RAINBOW X STORY   作:山形りんごをたべるんご

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84.君と僕と私の名前(キズナ)

 

 

 

 

 

 

 

 嗚呼……。やっと……やっと伝えられる。

 ()の代わりに戦い、苦しんでいた君にこの想いを。

 

 この光を君に託し、ユナイトする為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった……よな……?」

「これで倒せてなかったら、最悪ですよ……」

 

 

 ギンガとオーブは片膝を着いた。息は荒く、胸のカラータイマーは危険信号を激しく放っている。全力の一撃を放ってカタラの変身したギガキマイラの攻撃を押し返すことに成功した2人。かなりのエネルギーを消耗しどちらも限界は近いが、まだ確実に倒せたかどうかが分からないので気は抜けない。

 

 どうにか立ち上がり、上空に広がる爆煙を見つめて構える。緊張感が彼らの間に走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『痛かったなぁ』

 

 

 爆煙の中から飛び出して彼らの前に着地したのはタイラント。その中にいるのはもちろんカタラである。ギリギリでギガキマイラから抜け出し、それをスケープゴートとして利用。ダメージを抑えて新たに先程のタイラントとなったのだ。

 

 

「痛かったって……こっちはかなりガチでブッ放したんだぞ……」

『だろうね。確かにアレを喰らってたら危なかったよ……。でもこの通り、ボクはまだまだやれるよ』

 

 

 いくらかダメージは与えられてはいるが、奴にはまだ余裕がある。反対にこちらは立つのだってやっとの状態。

 

 

『君達が本気を出してくれたんだ。ボクもそれに応えてあげないとね』

 

 

 タイラントの中で、カタラは新たにスパークドールズを取り出した。宇宙怪獣エレキング、古代怪獣ツインテール、一角超獣バキシム、宇宙大怪獣アストロモンス、そして陽花にとって親友であり、Xioの大切な仲間である古代怪獣ゴモラ。そして他にも様々な怪獣、超獣、宇宙人の力……それらが掌に置いてあるタイラントの怪獣カプセルと融合し、更なる進化を遂げる。カタラは笑みを浮かべながら、そのカプセルを起動させた。

 

 

 

《グランドタイラント……!!》

 

 

 

 肉体が盛り上がり大きく肥大化。六本三対の腕には鉄球、鎌、鞭等の武器が備えられ、強靭な四本の脚は五次元の空間を踏み締めて亀裂を入れる。二本の長くしなやかな尾、身体中には幾つもの鋭い棘が生えており、胸部の青い眼が不気味な輝きを放つ。怪獣達の角が複数生えた頭部は先のタイラント以上に恐ろしい物になっており、それを見ただけでも精神が押し潰されそうになる程の凶悪な面構えとなっていた。

 ギガマイラに匹敵するかそれ以上に巨大な身体中から無数の触手が伸びる。暴君を遥かに超えた最強最悪、最大の脅威。カタラはその中で笑いながら、ギンガとオーブを見下ろす。

 

 グランドタイラント。カタラの持つ戦力の中でも、最強のものである。

 

 

「これはまだまだ、愉快なステージになりそうだな……」

「俺、ステージをサポートする側なんですけどねぇ」

「俺も今はそっちがメインだな。翔琉もそうだし、終わったらその辺のこといろいろ話そうぜ」

『おや? もしかして勝つつもりなのかい?』

 

 

 カタラの言葉に2人はインナースペースの中で口角を上げ、勢い良く飛び出した。

 

 

「「当たり前だ!!」」

 

 

 負けることなど微塵も考えてない。彼らが思い浮かべているのは友人を取り戻し勝利することのみだ。残された力を振り絞って槍と剣を強く握り、眼前の悪魔へと立ち向かう。

 

 

『無駄だよ』

 

 

 そんな彼らに対して無数の触手と、全てを覆い尽くす様な光弾の弾幕が放たれた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 翔琉は困惑していた俺の手を握る。その瞳はキラキラと輝いてる。無邪気な笑顔がこちらを見つめ、俺は……何をしたら良いか分からなかった。

 

 

「緊張してる?」

「あ……いや……何、と言うか……」

 

 

 緊張、というよりこの状況を把握出来ず戸惑っているというべきだろう。今の俺は目が泳ぎ、口も魚みたいにパクパク動くばかり。今の言葉も、ちゃんと発声出来ていたのかも怪しい。

 

 

「そうなっちゃうのも無理ないかもね」

 

 

 彼は俺の手を少し強く、そして優しく握った。

 

 

