RAINBOW X STORY 作:山形りんごをたべるんご
大変遅くなりました!
先日3月1日は歩夢ちゃんの誕生日!
そしてこの作品の主人公である翔琉君の誕生日でもあります!
2人ともおめでとう!
さて、そんなこんなで久しぶりの虹X、早速どうぞ!
「待てゴラァァァァァァァァ!!!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃッ!?!?」
虹学の校内で追いかけっこが繰り広げられていた。
追われているのはダダ。同好会の皆を幼児化させた犯人。
追うのは翔琉。ダダを捉え、彼女達を救う為に走る。
「止まれやあああああああ!!」
叫ぶ翔琉だがダダが止まる筈も無い。爆走する2人を見た生徒達は驚き道を開ける。
「くっそぉ……!? こうなれば!?」
ダダは吹き抜けから飛び降り、3階から1階へと着地。少し失敗して転びはしたが問題は無い。高い身体能力を持っている様だが所詮はひ弱な地球人。奴ではもう追って来れまいと思い、馬鹿にしてやる為に飛んだ場所に目線を向けるが……。
「逃すかあああああああああ!!」
「何ィィィィィィィィ!?」
翔琉は迷うこと無く、吹き抜けから1階へと飛び降りてしまった。普通なら無事では済まない高さなのだが彼は問題無く着地し、顔を上げてダダの方を見て不敵に笑った。
「ば、馬鹿な!? 貴様本当に地球人か!?」
「どっからどー見ても地球人だろが馬鹿が」
また駆け出す翔琉。それから逃げる為にダダも再び走り出した。
叫びながら全力で逃げるダダと、吼えながら全力で追い掛ける翔琉。その様子に呆気に取られている生徒が居た。左側頭部に結ばれた髪飾りに触れながら、彼女は彼らのことを見送るのであった。
「あれは……」
「うわあああああ!?」
学園内を逃げに逃げまくったダダが扉を開けて頭から滑り込んだのは体育館だ。もうヘロヘロであり、匍匐前進でどうにか逃げて行こうとするが、そこへ翔琉が飛び込んで来た。
「もう逃げられねえぞおかっぱ野郎! 観念して縄に付きな!」
指を鳴らしながら翔琉は迫っていく。何とか立ち上がったダダは彼に怯えながら後退っている。
「チェックメイトだ」
「こうなったらぁ……!」
突っ込んでいく翔琉。それに対してダダは光線銃を構えた。これは同好会の皆を幼児にした物。ダダは彼のことも幼児化させてしまうつもりなのだ。そうすれば彼から逃げれるし、何なら倒すことだって出来るだろう。エネルギーを消費してしまうのは勿体無いが、背に腹は代えられない。
「なッ!?」
「くらえぇぇッ!!」
銃口から光が放たれた。勢い良く駆け出していた翔琉はそれを躱すことが出来ず、光に包まれてしまい────
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「かすみんお家に帰りたい!」
初めにそう切り出したのはかすみだった。
たくさん遊び、おやつを食べたりしていた彼女達だが、それにも段々と飽きが来てしまった様だ。幼い子である以上無理もないだろう。そしてそれに釣られて、他の子達も帰りたい気持ちが湧いて来てしまっていた。
「わたしも帰りたい……」
「あいもおばあちゃんのところ行きたい!」
「
せつ菜も愛もエマも、みんなが帰りたいと言い出し瞳に涙を溜める。特にエマは異国の人ばかりが居る状況なのが更に不安を掻き立てていた。
「ちょ、みんな……!?」
「だ、大丈夫ですよ!? もう少ししたらお家の方々が迎えに来ますから!」
戸惑う明里に何とか宥めようとする涼風。しかし彼女達の不安はどんどん伝染し大きくなっていってしまう。
「ううぅ……うわあああああんっ!!」
「ああああああああああっ!!」
「お母さああああああああんっ!?」
1人が泣き、連鎖する様にまた一人一人と泣いていき、とうとう皆泣き出してしまった。9人による大合唱は部室内に響き渡る。どうすれば良いのかと涼風は少しあたふたとしていた。
明里も、どうにかしなくてはと思ったのだがその時……。
───泣いちゃダメよ。
───■■、貴女はとても良い子なのよ。
───だから、泣かないで。
想い起こされる記憶。かの日に誰かから言われた言葉。そして───
───お前は、■■■だ。
ふらりと立ち上がる明里。過去が彼女の中で走り、感情を掻き混ぜていく。止まらない想いが膨らみ、破裂してしまいそうだ。そんな事をすればどうなるか?
