RAINBOW X STORY   作:山形りんごをたべるんご

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遅くなってしまい申し訳ありません…。
いろいろ詰め込んだ結果時間が掛かってしまいました……。

その代わり今回ボリューム大です。
文字数的に言うと3話分以上くらいあります。是非楽しんでもらえたらと思ってます。


それと、コラボ終盤でちょっとした企画をやりたいと思っているので「何かオリキャラ達に聞いてみたこと」的なのがあったらぜひ感想などでお聞かせ頂けると助かります。


彼の真実、彼女達の決断。
それが齎すのは光か闇か?
早速ご覧下さい。






83.キミと繋がる為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔琉が倒れ、記憶喪失になってしまったと皆から思われることになる日の前夜。

 

 

「今日の部活はどうだった?」

 

 

 夕飯を食べながら、優里香は翔琉に尋ねる。

 

 

「今日も楽しかったよ! もうすぐイベントがあってそれに向けてみんな練習してるんだけど、それを見てるだけでもときめいちゃうよ!」

 

 

 彼は目を輝かせながらそう答えた。

 スクールアイドル同好会。そこに所属してからの彼は今まで以上に毎日が楽しそうであり、見ててとても微笑ましかった。幼馴染で隣りに住んでいる歩夢も一緒に参加してくれており、更にたくさんの友人も出来て凄く嬉しそうに思える。

 

 食べ終え、ご馳走様と言った後に彼は食器をシンクに持って行く。

 

 

「洗うのはお母さんがやるから、水にだけ浸けておいて」

「大丈夫、僕が洗うから」

 

 

 そう言って翔琉はスポンジに洗剤を付けて、鼻歌混じりに食器を洗い始める。

 

 

「ありがとう」

 

 

 産まれた時から父親が居らず、シングルマザーとして育てることになり彼にも時折嫌な思いをさせてしまったこともあるかも知れない。それでも翔琉は、心優しい子に育ってくれた。幼馴染の存在や、心配してくれた両祖父母、その他多くの周りの人達のお陰でもあるだろう。そして何より彼自身が強く優しく、まっすぐな心を幼い頃から持っていた。

 困っている人には手を差し伸べ、誰とでも友達になろうとする優しさ。酷い目に遭うこともあったが、それでも彼が荒むことは無かった。

 

 

 

 時刻は23時を過ぎており、翔琉は明日も朝練があるからと言って眠りに着いた。優里香は彼の部屋の扉を少し開けて覗き、彼がスヤスヤと心地良さそうに眠っているのを確認した後リビングへ向かう。ソファーに座って一息吐く。

 

 すると、眼前に緑色の光が広がった。

 

 

「これは……?」

 

 

 彼女が驚く中、光は次第に集まっていき人型となる。それは、18年前に見たあの巨人とよく似た姿であった。光は優里香に視線を向けた。

 

 

 

『初めまして……になるだろうか? 私はウルトラマンエックス。貴女に、伝えなければならない事がある』

 

 

 ウルトラマンエックスと名乗ったソレは優里香に語り掛ける。

 

 

『18年前、私はあるものを追ってこの宇宙に来訪した』

「あるもの?」

『宇宙に現れてしまった(あな)……。生命を無に帰す、存在してはならないものだ』

「もしかしてそれが、スパークインパクトの原因?」

 

 

 彼女の質問にエックスは頷く。

 あの日彼女達の前に堕ちて来た謎の()。それによってスパークインパクトは引き起こされ、世界中が大混乱に陥った。彼はそれを追ってこの地球に降り立ち戦ったのだ。その事は、彼女もよく覚えている。

 

 

『しかし、私はソレを完全に倒す事は出来なかった……。自らの持つ全ての力を解放しても、弱体化させるのが精一杯だった……』

 

 

 トドメを刺せなかったことを余程悔いているのだろう。彼は目線を下げて拳を握り締めていた。

 

 

『私自身も、実体を保つのが難しい程に力が弱まってしまった。このままでは消滅するしかないと思った時、貴女を……いや、貴女達を見つけた』

 

 

 あの時、爆発の余波で吹き飛ばされて怪我をした優里香にエックスは気付いた。そして彼女の中にいた翔琉の命の鼓動が弱まっていくことにも。身勝手は承知で、彼は優里香と一体化して2人を救おう考えた。しかし彼自身も大きなダメージを受けて意識が朦朧としていたのもあってか優里香ではなく翔琉と一体化してしまい、結果として両方の命を救う事は出来たが、エックスは長い眠りにつくことになった。

 

 

『時が経って彼が成長し、その中で私は意識を取り戻す事は出来た。しかし、理由は分からないが通常よりも力の回復が上手くいかず、今この時まで貴女とこうして会話することもままならない状態だった』

 

 

 本来ならもっと早く回復し、これだけの時間を掛ければ実体を取り戻すことも可能だった筈。しかしどういう訳かエックスの力の回復はかなり遅く、翔琉や優里香とコンタクトを取ることも今のいままで不可能な程であったという。

 

 

「じゃあ、貴方はまだ不完全な状態なの?」

『ああ。今はまだデータの様な状態であり、あの子中にいる。私1人の力では実体化することは不可能だろう』

 

 

 だが……と彼は少し言い淀みながら言葉を続けた。

 

 

『覚醒しなければならない時が迫っている』

「それって……」

『悪しき存在が、動き出そうとしているんだ。それを止める為に、私は実体を得て戦わなければならない』

 

 

 彼の言う悪しき存在というのが何なのかは分からないが、その緊迫した雰囲気からそれはとても恐ろしいものなのだろうというのは伝わった。スパークインパクトの原因となった存在の復活か、それとも……。ともかく、今の彼は切羽詰まっている様にも感じられた。

 そして、戦うということはおそらく……。

 

 

「翔琉も、貴方と一緒に戦うことになる……そういうことなのね」

『…………そうだ。私と彼が一つに、ユナイトすることで力を取り戻し戦うことが出来る様になる。しかし、一つ大きな問題がある』

「問題?」

『私の力は今、不完全であると同時に不安定でもある。翔琉ではなく貴女とこうして会話しているのも、どういう訳か彼に私の声が届かず貴女にだけ届いたからだ。こんな状態の私が翔琉とユナイトしようとした時に、この不安定な力が暴走してしまう可能性があるのだ』

「そうなると、どうなるの……?」

 

 

 先程以上に言い辛そうになりながらも、エックスは優里香の目をちゃんと見ながら答える。

 

 

『翔琉か私、最悪両方の意識が消滅することになる……』

「つまり……死ぬ可能性があるってことなの……?」

 

 

