RAINBOW X STORY   作:山形りんごをたべるんご

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大変お待たせしました……!



74.嫌ダ

 

 

 

 

 

───これが例の?

 

───ああ。運良く手に入ったよ。

 

───噂には聞いていたが、本当に存在してたとは……驚いたな。

 

───僕も見つけた時は驚き、同時に歓喜したよ。最高の研究材料を手に入れられたとね。これが在れば、僕達は様々な恩恵を得ることが出来るだろうさ。

 

───僕達、じゃなくて“僕”じゃないのか?

 

───……一番喜んでるのが僕なのは間違い無い。だが、我々にとっても有意義な研究が出来るのは確かさ。この希少な存在、利用しない手は無いだろう?

 

───まあ、確かにな。

 

 

 

 聞こえる言葉に瞳を開く。映るのは知らない空間、知らない者達。そして身体が動かないことを続けて理解する。

 

 

 

───お、気が付いた様だぞ。

 

───ん?ああ、おはよう。

 

 

 その者達はこちらを振り向く。

 

 

───予定より早いが始めるとしよう。大丈夫、心配することは無いよ。きっとすぐに何も分からなくなるからね。

 

───酷い言い様だ。暴れたらどうする?

 

───どれだけ暴れても無駄さ。今の力じゃ抜け出せない。それに仮に奇跡が起きて抜け出したとしても、僕と君ですぐに捕まえれるさ。

 

 

 その言葉通り、瞬き以外の動きが一切出来ないでいる。

 

 

───殺さずに押さえる自信は無いぞ。

 

───あはは、それは勘弁して欲しいかな。この貴重な実験材料を失うのは悲しい。なかなかに変えは見つからないだろうからね。

 

───まあ、善処だけはしてやろう。

 

───助かるよ。

 

 

 目の前の者達が何を話しているのか解らないが、急いでここから逃げなければならないのは間違いない。しかし身体は動く事無く、眼前の光景を見つめるしか出来ないでいる。恐怖が、次第に拡がっていくのを感じた。

 

 

───さあ、始めよう。

 

 

 何も理解出来ないまま、次の瞬間に襲って来たのは魂を引き剥がされる様な激痛であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「いやー、凄かったねぇ栞子ちゃん」

「うん。まだ一年生なのに、あんな風に自分の考えを発表出来るだなんて凄いよ」

「私圧倒されちゃったよ〜。流石は三船のお嬢様って感じだね」

 

「今の生徒会長には悪いけど、あれじゃあ三船さんの方が良いなって思うよなぁ」

「俺もそう思う。完全に霞んでたし」

 

「なんか、これもう決まった様なもんじゃね?」

「バカ、生徒会長に失礼だって! えっとぉ……名前何だっけ?」

「お前の方が失礼だろ!」

 

「中川さんだっけ? 言っちゃ悪いが勝ち目は薄いかなぁ」

「今の状況に不満は無いけど、三船さんの方が良いかなってなるよな」

 

 

 聴こえて来る生徒達の声が、チクチクと胸に刺さる。

 公開討論会、菜々は自分の想いをしっかりと伝えた。虹ヶ咲学園の生徒みんなが大好きなことを一生懸命取り込める学園を作って行きたい。みんなの頑張りを全力で応援して行きたいと。

 

 しかし、栞子が考えるビジョンはよりハッキリとしたものだった。生徒達の適性を見て、合致した道を示す。それによって多くの成功体験を通して有意義な高校生活を生徒全員が歩んで行ける様にするというものだ。今の虹ヶ咲の生徒達をより良い方向へ導くことを最大の目的としているという彼女の言葉に、菜々は圧倒されてしまった。

 

 

 何より極め付けは栞子から言われた言葉。

 

 

───貴女自身が、大好きな事をちゃんとやれてないのでは?

