RAINBOW X STORY 作:山形りんごをたべるんご
短いですがどうぞんご!
エンペラ星人との戦いから数日後の朝。翔琉はベッドから起き上がり、寝癖でボサボサの頭を掻いていた。ぐっと伸びをした後首を回すとボキボキと音がなる。布団を剥がして立ち上がり、カーテンを開くと朝陽が差し込んでくる。
時刻は午前6時。外からは小鳥の
「あら、おはよう翔琉」
「っ、おはよ」
リビングに居たのは翔琉の母親・天地 優里香。おっとりとした雰囲気の心優しい女性で高校生の母親とは思えない美貌の持ち主。記憶を失ってから初めて会った時、本当に自分の母親なのかと翔琉も疑った程。彼女はテーブルに朝食を並べてからその椅子に着席する。
「翔琉も座って。冷めない内に食べましょう」
「ああ」
翔琉も座り、手を合わせてから朝食を食べ始めた。
「美味しい?」
「ん?うん、美味い」
「そう、良かった」
にっこりと柔和な笑みを浮かべる母。翔琉は黙々とジャムの塗られたパンを食べている。
「あ、ほら、顔にジャム着いてるわよ」
「え、どこ?」
「ここよ」
優里香はティッシュを取り、手を伸ばしてから翔琉の頬を拭く。自分でやろうとした事をやられて、少しむず痒い表情に彼はなってしまう。
「ちょっ……自分でやるからいいのに」
「ふふっ、良いじゃない。はい、取れたわ」
困った様に翔琉は頭を掻いた。
彼が記憶喪失になったと聞いた時、彼女は最初こそ驚いてたが意外とすぐに受け入れた。性格が前と違うことも特に気にしておらず、普段通りに翔琉と接している。
「学校の方はどう?困ってる事とか無い?」
「まあ、何とかやっていけてるよ。歩夢達もいるし」
「なら良かったわぁ。歩夢ちゃんや、部活のみんなには本当に感謝しなくちゃねぇ。あ、そうだ!今度みんなお家に呼んでパーティーでもしましょうよ!」
「何のパーティーだよ……」
「翔琉のXio入隊記念パーティーとか?」
「だからただのインターンだって」
呆れ顔になってる翔琉を見て彼女は笑う。
「それにしも驚いたわぁ。まさか翔琉がXioに入るだなんて…………やっぱりあの人の子どもって事なのかしらねぇ」
そう言って優里香はとある物に目を向ける。目線の先にあるのは仏壇。そしてそこには1人の男性の写真が置かれている。天地 大翔。優里香の夫であり、翔琉の父である男だ。
「あの人も困っている人を決して見捨てない人だったわ。最期のその時まで……」
「そう……なんだ……」
写真の中の笑顔の父。翔琉はもちろん覚えていないし、更に言うなら大翔は翔琉が産まれる前に亡くなっているので記憶に無くて当然なのだ。
強く、優しかったという父。そんな父が今の自分を見たらどう思うだろうか……。
朝食を食べ終え学校に向かう準備を完了させ、玄関に行く。そこには優里香と歩夢が待っていた。
「おはよう翔琉君!」
「おはよ」
挨拶を済ませ、靴を履く。
「じゃあ歩夢ちゃん、翔琉のことお願いね?」
「はい、任せて下さい!」
「本当に助かるわぁ〜。歩夢ちゃんなら、いつでもこの子を貰って良いからね?」
「何言ってんだよ。てか普通逆だろ」
紅潮する歩夢。
「そ、そんな!?凄く嬉しいですけど、翔琉君の気持ちも大事ですし……」
「歩夢ちゃんが告白すれば一発よぉ〜!お義母さんって呼ばれる日が楽しみだわぁ〜!」
「そう、ですか?えへへっ……」
「…………なんか俺抜きで盛り上がってんな」
そんな話の後、翔琉と歩夢は優里香に見送られながら家を出て学校へと向かった。手を振って2人を送った優里香はリビングに戻る。点けたままになっていたテレビにはウルトラマンエックスに関するニュースが流れていた。
ニュースをじっと見つめる優里香。その瞳に秘められた想いは、誰にも分からない……。
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学校に向かう電車の中。隣同士座る翔琉と歩夢は揺られながら何気ない会話をしていた。
「けど本当にびっくりしちゃったなぁ。翔琉君がXioにインターンシップしに行くなんて……」
「ほら、この前宇宙人出たじゃん?その時Xioの人に助けられて、そっから色々あってさ。まあ授業で話聞いた時、少し興味あったしラッキーだったかな」
「へぇー。って、翔琉君授業中寝てたよね?」
「…………」
無言で目を逸らす翔琉。
「まあ良いけど、怪我とかだけはしないでね?」
「大丈夫だって。Xioって言っても、俺が入ったのはラボチームっていう怪獣の研究とかがメインの所だから。怪獣と戦ったりする事はあんま無いだろうよ」
実際にはウルトラマンとなって最前線に突っ込む事になるのだが、歩夢にそれを教える訳にもいかない。ラボチーム所属になったというのは本当なので、取り敢えずは彼女を安心させる為に少しだけ嘘を吐いた。
「でも、やっぱり少し心配かも……」
