RAINBOW X STORY 作:山形りんごをたべるんご
EXゴモラの爪を、オーブはオーブカリバーで防ぐ。強烈な一撃は彼の腕を痺れさせた。
「なんてパワーだ……!?」
更にEXゴモラは角を突き出して突進。上空に飛び上がってオーブはそれをなんとか回避し、それと同時にバーンマイトへとフュージョンアップ。何度も錐揉み回転して降下し、スワローキックをEXゴモラの背中に叩き込んだ。
しかし強固な鎧の様な皮膚を纏ったその身体に弾かれてしまう。
「硬過ぎる……! だったら!」
七色に輝きながら、全身に燃え盛る炎を纏うオーブ。バーンマイト最大の大技であり、オーブが持つ技の中でもかなりの高威力を誇る必殺技・ストビュームダイナマイトでEXゴモラに大ダメージを、あわよくば倒してしまおうという魂胆なのだ。
一歩踏み出し、EXゴモラを見据える。駆け出そうとしたその時、予め連絡を取り合う為に受け取っていたジオデバイザーから陽花の声が響いた。
《待って下さい一眞さん!!》
「ッ!?」
《その怪獣の中には、翔琉さんがいるっす!!》
「えっ!?」
「嘘だろ!?」
オーブ、そしてスカルゴモラとベムゼードをギンガスパークランスを手にどうにか相手取っていたギンガもそれを聞いて衝撃を受ける。そして驚いて炎が消えてしまった隙を狙われ、EXゴモラの伸縮自在の鋭い先端を持つ尾による突き刺し攻撃・テイルスピアーがオーブを襲った。
「があああああ!?」
「一眞!? この……!」
吹き飛ぶオーブ。ギンガは槍を振るって2体を斬り付け、オーブを助ける為に駆け出そうとする。だがその前に、黒い巨人が現れた……。
「お、お前は……!?」
姿を見せたその巨人……否、悪魔は以前自分が相対し、命を奪われることになった闇の魔神と似た気配を醸し出している。悪魔・ダークメフィストは右手に鋭い爪を装備してそれをギンガに向けた。
正面にメフィスト、背後には二大怪獣。ギンガは囲まれ、オーブもEXゴモラに手を焼き、かなり絶望的な状態である。
ギンガスパークランスを再度握り締めてメフィストに穂先を向け、彼は駆け出してそれを振るった。一振り目は躱され、二振り目は爪・メフィストクローで止められた。
「お前、まさかアイツと同じ闇の存在なのか……!?」
「何ノ事か知らンが、邪魔ナ奴らダ。潰しテやろウ」
「ッ……!?」
言葉は日本語の様だがノイズが激しく非常に聞き取り難い。しかしその意味は脳内に伝わってくるという気持ちの悪いそれに思わず吐き気を覚える。
一瞬生まれた隙に、ランスを弾かれてメフィストクローによる突きを受けて後退。更に背後からスカルゴモラとベムゼードの強烈な突進を受けて大きく吹っ飛んでしまった。
「ぐあああああああ!?」
「リ、リヒトさん……だああッ!?」
オーブもEXゴモラの振り回した尻尾の一撃でギンガの近くに吹っ飛ばされてしまう。追い詰められた彼らの前にダークメフィスト、スカルゴモラ、ベムゼード、そしてEXゴモラが並ぶ。絶体絶命の危機。しかし諦める訳にはいかない。
「まだやれるな、一眞?」
「やるしかないでしょ、リヒトさん」
「なら、俺達のパフォーマンスを見せつけてやるぞ……!」
怪獣達に2人は構える。この宇宙を守る為、そして怪獣の中に取り込まれた仲間を救う為。ギンガとオーブは大地を蹴って駆け出した。
「うっざ」
決して諦めず、全力で戦うウルトラマン達を見て明里はそう吐き捨てる。
さっさと潰したいから
《やれやれやれ。なかなかに粘るじゃあないか、あのウルトラマン達》
「本当にしつこい。マジで早く死んで」
《私が出るかい?》
スマホの中からルギエルがそんなことを聞いてきた。少し考える明里。しかし……。
「いいよ、アンタは大人しくしてて」
《それそれは……。まあ、従おう》
画面からルギエルが消えて、表示されたのは前に翔琉と出掛けた時に撮ったツーショットの待受画面。それを見て明里は少し頬を赤くして笑う。
「あーあ。早く邪魔なの全部消えて、私と翔琉君が幸せに暮らせる世界にならないかなぁー」
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「あの日、あの気配を感じたエックスは目覚めようとしたんだ。ダメージが大きかったのか力を使い過ぎたのか、はたまた別の理由でか、分からないけどスパークインパクトの日からずっと休眠、もしくは意識はあるけど動けない状態だっただろうからね」
「あの気配が何かって? まあ、それは追々、ね。とにかくエックスは早く覚醒しなきゃいかなかったんだ」
「それで翔琉君と自分が一体化して、迫り来る脅威と一緒に戦う! っていうのがエックスの理想だったと思うよ」
「でも、それは出来なかったんだ」
「エックスが覚醒し、翔琉君と一体化しようとしたその時……2人はまとめて死んじゃったんだ」
言ってる意味が解らなかった。自分は間違いなくここにいる。生きている。なのに自分が、そしてウルトラマンエックスまでもが死んだと言われても理解が出来ない。
ゼロやメビウス、ヒカリの様にウルトラマンと人間が同化して共に存在しているケースは確かにある。自分とエックスも別の存在であり、エックスが死んで自分がその力を行使してる状態にあるのか。もしくは、自分こそがエックスで翔琉が死んでおり、その姿を利用してる状態なのか。
ただこのどちらかだとしても、カタラの言う「翔琉とエックス、両者が死んでいる」ということには該当しない。
そもそも、どちらも死んでいるのなら、今ここにいる自分は何者なのだ……?