 

 

 反論が出来なかった。彼女はスクールアイドルフェスティバル開催の為に尽力していた結果、生徒会長としての業務が疎かになっていた。そして今の彼女はこの選挙活動の所為でスクールアイドルとしての活動碌に出来ないでいる。

 スクールアイドル(優木せつ菜)生徒会長(中川菜々)、どちらも大切で大好きな自分自身。しかしどちらかに力を入れた結果もう一方を疎かにしてしまっている。手を抜いているつもりは一切無かったが数字には確実に現れており、栞子の言う通り、彼女はどちらもちゃんとやれておらず中途半端な状態であった。

 

 その後は菜々はまともな返しが出来ず、只々栞子から言われるままとなってしまった。この討論会は栞子の独壇場になったと言っても過言ではない。

 

 

「そうですよね……。あの討論会は三船さんの勝ちでした。誰が見ても、三船さんの方が良いって思いますよ……」

 

 

 でも……───

 唇をグッと結ぶ。自分が負けたら同好会が無くなってしまい、みんなのスクールアイドルフェスティバルへの努力が無駄になってしまう。それだけはどうしても避けたい。

 どうすればと思っていた時スマホにメッセージが届く。絵里とダイヤからだ。

 

 

《お疲れ様、せつ菜。公開討論会は上手くいった? いろいろ聞いてたから心配で、次に集まる時まで待てなくて》

 

《お疲れ様です。その後いかがですか? 同じ生徒会長として、どの様になったのか気になりまして……。良かったらお返事下さい》

 

 

 二人とも、彼女のことを心から心配してのメッセージだ。

 

 

《お疲れ様です。ご心配をおかけしてすいません。感触はあまり良くなくて、正直苦しいところです……。対立候補の三船さんに何も意見を返せませんでした。準備不足ではなく、私の真剣さが足りなかったのだと思います。ですが、再選挙に向けて出来る限りの事をしていきます。いろいろと相談にも乗って下さって、ありがとうございます!》

 

 

 絵里もダイヤも、生徒会長とスクールアイドルを両立させており、菜々はそんな彼女達からどの様にしていけば良いかアドバイスをもらっていた。

 

 

「2人はちゃんとやれている……。私もしっかり頑張らないと……」

 

 

 でないと、同好会が無くなってしまう。そんなことを認める訳にはいかない。何が何でもこの選挙には勝たなければならない。しかし、今の彼女には栞子を乗り越える光景が見えてこなかった。

 

 

「私の大好き……」

 

 

 栞子から言われた事を改めて思い返す。どうしたら状況を打開出来るのか。今の彼女にはそれを考える余裕は無かった。

 

 

「せ、菜々ちゃん!」

 

 

 背後から声を掛けられる。振り向いた先に居たのは同好会の仲間達。

 

 

「皆さん……」

 

 

 ふと、菜々の中にある考えが浮かぶ。今のどっち付かずのまま選挙に挑み、それで負けてしまったらスクールアイドル同好会は廃部となってしまい、彼女達の大好きを奪うことになる。

 更に今、彼女達には選挙活動を手伝ってもらっており、その結果スクールアイドルフェスティバルの準備はμ'sとAqoursのメンバー達に任せっきりになっている。彼女達が本当にやりたい事であろう活動を自分の都合で妨げ、他校の者達に負担を強いてしまっている状況。余りにも身勝手に思えた。

 このままでは以前、自分のやり方を押し付けた所為で同好会を潰し掛けたのと何の変わりもない。

 だったらいっその事……。

 

 

「みんな菜々先輩のことが心配で、居ても立っても居られなくて……」

「菜々ちゃん?」

 

 

 話し掛けたのに何処か上の空な様子の彼女。彼方に名を呼ばれてハッとし、ちょっと苦しそうに笑った。

 

 

「す、すいません。いろいろあって、ちょっと疲れまして」

 

 

 無理して笑っているのは明らかで、皆不安な表情になる。

 

 

「菜々ちゃん、えっと……」

「私、少し寄る所がありますので……お先に失礼しますね」

 

 

 そう言って踵を返すと足早にその場を去っていった。歩夢は彼女の名を叫び追い駆けようとするが、その肩を翔琉が掴んで止める。

 

 

「か、翔琉君……?」

「俺に任せてくれ」

「……大丈夫なのね?」

 

 