 そうだ、とエックスは頷く。息子が死ぬかも知れない行動をやろうとしている。そんな自分に対して、彼女は間違いなく怒りを感じるだろう。何としてでも翔琉が無事である様にするつもりだが、最悪の可能性は捨て切れない。どんな罵倒も批判も受け入れる。自分がやろうとしている事は、彼女にとって最低最悪の結果を招いてしまうのかも知れないのだから……。

 

 彼女は考える様に目を伏せる。そして顔を上げて彼の目を見つめた。

 

 

「あの日、本当だったら私達は死ぬ筈だった。仮に私が生き残ったとしても翔琉は死んで、そうなったらきっと私もあの子と夫の後を追う選択をしてたと思う。そんなことしたら、あの世で大翔さんから怒られてたでしょうね」

『ッ…………』

「今こうしてあの子と幸せに生きていられるのは貴方が助けてくれたから。本当にありがとう」

 

 

 微笑み、頭を下げる優里香。

 

 

「翔琉を危険な目には遭わせたくない。けど、この話をしたら、あの子は迷わず貴方を信じて力を貸すと思う。例え自分の命が賭かっているとしても……。だから私も、貴方を信じる」

『良いのか……? 翔琉が死んでしまうかも知れないんだぞ……? そんな、簡単に……』

「この日までの翔琉との時間は、貴方がくれたものよ。信じる判断材料には十分過ぎるものだわ」

 

 

 あの日、多くの命が失われた。夫である大翔、彼が助けようとしたさっちゃんと呼ばれていた少女、その他にもたくさんの人が犠牲となった。本来なら自分達もその中に入る筈だったが、エックスに助けられた事によりこうして生きていられたのは奇跡というしかない。

 心の底から感謝をしている。そんな彼の力になれるのなら、きっと翔琉は迷わず信じて手を差し伸べるだろう。あの子はそういう優しい子なのだから。ならば自分も、彼を信じてあの子を託そう。

 

 

『ありがとう……』

 

 

 心からの感謝。それを伝えた後、エックスはある方向を指差した。その先にあったのは大翔の仏壇。そしてそこに置かれているあの剣。優里香は立ち上がってその前に行き剣を手にした。その刃は()()に淡く輝いている。

 

 

『それは、想いを形にする力を持つ剣。私と同じくあの時多くの力を使い今は微かしか残されてないが、少しでも助けになってくれる筈だ』

 

 

 そう言った後、彼の姿が少しずつブレ始める。もうここまでなのだろう。

 

 

『貴女に辛い選択をさせてしまったこと、貴女達を巻き込んでしまったこと、心から謝罪を申し上げたい。それと同時に、貴女達と出逢えたことに何よりも感謝している。本当に、ありがとう』

「私もよ。私達家族を、助けてくれてありがとう」

 

 

 頷いた後、エックスは霧散した。部屋には静けさだけが残る。

 

 

「翔琉……」

 

 

 優里香は剣をぎゅっと握る。

 

 

「どうかあの子が、後悔しない未来が訪れます様に────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 

「忘れ物は無い?」

「大丈夫!」

 

 

 朝食を食べ、支度をし、学校へ行く為に玄関に向かう。玄関には既に歩夢が待っていた。

 

 今日はどんな楽しいことがあるだろうか。そう思いながら彼はワクワクしている様に見える。そんな翔琉の頭を、優里香は優しく撫でた。

 

 

「お母さん?」

「フフッ、何でも無いわ」

「?」

 

 

 何だろと翔琉は少し首を傾げたが、歩夢を待たせていることもあるので特に気にせず靴を履きに向かう。

 

 

「じゃあ、行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃい」

 

 

 手を振り、翔琉と歩夢は玄関を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翔琉が倒れ、記憶を失っていたと歩夢から連絡があった。そして────

 

 

 

《速報です! 都内に現れた怪獣デマーガの前に謎の巨人が出現! 巨人はデマーガと戦っています!》

 

 

 テレビに映されたのはウルトラマンエックス。その姿を見て彼女は直感する。

 翔琉もエックスも、消滅してしまったのだと……。

 

 唇を噛み締める。では今エックスとして、翔琉として戦っているのは一体誰なのだろうか?

 そう思っていた時、エックスが動いた。どうやら地上に居た誰かを庇ったらしい。その誰かも映される。見ると、そこに居たのは歩夢だった。

 

 

《巨人が高校生と思われる少女を助けた様です! この巨人はもしや、我々の味方なのでしょうか……!?》

 

「歩夢ちゃんを、守った……」

 

 

 それからエックスは光線を放ちデマーガを倒し、光となって消失した。それと同時に、あの剣が光を放つ。光は優里香の前に集まっていき、不安定ながら人の形になった。剣は輝きを失って石の様になり、光は彼女に語り掛ける。

 

 

────お母さん。

 

「翔琉!?」

 

 

────僕は、大丈夫。

 

 

 聴こえたのは最愛の息子の声。優しい声でそう言った後、彼は一つの願いを伝えた。

 

 

────あの子を、信じて。

 

 

 光が消えていく。そして残った小さな小さな、点の様な光が彼女の胸の中に入っていった。

 優里香は胸に手を置く。翔琉が自分に託した想い。それがこの胸にある。

 

 

 

 

 

 その夜、彼が帰って来た。扉を開け、中に入って来た彼を優里香は迎える。戸惑い困惑ながら自分の姿を見た後、彼は口を開いた。

 

 

「ただい、ま……?」

「はい、おかえり」

 

 

 

 

 

 

 

 歪と思われるかも知れない。おかしいと非難されるかも知れない。それでも私はこの子を、彼が託した想いを大切にしていきたいと思う。

 いつか彼自身が真実に苦しむことになるかも知れない。彼の仲間達に、拒絶されることがあるかも知れない。だとしても、私は彼の味方であり続けるだろう。

 

 この瞬間から誰が何を言おうと、私は彼の……翔琉の母親なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はい、どうぞ」

 

 

 カタラはモルド達の前にいくつかのスパークドールズと怪獣カプセルを並べた。EXゼットン、バラバ、ヒッポリト星人、ブラックエンド、ザタンシルバー、バランガス、キリエロイドII、デスフェイサー、キングオブモンス、ダークラー、グラール、Uキラーザウルス、クイーンベゼルブ、オルガ、メガロ、ジャイガー、ジーダス、ティアマット……その他にも様々。これらはXioから奪った物と、元々カタラが所持していた物がある。

 新たな戦力として、モルド達に献上したのだ。

 

 

「ほお……良いではないか」

 

 

 新たに軍団を編成出来る目処が立ちモルドは笑う。ジュダとギナもカタラのことは気に食わないが満足そうだ。

 

 

「それと、あのウルトラマンエックスを捕らえたそうだな」

「はい。彼はボクが大切にしますよ」

 

 

 これまで以上の笑顔を見せる。それはモルド達ですら不気味に感じ思わず息を呑む程だ。余程、翔琉を手にしたことが嬉しいのだろう。

 