「君とね、話したいことがあるんだ」

 

 

 心臓を掴まれた様な感覚がした。俺は彼の人生を奪った存在だ。絶対に憎まれているに違いない。どれだけ責められるだろうか、どんな呪詛を吐かれるだろうか……。

 自業自得。到底許されない事をしたのだから。ごめん……その言葉が出るより先に、彼の口から笑顔と共に言霊が出た。

 

 

「ありがとう!」

 

 

 翔琉から出たのは感謝の言葉。嫌味などは一ミリも入っていない純粋なもの。

 何故なのか理解が出来なかった。俺は彼の全てを奪ったのに、何故そんな事が言えるのか……。何も分からず、言葉すら出ない俺だが、翔琉はそんな俺の背後の方を指差した。

 

 

「それとあの人も君に、言いたいことがあるみたいだよ」

 

 

 振り向くとそこには光が集まり、巨大な何かが創られていく。そしてそれは巨人となった。俺の、俺達の前に現れたのは自分がこれまで何度も変身した存在。

 ウルトラマンエックスが、そこには居た……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 リヒトと一眞、そして歩夢が翔琉を救う為に五次元空間へ向かい、皆がその帰りの無事を祈っていた時である。基地内でけたたましいサイレンが鳴り響き、ミキリとミハネは素早くPCを操作しモニターにその原因である者達を映した。

 モルド・スペクター、ギナ・スペクター、ジュダ・スペクター。グア軍団の三軍神が空間を裂いて突如として現れ、複数の怪獣を引き連れながら市街地を目指して進軍しているのだ。

 

 

「グア軍団!?」

「こんな時に……!」

 

 

 先のカタラの襲撃によってXioは多くの戦力を削がれた。航空兵器は使用出来ず、基地機能も隊員達もダメージが回復出来てない。ウルトラマン達も居らず、備えは不完全、そんな状況でグア軍団がこんな大戦力で攻めて来られるのはかなり最悪であった。

 

 

「サイバーゴモラは出せないの?」

 

 

 沙優が陽花に尋ねるが、彼女は首を横に振る。

 

 

「サイバーゴモラはアタシのゴモラとリンクしてるっす。だから、ゴモラが奪われて敵に利用されてる今の状態じゃ実体化は不安定になるし、仮に出来たとしても暴走してしまう可能性があるっす……」

 

 

 サイバーゴモラはゴモラのアバター的存在。その為ゴモラが奪われてしまっている現状では使用出来ないのだ。

 

 

「マグラー、ブラックキング、ガボラ、ゾラ、モンスアーガー、ゴルメデ、アリゲラ、エレドータス、メガロ、ザタンシルバー……他にも複数体の怪獣がモルド・スペクターに率いられてます。このままの進行速度だと、20分以内には人口密集地に到達します!」

 

 

 涼風がグア軍団の市街地到着までの時間を計算。急がなければ、多大な被害が出てしまう。

 

 

「フェイズ5発令! 紗季、陽花は私と一緒に現場に急行し、地上からの攻撃で進行を阻止! ミキリとミハネは各自治体に連絡して住人の避難指示を! リュウジはUNVER本部に連絡、回せる戦力を全てこちらに回す様に伝えて! 涼風と博士はみんなと、戻って来る翔琉君達のことをお願い! ザムザ、貴方はここで全体の指揮を担当!」

「隊長、待って、下さい。自分が、現場に」

「副隊長の言う通りです。それに、俺も出れます」

「怪我してる貴方達より、私の方が向いてる。それに昔は最前線で戦ってたのよ? その腕、まだ鈍らせてるつもりは無いわ」

 

 

 各隊員に指示を出した沙優。彼女が前線に出て自分が基地に残るということにザムザとリュウジは少し不服そうな反応を示したが、彼女の返しを受けて納得し従う。先程の襲撃での傷が癒えてない2人を、緊急事態とはいえまだ戦線復帰させる訳にはいかなかった。

 

 グア軍団の進軍を止める為に、Xioはすぐに動き出す。沙優と紗季、陽花は装備をジオアトスという専用車両に積んでからそれに乗り込み、現場へと急行。ミキリとミハネ、リュウジは各所に現状を通達。ザムザはモニターで全状況を見て状況を把握し有効な戦術を立てるべく思案していた。

 

 それらを見ていた虹ヶ咲の8人も、これから始まるであろう激戦を想像して息を呑む。ウルトラマン達が居ないこの状況で、奴らに勝つことが出来るのだろうか……。

 

 

「大丈夫ですよ」

 

 