 果林の問い掛けに頷き、翔琉は菜々追っていく。その背中を、歩夢達は彼が菜々を救ってくれることを祈りながら見送るしか出来ない。

 空は皆の中に少しある不安を煽る様に、暗雲が広がっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 買い物を終えた4人は渋谷にあるファミレスで休息を取っていた。買った物を見てニコニコと笑いながら会話する女性2人。一方男性2人は彼女達が想定以上に買い過ぎてその荷物を持っていたことから、そこそこ疲れが溜まってしまっている様だ。

 

 

「いろいろと買えて良かったわねぇ」

「そうね! これで何時産まれて来ても大丈夫だわ!」

 

 

 そう言ってお腹に手を当てる優里香。

 

 

「いやいや、そんな急に産まれて来られたら流石に大変だよ」

 

 

 大翔は苦笑いするが、優里香は「そうかしら?」と返す。それを見て美優子と蓮二は笑った。

 

 

「そういえば2人は子どもの名前、考えてる?」

 

 

蓮二が天地夫妻にそう尋ねる。

 

 

「うーん、考えてはいるんだけど、まだなかなか決まらなくて……。いくつか候補あるんだけどぉ…」

「僕らと一緒だな」

「一生のものになるものねぇ……」

 

 

 産まれて来る子の名前をどうするか。まだ少し先とはいえとても大切な事だ。優里香、美優子、蓮二の3人が唸っている中、大翔が自信有り気に笑顔を浮かべていた。

 

 

「どうしたの大翔さん?」

「実はもう考えてあるんだ、産まれて来る子の名前」

 

 

 彼の言葉に3人は驚く。

 

 

「いつの間に!?」

「ずっと前からね。もし自分に子どもが出来たらこの名前にしようって決めてたんだ。もちろん、男女どちらもあるぞ」

「へぇー。因みになんて言う名前なんだい?」

「それはだなぁ……」

 

 

 溜める大翔。優里香達は「それは?」と興味津々に迫る。

 

 

「…………まだ秘密だ」

 

 

 思わずズッコケる3人。

 

 

「そ、それは無いでしょ!?」

「あはは! でもせっかくだし、ちゃんと産まれて来た時に発表したいんだ」

「その時はちゃんと教えてよ? 女の子の方の名前も気になるし」

「もちろん! 怪獣災害のあるこの世界で、強く生きていけるように想いを込めた大切な名前なんだ」

 

 

 日本に於ける怪獣災害は世界平均を軽く超えており、人生で怪獣に遭遇しないのは宝くじで一等を当てるより珍しいなんて言われてれ怪獣大国と呼ばれる程。そんな場所で産まれて来る子達は生きていかなければならない。

 

 大変な事も多々あるかも知れないがそれでもこの子達には負けずに進んでもらいたい。そんな想いを、大翔は名前に込めたという。

 そんな彼の手を優里香が優しく両手で包み込んだ。

 

 

「大丈夫。私達の子も、美優子達の子も、この世界で強く生きていけるわ」

「…………そうだね」

 

 

 見ると蓮二と美優子も頷いていた。

 激動のこの世界。そこで自分達の子どもが強く、そして何より幸せに生きてくれることを、彼らは心より願っているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くした後ファミレスを出た彼ら。陽は傾いており夜も近い。帰路に着く為にたくさんの荷物を抱えてから歩き出す。

 

 

「あら?」

「ん、どうした?」

 

 

 美優子が何かに気付いて空を見上げる。

 

 

「あれは……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の瞳に映ったのは、天より堕ちてくる空虚()であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 虹ヶ咲学園西棟の屋上。そこに菜々は居た。曇天の空を見上げる彼女。

 自分の所為でまた同好会が無くなろうとしている。ならばもう、取る手段は一つしかない。

 

 

「菜々!」

 

 

 そんな彼女の背後から1人の男が声を掛けた。翔琉である。

 

 

「翔琉さん……」

「よっ」

 

 

 彼は菜々の隣りに行く。

 

 

「すいません、ご心配をお掛けしてしまって……」

「ダチを心配するのは当然だろ」

 

 

 そう言って彼は笑った。その笑顔で気持ちが少しだけ楽になる。

 

 