解り切っているが熱く、痛くなる胸を抑えられない。その手が、隠されていた黒き王の力に伸ばされていき───
音が聴こえて来た。明里はそれに気付き手を止める。ふと見ると、部室にあった電子ピアノを使って優里香が演奏をしていた。彼女の奏でる音は優しく、暖かく、心に浸透していき安心感が与えられている様だった。
先程まで泣いていた皆も泣き止み、彼女の演奏に聴き入っている。
そしてそれが終わると、彼女達は笑顔になって優里香の周りに集まっていった。
「かける君のママすごい!」
「じょうず!」
「ピアノ、きれい」
「
「ふふっ、ありがとう」
彼女達の頭を撫でる優里香。あっという間に全員を泣き止ませてしまった彼女を見て涼風も明里も驚いている。
「さあ、もう少しだけ私達と遊びましょ?」
『はーいっ!』
みんな手を上げて元気に返事をする。まるで本物の保育士の様な手腕に涼風は感服した。
「凄いですね天地さん……保育士や幼稚園教諭の経験が?」
「いえいえ全然。さっきの曲、昔翔琉が泣いた時によく聴かせていたの」
「翔琉君に?」
明里の言葉に彼女は「ええ」と首を縦に振る。
「これを弾くとあの子、それまでの大泣きが嘘みたいに必ず泣き止んで笑顔になっていたわ。よっぽど好きだったのねぇ。みんなにも効果あるかなって思って弾いてみたけど笑ってくれて良かったわぁ」
そう言って彼女は笑った。同好会の皆もさっきまでの喧騒が嘘だったかの様な笑顔を見せている。
「曲名、何て言うんですか?」
耳に入ったことの無い曲だったので明里は気になってそう尋ねる。その問いに優里香は少し考え込んだ。この曲は既存の物ではなく彼女のオリジナルらしく、曲名は特に付けていなかったとのこと。
そして考えた後、優里香は歩夢の頭を撫でてから口を開いた。
「『虹の行く先』、って言うのはどうかしら?」
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光線を受けた翔琉のことを、カタラはギャラリーから見下ろしていた。彼が何かを探していたこと、そして校内に自分やダークメフィスト以外の気配を感じていたことから少し気になって彼のことを見張っていたのだ。
そしたら何とも面白そうなことになっているではないか。
「肉体と精神を逆行させる光線、か。昔ボクもアレで遊んだことあるから懐かしいなぁ。さて、翔琉君は一体どうなるのかな?」
ウルトラマンに変身する力を持った彼がただ子どもになるのか、それとも……。その結果にカタラは大変な興味を持っていた。
光が翔琉を包み込む。それを見て逆転勝利を確信したダダは高らかに笑った。
しかし……。
「んっ? あ? 何んもなってねぇぞ?」
光が消えてそこに居たのは、いつもと変わらない姿の翔琉。ダダはそれに目を見開く。
「ば、馬鹿な!? 故障か!?」
光線銃を見てみるが壊れた様な形跡は一切無い。ならばともう一度幼児化光線を放つ。だがやはり、翔琉には全く効果が無かった。
「何故!? どうして!? 何がどうなっている!?」
理解の出来ないダダ。この光線を浴びた者は肉体と精神が子どもになる。それは間違い無いことなのだ。しかし翔琉には全然効いておらず、元の姿のままになっている。ダダは意味が解らず困惑していた。すると……。
「オイ」
「へっ?」
眼前に拳を握り締めた翔琉が立っていた。そしてそれは、流れる様にダダの顔面に叩き込まれ、奴の意識を刈り取ってしまうのであった……。
「よし、解決ッ!!」
何だアレは?