 彼女達の心配を悟ったのか、涼風がそう声を掛けた。

 

 

「先生……?」

「ウルトラマンが現れるまで、地球の平和はXioが守り抜いて来たんです。だから心配しないで下さい」

「その通り。我々はプロだ。プロの凄さを、しっかりと見ておくが良い」

 

 

 そう言って「ガッハッハ!」と笑うシャマラ博士。少々下品な笑い方だが、今はとても頼もしく思えた。

 

 

「皆さんは、天地さん達の無事を祈ってあげていて下さい。お母様が言っていた様にあの剣が想いを形にすることが出来るのなら、きっと皆さんの想いが力となる筈です」

 

 

 涼風からの言葉を受けて、彼女達はもう一度翔琉達のことを想う。またみんなで、笑って過ごせる日々が帰って来ることを心の底から望むのだった────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ウルトラマンエックスは人間くらいの大きさになって俺達の前に立った。その瞳が俺のことを見つめて映している。

 

 

『私はウルトラマンエックス。と言っても、君はもう既に知っているか』

「エックス……」

『ずっと君と……いや、君達と言葉を交わしたいと願っていた。それが叶ったこと、心から嬉しく思っている』

 

 

 そう言った後エックスは、視線を落として俺が握っている剣を見た。

 

 

『それはエクスラッガー。想いを形にし、失われたものを呼び戻すことも出来る。私達がこうして君と話せているのは、エクスラッガーに込められた君の仲間達の想いのおかげだろう』

「そっかぁ! じゃあ、歩夢ちゃんやみんなにも感謝しなきゃね!」

 

 

 翔琉はそう言って笑い、エックスも「ああ」と頷いている。どうして2人が目の前にいて、話せているのかは分かった。だがそんなことよりも、俺は彼らに聞かなければならないことがあった。

 

 

「恨んで、ないのか……?」

 

 

 彼らから全てを奪い、勝手に行使した。そんな俺は恨まれて、憎まれて当然の筈。なのに翔琉からも、エックスからもその気を感じられない。何故なのか、どうしても俺には理解が出来ないでいる。俺の戸惑いを察したのだろう、翔琉とエックスは優しい視線を向けて来た。

 

 

「恨んでなんか無いよ!」

『ああ。それに、本当に恨まれるべきなのは私の方だろう』

 

 

 エックスはそう言って俺と翔琉に向き直る。

 

 

『君が消えることになってしまったこと、そして君が戦い苦しむことになってしまったこと……。どちらも私の力不足が引き起こした私の罪だ。君達に、辛い思いをさせてしまったこと、心から謝罪したい』

 

 

 頭を下げるエックス。彼も、俺と同じで強い罪悪感に苛まれていたのか……。そんな俺らの手を翔琉が握った。

 

 

「2人とも、大丈夫だよ。僕も君達も、決して誰かのことを恨んだりなんかしてない。寧ろ感謝してる……そうでしょ?」

 

 

 その言葉に俺もエックスもハッとさせられる。俺は2人のことを恨んだりなんかしてないし、そもそもそんな資格は無い。そしてこうして存在出来ているということには、確かに少し感謝はあった。

 

 

「僕もね、僕が消えちゃったことで2人に辛い思いをさせたこと、君に全部を任せる事になってこうやって苦しませてしまったこと、凄く後悔してた。僕の所為で2人を苦しめちゃったって」

「それは……!?」

 

 

 それは違う。翔琉もエックスも悪くなんか無い。そう叫ぼうとしたがそれを言う前に、彼が人差し指を俺の口の前に立てた。

 

 

「君は違うって言うよね。立場が違ったら僕だってそう言うし、きっと君は僕と同じ思いになる。それはエックスさんも同じだよね?」

 

 

 翔琉にそう言われてエックスは頷く。きっと、ここにいる誰もが自分よりも相手の為に動いただろう。例えそれが、自分を犠牲にする結果となっても。2人はそういうやつだし、俺だってそうする。そしてきっと、全員同じ様な後悔を抱えることになる筈だ。

 

 

「互いが互いを想ってる。それが悪い方向に向いちゃって、みんな苦しくなってたんだと思うんだ」

『そうだな……。私達は、相手が恨んでいると勝手に思い込んで、持ってしまった罪悪感に苦しんでいた。でも本当は、もうお互いに許し合っていたんだ』

「うん。だから、僕達が伝え合う言葉は“ごめんなさい”じゃない」

 

 

 俺達3人の手が重ねられる。そしてそれぞれの視線が交じり合った。

 

 