「………俺は、菜々のやり方に賛成だ」

「えっ?」

「三船の方が良いって言う意見が多いのも分かってる。あいつムカつくけど、言ってる事は的を得てるしな。それでも俺は、菜々が提案してた大好きな事をやれる学校の方が楽しくて好きだって思う。俺や同好会のみんな、それ以外にもそう思ってるやつが居る筈さ」

 

 

 現状、菜々よりも栞子の方が優勢で生徒達から支持されているのは校内の様子を見る限り明らかだ。それ見て彼女も心が折れかけていた。だが決して、彼女のやろうとしている事を否定している人間ばかりではない。少なくとも同好会の存続を抜きにしても、翔琉達は菜々の目指すものに賛成していた。

 

 

「ありがとうございます。そう言って頂けるだけでも、凄く嬉しいです」

 

 

 「ですが……」と彼女は言葉を続ける。

 

 

「私がこれまで、同好会と生徒会を中途半端に行なっていた所為で皆さんに大きな迷惑を掛けてしまう事態になってしまいました」

「誰もそんな事思ってねえよ」

「でも実際、このままでは同好会は廃部となり、皆さんはスクールアイドル活動をすることが出来なくなってしまいます。これは全て、私の未熟さが招いてしまった事……私の責任なんです」

 

 

 曇天を見上げる菜々。ポツリ、ポツリと雨が降り始め、彼女の頬に落ちる。

 

 

「これ以上、中途半端なことをして皆さんに迷惑を掛ける訳にはいきません」

 

 彼女が目指すのは生徒達が3年間、自分の大好きな事に打ち込める学園。

 意を決した様に彼女は翔琉の方を向き、それから少し笑った。

 

 

「私は、スクールアイドル同好会を退部します。これから生徒会長選挙には、私1人で挑みます」

 

 

 決意を込めた瞳が彼に向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 オペレーションベースX内のラボでは、ラボチームによるエクスデバイザーの解析が日夜行われていた。翔琉が謹慎処分となりデバイザーを預かってから1週間が経過。その間ずっと調べ続けていたのだが……。

 

 

「だああああああああああああ!!!! ダメだ!!! 解らない!!! いや、解るんだ!!! 解ったんだ!!! デッドコピーを作れるくらいには解ったんだ!!! でも!!! 肝心の!!! 何の物質で作られてるのか!!!! 何故翔琉君が変身できるのか!!!! そもそもこれが何なのかがさっぱり解らない!!!!!」

 

 

 天井を仰ぎ叫ぶ陽花。その声量を受けて隣りにいたシャマラ博士が横転。ミキリとミハネは耳を塞いでいたが少しクラクラしてる。

 

 

「お、落ち着け馬鹿者!」

「私馬鹿じゃないっす! 頭は良い方っす!」

「でも声うるさい」

「でも声大きい」

 

 

 博士に反論するが、2人からはごもっともな事を言われて胸に刺さる。

 

 

「ううぅ……。でも、本当に何なんでしょうこのデバイザーは……?」

 

 

 エクスデバイザーを手に取る陽花。これのデータからサイバー怪獣の実体化、ジオデバイザーの作製、サイバーカードの有効活用など様々な事を成せた。しかしこのアイテムの根本的な事は何一つ解明していない。彼の事を知れればと思いエクスデバイザーをより徹底的に調べてはいるが、謎は深まるばかりだ。

 

 

「少なくとも地球の技術では無い。更に言うならこの宇宙の技術でも無い。全く別宇宙の謎の技術としか言い様がないな」

「ミキリ達にも解らないなー」

「ミハネ達でも解らないねー」

 

 

 シャマラ博士達異星人の技術を持ってしてもデバイザーの完全解析は不可能だった。

 

 

「翔琉君の助けになればって思ったんすけど……まるでダメっすねぇ……」

 

 

 陽花は溜め息を吐き意気消沈する。そんな時、基地内に警報が鳴り響く。突然の事に驚きながらも、彼女達は迅速に司令室へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………本気か?」

 

 

 雨に打たれながら菜々の瞳を見つめ返す翔琉。

 

 

「はい」

「それをアイツらが認めると思うか?」

 

 