「君の考えは多分全部ハズレ。でも、エックスとしては最悪自分が死んでも翔琉君が生きてくれたらっては思ってただろうね。逆……は多分何がなんでも阻止するかな彼なら。まあ、結果はコレだけど」
カタラは笑う。翔琉の考えは簡単に見通され否定された。
「君はエックスじゃないし、翔琉君でもない。それだけは間違い真実だよ」
「だったら……俺は何だ!!!?」
怒り、困惑、恐怖……様々な感情が胸中を渦巻き、声を震わせながら叫んだ。何も解らず、そうするしかない翔琉を見て、やはりカタラは笑った。
そして答えを告げる。
「さあ? 強いて言うなら、何者でも無い、かな?」
「…………は?」
返ってきたのは、答えとは言えない返答。
しかし彼は知ることになる。自分はそれ以外では、表すことの出来ない存在であるということを………。
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「ゾフィーさん!」
《ゾフィー》
「ベリアルさん!」
《ウルトラマンベリアル》
「光と闇の力、お借りします!」
《フュージョンアップ》
《ウルトラマンオーブ・サンダーブレスター》
宇宙警備隊の隊長にして無敵の長兄。光の国を捨て闇に堕ちた黒き王。光と闇という相反する二つの力を合わせ、過去には制御出来ず一眞の心を折る事態を引き起こしたこともある強力な姿・サンダーブレスターへとフュージョンアップ。
「闇を抱いて、光となる!」
オーブは唸り声を上げながら駆け出す。そしてメフィストに殴り掛かった。メフィストは受け止めるが、その凄まじいパワーに少し後退してしまう。
───はあ!? 何でアイツがベリアルの力使ってんの!? 意味分かんないんだけど!?
「何故貴様が、ソの力を……!?」
「大切なものを、守る為だ!」
更に強烈な拳を振るう。闇の力……あのウルトラマンベリアルの力を光の存在であるオーブが使い、それを制御出来ていることはメフィストにとっても、そして戦いを見ていた明里にとっても信じられなかった。
ヤクザキックが腹部に命中。メフィストは大きく後退させられ膝を付く。その間にオーブは振り返り向かって来ていたベムゼードへと光の斬撃を飛ばした。
だがベムゼードはそれを左手で吸収。右手から打ち返してしまう。
「くっ! 厄介だな……!」
横に転がって回避したオーブ。遠距離技が悉く無効化されるのは非常に厄介だ。
「だったら!!」
ベムゼードに向かって走り出した。光線や火炎弾が飛んで来るが、オーブは止まることなく進む。そしてベムゼードに掴み掛かり、その左腕を取った後に自身の右手に赤黒い鋸状の光輪を発生させて天に上げる。
「ゼットシウム光輪!!」
右手と共に光輪は振り下ろされてベムゼードの左腕を切断。苦しむベムゼード。オーブはその腕を放り捨てた後、奴のことを殴り飛ばした。
ベムゼードは転がっていき、オーブはトドメを刺すべく右手に闇の、左手に光のエネルギーをチャージ。それは円環となり収束。腕を十字に組んで必殺光線を放った。
「ゼットシウム光ォォォ線ッ!!」
闇と光の光線はベムゼードに直撃。奴を粉々に撃ち砕いた。
一方ギンガは2体の強化されたゴモラというべき怪獣に手古摺っていた。特にEXゴモラは中に翔琉がいるのだから攻め難いことこの上ない。
EXゴモラの尾が伸びてギンガを襲う。ギンガスパークランスで防ぐが、何度も突き出されるそれに苦戦させられる。
「この……!──ッ!」
槍を弾かれて手離してしまう。鋭い尾はギンガを狙ってまた伸びるが、彼はそれをギリギリで回避。
「だああああ! ちょっと悪戯が過ぎるぞ!」
ギンガスラッシュを発射。EXゴモラの顔面に直撃し隙を作る。その間に彼はギンガサンダーボルトを発動し、スカルゴモラにそれを投げた。雷撃を喰らったスカルゴモラは痺れて動きが止まってしまう。
「暫く止まってな!」
更に続けてギンガファイヤーボールをEXゴモラの足元に撃った。火炎弾は大地を抉っていき、それによりバランスを崩したEXゴモラは転倒した。
「こっちはフィニッシュだ!」
流れる様にターンし、ポーズを取ってエネルギーをチャージ。腕がL字に組まれてギンガの必殺技・ギンガクロスシュートがスカルゴモラへと放たれた。強烈な光を放射されて、スカルゴモラは爆散。
「よーし。…………さて」
起き上がったEXゴモラを見据えるギンガ。手を伸ばすと、飛ばされたギンガスパークランスが戻って来てその手に収まる。
