの頃からであり、その中には侵略を目的とした者も存在した。世界はこの未曾有の危機に対抗する為、地球防衛組織UNVERを設立。これが今から約60年前の出来事である。本部は当時まだ怪獣被害の無かった地域の一つであるスイスのジュネーブに置かれており、更にその実働部隊として特殊防衛部隊Xioを設立した。活動は有害鳥獣駆除取扱要項に則り、宇宙人に対する逮捕及び取調を行う権限もある。
UNVER設立から5年後、地球人類は宇宙人とのより本格的なコンタクトを開始。以降、地球は様々な星と平和条約や不可侵条約を結んでいく事になる。しかし、友好的な宇宙人がいる一方、地球の資源を狙って侵攻をする者も多く現れた。
そしてこの頃、スパークドールズと同じオーパーツの一つである怪獣カプセルの存在が確認される様になる。これは地球以外の星にもあるらしく、一説によるとある種族の科学者が創った特殊なカプセルを何者かが奪い、その模造品を創り出して様々な怪獣や宇宙人の遺伝子情報を回収して出来たのがこのカプセルらしい。この怪獣カプセルは宇宙各地に拡まっており、地球でも元々存在していた物、そして宇宙人が持ち込んだ物と、幾つものカプセルが発見された。
「–––––––––––以降も怪獣による災害や宇宙人による侵攻は続いており、この地球は常に危機に晒されていた。特に日本は怪獣の出現率、及び宇宙人の飛来率は共に世界一位であり、海外への移住を行う人も少なくない」
「ありがとうございます。そこまでで大丈夫です」
ここは虹ヶ咲学園の教室。現在は授業中である。今行われているのは「怪獣学」という授業で、これまで怪獣や宇宙人によって起こされた大きな災害、事件や、それらに対してどう対処するべきかなどを学ぶ授業だ。約35年前から実施されており、怪獣や宇宙人は、良くも悪くもこの世界に生きる人間の一部となっている。
「ではこの続きを……天地さんに読んでもらいましょう。……天地さん?」
リレー形式で教科書の内容を生徒達は読んでおり、次に指名されたのは翔琉であった。しかし彼は返事をしない。
それもその筈、翔琉は机に伏して眠っていたのだから。
「翔琉君、翔琉君!」
小声で歩夢が声を掛けて揺らす。すると彼はそれに反応をして顔を起こした。
「んっ………何だよ……?」
目を擦りながら起床。そしてそんな彼の目前には、この教科の担当である教師・綾小路 涼風が立っていた。
「おはようございます天地さん。私の授業は心地良い子守唄になりましたか?」
淡々と言う綾小路先生。表情は柔和だが目が明らかに笑っておらず、翔琉は思わず寒気を感じる。
「え、あ、いやぁ………おはようございます……」
「はぁ………。貴方が記憶喪失になって大変な事は聞いています。しかしだからこそ、この授業はしっかりと聞くべきです。昨日怪獣が現れた事は貴方も知ってますよね?」
「まぁ……それは……」
だって自分が戦って倒しましたからね。などとは言える筈も無く黙っている。
「この怪獣学では怪獣や宇宙人が現れた際、どの様に行動するべきかも学びます。まあ、実際にそれらと対面した時それが役に立つかどうかは正直微妙なところもありますが……」
「いやダメじゃん」
「けれど、知らないよりは知っていた方が良いです。怪獣や宇宙人に対する知識を持つ事は、自分の命を守る事に繋がるのですから」
ほんの1%でも、生存率を上げられるのであれば無いよりは遥かに良いという事なのであろう。翔琉はその言葉にコクリと肯く。そして綾小路が授業を再開しようとした時、チャイムが鳴った。
「では本日はここまでです。号令をお願いします」
教壇に戻った先生にそう言われて学級委員長が号令。授業は終わって昼休みの時間が来た。
「ねえねえ天地君!記憶喪失って本当なの!?」
「確かに雰囲気変わってる気がする……」
「私達のことも忘れちゃったの?」
昼休みになるや否や、彼の机の周りを多くの女子生徒が囲んだ。因みにこの寸前に彼に話しかけようとした男子達が押し飛ばされている。
「ま、まあな……何でかは俺も知らねえけど、気付いたら何も覚えてなくてよぉ………どうした?」
女子達はポカーンとして彼の事を見ている。
「いや、天地君が俺って言ってるのがなんか新鮮な感じで……」
「前は“僕”だったもんね」
「雰囲気も前は何ていうか、人懐っこい大型犬って感じだったし……」
「天地君、性別問わず結構みんなから好かれてたんだよ」
「そう……なのか……」
人懐っこい自分というものを翔琉は想像出来ないでいた。みんなから好かれている、というのも何となく変な感じがする。元々の自分がどういうものだったのか考えていると、そこへ歩夢がやって来た。