 

「奴をどうするかは知らんが、我々グア軍団にとっても有用に使えよ」

「もちろん。いずれボクらは、軍団にとって必要不可欠な存在になれますよ」

 

 

 自信に満ち溢れているカタラ。自分と翔琉、そしていずれは明里も加えた3人でならこの地球を好きにすることが出来ると。

 カタラは笑う。自分達の輝かしい未来を信じて。カタラは嗤う。渾沌に堕ちた、世界を夢見て。

 

 

 

 

 

「さて……我らも動くぞ」

 

 

 カタラが消えた後、モルドがそう言って斧を肩に担ぐ。邪魔なウルトラマンは1人減った。そしてXioは大打撃で大した脅威になり得ない。正に今こそ侵略のチャンスであろう。

 

 

「最早この星は、我らの手に堕ちたも同然でしょう」

「姉上の言う通り……。このまま一気に侵略してくれるわ!」

 

 

 ギナもジュダもやる気充分と言った所だ。

 それを見て笑った後、モルドは腕からダークサンダーエナジーに近しい黒い稲妻を放ち、幾つかのスパークドールズを解放した。怪獣達が咆哮。新たなる軍団の誕生を彼は大いに喜んだ。

 

 

「行くぞォ!! 我らグア軍団が、この星を制圧し侵略するのだ!!」

 

 

 モルドの野望に応える様に、弟妹と怪獣達は叫ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 優里香の話を聞き終え、皆は衝撃を受けた。室内には重い空気が流れている様で、誰も何も言えず動けない。

 

 

「本当……何ですか……?」

 

 

 どうにか口を開けた沙優が問い掛けた。優里香は肯定する様に頷く。

 

 

「悪い宇宙人が言った様に、ウルトラマンエックスが復活しようとしたことが原因で彼と自身と翔琉は消滅しました。でも決して、あの子が2人の未来を奪った訳じゃない。それは信じて欲しい」

 

 

 きっと彼は、2人から想いを託されて今ここにいる。決して悪意から生まれた存在ではない。

 彼女はそう確信していた。

 

 

「私はあの子の母親です。誰から何を言われようと、その想いは変わらないわ。翔琉とエックスのことも絶対に忘れない……それを全部抱き締めて彼の、翔琉の母親として生きていくと決めたの」

 

 

 優里香の瞳には揺るぎない決心が宿っていた。2人の死を受け止め、そして2人の想いを受け継いで前に進む。その覚悟の強さは相当のものだ。生半可な気持ちでは決して選ぶことは出来ないだろう。

 そんな彼女を見て他の者達は思う。自分達も、彼とどう向き合うのか、決断をしなければならないと。

 

 

「…………私達Xioにとって、彼は大切な仲間です」

 

 

 沙優が語る。

 

 

「私達が出会ったのは今の翔琉君で、本来の翔琉君じゃない。そんな私達がこんなことを言うのは、虹ヶ咲のみんなから酷いと思われるかも知れない……。でも、私達は今の彼のことを助けたいと思っている。彼が何者であっても、共に過ごした時間は掛け替えのない大切なもの。それを取り戻す為にも必ず救出してみせるわ」

 

 

 他のXioメンバー達も頷く。ここまで共に戦って来た翔琉は、彼女達にとって大切な仲間だ。全ての事情を飲み込んだ上でその想いは絶対に変わらないと確信し、必ず翔琉を助けると彼女達は誓う。

 

 

「俺と一眞は、まだ会ったばかりで翔琉のことは少ししか知らねえ。でも、悪い奴じゃないのは一緒に戦ってて分かったさ」

 

 

 そう言ったのはリヒトだ。一眞もその横で「そうですね」と相槌を打つ。

 

 

「だから俺達も助ける。同じウルトラマンとして、同じ絶望して立ち止まったことのある者として……。そして俺達の新しい友としてな」

「俺も以前、迷って、絶望して、自分を見失った時がありました。でも、仲間達に助けられてまた立ち上がることが出来た。だから今回は、俺達が翔琉さんを救う手助けになりたいんです」

 

 

 どちらも大きな絶望を味わったことがある。今の翔琉の様に残酷な真実を突き付けられ、地獄に叩き落とされたあの時を彼らは決して忘れない。そしてそんな状況を、仲間達が手を差し伸べて救ってくれたこともだ。

 仲間達が居たから、今の自分達がいる。そして今、翔琉にもそんな存在が必要だ。なら自分達も、そうなれればと彼らは思っていた。

 

 Xio、そしてウルトラマン2人の心は決まっている。残るは、同好会のメンバー。

 

 

 

「かすみんは!!」

 

 

 かすみが声を張り上げて前に出た。

 

 

「かすみんは……かすみん達は先輩が居てくれたからスクールアイドルを続けることが出来ました……。練習も、曲作りも、いっぱいいっぱい、先輩はかすみん達の為に頑張ってくれました……。そんな先輩がもう居ないなんて、信じられないし信じたくないです……」

 

 

 「でも……!」と彼女は瞳に涙を溜めながら言葉を続けた。

 

 

「かすみんは……私は今の先輩に助けられました……! あの日、自分の全部を否定された時、先輩が危険な目に遭いながら、それでも私を助ける為に頑張ってくれて、私に可愛いって言ってくれました! そんな先輩を、私は拒絶なんて出来ません! 先輩が私を受け止めてくれるなら、私も今の先輩を受け止めます……!!」

 

 

 泣きながら、かすみは自分の想いを伝えた。以前の彼も、今の彼も、自分を可愛いと言い、救ってくれた大切な存在。その事実は揺るぎなかった。そんな彼女に、しずくと璃奈が寄り添う。

 

 

「私は……正直、どう受け止めたら良いかまだ分かりません……。でもかすみさんの言う通り、私達はどちらの先輩にもたくさん助けられました。だから、どちらも否定することは出来ないと思います……」

「どっちの翔琉さんも、私達の為に一生懸命だった。いっぱい悩んで、いっぱい頑張ってくれたことは凄く嬉しかった。だから私は、どっちの翔琉さんとも繋がっていたい」

 

 

 しずくも、璃奈も、今の彼を信じたいと望んでいた。

 

 

「そうね……。どっちの翔琉も、ありのままの……本当の私を受け入れてくれたわ……。なのに、私が今の翔琉を拒絶するなんて出来ない。どっちも大切な人……私は、私の世界を照らしてくれた翔琉のことを受け入れる。他の誰が何を言おうと、その想いは揺るがないわ」

「彼方ちゃん達が知らない所で、翔琉君は辛い思いをしてたんだね……。だったら、私はそれを少しでも癒せたらなって思う。翔琉君は、私達にとって大切な人だもん。苦しんで欲しくないよ……」