カタラはそう思わずには居られなかった。今目の前で起きたのは普通の生命体ならば決して有り得ない事象。一体どういうことなのか、カタラも理解が出来無いでいた。
「………どうやら、軍団が来る前に調べて置いた方が良さそうだね」
いつもの笑顔では無い真剣な眼差しでXioに通報する翔琉のことを見ながら、カタラは闇に包まれて消えていった。
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翌日。翔琉は教室の自席に座ってから窓の外を眺めていた。
光線銃には幼児になった者を元に戻す機能が付けられており、それによって同好会の皆は元の姿に戻ることが出来た。
その際幼児の時に着ていた服が破けて裸になり、現場に居た翔琉が所謂ラッキースケベをしてしまう何てことも。もし好感度が低かったらボコボコにされてたかもと彼は後に語る。
因みに子どもになっていた時の記憶は皆無いらしい。
大変な事件であり、手を貸してくれた明里、そして優里香には強く感謝している。彼女達も色々と楽しかったと言っていたし、被害者こそいるが怪我人や犠牲者が出なかったことから決して悪いばかりの事件では無かっただろう。
そういえば自分は何故子どもにならなかったのだろう?
やはりウルトラマンだからだろうか?
彼は考えたが明確な答えは出ない。まあ、ならなかったお陰で解決出来たのだし、終わり良ければ全て良しと思うことにした。
「翔琉君っ、部室行こ!」
歩夢がやって来て誘う。
ふと、子どもだった時の歩夢の姿が重なる。記憶を思い出せば、幼い頃に彼女と遊んだ日々も取り戻せる筈。なら、そちらも頑張ってみるのも悪くはない。
「よし、行こう」
立ち上がり共に歩く。掛け替えの無い過去を取り戻し、想い出を語れる様になることを夢見ながら彼は彼女よりも少しだけ前に進むのであった。
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オペレーションベースX内にある取調室で、逮捕されたダダは取調べを受けていた。彼の目の前にはXio隊長である沙優が坐り、その横には副隊長のザムザがいる。
「貴方がスクールアイドルを子どもにした動機は理解出来ないけど分かったわ」
「それどっちだよ?」
「行動理由は分かったけど共感は出来ないってことよ」
「恥を、知れ」
2人から冷たい目線を向けられて萎縮するダダ。
「本当に最悪だぁ……。計画は全部失敗するし、高い金叩いてあの銃を買ったというのに、何故かあのガキには効かないし……! ちくしょおおおおお!!」
ダンダンと机を叩く。もう何を叫ぼうが無駄なのだが、一つだけ気になる台詞があったのを沙優は聞き逃さなかった。
「効かなかった? 光線が?」
「ああ、そうだよ……あのガキ、お前らXioの仲間なのか? あの銃は相手が生命体ならどんな種族だろうが確実に肉体と精神を子どもに逆行させる代物なのに、何で効かないんだよぉ……?」
ダダの言葉に2人は少し眉を顰める。
「………ねえ、貴方は彼に間違い無く子どもにする光線を撃ったの?」
「そうだよ。確かに慌ててはいたが間違い無い」
「でも、効果は無かった……」
「記憶を、失っているから、ではない、ですか?」
ザムザがそう言うが、ダダは「それ無い」と否定する。
「覚えて無いって言うのは単にそれを引き出せないってだけで、記憶ってのはちゃんと保持されている。だから今記憶喪失だから効かないってことは無い。脳が大きく損傷していたら話は別だが、アレはそういう高性能な武器なのだ。記憶を基に精神を幼児化させ、それに伴い肉体も子どもにするというな」
「だとしたら、尚更どうして翔琉君は……?」
暫くの沈黙。何故彼は無事だったのか?
その理由を探っていた時、沙優はふとある事を思う。
「貴方の銃、『記憶を基に精神を幼児化させ、肉体も子どもにする』、のよね?」
「ああ、そうだ」
「もし、別のものだったら?」
「へ?」
沙優は真剣な表情で、ダダに問い掛けた。
「記憶、肉体、そして精神、その中に、本人ではない別のものが有ったとしたら……?」
自分を探し続ける。
みんなの笑顔を思い出したいから、みんなを安心させたいから、みんなと過ごした日々に想いを馳せたいから。
いつかきっと、取り戻せると信じてカケル。
その先にあるモノが何かも知らずに。
だれかがわらう。けらけらとわらう。
そしてそらから、くろいくろいひかりがおちてきた。
次回、「翡翠ノ少女」