「“ありがとう”、だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 地上には戦車部隊が並び、グア軍団へ砲撃を行う。Xioの通達を受けて防衛軍はすぐに集結し奴らへの迎撃を開始した。韓国Xio釜山基地からの援軍、大陸間弾道ミサイル・ペルセウスや多連装ロケットシステムなどの長距離火力支援も用いられ、奴らを撃滅するべく総力を上げて攻撃を行っていく。

 

 現場に到着した沙優達も車両から降り、ウルトライザーやジオバズーカで軍団を攻撃する。陽花が知識をフル回転させて怪獣達の弱点を即座に解析し、司令室のザムザ達が各隊員にそれを伝えて的確な攻撃を指示。それによって数体の怪獣を倒すことは出来た。

 だがしかし、軍団の数はまだまだ多く、頭目である三軍神には防衛軍の兵器は全く通じてない。大斧、剣、鞭が振るわれて航空部隊も地上部隊も破壊されていく。グア軍団は止まることなく、悠々と進軍していた。

 

 

《CYBER ELEKING LOAD》

 

「この……止まりなさい!!」

 

 

 紗季がサイバーエレキングを読み込ませ、ジオバズーカから電撃弾をモルドへと発射。しかしそれは、左手であっさりと払われてしまう。

 

 

「愚かな……フンッ!!」

 

 

 振るった大斧から放たれた光刃が彼女達のいる所に飛び爆発。沙優と紗季、そして陽花は悲鳴と共に吹き飛ばされた。

 

 

「やれぇ!!」

 

 

 モルドが号令を出すと怪獣軍団は一斉に攻撃。防衛軍を一気に殲滅していく。

 

 

 

 

 

 

「第三、第五、第六戦車部隊全大破、戦闘続行は不可能!」

「第一、第二部隊も半数以上が大破!」

「韓国Xio航空部隊も全滅!」

「地上歩兵隊も負傷者多数!」

「多連装ロケットシステム、弾数ゼロ!」

「ペルセウスの弾数も残り僅か!」

 

 

 

 ミキリとミハネが情報を伝える。

 

 

「避難状況は、どう、なっている……!」

「まだ終わってません! 完了まで、あと10分程かかります!」

 

 

 グア軍団はどんどん進行し、市街地まであと僅かの距離まで迫っている。このままでは、市民に大きな被害が出てしまだろう。地球を守る防衛軍として、Xioとして、それだけは避けなければならない。

 

 

 

「残る、全戦力を、奴らに、ぶつけろ……! 倒せなくても、構わん。避難が、完了、するまで、足止め、するんだ……!」

 

 

 

 

 ザムザからの指示を受けて現場の部隊はグア軍団への総攻撃を開始。少しでも奴らの進軍を遅らせて、避難する時間を稼ぐ為にだ。攻撃は通じず、逆に奴らの攻撃によってこちらがどんどん削られていくが、それでも諦める訳にはいかない。人々を守る為に、命を尽くすのが自分達の任務なのだから。

 沙優達も起き上がり、軍団へ向けて武器を放った。

 

 

「無駄な足掻きだァァ!」

 

 

 ジュダがバットキャリバーより斬撃を飛ばす。戦車が、歩兵隊が、その一撃で虚しく宙を舞った。

 

 

「ぐぅ……!」

「ハァーハッハッハッ!! 痛快!痛快!」

 

 

 高らかに笑うモルド達。

 このままでは…………誰もがそう思いかけた時、天より二つの光が降着した。

 

 

「あ、あれは!?」

「まさか……!」

「何だ、貴様ら?」

 

 

 グア軍団の前に立ち塞がる様にして降り立ったのは2人の黒い巨人。ウルトラマンビクトリーとオーブシャドウである。

 

 

「間に合って……は無さそうだな」

 

 

 ビクトリーは横目で悲惨な事となっている戦車部隊を見た。

 

 

「そうでもないよ」

「何?」

「彼らが必死に戦ってくれたから、奴らが街に入る前に僕達が来れたんだ。ちゃんと間に合ってる」

「…………そういうものか」

 

 

 剣を構えながらビクトリーに「そうだよ」と言うオーブシャドウ。地球人達が命懸けで作ってくれたこの状況、無駄にはしない。

 

 

「フンッ、また邪魔をするかウルトラマン!!」

「お前らとは、初めて会った」

「多分一眞とかのこと言ってるんだよ」

「俺はアイツらではない」

「はいはい……」

 

 