 翔琉の言葉に菜々は「それは……」と言い淀む。同好会のメンバー達は、彼女が辞める事を簡単には認めないだろう。

 

 

「それでも、これ以上私の我儘で皆さんに迷惑をかける訳にはいきません。ちゃんと理由を伝えて説得します」

 

 

 彼女の意思は固い。みんなの大好きを守る為にも自分が身を引き、選挙戦に臨むしかないと覚悟を決めていた。これ以上、中途半端な事をする訳にはいかないのだ。

 

 

「これで良いんです。こうすればみんなの大好きを守る事が出来ます。それが私の、今一番やらなければならない事ですから」

「………」

 

 

 考える様に目を瞑る翔琉。雨は少しずつ強くなっていき、彼らを濡らす。その時────

 

 

 

 

 

 

「ッ!?───あ、あれは!?」

 

 

 大地が揺れて轟音が響く。何が起きたのかと菜々が音の方向に目を向けると、そこには地より這い出てきたツルギデマーガの姿があった。ツルギデマーガは咆哮し、右腕の剣を振るってビルを切断。更に熔鉄光線を放って辺りを薙ぎ払った。

 

 翔琉もツルギデマーガに視線を移す。以前手も足も出ず、惨敗を喫した強敵。あの日以降現れてなかった奴が再び目の前に出現して暴れている。しかしエクスデバイザーが手元に無い今の彼はエックスに変身して立ち向かう事は出来ない。

 

 偶然か、将又奴自身の意思でか、ツルギデマーガが翔琉達のいる虹ヶ咲学園の方へと地響きを鳴らしながら向かってきた。

 

 

「このままじゃ……!? 逃げましょう、翔琉さん!」

 

 

 菜々は彼の手を取って引こうとするが……。

 

 

「翔琉さん……?」

 

 

 彼は一歩も動かなかった。

 

 

「俺は嫌だ」

「え、えっ?」

「菜々が、せつ菜が退部するなんて、俺は絶対に嫌だ」

 

 

 より激しくなる雨に打たれながら彼はそう言う。出動した3機のマスケッティがツルギデマーガに攻撃を仕掛けるが、奴は意に介さず進む。

 

 

「今はそんなこと言ってる場合じゃ……!?」

「そうだな、こんな状況で言う言葉じゃない。でも言わせてくれ」

 

 

 翔琉は彼女の肩に手を置いた。

 

 

「前にかすみにも、それに他のみんなにも何度も言った。お前達のライブをもっと観たいってな。その中には菜々も、せつ菜も入ってる」

「ですが……!」

「菜々は本当に良いのか?」

「えっ……?」

 

 

 マスケッティαからキングジョーデストロイ砲が、マスケッティβからレッドキング徹甲弾が放たれた。ツルギデマーガが一度足を止める……しかし効果はそれだけで、咆哮して再び進撃する。

 

 

「お前の大好きを、スクールアイドルを諦めて本当に良いのか? 絶対に後悔しないって言えるか?」

「でも……でも! 私の我儘で、これ以上皆さんに迷惑は掛けられません! 私が同好会を辞めて、1人で選挙に挑まなければならないんです!」

「我儘言って何が悪いんだよ!!」

 

 

 菜々の両方を、少し強い力で掴んだ。

 

 

「良いじゃねぇか我儘言って、自分の好きな事やって。それは決して悪じゃねえ」

「……」

「俺は自分の大好きに真っ直ぐな菜々の事が好きだ」

 

 

 好きと言われて、彼女の頬は少し赤くなった。

 

 

「お前の大好きを、我儘を、俺は全力で助ける。他のみんなだって同じ気持ちの筈だ。だから俺達を頼ってくれ……!」

「わ、私は……」

 

 

 彼女の頭に優しく手を置く。

 

 

「約束しただろ、力を合わせて頑張るって。どんな事があっても、俺は最後まで菜々の力になる。1人になんか、絶対にさせねえ」

「翔琉、さん……」

 

 

 何があろうとも彼女の味方でいる事。それは決して揺るがない彼の信念。大切な仲間である菜々の為なら、翔琉はどんな我儘でも受け止めるだろう。

 

 