「もう、みんな!翔琉君困らせたらダメだよ?」
「おや?奥さんが夫を助けに来たみたいだよー」
「お、奥さん!?わ、私は別にそんなんじゃ……!?」
慌てふためく歩夢とそれを揶揄う女子生徒達。そして先程吹っ飛ばされたことについて蚊の鳴く様な小さな声で抗議している男子生徒達。
破茶滅茶な状況ではあるが、どうやら悪い奴は居ない様で安心して息を吐く。
「こんにちはー」
「うおっ!?」
するとそんな彼の背後から、1人の少女が声を掛けて来た。耳元で話された事に驚きながら翔琉は振り向く。その先に居たのは吸い込まれそうな青い瞳に薄い桜色の髪を持つ少女。少女はニコニコしながら翔琉の事を見つめている。
「えっと……」
「本当に覚えてないんだねー。ま、私達あんまり話す方じゃ無かったから仕方ないか」
「そう……なのか?」
「うん。あ、私は
笑顔でピースをする明里。その容姿はとても愛らしく、翔琉は少しだけドキッとしてしまう。
「おう……よろしく」
「ふふーん、はいこれあげる」
そう言って彼女が渡して来たのはホットドック。ソーセージやレタス、玉子など様々な具が挟んである。彼がそれを受け取ったのを確認すると、明里はそのまま去っていった。
「…………美味」
未だに揶揄われ困りながらも満更では無さそうな歩夢を見ながら、翔琉は貰ったホットドックを食べるのであった。
時は経って放課後。授業も終わり、翔琉は歩夢に連れられてスクールアイドル同好会の部室に来ていた。部室内には既に歩夢以外の8人が集まっている。
「ここが、俺らの部室……」
「そうだよ。何か思い出せたりしない?」
「うーん…………ダメだ」
考え込むが何も思い出せ無い。何となく懐かしさというか安心感は感じられる場所ではあるが、思い出せる事は結局何も無かった。
「そっか……。まあ、それなら仕方ないね。ゆっくり思い出していこう」
笑顔でそう言ってくる歩夢に少し申し訳なくなる。
「そうだ!先輩に、改めて自己紹介しませんか?」
「確かに、私達の事も忘れているのなら、その方がいいですね」
「なら、かすみんからやりますね!」
そう言って1人の少女が翔琉の前に出た。
「中須 かすみです!かすみんって呼んでくださいね!」
「わかったよ中須」
「かすみんです!!もう!先輩記憶を失う前は、かすみん!かすみん!って言いながら頭撫で撫でしてくれてたんですよ〜」
「本当か?」
「嘘です」
「嘘」
「かすかす嘘はダメだぞ〜」
「ぎゃー!?かすかすは禁止ですぅー!!」
他の1年生2人と金髪の少女にバラされて手をジタバタしてるかすみ。みんなその様子に失笑しながら、続けて自己紹介をしていく。
「桜坂 しずくです。1年生で演劇部にも入ってます」
「私は天王寺 璃奈。改めてよろしくね」
「おう。てか、そのスケッチブック何だ?」
昨日から密かに気になっていた事を彼は尋ねる。
「これは璃奈ちゃんボード。私は感情を顔に出すのが苦手だから、これを使って表現してるの」
「な、なるほど……。前見えなく無い?」
「意外と大丈夫。璃奈ちゃんボード『いえい』」
言葉の通りボードの表情を巡ってから変えて翔琉に今の感情を伝える璃奈。それに少し驚いてる翔琉の事を見て微笑むしずく。
「次はアタシだね!宮下 愛だよ!気軽に呼んでいいから改めてよろしくね、かけるん!」
「ああ……ってかけるん!?それ、俺のこと!?」
「当ったり前じゃん!かけるんはかけるんだよ!」
「ええー……まあ、いいか」
「私は優木 せつ菜です。歩夢さんと愛さん、そして貴方と同じ2年生です。大変でしょうけど、私達がサポートしますから安心して下さい!」
「頼りにしてるよ」
明らかにギャルな見た目でノリもギャルな愛と如何にもアイドルと言った服装をしているせつ菜。
「朝香 果林よ。読モもやっているわ。何か困った事があったら言ってね?お姉さんが優しく、教えてあげるから」
「近江 彼方だよ〜。よろしくね〜…………すやぁ……」
「エマ・ヴェルデだよ!スイスから留学して来たの。何かあったら私も手伝うから何時でも頼りにしてね?」
「ありがとうございます………え、1人寝てない?」
大人のお姉さんという言葉が似合いそうな果林。立ったまま眠りに誘われていく彼方。柔和な笑みで彼方を支えるエマ。
「そして私、上原歩夢と部長のあなた。この10人がスクールアイドル同好会のメンバーなんだよ」
翔琉の隣りに来てそう言う歩夢。
こうして見ると全員個性的だと感じた。自分はこれまでこのメンバーを纏めて来たのか……そう思うと、これから改めてやっていけるのか少し不安になってくる。まあ、やれるだけやってみるかと、心の中で自分を奮い立たせるのであった。