「多少痛いかも知れないが、許してくれよ? OK? OKだよな!」
跳躍したギンガは、その槍をEXゴモラに勢いよく振り下ろした。
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「あの日、エックスは翔琉君と一体化しようとした。でも失敗して2人の精神は消滅、つまり死んでしまったんだ。そして、空っぽになった翔琉君の身体に何故か産まれてしまったのが君なんだ」
カタラが語っていく真実に、彼はもう何も言えずに聞くしかない。
「本当にさ、何で君が産まれたのかは解らないんだ。普通ならどっちも消滅、死んでお終い、の筈だったのに何故か君が翔琉の身体に入ってエックスの力を手に入れちゃった。アレの所為かな? みたいな予想はあるけど多分違うだろうし、本当にただ君は何者でも無い意味の解らない存在なんだ」
笑って話し続けるカタラ。
「君は何者でも無い。翔琉君の身体と、エックスの力を奪った存在。それが君なんだよ」
言葉が何も出ない。告げられた受け止められない真実を、彼は受け入れるしかなかった。
「ダダから幼児化光線を撃たれたことがあったでしょ? あれはね、精神と肉体が正しかったらその歳まで戻せるって代物なんだ。でも君は産まれたばりで翔琉君の肉体の年齢とは合わない。だから効かなかったんだよ。いやー、あの時もしやと思って過去を遡って調べたけど、凄く面白い結果を知れて嬉しかったよ!」
身体から力が抜けていく。膝から崩れ落ちそうになるが、無理矢理立たされてそれすら出来ない。
「凄いよね。翔琉君とエックス、2人が死んで産まれた……いや、きっと2人を殺して産まれたんだ。君の存在はボクにとってとても楽しいものになってる! 一応感想を聞いて良いかな?」
カタラはニコニコしながら、彼の耳元で囁く。
「人間とウルトラマンを殺したのって、どんな気分だい?」
その瞬間、自分の中で何かが弾けた。どうしようもない慟哭が放たれ、闇の中に霧散していくのであった。
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ピシッ、という音が響く。翔琉がいつも使っていたマグカップに亀裂が入り割れたのだ。あまりにも不吉なその出来事に、同好会の皆は嫌な予感を感じて胸が締め付けられる。
「あらあら、見えないヒビでもあったのかしら?」
マグカップを片付ける優里香。
「先輩、大丈夫ですよね……?」
「だ、大丈夫に決まってるじゃんしず子!」
「でも……」
優里香が片付けていくマグカップの破片に目を向けるしずく。押し寄せる不安に、彼女は次第に追い込まれていた。そんなしずくの横に、彼方が来て不安を和らげる為に背に手を置く。璃奈の隣りには愛とエマ、せつ菜と歩夢の所には果林が居り、3人の上級生と比較的まだ心に余裕のある愛は他の者達の不安を少しでも拭えればと思っていた。
しかし、彼女達も心配なのは変わりない。
「あの、おばさん!」
歩夢が立ち上がって優里香の方を見る。
「翔琉君、大丈夫ですね……?」
無傷では無理かも知れない。けど、それでも自分達のもとに戻って来て欲しい。大切な彼が、戻って来ない最悪の結果になることだけは、絶対に嫌だ。
みんなの目線が優里香に集められている。不安や恐怖が込められたそれを受けながら、彼女は優しく頷いた。
「みんなに、お願いがあるの」
「お願い、ですか?」
「ええ。翔琉が……あの子が凄く苦しんでいる時は、味方で居てあげて。絶望して悲しんで、心が折れてしまっても、みんなが居ればきっとあの子は大丈夫だから。みんなで翔琉を助けてあげて」
翔琉を助ける。そんなことは言われなくてもやるつもりだ。彼は自分達にとってとても大切な存在なのだから。全員が肯定し頷く。それを見て優里香は嬉しそうに笑った。
「ありがとう、みんな。翔琉のこと、頼むわね」
─────例えあの子が、あの子じゃなくなっても。
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自分は何者でも無い。
「知ってるかい? ウルトラマンエックスは様々な星を守って戦って来たんだ。でも君が殺したからもうそれも出来ないね」
自分は何者でも無い。
「翔琉君も、本当は輝かしい未来があったのに……全部奪って殺しちゃったね」
自分の所為で、二つの命が消えた。
自分が消した。自分が殺した。
自分は何で産まれたんだ……?