 少々天然なビクトリーとオーブシャドウとのやり取り。それを見てまるで舐められてる様に感じたギナは鞭を地面に打ち付けて憤りを見せる。

 

 

「ふざけるな! やれ、怪獣達よ!!」

 

 

 彼女の号令で怪獣軍団が2人へと向かう。

 

 

「来たよ」

「任せろ」

 

 

 構えるウルトラマン達。奴らの進軍を迎撃するべく、2人は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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手と手を取り合い、心が重なる。俺達の間には、確かな絆があった。

 

 

『その通りだな』

 

 

 エックスが笑う。

 

 

『ありがとう。君達とユナイト出来たことは私にとって最大の幸福だった』

「ユナイト……?」

『想いを重ね心身共に一つとなること、とでも言おうか。私は信頼出来る者とユナイトとすることで、真の力を発揮することが出来るのだ』

 

 

 ユナイト……。その言葉は胸に響いていた。まるで今の自分達のことの様に思えたからだ。

 

 

「だったら僕達は、もうユナイトしてますね!」

 

 

 翔琉が笑顔でそう言う。

 俺達の想いは繋がり重なった。今この瞬間、俺達は確かにユナイトしていたんだ……。それを感じた時、燃える様な熱が込み上げて来た。

 

 Xioの仲間達が、俺を信じてくれている。

 リヒトと一眞が、俺の為に戦ってくれている。

 母さんが、俺の全てを受け入れてくれている。

 

 愛、せつ菜、かすみ、果林、しずく、彼方、璃奈、エマ、そして歩夢……。同好会のみんなが、俺を想ってくれている。

 

 みんなの想いを受け取ったのに、いつまでも立ち止まっている訳にはいかない。

 

 

「2人に、頼みがある」

 

 

 これから俺は2人に横暴を言う。エゴを振り撒く。それでも、俺はやらなきゃならないんだ。

 

 

「翔琉の勇気を俺にくれ……エックスの強さを俺にくれ……! 世界を、未来を、大切な人達を守る為に、助ける為に……2人の力と想いを俺にくれ!」

 

 

 もう奪っておいてこの言い草、我ながら最低だと思う。どんな罵倒も覚悟は出来ている。しかし2人は、そんな言葉を投げることは無かった。

 

 

『もちろんだ』

「それに、僕らもそうして欲しかったから」

 

 

 2人の身体が光に包まれていく。

 

 

「君に受け継いで欲しい。そして、みんなの為に頑張って欲しいんだ。僕らが出来なかったことを、君に頼みたい」

『辛い事、苦しい事、これからもきっと襲って来るだろう。だが忘れないでくれ。私達はいつも君と共にいる』

「受け取って。僕と──

『私と──

 

 

 

 

 

──君の名前、天地 翔琉(ウルトラマンエックス)を』」

 

 

 

 

 光となった2人が俺の中に入っていく。そうか……これが、これこそが……。

 

 

「ユナイト……」

 

 

 そして俺の眼前に、眩い輝きが広がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 グランドタイラントの強さは圧倒的だった。ギンガの光線も、オーブの斬撃も、全てが通じ無い。触手に絡め取られて叩き付けられ、光弾が炸裂。火炎放射、冷凍ガス、ミサイル、電撃、鎌や鉄球、鞭による攻撃が既に限界を超えている彼らを叩きのめしていた。

 

 倒れている2人のウルトラマンをカタラはその怪物の中から見下ろす。カラータイマーの点滅は弱々しく、今にも消えそうだ。

 

 

『残念だけど、ゲームオーバーだね』

 

 

 無数の触手の先が彼らへと向けられる。

 

 

『さようなら────ッ!?』

 

 

 トドメを刺そうとした時、虹色の光が輝いた。思わず触手を止めてその発生源へ視線を向ける。そこに居たのは翔琉だ。

 彼は目の前の歩夢のことを優しく抱き締める。

 

 

「ありがとう、歩夢」

「翔琉、君……?」

 

 

 それから翔琉はグランドタイラントの方を向き、左手を前に出した。するとその手に、カタラに奪われていたエクスデバイザーが現れて収まった。

 

 

『ッ! ………どうしたんだい翔琉君? 君は自分が何をしたのか、何をしてるのか理解してるのかな?』

「ああ、分かってるさ」

『だったらそれが間違ってることも分かるでしょ。無駄なことはやめて、ボクの所に戻っておいで』

「断る」

 

 

 グランドタイラントの中で、カタラの眉間に皺が寄る。

 

 

「俺はもう迷わない。大切なものを守る為に」

 

 

 一度歩夢の方に視線を向け、そして優しく微笑んだ。

 