歩夢は目を伏せる。エンペラ星人が現れた時、彼は怪我をして短時間とはいえ入院をしているから、またそんな事になったりしないか不安なのだろう。
「心配すんなって。それに、同好会の方もちゃんとやるからよ」
Xioに入隊したとはいえ彼は虹ヶ咲スクールアイドル同好会の部長。その責任は果たすつもりである。
「うん……無理はしないでね?」
「おう」
そうこうしてる内に降りる駅に着いた。2人は電車から降り、学校に向かうのであった。
学校に着いた2人は教室に入り、席に向かう。翔琉の後ろの席には明里が座って窓の外の空をボーっと見ている。
「よう、新城野」
「おはよう、新城野さん」
「ん……おはよー」
翔琉と歩夢の挨拶に手を振って明里は応える。
「何だ、怪我したのか?」
彼女の右指に貼られた絆創膏を見て翔琉が尋ねた。
「あー、うん、ちょっとね」
「大丈夫?」
「大した事ないよー。擦り傷だし」
ひらひらとその手を振る明里。そんな彼女のことを、翔琉はじっと見つめている。
彼はある事を思った。彼女の名字である「新城野」、それはXioのメンバーである新城野 紗季と同じものだ。もしや2人は、姉妹か何かなのでないかと。
「なあ?」
「ん、どしたー?」
「新城野ってさ……」
それを聞こうとした時、始業を告げるチャイムが鳴った。
「ありゃりゃ、また後で聞くね」
「いや、大した事でもないしいいよ」
「そっ」
明里にそう言ったあと、翔琉も歩夢も自分の席に座る。そして教師が教室内に入って来て授業を始めていき、彼らはそれを聞いて内容に集中していくのであった。
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「イベント?」
「そう!今週末にスクールアイドルのイベントがあって、それに私達は出場するんです!」
「へぇー」
時は進んで放課後、部活の時間。スクールアイドル同好会の部室で、翔琉はせつ菜から今週末に行われるスクールアイドルのイベントについて説明を受けていた。
今回のイベントはソロでの参加が可能で、ソロ活動をメインとする同好会のメンバー達はそれに参加するとのこと。最初はグループ参加のつもりだったが紆余曲折あり、最終的にソロで参加することになったらしい。
「てか、俺結構大事な時期に記憶失くしちゃったっぽいな……」
「あはは、そんなに気にしなくてもダイジョーブっしょ!」
気にしてる翔琉の背を愛が優しく叩く。
「そういえば、みんな曲の作曲はあなたがしてくれたんだよ」
「はぁ!?俺がぁ!?」
「そうだよ〜」
まさかの言葉に彼は驚く。彼女達の曲は練習の中で何度か聴いたが、それを自分が作ってただなんて思いもしていなかった。
「先輩の曲、かすみんとーっても大好きですよ!」
「ええ!みんなの歌詞とベストマッチしてます!」
「どれも凄くいい曲で、私も凄く好きだなぁ。ほら、見て」
エマから譜面を貰い、これを自分が書いたのかとしみじみ見る。運動神経といい作曲能力といい、結構スペック高かったんだなと思ってしまう。
「俺凄かったんだな……」
「うん、翔琉さん凄い。璃奈ちゃんボード《キラキラ》」
憧れの眼差し(ボード)を向ける璃奈。そう言われて悪い気はしないが、同時に今の自分が前の自分の様に作曲することが出来るのか少し不安にもなって来る。
「そんな心配そうな顔しなくても大丈夫よ」
彼の心情を察した果林がそう声を掛けてきた。
「私やエマさん、彼方さん、しずくさんは元々スクールアイドルとしての経験がありますから、作曲の方も大丈夫です!」
「まじか。先輩達とせつ菜はともかく、しずくもやってたんだな」
「はい。私も前の学校でスクールアイドルとして活動してました」
それを聞いた時ふとあることを思う。
「……お前入学したばっかで転校して来たのか?」
「その事は言わないで下さい……」
苦虫を噛み締めた様な表情をするしずくを見て皆が笑う。
「さあ!大会も近いですし、練習を始めましょう!」
せつ菜の言葉で皆は練習を開始していく。踊る彼女達を見ながら、前の様にサポート出来る様ならねばと翔琉は思うのであった。
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ベーリング海のアドノア島。その中心にある活火山が轟音を立てながら揺れ噴火。黒煙が天に昇り、火口より溶岩が流れていく。
更にもう一つ。噴火と同時に巨大な翼竜が飛び出した。
真紅の身体を持つその翼竜は甲高い鳴き声を放った後、大きな翼で羽撃き、地上にある物を吹き飛ばしながら日本に向けて飛び立っていく。
そしてその様子を、赤と黒の異様な存在が、黒い瞳で見つめるのであった……–––––––
最後の文で皆さんお分かりかと思いますが、次回はあの怪獣が登場します。
そして……
感想、質問、高評価、山形りんご、その他、是非お待ちしてるんご!