「…………嫌です……」

 

 

 彼女の頬を伝うもの。それは雨水ともう一つ、心から出た涙だった。

 

 

「嫌です……! スクールアイドルを、同好会を辞めたくないです……! 生徒会長として生徒達の力になりたい……もっと皆さんと一緒にライブがしたい、もっともっと皆さんと競い合いたい、もっともっと……もっと! 皆さんと最高の時間を過ごしたい!! 辞めるなんて、絶対に嫌だ!!」

 

 

 心の底から吐き出された我儘。それを聞いて、翔琉は頷き笑顔を見せる。

 

 するとそこへ、翔琉を護衛する為に学園に来て彼の事を見守っていたリュウジが扉を勢い良く開け飛び込んで来た。

 

 

「翔琉!」

「リュウジさん……菜々のこと、よろしく頼みます」

 

 

 そう言って彼女のことをリュウジに預けると、彼はこちらへと進んで来ていたツルギデマーガの方へ目を向けた。Xioの攻撃で何度か足止めされた奴だったが、あと数百メートルの所まで迫って来ていた。

 

 

「翔琉、一体何を……?」

「俺も俺の我儘、突き通すっす」

「えっ……か、翔琉さん!?」

 

 

 何の事かと困惑するリュウジと菜々。そんな2人を置いて、翔琉は全力で走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツルギデマーガへ向けて走る翔琉。デバイザーは無く、変身出来ない状態だがそんな事は関係無かった。

 

 

「お前を倒す! みんなを守る! それが俺の今やりてぇ事だ!!」

 

 

 地面に転がってた瓦礫の一つを持ち上げ、叫びながらそれをツルギデマーガへと思いっ切りぶん投げた。瓦礫は瓦礫は奴の足下に当たる。

 

 

「掛かって来いや!! 俺は負けねえ!!」

 

 

 ツルギデマーガの怒りの咆哮にも負けない勢いで彼は叫ぶ。身体中から放たれる火炎弾が翔琉を襲う。その中を駆け抜けながら、彼は手を伸ばした。

 

 

「おらあああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何をやっとるんだアイツは!!?」

「「お兄ちゃん!?」」

 

 

 翔琉の無茶苦茶の様子はXio司令室からも確認出来た。

 

 

「リュウジ!! 避難指示は警察と消防に任せて今すぐ翔琉君を止めて!! ハヤテ達はツルギデマーガの気を彼から逸らして!!」

 

 

 沙優隊長の焦った叫びが響く。

 この場にいる誰もが彼の無謀に冷や汗を掻き、胸を握られたかの様な気持ちになっていた。

 

 

「た、隊長!!?」

 

 

 そんな中、陽花が声を上げた。皆が陽花を……いや、正確には彼女が目を見開いて見ている物に視線を向けた。

 それは眩い光を放っている、エクスデバイザーであった。

 

 

「これは……!?」

「一体何が!?」

 

 

 次の瞬間、更なる光を放ちデバイザーは跡形も無く消えた。突然の事に、誰もが言葉を失っている。

 

 

「まさか……!」

 

 

 モニターへと振り返る沙優。そこに移されていたのは、赤と銀の光の巨人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《X UNITED》

 

 

 

 

 

「はあああああ!!」

 

 

 エックスは飛び出した勢いのままツルギデマーガにタックル。奴を少しだけ後退させる。それに対してツルギデマーガは右腕の剣を振り上げた。後ろに跳んでそれを躱すが、鋒が少しだけ掠ってしまった。

 ひりつく様な痛みが彼の全身を襲う。

 

 

「くっ……!? 掠っただけでもこれかよ……!」

 

 

 咆哮して向かってくるツルギデマーガ。対抗してXスラッシュを連発するが、怯む事なく突っ込んで来る。

 

 

「だったら!」

 

《ULTRAMAN HIKARI LOAD》

 

 

 ウルトラマンヒカリの力を発動。顔面に向けてナイトシュートを撃った。直撃を受けたツルギデマーガは今度こそ怯み悲鳴を上げる。

 

 

《ULTRAMAN MEBIUS LOAD》

 

「うらああああああああッ!!」

 

 