 

「アイツを倒して、ここから出る。そしてみんな所に帰るぞ」

「うん……!」

 

 

 彼女はその言葉に笑顔で返事をした。もう彼に迷いは見られない。彼は、翔琉は真っ直ぐな強い瞳でグランドタイラントを見る。

 

 

「いくぞ、翔琉……エックス……!」

 

 

 全ての想いを込めて、翔琉達は叫ぶ。

 

 

 

 

 

「『「ユナイトだ!」』」

 

 

 エクスデバイザーの上部スイッチを右手で押すと側面パーツが展開してXモードに変形。それと同時に、翔琉の前にウルトラマンエックスのスパークドールズが現れた。彼はそれを右手で掴んでデバイザーに読み込ませる。

 

 

《ウルトラマンエックスとユナイトします》

 

 

 音声ナビが流れ、そしてエクスデバイザーを高く掲げながらその名を、自分達の名前を叫んだ。

 

 

「エックスゥゥゥーーーーーッ!!!」

 

 

 デバイザーから光がX字に放たれ、翔琉はそれに包まれる。次の瞬間光より飛び出したのは、誰かとの繋がりによって誰よりも強くなる勇気ある戦士。

 

 

《エックス、ユナイテッド》 

 

『イィィーーーーサァッ!!!』

 

 

 ウルトラマンエックスが、完全復活を遂げたのだ。

 

 

『そんな、どうして……!?』

『お前じゃ、永遠に分かんねえよ』

 

 

 エックスは全身から光を放った。その光は倒れていたギンガとオーブの身体に吸収されていき、カラータイマーが青い輝きを取り戻す。

 

 

「翔琉……!」

「翔琉さん……」

『ありがとな、2人のおかげで助かった』

 

 

 立ち上がった2人の間を通り、彼はグランドタイラントへと歩む。

 

 

『コイツは俺が倒す』

『…………言ってくれるね』

 

 

 触手がエックスへと伸びていく。彼のことを拘束するつもりだ。

 

 

『君の居場所はボクの所だ! 君はボクといるべき存在なんだよ! さあ、こっちにおいで!』

『言っただろ……』

 

 

 右腕に電撃を纏った。そしてそれを、向かって来る触手の群に対して手刀として振り払った。繰り出した一閃は、触手を裂き薙ぎ払ってしまった。

 

 

『馬鹿な!?』

 

 

 カタラは驚いた。グランドタイラントの力は並大抵のウルトラマン如きに負ける筈が無い。なのにたった一撃で自身の攻撃が掻き消されてしまった。想定外の強さを得て現れたエックスに、カタラは驚愕するしかない。

 驚き動きが止まってしまっているカタラに対して、エックスは跳躍して一気に距離を詰める。

 

 

『イィィーーーーサァァァッ!!』

 

 

 強烈な拳を、その顔面に叩き付けた。振り抜かれたその拳によりグランドタイラントは吹っ飛ばされてしまい、数百メートルは後退させられてしまった。

 

 

『な……に……!?』

『お前が奪った怪獣達、全部返して貰うぞ』

 

 

 カラータイマーが黄色に発光した後、彼は右腕でXの軌跡を切り、それから両腕を大きく振りかぶった。その際踏み締めた左足からX字にエネルギーの余波が放出されて輝きを放つ。エックスは腕を自身の前へ突き出しながらクロスさせ、それと同時にその技の名を叫んだ。

 

 

『ザナディウム光線!!!』

 

 

 腕から放たれたX字の熱光線はグランドタイラントの胸部に直撃。この程度の技、容易く吸収出来るしそもそも大したダメージにもならない。そう思っていたのだが次の瞬間、身体中に違和感が走った。

 

 

『これは……!? まさか、ボクの怪獣達を……無理矢理、スパークドールズにしてる……!?』

 

 

 ザナディウム光線の真価は怪獣を殺さず、データ化してスパークドールズに圧縮すること。エックスはそれを利用し、カタラがグランドタイラントになった際に融合した全ての怪獣、更に奴が今所持している怪獣までも纏めてスパークドールズに変えてしまうつもりなのだ。

 光線の出力が上がる。痛みとも違う、不可解な感覚がカタラを襲っていた。

 

 

『この……!!』

 

 

 グランドタイラントは腕の鎌や鉄球で光線を撃ち消してやろうと振り上げた。だがそこに、二つの光線が飛んで来て妨害する。ギンガとオーブが、腕を組んで放ったのである。

 

 