「私もそう思うな……。今の翔琉が前とは違っても、大切な仲間ってことは変わらないと思う。私は翔琉君と、もっと一緒に居たいな」

 

 

 果林、彼方、エマがそれぞれの想いを伝える。例え彼が何であろうと、自分達の為に一生懸命努力してくれた存在であることに変わりはない。

 

 

「私もそうです……。どちらの翔琉さんも居たから、今こうしてスクールアイドルを続けていることが出来てます。どちらの翔琉さんが欠けても、今の私にはなれてなかった筈です。せつ菜としての私も、菜々としての私も翔琉さんは受け入れてくれました……。なら、私も翔琉さんの全部を受け入れたい! だって彼は私の、私達の大好きな人なのですから!」

 

 

 せつ菜が、菜々が心を込めて叫ぶ。

 

 

「かけるんは……翔琉は、私や私の友達を助ける為に何度も何度も頑張ってくれていた……たくさん傷付いたとしても……。同好会の仲間として、ウルトラマンとして……何より、私達の友達として全力で頑張ってくれてた! 私は、そんな大切な友達を助けたい! 何があっても味方で居たい! 私も、翔琉のことが大好きだから!」

 

 

 愛も彼への想いを放った。

 

 共に過ごした大切な仲間。それはどちらの翔琉も同じ。だから彼女達8人は、彼の全てを受け入れるつもりでいる。そして最後、何も言わずに俯いてた歩夢に優里香が寄り添う。

 

 

「歩夢ちゃん、これを」

 

 

 彼女が歩夢に差し出したのはあの剣。力を失い石となってしまったそれを、歩夢は少し躊躇いながらも受け取った。すると剣は、微かに淡い光を纏う。彼女の周りには、他の同好会メンバー達も集まって来る。

 

 

「貴女の想いをこの剣に込めて、翔琉に届けて欲しい。どんな想いでも構わない……歩夢ちゃんの思ってること全部を、あの子にぶつけてあげて」

 

 

 手にした剣を見つめる歩夢。彼女がそれに込めるのは怒りか憎しみか、それとも……。少しずつ輝いていく剣。そこに愛とせつ菜、かすみとしずく、璃奈、そして果林、彼方、エマも手を置いた。彼女達の翔琉への想い。それらは交ざり合い、虹の光となる。剣は本来の輝きを取り戻し、刃が鮮やかな虹色の光を放つ。

 

 

 

 

「天地さんの居場所が分かりました!!」

 

 

 そこへ、翔琉の捜索をしていたラボチームの面々が飛び込んで来た。涼風がタブレットを操作してモニターに映像を映す。

 

 

「これは……?」

「翔琉は今、五次元空間にいる」

「五次元?」

「縦、横、奥行き、そこに時間が加わって四次元になる。それに新たな座標軸を持つことで五次元となり、ここでは時間軸の自由な移動や無数のパラレルワールドを観測することも出来る。まあ、あくまでも理論上の話だがな」

「そこに、先輩がいるんですか!?」

 

 

 「そうだ」とシャマラ博士は頷いた。

 

 

「空間そのものが非常に小さく、その上で我々が経験している四次元空間を取り囲む様に存在しており、観測するのが難しかったわい……。だが、エックスとギンガのカードのお陰で翔琉の反応を僅かながらキャッチし、どうにかアイツのいる座標を発見出来た」

「小さいのに、私達の空間を取り囲んでる……?」

「それってどういうこと〜?」

 

 

 果林と彼方が疑問を口にし他の数名も何を言ってるのだろうかと首を傾げているが、「まあ、常識では測れないものなので……」と苦笑いしながら答えた。

 

 

「とにかく! これで翔琉のことを救いに行けるぞ!」

 

 

 博士は2枚のカードを一眞に返した。受け取った彼はリヒトと見合わせ、互いに頷いた後翔琉を助けに向かう為に司令室から出ようとする。

 

 

 

 

 

「待って!!」

 

 

 そんな彼らを歩夢が止めた。

 

 

「私も、連れて行って下さい…………お願いします……!」

 

 

 真っ直ぐな瞳が2人に向けられる。

 

 

「危険だぞ?」

「分かってます……」

「それでも行きますか?」

「…………はい」

「……OK。なら、俺らの仲間を助けに行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 基地の外に出たリヒトと一眞、そして歩夢。その背中を同好会の8人と優里香、沙優達Xioメンバーが見守っている。

 

 

《ウルトラマンギンガ》

《ウルトラマンエックス》

 

「ギンガさん、エックスさん……!」

「いくぜギンガ……!」

 

 一眞がオーブリングに2枚のカードを通し、リヒトがギンガスパークから現れたウルトラマンギンガのスパークドールズを手にする。

 

 

「シビれるヤツ、頼みます!」

 

《フュージョンアップ》

《ウルトラマンオーブ ライトニングアタッカー》

 

《ウルトライブ! ウルトラマンギンガ!》

 

 

 ギンガとエックス、2人のウルトラマンの力を融合させた戦士ウルトラマンオーブ・ライトニングアタッカーが稲妻と蒼光を纏いながら大地に立ち、その隣りにギンガも煌めき共に降臨。そしてギンガは歩夢に向けて手を翳した。光の膜が彼女を包んで保護し、そのまま彼の手に収まった。

 

 

「行くぞ一眞」

「はい!」

 

 2人が手を翳すとそこから光が放たれ、空に時空の穴が開く。翔琉へ繋がる道。それが開かれたのを確認した彼らはそこへ飛び込んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……。勝手に入って来るなんて、悪い子達だね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不可解な場所、という言葉がピッタリな空間であった。上も下も、右も左も把握出来ない。立てている様だが足の下には何も無く、ある筈のない地面を踏んでいる感触だけがあった。

 

 

「ここが五次元空間……」

「不気味だな……。おい一眞、あれを見ろ!」

 

 

 ギンガが指し示した所。そこには横たわる翔琉の姿があった。2人はその場所に駆ける。

 

 だがその前に、カタラが姿を現した。

 

 

「ッ!? お前……!」

「勝手に入って来られたら困るなぁー」

「そっちこそ、勝手に俺らの仲間拐ってんじゃねえよ」

 

 

 ギンガは歩夢を降ろし構える。ウルトラマン達に対してカタラは笑っているが、少し苛立っている様にも見えた。カタラは怪獣カプセルと複数のスパークドルーズを取り出す。

 

 

「翔琉君はボクの大事な友達なんだ。君達に渡すことは出来ないなぁー」

 

 

 スパークドールズ達を投げる。そしてカプセルを前に出すとそこへスパークドールズは吸収されていき、カプセルに描かれていた異次元宇宙人は怪獣、超獣達と融合して暴君怪獣へと変化。そのスイッチを押し上げてカタラは起動させた。