「ねえ、今日部活終わったらみんなで遊びに行かない?かけるんにもう一度アタシ達のこと知ってもらいたいじゃん!」
愛がそんな事を提案した。
「それは良いかも知れませんね!先輩はこの後お時間大丈夫ですか?」
「まあ、特に何も無いから大丈夫だ」
しずくの問い掛けに彼はそう答えた。翔琉も皆の事をよく知りたいと思っているので丁度良い機会である。
「だったら決まりですね!特別にかすみんがエスコートしますよ!」
「なら、早く練習を済ませちゃいましょう」
全員が練習をする為、移動を始める。翔琉もその背に続いて歩き出すのであった。
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新城野 明里は暗い部屋の中にいた。彼女はスイッチを押して電気を点ける。照らされた部屋には幾つものスパークドールズや怪獣カプセルがガラスケースの中に収められており、机の上のパソコンには黒き異形のモノが映されている。
彼女こそ、昨日デマーガを呼び出した元凶なのだ。
「ねえ、ルギエル。昨日のウルトラマンの事、何か分かったー?」
鞄をベッドに放り投げながら異形のモノ=ルギエルに声を掛ける。
《いやいやいや。残念ながら、私にもサッパリだ》
「えー。つっかえないなぁー」
《これはこれはこれは、手厳しい……》
笑いながら画面の中でお手上げと言う様なポーズをするルギエル。彼女はそれを無視してケースの中にある、とある怪獣カプセルに目を向けていた。
「あれさぁー。絶対邪魔になるよね」
《まあ、確かに今現在一番の障害だろうねぇ》
「ならさ、さっさと殺しちゃった方が良いよね」
そう言った明里は見つめていた怪獣カプセルをケースから取り出した。カプセルに描かれているのは、深き闇を纏った暗黒の支配者。
《おやおやおや、いきなりそれを使うのかい?》
「うん。ちっぽけなカプセル一つの力だから出来るのはデッドコピーだけど、あのウルトラマンくらいなら楽勝でしょ」
笑顔を見せる明里はカプセルを起動し、それに応じる様にルギエルは闇を放つ。その顔はとても楽しそうで、その瞳はとても美しい。しかし、彼女の心は誰よりも深く暗く黒く塗り潰されていた……––––––––
《エンペラ星人……!》
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・天地 翔琉
虹ヶ咲学園音楽科2年生。身長179cm。3月1日生まれの魚座。本作主人公。ある日、何故か記憶喪失になり更にウルトラマンエックスに変身する力を得ていた。記憶を失ってからは少し気怠けで楽観的な性格だが、心の中には熱く優しい想いを秘めた男子となっている。元々は高いコミュニティ能力と行動力を持ってスクールアイドル同好会を廃部の危機から救った(つまりスクスタのあなたと同じ性格)。記憶を失った理由もエックスに変身出来る理由も全て不明。
・ウルトラマンエックス
身長:45m
体重:4万5千t
飛行速度:マッハ9
疾走速度:マッハ2
水中速度:マッハ1.8
ジャンプ力:一跳び750m
腕力:8万t
握力:8万2千t
天地翔琉が変身するウルトラマン。エクスデバイザーの上部ボタンを押す事で《X UNITED》の音声が鳴り変身が完了する。これは本来のエックスへの変身方法と多少違うのだが理由は不明。戦闘方法は翔琉の脳裏に浮かんで来るらしい。必殺技は腕をクロスして放つザナディウム光線。この技には怪獣をスパークドールズにする効果がある。
・デマーガ
別名:熔鉄怪獣
身長:50m
体重:5万5千t
体の79%が溶けた鉄で構成された怪獣。黒い体は高い熱量を持ち、出現時にはその影響で川の水が沸騰してしまうほど。頭部の黄色い角に神経と熱源が集中しているのが弱点。口から熔鉄熱線を吐いて攻撃するほか、背から熔鉄弾を放つこともできる。
明里によってスパークドールズから解放されエックスと初めて戦った怪獣。街を破壊しながら虹ヶ咲学園がある方向に進んでいくが登場したエックスに阻まれ、彼が初変身に驚いていた事もあって最初は攻め立てていたが覚悟を決めたエックスに圧され、最後はザナディウム光線を喰らい敗れた。
今回はこの作品での歴史、設定について大まかに説明しました。
本作にはウルトラシリーズ以外からも様々な怪獣が登場する予定です。名前を伏せた物も多いですが、過去に何が現れたのかは気付かれた人も多いと思われるんご……。
そして次回……最後に名前が出たあの暗黒の皇帝が君臨することに……果たして翔琉の運命は?
是非お楽しみにしてほしいんご。
それでは、感想、質問、高評価、是非是非お待ちしてるんご!