『そんな、どうして君は……!? ボクの計画は、完璧に……!?』

『そうかも知れねえな』

『だったら……何で!?』

『俺には、みんながいるからだ!!』

 

 

 信じあえる仲間達がいる。それが彼に未来を掴み、明日を目指す力を与えてくれるのだ。

 

 

『みんな……みんな、か!? ボクには、無いもの……そうか……そうか……!! そうか!! アハハハ……アハハハハハハッ!! アハハハハハハハハハハハッ!! ハハハハハッ!! ハハハッ…………アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!』

 

 

 絶叫と共に、グランドタイラントは大爆発を起こした。そしてデータとして圧縮された怪獣達がエックスのカラータイマーを通して、インナースペースにいる翔琉のデバイザーに吸われていく。怪獣達は1枚のサイバーカードとなり、無事全て取り戻すことが出来た。

 

 そして1体、カードではなく通常のスパークドールズとして翔琉の手に収まった怪獣がいた。

 

 

『おかえり、ゴモラ』

 

 

 翔琉にとって戦友と言える存在、ゴモラ。彼も無事に戻って来た。

 

 

「やりましたね、翔琉さん」

「良いとこ持って行かれたな」

 

 

 ギンガとオーブが歩み寄って来る。

 

 

『本当に助かった。礼を言わせてくれ』

「気にすんな」

「ウルトラマン同士助け合い、ってことですよ」

 

 

 彼らが居なければどうなってたことやら……。それを思うと2人には感謝してもし切れない程である。

 

 

「とりあえず、この気色悪い空間からとっとと出ようぜ」

「ですね」

『ああ。歩夢、行こう』

 

 

 エックスは歩夢の所に行き手を出し、頷いてからそこに彼女は乗った。そして元の世界に戻る為に、ウルトラマン達は飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ビクトリウムシュート!」

「シャドウスプリームカリバー!」

 

 

 ビクトリーとオーブシャドウの必殺技が、怪獣達を撃破。彼らは自分達の力を駆使し、残った防衛隊の援護も受けて怪獣軍団を全滅させることに成功した。

 

 

「さて、これで残りは君達だけだ」

「おのれぇ……!」

「貴様らァァ……叩き潰してくれる!」

「潰れるのはお前達だ」

 

 

 互いに駆け出し、ジュダとビクトリー、ギナとオーブシャドウが衝突。

 

 

《ウルトランス! サドラ・シザース!》

 

 

 岩石怪獣サドラの鋏を装備。ジュダの剣と鎬を削り合う。突き出された剣を鋏で受け止め、払い除けてから頭部に向けて突き出した。しかし奴はそれを身体を反らせて回避し、再び剣を振るう。

 

 

「ッ!」

 

 

 ビクトリーは躱すが、ジュダは更に剣を振り回して連続攻撃を仕掛けて来た。何振りかは鋏で防ぐが、一撃が当たってしまった後は二撃目、三撃目とその強烈な斬撃を喰らってしまう。そして左手から放たれた光線が胸部にクリーンヒットして吹き飛ばされた。

 

 

「ぐああああッ!?」

「フンッ……その程度か?」

 

 

 

 

「シャドウフレイムカリバー!」

 

 

 炎を纏った剣でギナに斬り掛かるが奴はそれを軽やかな動きで躱してしまい、鞭を振るって攻撃。オーブシャドウはその連続攻撃で手痛いダメージを受けてしまう。

 

 

「くっ!?」

「消え失せろ!」

 

 

 更なる攻撃が彼を襲う。鞭の連打、そしてエネルギーを纏った手刀と蹴り。その威力は強力で、オーブシャドウを地に転がした。

 

 

「があああッ!?」

 

 

 ダークサンダーエナジーで強化されている三軍神は、そう簡単に勝てる相手では無い。ビクトリーとオーブシャドウは追い詰められていた。

 

 

 

 

 

 

 

「まずい状況だぞこれは……!」

 

 

 モニターで状況を見てたシャマラ博士がそう漏らす。部隊は壊滅に近い状態、ウルトラマン達は苦戦、グア軍団は怪獣達こそ殲滅出来たものの三軍神は健在で猛威を振るっている。かなり危険な状況下に、Xioの面々は唇を噛み締める。

 一緒に見ていた虹学の皆も冷や汗をかいていた。まだ歩夢達も戻って来ず、このままでは奴らによって大きな被害が出てしまう……。

 

 誰もがそれを思って絶望感に呑まれかけた時である。司令室の扉が開き、歩夢、リヒト、一眞、そして翔琉が中に入って来た。

 