 

 

《タイラント……!》

 

「少しだけ遊んであげるよ」

 

 

 竜巻怪獣の頭部、異次元宇宙の耳、宇宙大怪獣の胴体、殺し屋超獣の両腕、液汁超獣の背中、どくろ怪獣の両脚、大蟹超獣の尻尾。様々な怪獣達の強力な部位を融合させた凶悪無比の暴君怪獣、タイラントへとカタラは姿を変えた。

 轟く咆哮。ギンガとオーブは奴の予想外の力に驚く。

 

 

「あの怪獣、レイバトスが使役してたのと同じか……!」

「どうやら、これまで以上にヤバそうな相手だな……面白え」

「電光雷轟、闇を撃つ!」

 

 

 駆け出す2人。オーブが稲妻を纏った拳を突き出す。タイラントはそれを左手の鉄球を防ぎ、蹴りを腹に打ち込んで後退させる。ギンガも攻撃を繰り出すが、タイラントはそれも容易く回避して右手の鎌を振り上げて彼の身体を傷付けた。

 

 

「ぐぅッ!?」

『アハハハ。ほら、おいでよ。本気で来ないと殺しちゃうかもよ?』

「舐めるなよ……!」

 

 

 両腕からオーブはクリスタル状の剣を発生させ、それを振るって衝撃波を飛ばすギンガエックスセイバーを放つ。だがタイラントは笑いながら鎌でその衝撃波を叩き潰した。

 その時一瞬出来た隙に、ギンガは構えを取ってから腕をL字に組み必殺光線を撃った。

 

 

「ギンガクロスシュート!!」

 

 

 ギンガの技の中でも最強クラスの一撃。それがタイラントへと真っ直ぐ飛んでいく。しかし、奴はそれを腹部にある六角形の口で受け止めて呑み込んでしまった。

 驚くギンガ。奴は楽しそうに笑っている。

 

 

『残念だったね』

「クソッ! 吸収されるんじゃ、技の撃ち様がねえ……!」

 

 

 様々な光線技を持つギンガ。どれも強力であるのだが、それ故に光線を無効化する相手とはかなり相性が悪い。近接技や武器もあるが、彼の真骨頂である多彩な光線技を発揮するには、タイラントは非常に戦い辛い相手であった。

 鉄球から鎖が伸び、油断していたギンガの右手首に巻き付く。そのままそれを引いて彼のことを大きく振り回し、オーブに叩き付けた。

 

 

「ぐあああ!?」

「だあッ!?」

 

 

 倒れてしまった2人。そこへ追撃の火炎放射・デスファイヤーを発射。気付いた2人は転がりながらそれを躱し、立ち上がってギンガがギンガファイヤーボールを、オーブがギンガエックスライトニングを放つ。

 

 

『無駄なことを───っ!?』

 

 

 タイラントはそれらを腹部で吸収しようとするが、眼前でオーブの放った雷撃がギンガの火炎弾に直撃して爆発。その爆炎が奴の身体を覆った。吸収されてしまうのなら、その前に炸裂させてしまえばいいという咄嗟の判断。それによって視界を奪った隙にオーブは空中に跳んで稲妻を纏い、ギンガも頭上に雷撃の渦を作る。

 

 

「ギンガサンダーボルト!!」

「アタッカーギンガエックス!!」

 

 

 強烈な攻撃により爆発が起きる。オーブはギンガの隣りに着地し、彼らは構えながら爆煙に包まれているであろうタイラントの方を見た。倒せてるかは分からないが、少なくとも相応のダメージは与えられた筈。

 ギンガとオーブは爆煙を見つめ───

 

 

 

 

 

 

『アハハ、面白いね』

 

 

 爆煙の中からそれを突き破り現れたのはタイラントではない。牛神の様な強固な角を持つ頭部、鋭い鋏状の両手、地獄の針山の様な棘が全身にあり、ケンタウロスを想わせる四足がある筈の無い地を蹴りながら2人へ突っ込んで来る。

 幾多の超獣達が融合し誕生した最強超獣。ジャンボキングへとカタラは新たに姿を変えた。

 

 

「何!?」

 

 

 驚く彼らに、猛烈なタックルが炸裂。2人のことを遠くへと吹き飛ばしてしまった。

 

 

「ぐぅ!? こ、こいつ、他の怪獣にもなれるのか!?」

「そういうの、俺の専売特許じゃなかったのかよ……!?」

 

 

 破壊光線、火炎放射、ミサイルが彼らに放たれる。今度は2人が、爆煙に包まれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 歩夢は翔琉の方へ向かって必死に走っていた。距離は縮んだかと思ったら遠退き、すると次の瞬間には後数メートルまでの所まで近付けたかと思うと、また遥か遠くまで離れてしまう。進んでるのか進んでないのか分からない。それでも彼女は必死に、全力で走っている。

 剣を握る手が強くなる。歩夢は気付いてないがそれに呼応する様に、剣は光を放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ウルトラマンアグル》

《ウルトラマンベリアル》

 

「荒ぶる海の力、お借りします!」

 

《フュージョンアップ》

《ウルトラマンオーブ サンダーストリーム》

 

 

 三叉の槍を手にしたオーブがジャンボキングへと駆ける。

 

 

「闇を包め、光の嵐!」

 

 

 それに合わせてギンガもギンガスパークランスを持ち走る。2人は同時に槍を突き出して攻撃したが、バリアによって防がれてしまった。それでも彼らはジャンボキングに対して嵐の如く攻撃を仕掛けるが、全てバリアで無効化されてしまい、逆に鋏状の腕を振るわれて弾かれてしまった。

 

 

「クッ、だったら!」

 

 

 オーブは少し後退してから槍を振り回してエネルギーを溜め、先端から海流の様な光線を放った。サンダーストリームネプチューンと呼ばれる一撃である。怒濤の海流がジャンボキングの胴体に直撃するが、奴は意に返さない。

 

 

『そんな攻撃じゃ、ジャンボキングには通用しないよ』

「そうかもな……けど、動きを止めるくらいは出来る!」

 

 

 より出力を高めるオーブ。海流は確かに、ジャンボキングの動きを制していた。

 そんなことに何の意味が……と思っていたカタラだが、ふと気配に気付いて横に目線を向ける。そこには歩夢を手に乗せ、翔琉へと向かって飛ぶギンガの姿があった。2人は奴を倒すことではなく、歩夢を翔琉の所へ連れて行くことに切り替えたのだ。彼女を拾ってからギンガは光を纏って飛び、どんどんと距離を詰めていく。

 

 

『…………ああ、あの子がよく言うウザいってこんな気持ちか』

 

 

 ボソリと呟いた後、腕を振るって海流を掻き消し、ジャンボキングはギンガ達に目掛けて走り出した。

 