 左腕にエネルギーを纏い、それを放つウルトラマンメビウスの技・ライトニングカウンターを撃ち込んだ。ナイトシュートで怯んでたツルギデマーガには有効打となった。苦しむ敵に、エックスは突っ込む。

 

 

《ULTRAMAN ZERO LOAD》

 

「はああああああ!」

 

 

 ウルトラゼロランスを手にし、それを叩きつけた。更に嵐の様に槍を振るってツルギデマーガを攻める。僅かな一撃でも喰らえば致命傷になる以上、反撃の隙を与えずに攻めまくるしか無い。

 

 しかしツルギデマーガも大人しくやられたままではない。至近距離で熔鉄光線を放った。エックスはそれを躱す為に体勢を崩したが、その隙にツルギデマーガの剣が襲って来た。

 

 

「があああッ!?」

 

 

 たったの一撃で大ダメージとなり、カラータイマーが点滅する。このままではまた、以前の二の舞になってしまうだろう……。

 

 

「そうは……いくかよ……!!」

 

《ULTRAMAN AGUL LOAD》

 

「だあああ!!」

 

 

 湊 博樹から授かったウルトラマンアグルの力を発動。後方に転がった後起き上がり衝撃弾・リキデイターを奴の右腕の剣に向けて撃つ。それは見事に命中。一瞬動きを止めた隙を見逃さず、即座に頭部から衝撃の刃・フォトンクラッシャーを再び剣を狙って放った。こちらも命中、そして右腕の剣を砕く事に成功。ツルギデマーガを大きく数歩後退させた。

 

 

《ULTRAMAN GAIA LOAD》

 

 

 更に読み込んだのは桜内 遥との絆の証であるサイバーカード・ウルトラマンガイアのカード。これによりガイアの力を纏い、両手を突き出して冷凍光線・ガイアブリザードを放つ。光線はツルギデマーガの足下を凍結させる。

 確実に動きの止められたツルギデマーガ。エックスはすかさず、クァンタムストリームを放って残っていた左腕の剣を粉砕した。

 

 カラータイマーの点滅は激しくなる。残された時間は少ない。それでも負ける訳にはいかないのだ。

 

 

「遥、博樹、力借りるぞ!」

 

《ULTRAMAN GAIA LOAD》

《ULTRAMAN AGUL LOAD》

 

 

 ガイアとアグル、2人のカードを続けて読み込ませる。大地と海、地球の力がエックスの身体を駆け巡っていった。

 

 纏わり付いてた氷を砕き、ツルギデマーガがエックスへと突進する。アイデンティティとも言える物を2振りも破壊され、その怒りは頂点に達していた。

 

 

「はあああああああああ!!!」

 

 

 凄まじい咆哮を放ちながら向かって来るツルギデマーガへ、エックスは叫びながら腕を振り回してエネルギーを溜め両手を合わせて胸の前に出し───

 

 

「フォトンッ!! ストリィィィィィィィムッッ!!」

 

 

 右手を下にずらし、強烈な光の奔流が放たれた。ガイア・スプリームヴァージョンが放つ最大の必殺光線・フォトンストリームだ。その光がツルギデマーガに直撃。奴の巨体を押し返していく。

 だがツルギデマーガも負けはしないと、踏ん張り大きく叫んだ。

 

 

「消し飛べえええええええええええッ!!!」

 

 

 叫びと共により力を込め、光線は肥大化。その奔流はツルギデマーガを呑み込む。どれだけ強化された怪獣であろうともこの光線を耐えられる筈がない。ツルギデマーガの肉体は跡形も無く消滅してしまった。

 

 

 エネルギーを使い果たした事によりエックスも消滅。翔琉の姿に戻って水溜りの出来たアスファルトの上に倒れる。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 右手に目を向けると、そこにはエクスデバイザーが握られていた。沙優に預けてオペレーションベースXにある筈のこれが何故自分の手元にあるのか?