───────────────ッ!!!!!
声にならない叫びが響き続ける。喉が裂け、喀血する程叫んでも、叫んでも、叫んでも、押し寄せる絶望、憤怒、慟哭、それらは消えず湧き上がる。涙は既に枯れ、見開かれた瞳は赤く充血し血が流れていた。
全部全部自分の所為。何でこんなモノが産まれてしまったのか?
その答えを教えてくれる者は誰も居ない。
「可哀想に」
カタラが彼のことを背後から抱き締めた。
「こっちにおいで。そして友達になろう。そうすれば君のその絶望、少しだけ埋めてあげるから」
言葉は聴こえていない。彼はただ絶望し吼えるしか出来ない。
そしてそれに呼応する様にEXゴモラも咆哮。凄まじい威力の殴打がギンガを吹っ飛ばす。
「だああッ!?」
「リヒトさ──ぐぅッ!?」
ハリケーンスラッシュになり、オーブスラッガーランスでメフィストのメフィストクローと競り合っていたオーブだが、ギンガがやられたことにより一瞬の油断が生まれる。それを突いたメフィストによる爪の振り上げがオーブの身体を裂き、大きく吹き飛ばした。
2人のウルトラマンは近くに転がり倒れ、それを睨みながらEXゴモラは全身に燃え盛るオーラを纏う。
《まずい……! 超振動波っす!!》
ゴモラの必殺技である超振動波。それが強化されたEX超振動波が全身から放たれた。凄まじい威力のそれは起き上がろうとした2人のウルトラマンに直撃し、彼らを人間の姿に戻してしまう。
「ぐあッ!?」
「ううッ!?」
アスファルトの上に転がる。リヒトも一眞もボロボロだ。
「クソッ……無事か、一眞……!?」
「は、はい……!」
立ち上がろうとするが、ダメージが大きく2人ともまだ立てない。そこへ、ダークメフィストが歩いて地を揺らしながら近付いて来る。このまま彼らを踏み潰すつもりなのだろう。
「潰しテやロウ……愚カ者共よ……」
足が振り上げられ、影が2人に掛かる。嗤いながら、メフィストはそれを勢いよく降ろした────
「ボクらは“同じ”だから。絶対仲良くなれるよ。そしてこの碌でも無い素晴らしい最悪な世界を、2人で……いや、
スパークインパクト時、ウルトラマンエックス飛来。
↓
エックス、謎の闇に特攻。結果、力の多くを使い果たす。
↓
まだ胎児で、優里香が吹き飛ばされた衝撃により死にかけていた彼女のお腹の中にいた翔琉と融合。
↓
18年後、エックスは覚醒しようとするが失敗。翔琉の意識も消滅し、実質2人は死亡。
↓
今の“翔琉”が翔琉の身体とエックスの力を手にして戦い始める。
ざっと纏めるとこんな感じです。
今の翔琉は、本来の翔琉とエックスを殺して生まれた、というのがカタラの語った事になります。
自身の罪を突きつけられて絶望する翔琉……いや、翔琉の姿を借りた何者でも無いモノ。果たして彼に訪れる結末とは……?
リヒト、一眞も大ピンチの中、次回へと続いていきます。
それではまた次回、お会いしましょう。
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