 

「させるか!」

 

《フュージョンアップ》

《ウルトラマンオーブ サンダーブレスター》

 

 

 オーブはジャンボキングの前に跳び、最もパワーのあるサンダーブレスターとなって奴の進撃を止める為に組み付いた。

 

 

『鬱陶しいなぁ』

 

 

 ジャンボキングの姿が変わる。超古代怪獣、超古代竜、宇宙海獣、奇獣、宇宙戦闘獣。5体の強力な怪獣達を融合させた新時代の王、超合体怪獣ファイブキングとなり、凄まじい咆哮が轟く。

 驚いているオーブに対し、ファイブキングは腹部から光弾を至近距離で放った。直撃を受けたオーブは火花を散らしながら後退してしまう。続けてファイブキングは翼を広げて飛び上がった。

 

 

「クッ!? この……!」

 

 

 上空のファイブキングは挑発する様に顎で彼のことを指す。

 

 

「上等だ……! ゼットシウム光輪!」

 

 

 血の様に赤い光輪がファイブキングに3枚投擲される。しかし奴はそれを額からの光線で全て撃ち落とし、更に頭部からの破壊光線、右腕からの火炎と冷気の合成光線、左腕の巨大な瞳からの衝撃波動、腹部からの連続破壊光弾、それら全てを同時に放つ最強の攻撃・カタストロフィスパークをオーブへと撃った。

 

 

「ぐうう……ぐああああああ!?」

 

 

 バリアーを張って防ごうとするがその凄まじい威力に障壁は破壊され、彼は大ダメージを受け爆風に包まれそれが晴れた後に倒れた。それを見たファイブキングは楽しそうに笑いながら着地。

 

 

『アハハハ! ベリアルの力を持ってるのに、正義の味方であろうとするなんて、変わってるねぇ』

「ぐっ……」

『闇の力に身を任せなよ。そしたらきっと楽しいよ』

「断る! 俺はこの闇の力を、誰かを守る為に使う!」

『うーん、君の主張は理解したけど、愚かだと思うよ』

「勝手に、思ってろ!!」

 

 

 光と闇のエネルギーを交差させてゼットシウム光線を放った。ファイブキングは左腕の眼球で受け止めて吸収。余裕の表情を見せるが、オーブは諦めずに撃ち続ける。力づくで撃ち破るつもりなのだ。

 

 

『無駄な足掻きだよ』

「無駄かどうか、お前が決めるなあああ!!」

 

 

 光線の出力が上がる。オーブは気迫の声と共に更に力を込めた。僅かではあるが、ファイブキングの身体が後ろに退がる。

 

『…………へぇー……』

「うおおおおおおお!!!」

 

 

 左腕から火花が散る。限界までもう少しなのだろう。ならばと、オーブは自身の限界を超える程の力を込めながら光線を放つ。肥大化した光線はファイブキングの呑み込み、大きな爆発を発生させた。

 

 

「はぁ……はぁ……! これで……」

 

 

 今度こそはやったか?

 膝を着き、荒れる息を整えながら爆発に目を向ける。すると次の瞬間、突風が起きて爆煙を吹き飛ばしてしまった。ファイブキングが翼を拡げたことによるものだ。奴の左腕には焼け爛れた様な傷が出来ているが、それでもまだ余裕がありそうである。

 

 

『今のは少し痛かったよ。流石はウルトラマンだね』

「ここまでやって少しかよ……」

 

 

 全力以上の一撃をそう笑って返すカタラに内心戦慄。

 

 

『フフッ。ねえ、教えてよ。君も翔琉君と同じで、ウルトラマンの命を犠牲にして力を手に入れたんでしょ? どんな気分?』

「ッ!? 知っていたのか……?」

『まあね。それで、どうなんだい?』

 

 

 楽しそうに悪趣味な質問をぶつけてくるカタラ。しかしオーブは、一眞は惑わされること無く奴を睨みながら立ち上がり構える。

 

 

「確かに俺は、オーブさんの命を貰って今ここにいる。それを俺が選んだから。……あの人を死なせたのは俺が弱かったからだ」

『へぇー、それでそれで?』

「でも、それを理由に立ち止まる訳にはいかない。あの時オーブさんが与えてくれて命と力、そして意志を、俺は受け継いで生きていく! それがあの人が生きた証にもなるから!」

『…………』

「俺はあの人が救ってくれたただの“1”だ。その“1”として、これから10でも100でも、多くの命を救ってみせる! それが俺のウルトラマンとしての在り方!」

『………フーン』

「どんな気分かって? 教えてやるよ。あの人に心から感謝してる! 今の自分に後悔なんかしてない! 絶対に、お前みたいな奴には負けない! この想い、他人の命も心も弄ぶお前に解るか!?」

 

 

 ファイブキングを指差すオーブ。

 あの日受け継いだもの。それは一眞の中で永遠に生き続ける。オーブの選択も、一眞の選択も、決して間違いではない。彼の想いと共に、一眞はウルトラマンオーブとして宇宙の輝きを守っていくのだ。

 本来の姿(オーブオリジン)となって剣を向ける。

 

 

『………』

 

 

 カタラは何も言わず、先程までの楽しそうな雰囲気は今の奴からは感じられない。それから奴は、大きく溜め息を吐いた。

 

 

『君は強い人間、ってやつみたいだね。何というか……そういうのは正直面倒で嫌になってくるよ』

 

 

 ファイブキングの中でカタラは4体の王の名を冠する怪獣のスパークドールズを投げ、同族達を超越した宇宙人の怪獣カプセルを取り出す。スパークドールズは怪獣カプセルに吸収され融合……カタラはそのカプセルを起動させる。

 

 

《ギガキマイラ……!》

 

 

 凶悪な面を備えた黄金と白銀の双頭、四つの腕、下半身にもある巨大な頭部、宙に浮き四足に生えた鋭い爪が空を裂く。2本の尾の先にも双頭があり、胸には不気味な顔がそのままのっぺりと貼られている様だ。

 邪竜とも呼べるその姿。超合体を超える究極合体怪獣……ギガキマイラが超巨大な体躯を見せ付けた。

 

 

『そういう人間の心を潰して、友達にしてみるのも面白いかな?』

 

 

 カタラは嘲笑い、その双頭を向ける。凄まじいプレッシャーがオーブにのしかかるが、そんなもの程度で臆する訳にはいかない。背部から伸びた触手より破壊光弾が放たれる…………が、それがオーブに当たる直前に何者かが彼の前に出て光弾を叩き落とした。ギンガスパークランスを手にしたギンガである。

 

 

「リヒトさん!」

「すまねぇ、遅れた!」

「いえ。何なら、もう少し遅くても大丈夫でしたよ」

「言ってくれるねぇ」

 

 