 疑問が浮かぶが、それを考える余裕は今の彼には無い。

 

 

「翔琉!」

「翔琉君!」

 

 

 マスケッティを降りて向かって来るハヤテ、イヅル、紗季の声を聴き、未だ降り続ける雨に打たれながら、翔琉の意識は闇に沈んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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《おやおやおや。あのデマーガ、倒されちゃったねえ》

 

 

 スマホの中のダークルギエルがそう呟く。しかし明里は興味無いのか「ふーん」と返すだけだ。

 

 

《あの強さならウルトラマンを倒せると思ったんだがぁ……見当違いだった様だねえ》

 

 

 明里はベッドに転がる。ツルギデマーガには大して期待していなかったらしい。

 

 

《そういえば、最近カタラを見てないねえ?》

「どうでもいい」

 

 

 布団を被る明里。アイツが今何をやってようが興味など毛頭無い。寧ろ考えるだけでも不愉快だ。

 その後ルギエルが何を言っても、彼女が返事することは無かった。

 

 

《やれやれやれ》

 

 

 ルギエルもスマホからスッと消える。

 静かになった彼女の部屋。そこには何の感情も表に出さない、ダークメフィストだけがただ立ち尽くしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「フフッ……」

 

 

 空間の揺らぎより現れたカタラ。スクランブル交差点のど真ん中なのだが、行き交う人々はその姿が見えないのか一瞥することも無く傘を手にして歩いている。

 

 

「フフフッ、アハハハハハハハハッ!!」

 

 

 笑い声が響くが誰も見向きはしない。カタラは一頻り笑った後、笑顔溢れる顔を手で覆った。

 

 

「そっかぁ……そういう事だったんだね、翔琉君……。なら、どうしようかなぁ……?」

 

 

 堪えきれない笑いを漏らしながらカタラは何かを思案していた。

 

 

「うん、せっかくだし、こっち側に誘ってみようかな。多分向いてるもんね」

 

 

 カタラは空を見上げる。視線の先に広がってるのは雨を降らせる曇天。

 

 

「会いに行くよ翔琉君────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ウルトラマンを殺した君に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 とある惑星。そこに無数の怪獣、超獣、宇宙人の軍団が集まっていた。それを率いてるのは歪みから産まれた宇宙の帝王と呼ばれし黄金の鎧を纏った存在。亡霊として甦り、宇宙の全てを支配しようとする一族の末弟。

 

 

 長剣を掲げ、鋒を前方へ向ける。すると空間に穴が空き、その先には地球が見えていた。

 

 

「行くぞ……!!」

 

 

 その言葉を受けて興奮気味に叫ぶ怪獣軍団達。

 これより始まるのは圧倒的な侵略行為。我々が全てを破壊し、全てを完全に支配し尽くすのだ。それを止めれる者など誰1人としていない。ただただ勝利のみを確信し、奴らは進軍を始める───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギンガサンダーボルト!!」

「スペリオン光輪!!」

 

 

 しかしそこへ剛雷と刃が飛来。数体の怪獣と宇宙を砕き、切り裂き、討ち倒す。軍団は驚き、この足を止めてしまった。

 

 

「ッ!? 何だァ!!」

 

 

 帝王が叫ぶ。奴らの前に降り立ったのは、2人の光を纏いし巨人であった。

 

 

 

 

 

 

 

「いくぞ、一眞!」

「はい、リヒトさん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







待たせに待たせた虹X74話、如何だったでしょうか?

一度は落ち込んだ菜々を再起させ、どうにかツルギデマーガを撃破した翔琉。しかしこれは始まりに過ぎない様で……。彼にとって大きな危機が訪れようとしています。果たしてどうなるのか、ご期待頂ければと思います。


そしてここで重大発表です。

次回より、水卵様作「ギンガ・THE・Live!」と星宇海様作「Sunshine!!&ORB」の2作品とのコラボが決定しました!!!

コラボお話自体は以前よりさせて頂いており、この度ようやくここまで辿り着く事が出来ました。長らくお待たせしてしまって申し訳ないのです……。

エックス、ギンガ、オーブ。3人のウルトラマンが戦うのはあの軍団……。どの様な物語になるのか、是非お楽しみにして頂けたらと思います!


それではまた次回。
感想、高評価、質問、その他、是非是非お待ちしてます!






次回、「グア軍団襲来」


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