 

「かけるん!」

「翔琉さん!」

「先輩!!」

「翔琉君!」

 

 

 彼が戻って来たことに驚き、そして喜ぶ虹学の仲間達。翔琉は皆のことを見た。

 

 

「みんな……言いたい事、聞きたい事、いっぱいあると思う。後で全部話すから、今はこれだけ言わせてくれ」

 

 

 彼は真剣な瞳で全員の顔を見た後、今一番言いたかった言葉を想いを込めて伝える。

 

 

「ありがとう!」

 

 

 もうその瞳に迷いは見られない。全てを受け入れ、決意した強い瞳だ。何も心配することは無いだろうと、皆は思い心強く感じた。

 

 

「博士、涼風さん、これを」

「これは、サイバーカード?」

「俺の力で、怪獣達をこの状態に圧縮したっす。博士達なら、これをスパークドールズに戻せるっすよね?」

「なるほど……よし、任せとけ!」

 

 

 カードを受け取る博士。

 それから翔琉、リヒト、一眞はモニターに目を向けた。そこには暴れる三軍神の姿が映されている。

 

 

「リヒト、一眞」

「わかってるよ。まだまだステージは終わらねえみたいだな」

「はい、行きましょう」

 

 

 3人は駆け出す。その背に、皆からの声援を受けながら。

 

 基地の外に出た彼らは並び立ち、それぞれの変身アイテムを手にする。

 

 

「よっしゃァ! 行こうぜぇ!」

「はい! 必ず勝ちましょう!」

「ああ……。俺達のユナイト、見せるぞ!」

 

 

《ウルトライブ! ウルトラマンギンガ!》

《ウルトラマンエックスとユナイトします》

《覚醒せよ! オーブオリジン!》

 

 

 リヒトがギンガのスパークドールズをギンガスパークでリードし、翔琉がエックスのスパークドールズをエクスデバイザーに読み込ませ、一眞がオーブリングにカードを読み込ませることで現れたオーブカリバーを掴みその円盤を回転させる。

 

 そして彼らは、変身アイテムを天に掲げながら自分達のもう一つの名を叫んだ。

 

 

「ギンガァァァァァーーーッ!!」

「エックスゥゥゥゥゥゥーーーッ!!」

「オォォォォーーーブッ!!」

 

《エックス、ユナイテッド》

 

 

 

「ショォォォウラァッ!!」

 

 

 光に選ばれし銀河の覇者、ウルトラマンギンガ。

 

 

『イィィーーーサァッ!!』

 

 

 絆で繋がる電光の守護者、ウルトラマンエックス。

 

 

「シュゥゥワッチ!!」

 

 

 闇を討ち払う流離の風来坊、ウルトラマンオーブ。

 

 

 

 光の戦士・ウルトラマン達は、邪悪なる者達を倒すべく、希望の輝きとなって大空を飛翔するのであった。

 

 

 

 






 少々遅くなってしまいましたが84話、如何でしたでしょうか?
 みんなから背中を押され、そしてエックスと本来の翔琉との邂逅を経て、彼は本当の意味でウルトラマンエックスとなり、天地 翔琉ともなりました。それもあり変身方法も従来のエックスと同じものに。実はこれまで変身方法が違っていたものも、エックスとユナイト出来てなかったからだったのです。また、今まで変身の際に名前を叫んで来なかったのも、自分が本当はエックスでは無いと心の奥底で思ってしまっていたからで、完全にユナイトした今は堂々と叫びます。

 本作のウルトラマンエックスはテレビシリーズと似たような経験の後にこの地球に来て翔琉と一体化した、本編とは別の存在と言った設定です。エクスデバイザーが最初からあったのも、別世界のXioと共闘してたからなのです。この世界のXio が完全解析出来なかったのも、デバイザーが並行世界の物でエックスが消失した影響により一部情報が世界からブラックリストとして扱われた為、という理由です。

 覚醒した翔琉君はカタラの切り札であるグランドタイラントを撃破。パワーも強化されてます。

 グア軍団も進撃。それを止める為にビクトリーとオーブシャドウが駆け付けてくれましたが、あまりの強さに苦戦を強いられてる様子。


 そして、コラボ回といえばの並んでの同時変身!
 次回、グア軍団との激闘が始まり、遂にあの姿の御披露目となります。また次もお楽しみに。
 質問も随時募集してますのでそちらも是非よろしくお願いします。


 感想、質問、高評価、ここすき、その他、是非是非お待ちしています。




次回、「未知なる天地を翔ケル虹」

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