 構える2人。オーブが「歩夢さんは?」と尋ねると、ギンガは目線をある方向へ飛ばす。そこには倒れた翔琉の側にいる歩夢の姿があった。不可思議な空間の所為で手間取ったが、どうにか届けられた様だ。

 

 

『余計なことしてくれるね』

「面白いことって言って欲しいな。楽しいこと大好きな快楽主義者なんでね」

『ならボクも楽しませてもらうよ。君達でね』

 

 

 左頭からの雷撃、右頭からの蒼炎が2人を襲う。彼らは飛行してそれらを回避、そしてギガキマイラへと突っ込んでいく。

 

 

「ギンガサンダーボルト!」

「オーブウインドカリバー!」

 

 

 ギンガの雷撃とオーブの竜巻が合体し、剛雷を纏った竜巻となってギガキマイラへ向かう。だがそれを奴は四本の腕で握り潰してしまった。合体技を簡単に破ってしまう程の恐ろしさだが怯みはしない。彼らは飛び回り、奴の技を回避しながら巨体に確実に攻撃を当てていく。

 

 

「ギンガスラッシュ!」

 

 

 高速で飛びながら頭部より光刃を連射。振るわれる腕を躱し、そして接近してギンガハイパーキックを胸部に叩き込んだ。しかし奴に効果は無い様だ。

 

 

「クソったれが!」

「うおおおおおおおおお!!」

 

 

 猛烈な光をオーブカリバーに纏わせながら突っ込み、オーブは強力な斬撃を左頭の首に叩き込み斬り落とそうとした。だが、強固な体表は刃を完全には通さない。多少の傷を付けるだけに終わってしまう。そして尻尾の双頭の一つが、嘴が開いて襲い掛かって来た。彼はそれを後退して躱し再び剣を構える。

 

 ギンガは火炎弾を連射。だがそれに合わせる様にギガキマイラも尻尾の双頭から火炎弾を撃って相殺……いや、寧ろ威力は向こうが上で撃ち破って来た。その内の一発が当たり、大きく吹き飛ばされてしまう。

 オーブは火のエレメントを解放して炎の斬撃を飛ばし、奴の右腕の一つを狙った。せめて腕の一本でも斬り落とせればと考えてのことだ。しかしその狙った腕の殴打により、斬撃は打ち消されてしまった。

 

 それから何度も何度も攻撃仕掛けるが通じない。しかし2人は攻めの手を緩めなかった。何度吹き飛ばされても体勢を立て直し、立ち向かう。一度降りたギンガとオーブは並び、必殺技の発動動作をとってエネルギーをチャージする。2人は今放てる最大の一撃を、ギガキマイラに対して同時に叩き込むつもりなのだ。

 一方ギガキマイラも、胸部に禍々しいエネルギーを集中させ最強の技を放とうとしていた。

 

 

「ギンガクロスシュートォォ!!!」

「オーブスプリームカリバァァァー!!!」

 

 

 放たれた熱光線。二筋の光は真っ直ぐにギガキマイラへと向かう。そして奴もそれに対して必殺光線のデザスタルバーストを放ち、彼らの光線はぶつかり合った。凄まじい衝撃が空間に響く。叫びながら力を込めるギンガとオーブ。両者のカラータイマーが警告音を先程から発しているがお構い無しに更なる力を込めていく。

 

 だがそれでも、ギガキマイラの強力な威力の光線に少しずつ押され始めていた。カタラは高らかに笑っている。

 

 

『アハハハハハッ!! 友達にするのはやめた! このまま君達を殺して、そこの女の子も殺して、翔琉君の友達も人間達みーんな殺して……そうだ! 君達の世界の人達も殺そう! 友達も家族も、関係無い人達もみんなみんなみーーーんなだ!! 最ッッッッ高にメチャクチャな世界が作れる! ハハハハッ! 楽しみで仕方ないよ! アハハハハハハハハッ!!』

「ふ、ふざけやがって……!!」

「そんな最悪なこと……させるかよ!!」

『だったらもっと頑張りなよ! じゃないとここで死んじゃうよ!!』

 

 

 デザスタルバーストの威力がより増す。このままでは……────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、起きて」

 

 

 彼らが戦っている頃、歩夢が彼の側にしゃがみ、その身体を軽く揺さぶる。それに応え、彼は身体を起こした。顔面蒼白。瞳に生気は無い。目を合わせることはせず、ただただ頭を下げる。

 

 

「ごめん……なさい……ごめんなさい………」

 

 

 譫言の様に、何度も繰り返す。頭を掻き毟り、震え、嗚咽の声が漏れていた。

 

 

「俺が翔琉を殺した……俺がエックスを殺した……俺が……俺が……俺が、俺が俺が俺が!! 全部俺がやったんだ……! 全部俺の所為なんだ……。みんなの大切な人を、俺が奪った……。それなのにその人のフリをして…………!!」

 

 

 そこまで言った後、胃液をばら撒いた。何度も吐き散らかしたのだろうか、固形物は何も混じってない。

 

 

「お、俺にみんなといる資格なんて無かった……戦う資格なんて無かった…………なのに、俺は……!」

 

 

 段々と言葉は支離滅裂になっていく。

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

 

 それからはただただ、謝罪の言葉を繰り返していた。許されないことくらい彼自身も理解している。それでもこの言葉を言うしかなかった。

 

 心が壊れた彼を見つめながら、歩夢は口を開いた。

 

 

「聞いて欲しいことがあるの。おばさんから聞いた貴方の話。貴方が何故ここにいるのかの話。そして、みんなが貴方のことをどう思っているのかを」

 

 

 歩夢は語る。優里香から聞いた本当の翔琉の真実を。彼が翔琉とエックスを殺した訳ではないという優里香の言葉。そして彼を信じて受け入れようとしている仲間達の想いを。それらを話終えた時、彼の震えは少しだけ止まっていた。

 

 

「みんなね、貴方のことを大切に思っている。貴方が本当の翔琉君じゃ……ううん、貴方のことも本当の翔琉君だって受け入れている」

「違う……」

「何があっても、大切な仲間だってみんな思っている……貴方と一緒に居たいって願ってる」

「違う……!!」

 

 

 自分はそんなものじゃない。みんなから大切な人を奪った最悪の存在だ。こんなのが、居て良い筈が無い。ダメなんだ……在るべきでは無いんだ。

 

 

 

 もういっそ、殺してくれ……。

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしやがれええ!!」

 

 

 叱咤の声が轟く。ギガキマイラの技に対抗しながらギンガが、リヒトが叫んだ。

 

 

「ちゃんとお袋さんが言ってたこと聞いたか!? 仲間達の想いを聞いたか!? もう十分後悔も絶望もしただろ! だったらくよくよタイムは終わりだ! 上向け!  立て! 涙流したままでも進め! その先には、お前を想う人達が待ってんだよ!!」

 

 

 自分の所為で、仲間が危険な目に遭ってしまったことがある。大切な人の命を、奪う結果になってしまったことがある。そして大いなる闇の力に敗れて命を落としたがある。

 

 様々な絶望を味わって来た。その度に後悔し、反省し、自己嫌悪を繰り返した。地獄の様な状況。けど支えてくれる、手を伸ばしてくれる仲間達がいた。だから彼は今、こうして立つことが出来ている。光に選ばれし者として、一条 リヒトという1人の人間として。絶望を乗り越えてきた彼は、仲間達と未来へ向かって永遠を誓い合う。

 

 

「俺もウルトラマンから命を貰いました……だから分かります! エックスさんは、貴方に想いを託したんです! それに翔琉さんだってきっとそうだ! 貴方は2人を殺して生まれたんじゃない! 2人の想いが、貴方を誕生させたんだ!! だから、貴方が自分の存在を否定しちゃダメだ!!」

 

 

 想いを託された事。それはきっと自分も彼も同じ。だったら彼自身が自分を否定することはその想いも否定することになる。そんなこと、絶対にしてはいけない。

 

 

「どんなに辛くて、どんなに苦しくても! 未来(ゴール)は必ず近くにある! そこで笑っている為にも、立ち上がれ! 進め!!」

「諦めずに! 前を見て! 限界を超えて! 貴方を待っている人達の為に!!」

『アハハハ、馬鹿みたいな台詞だねぇ!!』

「ああ、馬鹿かもな!! だがなぁ! そうやって馬鹿になって突き進む方が、面白かったりするんだよぉ!!」

「それにお前に、俺達を馬鹿にする資格はねえ!!」

「来い! ウルトラマンエックス、天地 翔琉!! 俺達と、仲間達の想いと共に!!」

 

 

 ギンガのクリスタルが七色に輝く。黄色、赤、緑、白、紫、水色、桃色……それら全ての色をクリスタルは鮮やかに照らしている。そして彼は両腕を拡げ、全身から眩い光と共にクリスタルの力を解放して強烈な光線を放った。全ての闇を討ち払う最高の光、ギンガエスペシャリーだ。

 

 そしてオーブ背後に、現れた8人の戦士の幻影がV字状に並び、それぞれが構えを取りギガキマイラに対して光線を放つ。剣がリング状の光として展開し、オーブ自身も腕を十字に組んで光線を放った。諸先輩方の光の力をお借りした最高の輝き、オーブスプリームカリバー・オリジウムギャラクシス。

 

 2人の最高最強の光線はギガキマイラのデザスタルバーストをどんどんと押していく。先程までの劣勢が嘘かの様だ。まさかの事にカタラは驚くが遅い。ギンガとオーブの必殺技は奴の光線をそのまま撃ち破り、そして直撃。上空では、凄まじい規模の大爆発が起きて周囲を照らすのだった。

 

 

 

 

 

「最初聞いた時、信じられなかった」

 

 

 歩夢が語る。

 

 

「だって、あの子がもう死んだって言うだもん……。信じられないし信じたくなかったよ……。本当だって知って、じゃあ今まで一緒だった貴方は何だったのって思って……そしておばさんの話を聞いて全部知った時に、それでも少し恨んだの」

 

 

 「恨んだ」という言葉に彼の胸が締め付けられる。

 

 

「何を言っても、あの子が死んだのに変わりは無い。もう大好きだったあの子に会えない……そう思うとどうして良いのか分からなくなった」

 

 

 翔琉を支えて立ち上がらせた。頬に手を当て、少し無理矢理だが目と目を合わせさせる。

 

 

「ここに来るまで、たくさん考えた。貴方をどうしたいのか、自分が何をしたいのか。今までのこと全部思い返して………それで……」

 

 

 彼女は一呼吸置いてから、剣の刃を彼に向けた。

 

 

「私ね、決めたの」

 

 

 真剣な眼差しと、刃が彼に向けられている。何となく、それならば自分のことを終わらせられるのではないかと思った。彼女がそれを望むのなら、それで良い。それを受け入れよう。

 こんな自分を、斬り裂いて終わらせてくれ。

 

 

 

 

 

 しかし歩夢は彼を斬る事はなく、寧ろその剣を差し出していた。

 

 

「貴方を……翔琉君を信じるって」

「…………俺は翔琉じゃない……」

「ううん。貴方は翔琉君だよ。何度も私達を助けてくれた。私の為に、たくさん頑張ってくれた……。そして何より、あの子に翔琉君で在ることを託されたんだから」

 

 

 差し出された剣を、彼は受け取れない。

 

 

「恨んだのは事実。でも、それ以上に凄く感謝してるの。私は貴方が居たからここにいる……あの日、貴方が居なかったらあの子は本当に死んでしまってた。でも、貴方が想いを受け継いでくれた。きっとそれを、あの子だって喜んでいる筈だよ」

 

 

 剣を持ってない方の手で彼の手を握る。

 

 

「狡いこと言うね。もし貴方があの子の事を後悔してるのなら、尚更翔琉君として生き続けて欲しい。どんなに辛くても、あの子がこの世界にいたって証を示して欲しいの。そしてみんなの助けになって。それが唯一、私が貴方に望む贖罪、かな」

 

 

 握った手を、剣に置いた。剣からは、虹色の光が淡く、そして強く放たれていく。ここに込められた、みんなの想いを伝える様に。

 

 

「あはは……私も最低な事言ってるね。それに何だかめちゃくちゃ……。でも、これだけは言わせて」

 

 

 優しい瞳からは涙が伝う。そして彼女は、微笑みながら言葉を紡いだ。

 

 

「貴方は、私の大切な大好きな……幼馴染の翔琉君だよ」

 

 

 

 

 

 

 光が広がった。

 気付けば、真っ白な空間にいた。

 

 手にはあの剣がある。目の前にいた筈の歩夢も、ギンガとオーブの姿も見えない。

 

 一体何が……?

 そう思っていた時である。

 

 

 

「やっと会えた!!」

 

 

 誰かが背後から抱き付いて来た。驚き、身体を捩らせてその人物から少し離れて振り向く。目の前にいるその者は、ニコニコと笑いながら彼のことを見ていた。

 

 そしてすぐにその者が誰かは分かった。何故なら自分と同じ顔、同じ身長、そして自分よりも屈託のない笑顔を持った青年……。それが誰なのか、分からない筈が無い。

 

 

「君とずっと、話したかったんだ!」

 

 

 本当の、本来の天地 翔琉が、自分の目の前に立っていた。

 

 

 

 








次回、「君と僕と私の名前(キズナ)



 行こう、友よ。いざ───








 ──────ユナイトだ!!!



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